【業界研究:塾・スクール編】ロイヤリティが、他の業種とちょっと違う!?フランチャイズチェーンの条件比較から見えてきた塾・スクールの特徴とは?
フランチャイズ本部の実態を正しく理解するために、インターネットに掲載されているフランチャイズ情報を徹底比較する研究シリーズの第3弾!今回は、塾・スクールのフランチャイズ本部に焦点を当て、ロイヤリティや開業資金、契約期間などの条件を比較します。塾・スクール業界特有の特徴や傾向があるのか、検証してみましょう。

白部 益男(しらべ ますお)
現在54歳。「いつかは独立・開業を」という思いを胸に、会社員として働きながらフランチャイズでの独立を検討し続けて30年。もはや、インターネットに溢れるフランチャイズ情報を調べることが趣味であり、ライフワーク。3年前に趣味が高じて「全国フランチャイズ情報を調査する会」を立ち上げ、会長を務めている。

江節 学(えふし まなぶ)
ニックネームはエフッシー。「全国フランチャイズ情報を調査する会」の新メンバー。会長と同じく、将来独立することを夢見ているフリーター。たまたまインターネットで「調査する会」の存在を知り、参加したオフ会で会長の人柄に惹かれて入会。まだまだフランチャイズについてはシロウトで、基礎から勉強中。草野球が趣味の23歳。
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多くのフランチャイズ本部がひしめく塾・スクール業界。店舗型が多数を占める中、少数ながら無店舗型や投資型のチェーンも。
会長、前回はお寿司ごちそうさまでした!ウニにイクラに、トロ、エビ、〆サバ…。ぜんぶ美味しかったです~。
どういたしまして…。エフッシー、遠慮なくガツガツ食べてたもんね。まあ、美味しかったなら良かったよ。たまにはいいよ、たまになら、ね…。
え~と、前回は飲食のフランチャイズに絞って条件を比較したんですよね。確か…、ロイヤリティは全体的に低めで、契約年数は「3年」と「5年」が多かった気がします!そうでしたよね、会長?
そうそう、その通り、良く覚えているね。そして今回、対象とするのは「塾・スクール」のフランチャイズ本部。この業種に絞って、ロイヤリティなどの条件を比較していくよ。
え…、じゅ、塾…。す、スクール…。その単語を聞いただけで、頭がクラッとしてきました。会長、な、なぜ…、塾・スクールなんですか…?
塾・スクールは、フランチャイズ本部の件数が多いんだ。2017年11月23日時点でインターネットに公開されていたフランチャイズ情報196件のうち、塾・スクールの本部は35件。飲食の39件に続いて2番目に多い件数だった。前回は飲食について調べたから、今回は塾・スクールの傾向を分析していくよ。
な、なるほど…。わかりました。僕自身は、塾・スクールに苦手意識がありますが、覚悟を決めて体が耐えられるところまで会長のお話にお付き合いします…!
なぜ悲壮感…。では、最初に塾・スクールのフランチャイズ本部をビジネスモデル別に分けてみよう。35件のうち、32件が店舗型で、2件が無店舗型、1件が投資型だ。
グラフ(1):塾・スクールのビジネスモデル(n=35)

あれ、塾・スクールなのに、無店舗型なんてあるんですか?青空教室みたいな感じですか?
青空教室って…。ちょっとイメージが違うかな。エフッシーは、屋外で机に座って勉強する塾のような形態を想像していると思うけど、塾・スクールの中には、スポーツや遊びを教えるフランチャイズ本部もあるんだ。教室などの「ハコ」を持たずに、広場や運動場を借りて生徒に教える、というスタイルだね。
なるほど~!そういう本部もあるんですね。それは楽しそう~。
お、ちょっとテンション上がってきたね。では、エフッシー、投資型というのはどんなビジネスモデルだったか、覚えているかな?
ほえ?…。なんでしたっけ?確か、自分ではなにもしないんですよね。お金だけ出して。
うーん、「なにもしない」というのは語弊があるけど、だいたい正解かな。店舗運営や機材・物件の管理、中には、人材採用から育成までの業務を本部に委任して、資金のみを負担するのが、投資型のビジネスモデルだ。一番最初の調査で勉強したね。
そうでした、そうでした。あとで復習しておきます!
よし。では、ここからは塾・スクールの主流とも言える店舗型を中心に見ていくよ。
塾・スクールのロイヤリティは売上歩合方式が主流。業界特有のロイヤリティ方式が多いのも特徴的。
いつもの通り、まずは「ロイヤリティ」から見ていこう。前回調査した飲食では、半分のフランチャイズ本部が定額方式を採用していたけれど、塾・スクールではどうだろう。下のグラフ(2)を見てみよう。店舗型32件のロイヤリティ方式をまとめたものだ。
グラフ(2):店舗型のロイヤリティ方式(n=32)

あ、売上歩合方式が多いんですね!59.4%もありますよ。
そうなんだ。これは、塾・スクールの大きな特徴と言って良いと思う。飲食では、売上歩合方式を採用しているところは36.1%しかなかったからね。倍とまではいかなくても、大きな違いがあるよね。
そうですね、ぜんぜん違いますね~。
あと、会長、「その他」ってなんですか?エフッシー、こういうの気になっちゃうんですよね~。なんか怪しいぞ…と。
ああ、これね。決して怪しいものではないよ。塾・スクールの場合、売上や利益ではなく、「生徒数」に応じてロイヤリティの金額を決める方法もあるんだ。生徒1人につきいくら、という考え方だね。ほぼ売上歩合方式みたいなものだけど、厳密には算出する基準が異なるし、月によって生徒数は変わるから定額方式とも違うし…。ということで生徒数に応じて金額が変わるものは「その他」という分け方をしている。
なるほど、そういうことなんですね。ガッテンしました。では、売上歩合方式のパーセンテージはどんな感じですか?
パーセンテージは、下のグラフ(3)の通り。5%、10%、20%と区切りの良い数字が並び、半数以上が10%という結果だった。ちなみに、金額や生徒数によってロイヤリティのパーセンテージが変わるものに関しては、一番低い数字を集計対象としているよ。
グラフ(3):店舗型の売上歩合方式のパーセンテージ(n=19)

むむむ…、飲食と比べると高い感じがしますね。確か、飲食は全体的にロイヤリティの比率が低い印象があったんですが、そうでしたよね、会長?
そう、飲食では売上歩合方式を採用している店舗型の本部(13件)のうち、ロイヤリティ6%以下の本部が90%以上だった。それと比べると、塾・スクールのロイヤリティは高い印象を受けてしまうかもしれないね。
同じ店舗型のビジネスなのに、どうしてそんなに差が出るんですか?
これは「塾・スクールのロイヤリティが高い」というよりも、「飲食のロイヤリティが低い」と表現したほうが正確かな。飲食では、ロイヤリティを低く抑えている分、調理に使う食材や消耗品などの仕入先を指定して、一定の利益分を仕入原価に上乗せしている本部も比較的多いんだ。このことは前回の調査でも説明したよね。
また、塾・スクールは、本部が加盟店の生徒募集のためにマーケティングを強化していたり、生徒1人ひとりの指導支援に力を入れていたり、はたまた教材開発に注力していたりと、コストをかけて本部が加盟店を継続的に支援しているところも多い。その意味では、どういうところにコストをかけている本部かを見極めるのも非常に大切だと言えるね。
ふむふむ、そういう理由があるんですね。こうやって業種ごとにロイヤリティの傾向を比べてみると、ついついこっちが安い、あっちが高いみたいに思っちゃいますけど、単純に「ロイヤリティが低いからお得~」というわけでもないんですね。
ところで会長、ここにも「その他」があるじゃないですか!しかも、31.6%も!エフッシー、やっぱりこういうの気になっちゃうんですよ~。これはなんなんですか~?
はいはい、ちゃんと説明するから大丈夫。「その他」は、「売上の何%」という形ではなくて、「売上の種類」によって異なるパーセンテージが設定されているものだ。イメージしやすいように、実際に「その他」に分類した6件のロイヤリティの詳細を見てみよう。
- 学習塾A「入学金の50%、授業料・諸経費の10%」
- 学習塾B「入学金の50%、授業料・諸費の10%」
- 学習塾C「入会金売上の50%、その他の売上の10%」
- 学習塾D「授業料・諸経費の10%、映像授業使用料の25%」
- 学習塾E「受講料の10% ※その他の売上に対するロイヤリティはなし」
- 英語スクールF「入会金の50%、授業料・諸費用の10%」
んんん?どれも同じに見えますけど、こっちの売上に対しては何%、あっちの売上に対しては何%ってこと?ちょっと複雑な感じもしますけど、似たような内容が多いんですね。
そう、6件の内容を見る限り、「入学金に対しては50%」「授業料などその他の売上に対しては10%」というのが、基準になっているように見えるね。この、「入学金による売上」と「その他の売上」を分けて考えるのは、塾・スクール特有のもの。他業界のフランチャイズ本部では、あまり見られないやり方だ。塾・スクールのロイヤリティの特徴として覚えておこう。
会長、ちなみに「諸費」とか「諸経費」「その他の売上」っていうのはなんですか?
「諸費」や「その他の売上」というのは、教材費や教室管理(運営)費、夏季・冬季の特別講習代などのこと。メインの「授業料」とは別に生徒から徴収する費用のことを一括りにして、「諸費」や「その他の売上」と呼んでいるんだ。
なるほど~。
それにしても、「入学金」だけとは言え、ロイヤリティ50%ってインパクトが大きいから、なにも知らずに見たらビビっちゃいそうですよね。その数字だけ見て、「もう塾・スクールは諦めよう」みたいな。そう考えると、事前に知っておくって大切ですね~。
そう、情報はあるに越したことはないからね。では次に、定額方式の金額を見てみよう。
グラフ(4):店舗型の定額方式の金額(n=7)

あれ、定額方式は低い感じですね。6万円以下が85%を超えてますよ。もしかして飲食よりも低いんじゃないですか?
飲食の定額方式では、6万円以下が50%だったから、その数字だけ比べれば、定額方式は塾・スクールのほうが低い印象だ。売上歩合方式とは、ちょっと違う傾向があるようだね。
へえ~、どうしてですかね~?
うーん、定額方式を採用しているフランチャイズ本部の事業内容を見ると、パソコン教室やプログラミング教室、幼児教室などを運営しているところが多いようだ。通常の学習塾と違って、夏季・冬季講習といった季節による繁忙期がなかったり、事業規模が比較的小さめの本部は、定額方式でロイヤリティを低く設定する傾向にあるのかもしれないね。
そっか、店舗型の塾・スクールと言っても、学校の勉強を教えるところだけじゃないのか。そりゃ、事業内容によって見込める売上が違えば、ロイヤリティの考え方も違ってきますよね。
その通り、同じ業種の中でも多様性があるということだね。
では、次。塾・スクールの「開業資金」と「契約期間」はどんな傾向なのか、見てみよう。
塾・スクールの開業資金は「200万円超~400万円以下」がボリュームゾーン。契約期間は「3年以内」が70%。
下のグラフ(5)は、店舗型28件の開業資金を集計したものだ。もうエフッシーはわかっていると思うけど、ここで言う「開業資金」とは、物件取得費などの不確定の費用を除いた「フランチャイズ加盟時に必ずかかる費用(加盟金・保証金・研修費など)」のこと。開業時にかかるすべてのコストではないから勘違いしないように。
はいはい、オッケーです。フランチャイズに加盟する際に、マストで必要な費用のことですよね。物件を借りたり、内装を工事したりするお金は別にかかる、と。
グラフ(5):店舗型の開業資金(n=28)

こうして開業資金を見ると、飲食と同じようにバラバラですね。一番多いのは「200万円超~250万円以下」のゾーンですけど、「300万円超~400万円以下」も同じくらいありますね。
そうだね。200万円超~400万円以下が、塾・スクールでは標準的な開業資金と言って良いと思う。ただ、それより低ければお得で、高ければ損かというと、単純にそういう話でもないんだ。
ほえ~、具体的にはどういうことですか?
たとえば、開業資金が低めに設定されている本部の中には、必要資金として保証金が含まれていないところもある。保証金というのは、加盟店側がロイヤリティなどを支払わなかった場合に備えて、フランチャイズ本部が預かるお金のこと。賃貸で部屋を借りるときに支払う「敷金」のようなものだね。加盟時に保証金を設定しているフランチャイズ本部のほうが多いけれど、中には設定していない本部もあるんだ。その場合、加盟店の開業資金は少なくて済むけど、本部のリスクは高くなる。自分自身はきちんとルールを守っていても、他の加盟店がロイヤリティの未納など、トラブルを起こした場合、本部の負担も大きくなるわけだから、それが回り回って自分の事業にマイナスに作用することもあり得る。開業時に保証金がないことは、必ずしもお得というわけでもないんだ。
また、開業資金が高めの本部を見てみると、初期コストとして「広告宣伝費」や「営業販促費」が含まれていることがほとんどだ。これは、つまり開業時の生徒募集まで本部が責任もって面倒見ますよ、ということ。最初から、自分自身で生徒を集める自信のあるオーナーだったら、このコストは無駄だと思うかもしれないけど、多くの加盟店オーナーは経営に不慣れな人たちだ。生徒募集は事業を軌道に乗せる上で最重要とも言えるポイントだから、少しお金がかかってでも本部に任せたほうが安心という考え方もあるよね。
ああ、なるほど。こうやってグラフで見ると、金額だけに目が向いてしまいがちですけど、「開業資金の内訳」っていうのが大事なわけですね。少し高くても、それが自分にとって意味のあるお金なら、払ったほうが良いですもんね。
そうそう。ロイヤリティでも触れたけど、開業資金でも金額がこれだけバラバラということは、同じ塾・スクール業界でも、本部のスタンスには大きな差があるということ。開業資金の内訳を比較するだけでも違いがわかって面白いし、勉強になるんじゃないかな。
ちなみに、初期コストとして「広告宣伝費」や「営業販促費」が含まれるケースでも、開業後のスタンスは本部によって異なるから注意が必要だ。たとえば、「開業後1年間は本部が生徒募集を担当する」という場合もあれば、「開業後は別途ロイヤリティとして広告宣伝費が発生する」こともあり得るし、「開業後の宣伝や販促にかかる費用は加盟店が負担する」という場合もある。開業時のコストだけでなく、開業後のことも意識して比較するようにしよう。
わかりました!気をつけます!
では最後に、「契約期間」を見てみよう。エフッシー、飲食の契約期間はどれくらいだったっけ?
確か「5年契約」が一番多かったはずです!
そうそう、店舗型の飲食店36件のうち、23件(63.9%)が「5年契約」だったね。その次に多かったのが、「3年契約」で7件(19.4%)あった。
塾・スクールはどうなんですか?やっぱり、「3年」「5年」がスタンダードっていう感じですか?
下のグラフ(6)を見てみて。これは店舗型の塾・スクールの契約期間をまとめたものだ。
グラフ(6):店舗型の契約期間(n=30)

おお、「5年契約」よりも「3年契約」が多いんですね!全体的に飲食に比べると、契約期間が短い本部が多い感じがします。
うん、「3年以内」の割合を比較して見ると、塾・スクールは70%で、飲食は25%という結果だった。塾・スクールは3年以内が主流、飲食は5年以上が主流という違いがあるようだね。
会長、なんで塾・スクールは契約期間が3年以内のところが多いんですか?
それはね、塾・スクールは「他の店舗型のビジネスと比べて、比較的低い費用で開業・運営できる」という特徴と関係していると思うんだ。さっき、塾・スクールの標準的な開業資金は「200万円超~400万円以下」という話をしたけど、これは物件を借りるときの費用や、設備・内装工事にかかる費用は除いたもの。実際には、物件取得費や設備・什器費などがプラスでかかるわけだけど、塾・スクールの場合、飲食のように厨房機器などの大型設備を入れる必要がないから、開業時にかかるコストが少なくて済む傾向にある。また、事業内容的に開業する物件は1階の地上階にこだわる必要もないから、2階、3階という空中階の物件を借りることで月々の家賃も抑えられる。つまり、塾・スクールは、事業コスト(投資)が他の店舗型ビジネスと比べると低い。だから、比較的短い期間で投資を回収できる見込みが高いと考えられているんだ。その投資回収の目安となる期間を「3年」として、契約期間にしている本部が多いんじゃないかと、私は推察しているよ。
なるほど、そういう理由なんですね~。
今回は、塾・スクールに絞って「ロイヤリティ」や「開業資金」「契約年数」について見てきたけど、飲食と比較すると、違う傾向があったり、特徴があったりして面白かったね。
確かに、飲食との違いがわかって、いろいろと勉強になりました。ただ、ちょっと今日1日で「塾」や「スクール」という言葉を聞きすぎて、頭が痛くなってきました…。クラクラします…。
おいおい、熱でもあるんじゃないか。そんな調子じゃ、今日のところは腹ごしらえは止めておいたほうがいいかな。
はい…、今日はおとなしく帰ります。会長、また次回よろしくお願いします…。
(おお…、ラッキー!今日はおごらなくて済む~)
オッケー、エフッシー。じゃあ、次回はまた別の業種で比較・検証してみよう。体調しっかり整えてきてよ!
【調査概要】
<フランチャイズ情報の調査>
方法:自社調べ
調査日時:2017年11月23日
対象:インターネットの独立開業情報サイト(マイナビ独立を含む3サイト)に掲載されているフランチャイズ情報