【業界研究:飲食編】同業種でロイヤリティや開業資金にどんな違いがあるのか、フランチャイズチェーンの条件を徹底比較!
フランチャイズと一口に言っても、ビジネスモデルや業種によって、開業時の条件は大きく異なります。たとえば、開業資金。インターネットに掲載されているフランチャイズ情報を比較すると、開業時にかかる費用が0円のものもあれば、1000万円を超えるものもあります。では、同じ業種ではどうなのでしょうか?条件にバラツキはあるのか、それとも似通った条件が多いのか?今回は、飲食のフランチャイズ本部に絞り、ロイヤリティや開業資金、契約期間などの条件を比較・検証します。
白部 益男(しらべ ますお)
現在54歳。「いつかは独立・開業を」という思いを胸に、会社員として働きながらフランチャイズでの独立を検討し続けて30年。もはや、インターネットに溢れるフランチャイズ情報を調べることが趣味であり、ライフワーク。3年前に趣味が高じて「全国フランチャイズ情報を調査する会」を立ち上げ、会長を務めている。
江節 学(えふし まなぶ)
ニックネームはエフッシー。「全国フランチャイズ情報を調査する会」の新メンバー。会長と同じく、将来独立することを夢見ているフリーター。たまたまインターネットで「調査する会」の存在を知り、参加したオフ会で会長の人柄に惹かれて入会。まだまだフランチャイズについてはシロウトで、基礎から勉強中。草野球が趣味の23歳。
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フランチャイズの代表的な業種の1つである飲食。全39件のデータを店舗型・無店舗型に分けて検証
前回は、「フランチャイズはロイヤリティが高い」「開業にかかる費用が高い」という世間のイメージが本当に正しいのか、インターネットに掲載されているフランチャイズ情報を比較して検証しました。「ロイヤリティ」も「開業資金」もバラバラで、いろいろなフランチャイズ本部があることがわかって面白かったです~。確か、196件のフランチャイズ情報を調べたんですよね?会長?
そうだったね。フランチャイズにはさまざまなビジネスモデルがあって条件にも大きなバラツキがあることを学んだね。
はい。無店舗型と店舗型では条件の傾向が違う、ということも知りました。確か、無店舗型のロイヤリティは定額方式のほうが多かったんですよね~。
おお、よく覚えているね。前回の調査で「いろいろなフランチャイズがある」ということはエフッシーも理解できたみたいだね。今回は、フランチャイズの実態をもっと深く知るために、飲食に絞って「ロイヤリティ」や「開業資金」「契約年数」を比較してみよう。
了解です!ところで会長、どうして飲食なんですか?もしかして、もうお腹空きました?
いや、そういうわけではなくて…。ちゃんとした理由があるんだ。まずは下のグラフ(1)を見てみて。これは、フランチャイズ加盟を検討したことのある人を対象に実施したアンケートの結果だ。
グラフ(1):フランチャイズと聞いて真っ先に思い浮かぶ業種(n=500)
「フランチャイズと聞いて、真っ先に思い浮かぶ業種はなんですか?」という質問に対し、28.8%の人が「飲食」と回答している。「コンビニ・小売」に次いで、2番目に多い。つまり、一般的に「フランチャイズと言えば飲食」のイメージが強いということ。だから、多くの人の参考になるように、今回は飲食に絞って調査しようと考えたんだ。
なるほど、ガッテンしました。さすが会長、気が利きますね~。
さて、そろそろ本題に入ろう。今回の調査対象は、2017年11月23日時点でインターネットに公開されていた39件の飲食のフランチャイズ情報だ。39件をビジネスモデル別に分けると、下のグラフ(2)のようになる。
グラフ(2):飲食フランチャイズのビジネスモデル(n=39)
飲食なので「ハコ」があるものだと思っていましたが、無店舗型っていうのが3件もあるんですね。会長、無店舗型の飲食っていったいなんですか?
移動販売や、自宅で作業可能な事業形態だね。店舗を持たずに飲食をやる選択肢もあるということだ。とは言え、飲食の大多数はやはり店舗型。ここでは、店舗型を中心に見ていくよ。
全体的に「ロイヤリティが低い」ことが飲食の特徴。定額方式は10万円以下が80%超。売上歩合方式はほとんどが6%以下。
まずは、「ロイヤリティ」から調査してみよう。飲食ではどんなロイヤリティ方式を採用しているフランチャイズ本部が多いのか。下のグラフ(3)は、店舗型36件のデータをまとめたものだ。
グラフ(3):店舗型のロイヤリティ方式(n=36)
おお、半分が定額方式なんですね。
そうなんだ。他の業種も含めた店舗型のフランチャイズチェーン全体(146件)の調査では定額方式は39.0%だったから、それと比べると飲食は定額方式の割合が高いということが言えるね。
定額方式の金額はどれくらいなんですか?
下のグラフ(4)を見てみよう。「その他」を除いて、すべて15万円以下。80%以上が10万円以下という金額設定だ。全体的に低い印象だね。
グラフ(4):店舗型の定額方式の金額(n=18)
そうですね。3万円以下のものもけっこうありますし、良心的ですね。ただ会長、1つ気になるところがあるんですが、「その他」っていうのは一体なんですか?
ああ、「その他」というのは、月々支払う金額は一定だけど、金額は店舗の坪数や席数に応じて決める、というもの。決して金額が変動したり、法外に高かったりするわけではないよ。
なるほど、そういうことなんですね。安心しました~。
では、次に売上歩合方式のパーセンテージを見てみよう。
グラフ(5):店舗型の売上歩合方式のパーセンテージ(n=13)
ロイヤリティが15%を超える本部は1件もないんですね。特に4~6%に集中している感じです。
そう、ほとんどが6%以下なんだ。
業種を問わず、売上歩合方式を採用している店舗型のフランチャイズチェーン全体(54件)の調査では、6%以下の割合は50%程度しかなかった。それに対して、飲食では6%以下の割合が90%を超えている。他の業種と比べて、全体的にロイヤリティの比率が低いということだね。
定額方式も売上歩合方式も、どっちもリーズナブルな印象ですね。
そうだね。ただし、飲食のフランチャイズ本部の中には、ロイヤリティを低く抑えている分、仕入れ先を指定して、仕入原価に一定の利益分を上乗せしているところもあるから、注意が必要だ。
なるほど、そういうスタンスの本部もあるんですね。了解しました!ちなみに、無店舗型の3件のロイヤリティはどんな感じですか?
下のグラフ(6)は、無店舗型のロイヤリティ方式をまとめたもの。3件のうち2件がロイヤリティ0円。残りの1件は売上歩合方式で、ロイヤリティは6.66%だ。
グラフ(6):無店舗型のロイヤリティ方式(n=3)
なんと、ロイヤリティ0円が2件も!僕、無店舗型の飲食店で独立することにします!
出たな、エフッシー得意の早合点。そう鼻息荒くしないで落ち着きなさい。
ここまで飲食の「ロイヤリティ」について見てきたけど、全体的に低めの傾向があることがわかったね。では、「開業資金」はどうだろうか。続けて見てみよう。
同じ飲食でも、開業資金は「0円」から「700万円超~1000万円以下」までバラバラ。「250万円超~300万円以下」がボリュームゾーン。
下のグラフ(7)は、店舗型36件の開業資金を集計したものだ。
ちなみに、ここで言う「開業資金」とは、物件取得費などの不確定の費用を除いた「フランチャイズ加盟時に必ずかかる費用(加盟金・保証金・研修費など)」のこと。開業時にかかるすべてのコストではないから注意してほしい。
グラフ(7):店舗型の開業資金(n=36)
開業資金「〜100万円」の独立開業情報を見る
開業資金「101〜500万円」の独立開業情報を見る
開業資金「501万円〜」の独立開業情報を見る
おお、開業資金はバラバラですね~。 一番多いのは「250万円超~300万円以下」のゾーンですけど、下は「0円」から、上は「700万円超~1000万円以下」まで、大きな違いがありますね。同じ飲食、しかもすべて店舗型なのに、どうしてこんなに差があるんですか?
いろいろな理由はあるけど、たとえば、ブランド力やマーケティング力が強く、高い売上が見込めるフランチャイズ本部は加盟金や保証金が高い傾向にある。つまり、儲かるノウハウや仕組みを提供してもらう対価として、それ相応の金額が求められるということだね。それから、サポートや教育が手厚いところは、その分研修費などの費用がかかることもあるかな。
逆に、開業時にかかる費用が低い本部の場合は、既存店を引き継ぐ形態だったり、研修を受けられる人数が決まっていたり、何らかの条件がついていることもある。あとは、ただ単純に経営者の方針で「加盟金や保証金は要りません」としているところもあるね。
フランチャイズ本部の戦略やスタンスによって、ホントにいろいろなパターンがあるんですね~。
ちなみに、「開業資金0円」と言っても、店舗型の場合はその他に物件を借りるときにかかる費用や、内装工事などの費用もかかるからね。完全に0円というわけではないから、勘違いしないように!
大丈夫ですよ会長~、それくらいは僕も理解してますから。逆に言えば、無店舗型の場合は、内装工事などの費用はかからないということですよね。無店舗型の開業資金はどんな感じですか?
下のグラフ(8)が、無店舗型3件の開業資金だ。150万円超~300万円以下で、開業できるイメージだね。ただこの費用には、移動用の車両費や設備費など、不確定の費用は含まれていないから注意してほしい。
グラフ(8):無店舗型の開業資金(n=3)
ふむふむ、150万円~300万円か…。まだ僕には遠いですね。まずは頑張ってバイトします!
うん、「開業資金」だけじゃなくて、「ロイヤリティ」や「原価」などの諸経費条件、そこから見込める売上や利益なども総合的に見て判断することが大切だからね。焦らずに、準備を進めて行こう。
では、最後に「契約期間」を見てみよう。エフッシーは、フランチャイズの契約期間ってどれくらいが標準だと思う?
最近ママにダダこねて買ってもらったスマートフォンが2年契約だったので、フランチャイズの場合は、その倍の4年くらいですかね?
発想の根拠はどうかと思うけど…惜しい!下のグラフ(9)は、飲食の店舗型36件を対象に契約年数を集計したものなんだけど、「5年契約」が一番多く、次いで「3年契約」が多いんだ。
グラフ(9):店舗型の契約期間(n=36)
「10年契約」というケースもあるんですね?長くないですか?
契約期間が10年以上という条件は、飲食ではそれほど多くはないけど、コンビニや修理(リペア)といった業種ではよく見かけるかな。エフッシーの言うように、「長い」と感じる人も多いかもしれないね。10年の間に環境は変わるし、リスクも決してゼロではないからね。でも、契約期間が長いということは、フランチャイズ本部が、その事業の将来性・安定性に自信を持っているとも言えるんだ。
ほえ~、そういう考え方もあるんですね。ちなみに、無店舗型の契約年数はどんな感じですか?
グラフ(10):無店舗型の契約期間(n=3)
無店舗型では2件が「3年契約」、1件が「5年契約」。店舗型の標準的な契約年数と変わらないね。
なるほど~、飲食では「3年」「5年」という契約期間がスタンダードというなんですね。他の業種でも同じような感じなんですかね~?
もしかしたら、他の業種は違う傾向があるかもしれないね。今回は、飲食に絞って「ロイヤリティ」や「開業資金」「契約年数」について見てきたけど、飲食ならではの傾向があることや、同じ飲食でも条件に違いがあることがわかったね。
そうですね。良い勉強になりました~。
では、次はまた違う業種で比較・検証してみよう。
はい、お願いします!次回までに、エフッシーもスマホでいろいろ調べて、予習しておきますね~。と、その前にまずは腹ごしらえ!飲食の話ばかりしていたら、お腹が空いてきちゃいました。会長、店舗型の寿司屋に行きましょう!
うむ…。あぁ、エフッシー、無店舗型のおでん屋台ならすぐそこに…。
【調査概要】
<アンケート調査>
方法:インターネットリサーチ会社を利用した調査
調査期間:2017年11月7日~11月10日
対象:フランチャイズ加盟を検討している・検討したことのある全国20~60代の男女500名
<フランチャイズ情報の調査>
方法:自社調べ
調査日時:2017年11月23日
対象:インターネットの独立開業情報サイト(マイナビ独立を含む3サイト)に掲載されているフランチャイズ情報