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先輩開業インタビュー

自営スーパーマーケットの意外なニーズ。「社会に変化」をもたらすためのオーガニック食品店とは?

品数の多さが売りの「スーパーマーケット」。個人経営という視点で見た場合、どのような運営方法があるのでしょうか? 今回は小売店の開業方法や、経営に欠かせない周辺機器、大手スーパーとの差別化など、意外と知られていないスーパーマーケット経営についてご紹介します。
豊かな日常生活を提案するオーガニック食品店「FOOD & COMPANY」。オーナー白冰(バイ ビン)さんは、奥さまの谷田部摩耶さんと二人三脚で東京・学芸大学エリアにお店を開業。現在は正社員3名、アルバイト3名ほどで経営しています。野菜、加工品などの商品は「オーガニック」にこだわり、カフェのように居心地がよく、高感度な店構えのグローサリーストア(食料雑貨店)として人気を獲得しています。アパレルショップの会社員だったという白さんに、小売店開業のノウハウを伺います。

アパレル企業に勤めるも、社会に変化をもたらす仕事をしたい、と退職を決意

――白さんはアパレルメーカー勤務から独立して「FOOD & COMPANY」開業に至ったそうですが、そのきっかけは?

白:大学ではファッションを勉強し、留学経験を経て、アパレルメーカーに新卒入社しました。もともとその企業が持つ理念や、モノを通じて誰かを幸せにしたいという思いに賛同はしていました。でも目の前の売上や利益を追う毎日では、服を売ったその先の未来がどうしても見えてこなかった。いろいろ考え、1年と経たずにアパレルメーカーを退職し、当時興味のあったソーシャルビジネスで起業しようと準備をしていました。

――いきなりFOOD & COMPANYを立ち上げたわけではなかったんですね。

白:はい。もともとは、世の中を動かしている考え方や暮らし方を変えたいという思いからの起業なんです。退職してソーシャルビジネスを勉強しているうちに、そもそも「自分にとって豊かさとは何だろう?」というテーマに行き着きました。それはつまり、「日常を丁寧に暮らすこと」や「身体にいい美味しいご飯を食べること」だと考えました。

その考えは、自然を守ることや、地元の農作物を大切にするといった「オーガニック」の思想とリンクしたんです。もともとぼくらは、食のビジネスをやりたかったわけではなく、身近なところから日常生活を豊かに変えられるビジネスは何だろう? という疑問から、お客様とちゃんと向き合えるオーガニック食品店の開業に行きつきました。そこから、妻と二人で「ナチュラルハウス」や「紀ノ国屋」でアルバイトをしながら、開業に向けての勉強を始めました。

自分たちに欲しいと思うような、生活に密着したオーガニック食品店がなかった

――白さんが経験されたアパレル業界から、小規模とはいえ生鮮食品も扱うスーパーマーケット業界へと転身するのに不安はありませんでしたか?

白:ありませんでしたね。たしかに、洋服と生鮮食品では品物そのものが違うので、扱い方は変わりますが、「小売業」であることは同じ。いかにいい商品を仕入れ、いかにお客様に納得して気持ちよく買っていただくか。商品が違うだけで、やることは同じですから。

――初めての開業ということで、資金はどのように?

白:ぼくらのように、まったく経験のない個人事業で銀行から融資を受けるのは難しいので、大きなお金は両親と日本政策金融公庫(個人事業主などに融資をする政府運営の金融機関)からです。公庫からは1,500万円を借り入れました。

――実店舗を開くにあたって、学芸大学というエリアを選んだのはなぜですか?

白:若い人にとってオーガニック食品店は青山、表参道などのおしゃれなエリアにあるというイメージで、ファッション感覚で受け入れられがち。でも、以前、訪れたニューヨークでは、生活に密着した文化としてオーガニックが定着していました。それを日本でも実現したくて、絶対に住宅地に店を開きたかったんですよ。

――たしかに学芸大学には、先端的な店と下町風の昔ながらの店が混在している、ファミリー層も多く暮らす街です。

白:「いい商品を扱う近所のスーパー」としてなじんでいただくには、学芸大学がぴったりだと思いました。あと、学芸大学は不動産の価格帯も幅があるんです。駅前の一等地だと一坪6万円ほどに跳ね上がりますが、少し離れると1万数千円台の物件もある。オーガニック食品店は商品数が多くなるので、店舗物件を探す条件として40坪以上が目安でした。なるべくリーズナブルで、まとまった坪数の場所を確保するには、このエリアがベストでした。

安くすれば何でも売れるわけじゃない。商品価値に最適な値段設定を見つける

――実際、お店を訪れて驚いたのですが、店内が想像以上に広く、陳列スペースも相当ゆとりを持って配置されていますね。それは意図したものですか?

白:はい、そうです。自然食品の店というと、小さいスペースにせせこましく商品が並んでいるイメージが強いんですが、ぼくらが目指していたのは商品をシンプルに並べて、選びやすく買いやすい店。そのために商品が見やすい棚をつくり、主婦の方がベビーカーで入店しても、他のお客様とラクにすれ違えるよう、通路もかなり広くとってあります。

また、オーガニックな商品は一般の商品より多少値段が張るので、40代から60代以上のお客様が多くなる。そういったシニア層の方々もゆったりと買い物ができる店づくりにはこだわりました。

――いま、白さんがおっしゃったように、オーガニック商品は割高なイメージがあるので、一般の買い物客にはどうしても敷居が高い。そこはどう考えていらっしゃいますか?

白:より幅広いお客様に来ていただけるよう、商品はオーガニック商品のなかでも比較的お手頃な「普段使い」と、ギフトにもしていただける「非日常」を交ぜて扱い、バランスをとっています。例えば、バナナは相当、安く値づけをして「目玉商品」にしています。バナナだけを買いに寄られたお客様が他の商品に興味を持ってもらえたら、店としてはありがたい。逆に、安ければ何でも売れるか? というと、そんなこともないんです。とくに、食に対して意識の高い方は、いいものにはしっかりとお金を払ってくださいます。

一度、無理をして、野菜をかなり値下げしたこともありました。ところが、売上を見ると、通常価格のときも値下げしたときもほぼ変わらなかったんです。大事なのは商品価値に最適な値段設定だと学びました。

1,400点の商品は、iPad、iPhoneアプリのレジで管理。約60万円の在庫ロスを解消

――オーガニック商品を扱ううえでの苦労は?

白:やはり、鮮度管理です。傷みやすい青果を新鮮なうちに売り切ることがベスト。そのためには、午前中の売上をみて午後の値下げを予想するなど、スピード感が求められます。仕入れに関しても、じつはオーガニックの冷凍冷蔵食品と有機野菜を一緒に扱っている卸業者は、ぼくが知る限り1、2社あるかないかです。その他にもいくつかの生産農家さんとは直接、やり取りさせていただいています。

――仕入れはどういうタイミングで行っていますか?

白:野菜は週に3、4回、定期的に仕入れて、鮮度の落ちかけたものは値引きして売りますし、残ったものはスタッフでいただいています。加工品や調味料など、保存のきく商品の場合は、品切れ前にその都度、発注をかける。そこは通常の小売業と変わらないと思います。

――オーガニック商品はどこから仕入れているのでしょうか?

白:妻がバイヤーとなって、すべての商品を選んでいます。最初のころは、「ナチュラルハウス」や「紀ノ国屋」で働いているときに知り合った卸し業者さんから仕入れたり、自らメーカーに電話して一品ずつ取り寄せたりしていました。開業後は、メディアなどでうちを知った業者さんが売り込みに来てくださるようになりましたね。現在はストア全体で約1,400商品を取扱っています。

――それだけの品物を少人数で、欠品を起こさず適切に管理するのは大変そうです。

白:そうですね。うちは去年から、iPadやiPhoneのアプリを使ったクラウド型のPOSレジシステム「スマレジ」を導入して在庫管理が圧倒的に効率よくなりました。POSレジは専用機器の購入またはレンタルが必要で、設備投資の費用はかかるのですが、「スマレジ」ならアプリで管理や金銭のやりとりができるし、月額の契約料も数千円単位から選べます。そんな高機能なPOSレジシステムが出てきていますね。

しかも、中小の小売事業者がPOSレジを導入すると、補助金が適応される消費税の「軽減税率制度」(2018年1月まで)を利用したので初期投資がかなり少なくすみました。

――最新のPOSレジ導入が、在庫管理をラクにしたのですね。

白:はい。在庫をなるべく持たずに、常に新鮮な商品を提供するオーガニック食品店にとって、商品分析は不可欠ですからね。うちでは、加工品は前月販売数から20%分が常に在庫となる計算式をつくり、表計算ソフトで管理して、毎月1回、仕入れを行うようにしています。

野菜も常に販売数を把握して、仕入れにいかしています。商品数が多くなればなるほど、「なんとなく仕入れ」では無駄が出ます。実際、POSレジを導入してからは、60万円ほど在庫の額が減り、とても助かっています。小売業を始めるならクラウド型POSレジシステムは、いまや不可欠。非常におすすめです。

お客様に「訪れる価値」を見出してもらうために、期間限定フェアやワークショップを開催

――開店後の集客に関してはいかがでしょうか?

白:おかげさまで、学芸大学初のオーガニック食品店ということで多くのメディアが取り上げてくださいました。でも基本は近隣で認知度が上がって、徐々に近所に住む常連さんが増えていったという感じです。集客に関しては、まだまだ工夫の余地が残されていますね。

――例えばどういった工夫でしょうか。

白:これは、個人商店をやる場合、どんなジャンルにも当てはまると思いますが、「目的になる店」を目指すことですね。オーガニック食品店というのは、日用品を売るところなので、わざわざうちだけを目的に電車に乗って来てくれるリピーターのお客様なんてほんの小数。だって、重い野菜や食料品を持って帰るのはつらいですからね(苦笑)。

だからこそ、訪れる方が「行く価値」を見出してくれる個性が必要。いまお店では定期的にオーガニック化粧品や品質のいい包丁など、食料品以外の高品質なアイテムを紹介する期間限定フェアのブースをつくったり、食材を使ったワークショップなどを開いたりしています。「FOOD & COMPANYに来れば生活を豊かにするいいもの、楽しいことに出会える」と思っていただくことが、うちの個性につながっていると思います。

やりたいことが向いているのかどうかを知るためにも、まずは経験してみることが大事

――今後は、FOOD & COMPANYをどのように発展させていきたいですか?

白:まずはFOOD & COMPANYを他のエリアにも増やしていきたいですね。今年は、期間限定ですが新宿のルミネにも店を出しましたし、商品開発のコンサルティングの仕事も増えていますが、最初にお話したとおり、ぼくらが目指しているのは、身近な生活を豊かにするビジネス。オーガニック食品店だけにこだわってはいないので、他の業種に手を伸ばしていく可能性も高いです。これからゆっくり考えていきたいですね。

――では、白さんがFOOD & COMPANYを成功させたように、他業種から独立開業したいと考えている方に、アドバイスを送るとすると?

白:大きな方向性ややりたいことが見えたら、思い切っていまの仕事を辞めて、実際にその分野で働いてみることじゃないでしょうか。ぼくもそうでしたが、自分が本当にやりたいことは、やってみるまでわからない。独立開業をした人は、誰もが「これでいいのか?」と思いながら始めたと思うんです。自分のやりたいこと、向き不向きを知るためにも、まずは経験してみることが大事だと思います。

FOOD & COMPANY

東京都目黒区鷹番3-14-15
03-6303-4216
無休(年末年始を除く)
11:00〜22:00
http://www.foodandcompany.co.jp
※取材時点の情報です

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