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先輩開業インタビュー

カフェ激戦区・吉祥寺に開業したコーヒースタンドが成功。その秘訣はブランディングにあり

東京の住みたい街ランキングで常に上位の吉祥寺。カルチャーの香りが色濃く漂うこの街には、昔から人気の喫茶店が点在しています。そんな吉祥寺南口から東に伸びる飲食店街と静かな住宅地の狭間の一角にあるのが、農場や生産者、品種や精製方法などのブランドにこだわる、上質な「シングルオリジンコーヒー(ブレンドせず、単一農園の豆で淹れるコーヒー)」の専門店「Ryumon coffee stand」です。
吉祥寺の人気カフェとしてメディアで紹介されることも多いRyumon coffee standですが、じつはオーナーのバリスタ・小泉直樹さんは、飲食店を経営するのは初めてとのこと。ライバルの多い人気エリアでどのように顧客を増やしていったのか。その試行錯誤の経緯をうかがいました。

まずは、近隣のお客さんに知ってもらうため、ポスティングを地道に続けた

――Ryumon coffee standは2011年8月にオープン。いまでは吉祥寺の人気カフェとして紹介されることも多いです。初出店ということで集客にも工夫が必要だったと思いますが、ここまでどのような施策をされてきたのでしょうか?

小泉:それが……最初はほとんど何もしなかったんですよ。オープン前にチラシ(横の写真)を100枚くらい作って、近所の住宅に自分でポスティングをしたくらい。なので、最初は全然お客さんが来なかったです。

ただ、オープンして2週間後に、ウェブメディア「All About」のカフェガイドの方が取り上げてくださって、半年後に『王様のブランチ』(TBSテレビ)が取材に来てくれました。それでお客さんが増えたんですけど、そうそう忙しさが長続きするものでもなく……。

お店のウェブサイトとTwitterアカウントは作りましたが、それも活用できてなくて、貯金もどんどん目減りしていった。味さえ良ければ自然にお客さんは来るものだと思って、ちょっとナメてたんですね(苦笑)。

――いくら味に自信があっても、それが知られなければ……ということですね。

小泉:はい、コーヒーマニアは遠くから検索して来てくれましたけど、やはり地域のお客さまに知っていただかないことには立ち行かない。なので、積極的に広告を打つようになりました。フリーペーパー、新聞の折り込みチラシもやりましたし、ポスティングも増やしました。いちばんいい反応を感じたのは、アナログなポスティングです。

その後も雑誌などのメディアに取材していただく機会は増え、休日に吉祥寺以外から足を運んでくれるお客さんも増えたのですが、店を安定して続けていくには、平日コンスタントに来てくれるお客さんも大事です。隣町の三鷹あたりまでポスティングの足を延ばし、近隣のお客さんへのアピールを強化しました。

「本格的なコーヒー」を出すなら、その価値を感じてもらえるブランディングが大事

――ほかに工夫されたことは?

小泉:ブランディングは大事だと思いました。いま、店内価格でホットコーヒーを550円(税別)で出しているのですが、当初は380円でやっていたんです。だから多少売れたとしても、利益が上がらない。逆にお客さんから「いいコーヒーなんだから、もっと高くてもいいんじゃないか」という声もいただき、何度か価格改定をして様子をうかがいつつ、いまの値段に落ち着きました。

吉祥寺近辺は生活に余裕のある方も多く住んでいるので、いいコーヒーを落ち着いて飲むことに価値を感じてくれる土壌があるのも幸いでした。ただし、テイクアウトメニューでは1杯200円ほど安くしていて、気軽に買ってもらえるようにしています。

――たしかに、あまり安いコーヒーだと味もそれなりだろうと、勝手にイメージしてしまいがちですよね。逆転の発想です。

小泉:そして、店の雰囲気も変えました。当初、店内に音楽をかけて賑やかなイメージにして、私自身もカジュアルにTシャツ、パーカー姿だったんですが、それだと安っぽいイメージがついてしまうし、若いお客さんしか近寄ってくれません。

本格派のコーヒーを出している店ですよと、見た目でもわかってもらえるように、いわゆるバリスタスタイルの服装になり、BGMも控え目にして、落ち着いてコーヒーを味わえる店へとコンセプトを変化させました。

あと、営業時間も短くしたんですよ。もともと単価が高いものではないので、長々と店を開けるだけでは割に合わないんです。コーヒーの提供価格を上げたのは、短時間営業でも売上が成り立つようにするためでもありました。

――本格的なコーヒーほど、豆の鮮度が味を左右するので、保存や在庫管理も大変そうですね。

小泉:その通りです。なので、何種類もの豆を用意するのではなく、週替わりで1種類のオススメ銘柄を飲んでいただくスタイルを続けています。それなら、豆がなくなったところで次の豆に替ればいいので無駄がない。珍しい銘柄も楽しんでいただけますし、毎週味が変わるので、常連さんも「今度は何が飲めるのかな」と楽しみに飽きずに通っていただける。ぼくも豆の選びがいがあって、いいことずくめなんですよ(笑)。

カフェ激戦区の吉祥寺で、「シングルオリジンコーヒー」の店を始めるのはチャンスだと思った

――新規出店に対する具体的な準備は、どのように進めていかれたのでしょうか?

小泉:資金については、前職のカフェレストランに7年くらい勤めていたんですが、その仕事を続けながら自己資金を400万円用意しました。開業に際し、日本政策金融公庫から「生活衛生貸付」として500万円の融資も受けたんですけど、当初は200~300万円程度でスタートできる業態を考えていました。

物件については、レストランを辞めてから探し始めました。最初は小さい間口で、客席を作らないテイクアウト専門のコーヒースタンドを始めるつもりだったのですが、予算的にも規模的にもなかなか望みの物件に出会えず……。焦りだした頃に、不動産屋さんからいまの物件の紹介が来たんです。

――Ryumon coffee standは2階建ての店舗で、1階にも2階にも椅子席が用意されています。テイクアウト専門のコーヒースタンドとはずいぶん違いますね。

小泉:そうなんですよ。実際に物件を内見したとき、想定よりも広かったんですが、「椅子席があってもセルフサービスにすれば、一人でオペレーションできるな」というイメージが、スッと頭に湧いたんです。

ただ、じつはこの物件、最初は飲食店が入居するのはNGだと聞いていたので、保証金なども相場より安かった。そこで、コーヒー専門店なら油汚れもないし……と、一生懸命アピールして大家さんのOKをいただいたんです。何より、大家さんが大のコーヒー好きだった。それもラッキーでした。

――とはいえ、吉祥寺は人気エリアですから家賃も高いですし、昔ながらの喫茶店から新しいカフェまでが点在する土地柄です。初めてコーヒースタンドを出す小泉さんは、そこに不安はありませんでしたか?

小泉:ないと言えば嘘になりますが、以前から自分が暮らしていた街なので、土地勘があるのはいいことだなというのがひとつ。たしかに喫茶店が多いエリアではありますが、それまでの吉祥寺にあったコーヒーショップは、スターバックスコーヒーのような大手チェーン、自家焙煎はやっていてもブレンドコーヒーが売りの昔ながらの喫茶店、主に女性向けのかわいいカフェの3種類だけ。味にこだわる「シングルオリジンコーヒー」を売りにしている店はまだなかった。そういう場所に出店すれば注目も集まるので、逆にチャンスだなと思って決断しました。

ただの「苦い飲み物」じゃなかった! スペシャルティコーヒーの感動体験が原動力に

――なるほど、シングルオリジンコーヒー専門店としてのビジネスチャンスに賭けたわけですね。ちなみにRyumon coffee standでは、いわゆるブレンドコーヒーを一切置いていませんが、小泉さんは以前からコーヒーにかなりのこだわりをお持ちだったんですか?

小泉:いえ。いずれ独立して飲食店をやりたいとは考えていたんですが、コーヒーに興味を持ったのは、レストラン勤務の途中からでした。前職ではイベント会場などでエスプレッソマシンを使ったドリンクサービスもやっていて、いわゆるバリスタを経験していたんです。多いときでは1日に400杯のコーヒーを淹れることもあり、味の評判も良かったのでだんだん自信がついていきました。

と同じ頃、個人経営のおしゃれなコーヒースタンドが、下北沢や渋谷など若者の街でオープンし始めました。小さなコーヒースタンドなら、エスプレッソマシンが1台あれば一人でもできる。ちょうど勤めていたレストランが業務を縮小していたこともあり、2010年に退職して、本格的に開業の準備を始めました。

――じつは、コーヒーマニアが高じて……ではなかったんですね。

小泉:コーヒーを淹れるのは大好きでしたが、昔は「コーヒーの味の違いなんて、よっぽど好きな人じゃないとわからないだろう」程度の感覚でした。「コーヒーはどれも苦いもの」くらいの。

ところが、高品質な「スペシャルティコーヒー」と呼ばれるものを飲んでみたら、いままで自分が知っているコーヒーとはまるで別物。「コーヒー=苦い飲み物」じゃなかったんですよ(笑)。その豊かな美味しさに驚いていろんなお店に通いつめるようになり、セミナーにも参加して勉強を始めました。

お客さんとの出会いを大切にするには、「こだわりすぎないこと」も大切

――そういった、さまざまな工夫と努力があって人気店となったRyumon coffee stand。カフェ経営に憧れる方も多いと思います。小泉さんから成功するためのポイントを3つ、アドバイスするとしたら?

小泉:まずは、しっかり「売ることにこだわる」こと。そして常に美味しいコーヒーを探究しながら「商品を磨き続けること」。そして、前の2つとは矛盾するんですが「こだわりすぎないこと」ですね。

――こだわりが強いのは、いいことではないんですか?

小泉:私も最初はプライドが高く、メニューをホットコーヒー、カフェラテ、エスプレッソの3種類だけで勝負していたんです。でも、たとえばカップルや友達と来てくれた方が全員、コーヒー好きとは限らない。ほかのソフトドリンクや軽食もないと、複数人のお客さんに来てもらいにくいと気づき、ソーダ系の自家製アレンジドリンクなども増やしていきました。

おかげさまで、最初は男性のお客さまばかりでしたが、最近は女性のお客さまも増えています。今年もさっそく新メニューとして、自家製アイスクリームを始めました。コーヒーの味にこだわるのは当たり前ですが、コーヒー以外のことに頑なになりすぎては、せっかくのお客さんとの出会いを逃してしまう。バランスや効率も考えながら、いい店にする努力をしたいですよね。

Ryumon coffee stand

東京都武蔵野市吉祥寺南町2-14-9
0422-49-5839
9:00〜19:00
水曜日、第1・3火曜日休み
http://ryumoncoffeestand.jp/
Instagram https://www.instagram.com/ryumoncoffeestand/
※取材時点の情報です

Ryumon coffee stand

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