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先輩開業インタビュー

芸人からサラリーマン、そして起業家へ。ソロキャンプ動画配信をきっかけにアウトドア事業を展開

コロナ禍でじわじわと人気が出たものの一つに、「ソロキャンプ」があります。遠出や人の集まりを避ける中で、身近な場所でアウトドアを楽しみたいという方から支持され、小さなブームになりました。その火付け役になったのが、YouTubeの動画です。YouTuberたちがソロキャンプを楽しむ動画が度々“バズる”ようになり、現在も人気コンテンツとなっています。今回、取材した合同会社ベアーズの島田浩史さんは、まだソロキャンプが浸透していない段階でソロキャンプの様子をYouTube配信し、それがきっかけでアウトドア事業を展開。元芸人という経歴もあって、キャンプに関連するコンテンツ制作やイベント出演、またアンバサダーを務めるなど、幅広く活躍しています。そんな島田さんに、起業したきっかけや経緯など、詳しくお話を伺いました。

動画配信やイベント出演、レンタル事業まで幅広く展開

――事業内容を教えてください
合同会社ベアーズとして、主にアウトドア事業を展開しています。例えば、キャンプ道具のアドバイザーとして企業から依頼を受け、YouTube動画で解説したり、イベントに出演して紹介したりと、使い方や魅力を発信しています。また、キャンプ場のマッチングサイトのアンバサダーもしていて、掲載を検討するキャンプ場への営業活動や、プレゼントキャンペーンの企画などをしています。後は、キャンピングカーのレンタル事業も行っています。

――イベント出演や動画配信も行っているのですね
現在も継続しているのですが、個人でソロキャンプを楽しむ動画をYouTubeで配信していて、これがすべての事業の根っこになっています。あとは、キャンプに関する情報を発信しているオンラインサロンの運営をしています。そのほかに、これはアウトドアとは関連していないのですが、シェアオフィスの運営もしています。

――すべて法人として展開しているのですか?
はい。私としては個人事業主でまったく問題なかったのですが、クライアントと取引するのにどうしても法人でないと難しかったという事情があります。また、運転資金などを金融機関に融資してもらう際にも、法人のほうがより都合がよかったというのもあります。

先輩芸人からのアドバイスでYouTubeチャンネルを開設

――以前はどのような仕事をしていたのですか?
もともと芸人をしていました。10年ほどコンビで活動していて、テレビにも出られるようになり、コント日本一決定戦「キングオブコント」の準決勝にも残ったことが2度ほどあります。でも、優勝どころか決勝にも残れなかったこと、そして、「キングオブコント2012」で優勝したバイきんぐの圧倒的なおもしろさに「一生敵わない」と思ったことから、2013年にコンビを解消しました。解散後は地元の愛知県へ戻り、外構の営業として会社勤めをスタートしました。

――会社勤めは何年ほど続けたのですか?
5年ほど勤めていました。仕事は楽しくて、営業成績も結果を出すことができていたので、生活はとても安定していました。また、この頃にキャンプへ頻繁に出かけるようになり、芸人の先輩であるヒロシさんとご一緒する機会が多くなっていました。当時は月に10日はキャンプに行っていましたね。その時に、ヒロシさんがキャンプを自撮りしたYouTubeを始めていて、「島田君もYouTubeを始めてみれば?」とアドバイスしてくれたんです。「お金を持っている人が言っていることだから、やったほうがいいんだろうな」と思い、それがきっかけで私もソロキャンプの様子を自分で撮影して配信する活動をスタートしました。

――副業としてYouTube配信を始めたのですか?
最初は趣味の延長線でした。動画配信なんてやったことがなかったので、なかなか収益化はできなかったのですが、ヒロシさんの動画に度々出演させてもらったこともあって、2、3年ほど経った頃には5万円ほど稼げるようになっていました。それで、その5万円の収益を元手に自分でビジネスを始めようと思い、会社を辞めて愛知県から再度上京したのが2019年です。本当は居酒屋などの昼間に稼働していないお店の厨房を貸し出す「シェアリングキッチン」ビジネスを展開しようと考えていたのですが、どこも契約してくれなくて見事に失敗しました。それで、次に始めたのがシェアオフィスです。これは自分の仕事場がほしくて借りようと思ったのがきっかけで、それならシェアして使用料をもらったほうが経済的に助かると思ったのが始まりでした。

合同会社ベアーズのシェアオフィスの写真 ――とはいえ、家具やオフィス機器を用意するのに費用がかかったのでは?
それが、掲示板アプリなどを使って、椅子やテーブルなどいらなくなったものをもらい用意したので、ほとんどお金をかけずに準備することができました。そもそも自分のオフィスがほしいというところから生まれたアイデアなので、赤字にならなければいいと考えていました。駅から徒歩4分の立地ですが、大袈裟な内装や家具は用意しない代わりに、月々の会員費を1万円以内とかなり安く貸し出すというのが当初からのアイデアでした。


ソロキャンプを始めた当初は「一人でキャンプなんて」と笑われた

――YouTubeでの活動からアウトドア事業へと展開した経緯を教えてください
コロナ禍になってソロキャンプが徐々に話題になってきた頃でした。それなりに私のYouTubeチャンネルの動画の再生回数が伸びてきていたこともあって、2022年にとあるキャンプ場のマッチングサイトのアンバサダーをすることになったんです。それとともに、キャンプ道具をYouTube内やイベントに出演して紹介するアドバイザーなどのお話が企業からきて、アウトドア関連の仕事が増えていきました。

――YouTubeを続けていたからこその成果ですね
はい。開設当初はYouTube動画の再生数がまったくなくて、そもそもソロキャンプも「一人でキャンプなんて」と笑われていたんです。それを思うとまさに、継続は力なり、ですね。うまくブームに乗れたというのが一番大きな理由だと思います。それに、ヒロシさんの「YouTubeをやってみれば?」の一言がなかったら今はなかった。本当に感謝です。

――キャンピングカーのレンタルはいつからスタートしたのですか?
2022年からです。これもシェアオフィスと同じ感覚で、自分がほしかったから、というのが理由で購入しました。どうせ月々ローンを支払うなら、稼働していない時間に使いたい方に貸し出し、使用料をいただいたほうがお得です。キャンピングカーは中古で、費用は420万円でした。カーローンを組むよりも金利が安いので、資金は日本政策金融公庫で借入して用意しました。

合同会社ベアーズ島田浩史さんの写真 ――どのように集客したのですか?
最初はSNS広告などを使っていたのですが、あまり反響がありませんでした。YouTubeでもキャンピングカーを登場させているものの、そこまで集客につながらず、どうしようかといろいろと試してみたところ、ブログが一番効果的であることがわかりました。キャンピングカーを使ったキャンプの魅力を記事で発信したところ、予約が増え始めたのには驚きました。やはり単純な広告よりも血の通った文字に興味をひかれるのだとあらためて勉強になりました。



ビジネスを学ぶ上で魅力的なフランチャイズのシステム

――さまざまな事業を立ち上げていますが、失敗したものもあるのでしょうか?
何個も失敗しています。例えば、東京都内で人気となっている飲食店のフランチャイズに加盟して、クラウドキッチンで小規模展開してみたところ、これが大失敗。毎月赤字で、10カ月で早々と撤退しました。でも、そうした経験から小さく転ぶことの大事さを学ぶことができました。また、失敗を積み重ねることで、自分に何が適しているのか、そしてそれが継続できるものかどうかがわかってくるのだと思います。

――レシピ本も書かれていますが、どのような経緯で出版することになったのでしょうか?
YouTubeを始めた時に、動画内でキャンプ飯を紹介していました。それで、レシピ本を出したいと思って、ほぼ毎日Twitter(現X)でキャンプ飯や創作料理を投稿していたんです。それを1年ほど続けていた頃に、偶然ヒロシさんが書籍を出すことになって、出版社に「島田君のもどうですか?」と、私を推薦してくれて。編集者が私のTwitterの投稿を見てくれて、ラッキーなことに私も書籍を出すことができました。ありがたいことに1万5000部ほど売れて、合計2冊の書籍を出しています。

島田さんのレシピ本の写真 ――毎日投稿するとは、すごい熱量ですね
おいしいものを食べている時、人は喧嘩しないと思うんです。最高の料理が目の前にあって、人が言い争っているのはイメージできないでしょう?おいしい料理は平和や幸福につながるという意味では、料理研究家を名乗る私にとって、とても重要なコンテンツなんです。なので、これからまた新たなチャレンジとして、飲食店を展開したいと思っています。まだどの料理を提供するかは決めきれていないのですが、フランチャイズで展開することも考えています。

――なぜフランチャイズなのでしょうか?
私の今の目標が、仕事をもらうだけでなく、自分で仕事や雇用を作ることです。それを達成する上で、フランチャイズのシステムはとても便利です。サポートしてもらいながら、お客様に喜んでもらえるような運営の仕方を学ぶことができます。これから一緒に飲食店展開を考えてくれているコンサルタントにもアドバイスしてもらっていて、その一つがマーケットの考え方です。例えば鰻が名産の街で、観光客にピザを出してもそれほど売上は望めません。とはいえ、ただ鰻を出しても競合店に埋もれてしまうだけです。では、鰻で他店とどのような違いを見せるか。今は、そうした視点での物事の捉え方を勉強中です。

「小さく、不安なく、おもしろく起業する」ことがポイント

――仕事をする中で大切にしていることはなんですか?
仕事を無理に取りに行かないようにしています。サラリーマンだった時は売上目標があったので、誰でも彼でも営業をかけて仕事を取りにいっていました。中には相性が良くないお客様もいたのですが、目標達成のために関係なく仕事を受けていたんです。そうしたら案の定、クレームだらけになってしまって。お客様も楽しくないし、私も楽しくない。誰も幸せにできなかったという残念な思いが残っています。だからこそ、無理に仕事をもらうのではなく、仕事を振りたくなるような人間になりたいというのが今の思いです。

――仕事を振ってもらうために、どんな努力をしているのですか?
とてもシンプルなのですが、元気に生きています(笑)。経営者としていいのかわからないけど、でもそれが自分に合っている気がしています。実は、先々月に経営理念を初めて作りました。それが「好奇心を叶える」です。やはりアウトドアは楽しいものであるべきです。キャンプの動画配信や、キャンピングカーのレンタルを続ける中で、お客様だけでなく従業員側もワクワクするコンテンツを作っていきたいです。その延長線上として、飲食店でも好奇心をくすぐるものを提供していくつもりです。

合同会社ベアーズ島田浩史さんの写真 ――最後に、独立・開業を目指す読者にアドバイスをお願いします
私がまだ若い頃は、独立や開業というと、何かを辞めてスタートを切らないといけないようなイメージがありました。でも近年は、副業から始められる環境が徐々に整ってきているように感じます。独立という言葉もよくなくて、まるで“独りで孤立する”といった印象を与えます。そうではなく、小さく、不安なく、おもしろく起業する。わざわざ退路を断ってリスクたっぷりに起業する必要はありません。まずは新しい仕事を続けられるか、試験的に副業などから始めてみることをおすすめします。


 
合同会社ベアーズ

所在地:東京都東村山市本町2-12-1 サンライトビル3F
※取材時点の情報です

https://bears-llc.net

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