1. 独立・開業・フランチャイズ情報TOP
  2. マイナビ独立マガジン
  3. 先輩開業インタビュー
  4. 脱サラの夢をキッチンカーで実現。野望は、アメリカ南部の郷土料理「プルドポーク」を日本に広めること
先輩開業インタビュー

脱サラの夢をキッチンカーで実現。野望は、アメリカ南部の郷土料理「プルドポーク」を日本に広めること

ホロホロと柔らかい食感と、たっぷりジューシーな肉汁が魅力のアメリカ南部の郷土料理「プルドポーク」。日本ではあまり知られていないこの料理をキッチンカーで提供しているのが「Ukichi-cafestation」の上矢祐一さんです。東京、神奈川、埼玉を主な拠点として活動していて、大学構内やオフィス街、イベントやマルシェなどに出店しています。元は会社勤めでしたが、若い頃からの夢であった飲食店の開業をキッチンカーで実現。しかし、まったくの異業種からの転職でわからないことだらけだったり、オープン後すぐにコロナ禍がやってきたりと、開業からは苦労続きだったとか。今回は、上矢さんに運営に関する経験談や、キッチンカーの魅力についてお話を伺いました。

競合の少ない「プルドポーク」一本で営業を展開

――お店の特徴を教えてください
アメリカ南部の郷土料理「プルドポーク」をキッチンカーで販売しています。日本ではあまり見慣れないかもしれませんが、バーベキュー好きの方やアウトドア好きの方には知られている料理になります。一般的には豚の塊を燻製にして、それを引き裂いて好きなものに挟んで食べるというのが主流なのですが、当店では煮込んだものをご飯に合わせたスタイルで提供しています。

「Ukichi-cafestation」のプルドポークの写真 ――アメリカの家庭料理というイメージですか?
そうですね。あまり決まった作り方というのがなくて、ホロホロに煮込んでからスパイスを混ぜる人もいれば、先にお肉にスパイスをすり込む人もいます。またそれを焼いて、最後に煮込んだり燻製にするなど、さまざまなパターンがあります。味も家庭によって違うので、日本で言う「おふくろの味」のようなイメージでしょうか。当店でも、アメリカからの旅行客が買いに来てくれて「日本で食べられるなんてうれしい!おばあちゃんの味に似ている」と喜ばれたことがあります。

――どのようなメニューを用意しているのでしょうか?
四角いお持ち帰り容器にご飯をよそい、煮込んだプルドポークをサイドに乗せ、副菜のお野菜を入れます。これがベースで、あとはトッピングでチェダーチーズや卵を乗せたり、サルサソースをかけたり。肉と絡めて食べやすいものを何種類か用意していて、そのトッピングのバリエーションでメニューの数を増やしています。

――キッチンカーでプルドポークを提供しているお店は他にもあるのでしょうか?
ほとんどなくて、「プルドポーク キッチンカー」と検索しても、数件しか出てきません。しかも、該当するキッチンカーもプルドポークをサイドメニューとして出していて、メインで販売しているところは少ないと思います。そこで、当店がこのアメリカの郷土料理を日本で広めようと、プルドポーク一本で展開しているというわけです。

「成功する前に心が折れる」リスクを考えキッチンカーを選択

――キッチンカーを始めた理由を教えてください
元々はインテリア・雑貨メーカーに営業として20年ほど勤めていました。ですが、社会人になった頃から、ぼんやりと「50歳で会社を辞めて起業する」という野望を持っていたんです。キャンプなどのアウトドアで食べるキャンプ飯が好きだったことから、何かそういった料理で小さな飲食店を始められたら、なんて考えていました。心のどこかで、自分の実力を試したい、がんばればがんばった分だけ稼げる仕事がしたい、といった自営業への憧れがあったのだと思います。

――なぜ店舗ではなくキッチンカーだったのでしょうか?
キッチンカーを選んだのは学生時代からの友人のアドバイスです。会社を辞めて飲食店を始めようと思うと友人に相談したところ、大反対されました。改装費や家賃、保証金もかかるし、安定的な集客が見込めるようになるまでにお金がいくらあっても足りない、失敗するとはっきり言われました。「成功する前にきっと心が折れるぞ」と心配してくれたんです。では、どうすればよいかと話し合った時に、案としてでたのがキッチンカーでした。友人はイベントなどを企画する会社の社長で、よくキッチンカーを呼んでいたそうです。店舗を持つのではなくキッチンカーなら、いざとなったら車ごと売ってしまえばリスクが少ないという話に落ち着きました。

「Ukichi-cafestation」のキッチンカーの写真 ――キッチンカーはどのように用意したのでしょうか?
実家の近くにキッチンカーメーカーがあったので、説明会に行ってみたところ、そこで実際にキッチンカーでの料理の提供を体験しました。また、その流れでキッチンカーの製作やその後のサポートについて説明を受け、一度資料などを持ち帰って考えた結果、ほかに頼るところもなかったので、すべてお任せすることにしました。キッチンカーの購入費は一式230万円で、すべて自己資金で賄いました。まるで素人だったので、デザインなども提案されたものをそのまま採用しましたが、これまで困ったことは特になく、プロにお任せしてよかったと思っています。そうしてキッチンカーの営業を始めたのは、2018年の8月になります。

商品を増やすと粗利が減るため、ホットドッグの提供を断念

――販売を始めた当初、プルドポークは受け入れられましたか?
実はキッチンカーを始めたばかりの頃は、ホットドッグを販売していました。やはり誰もが知っていて、ワンハンドで食べられるものがいいと思ったからです。また、単純に安価なホットドッグではつまらないと思い、健康志向が高い方にも受け入れられるものを提供するため、無添加のバンズを使用するといった工夫もしていました。

――それから提供する料理をプルドポークに変更した理由は?
ホットドッグでいろんな場所を回っているうちに、他のキッチンカーの方と顔見知りになり、「平日に大学構内でご飯もののランチを出さない?」とお誘いをいただいたのがきっかけです。500円から600円で出せるものと言われたので、週に1回、平日に、生姜焼き丼や麻婆丼、プルコギ丼などを大学の敷地内で提供し始めました。

――学生さんに喜ばれるものを出し始めたわけですね
知り合ったキッチンカーの先輩に「とにかく早く提供できるものがいい」とアドバイスをもらい、メニューを決めました。それからは平日に大学でランチの提供をして、土日はイベントに出向いてホットドッグの販売をしていたのですが、両方始めた途端、食材は増え、資材も増え、コストが過剰にかかるようになってきました。これは大変だと悩んでいると、また先輩から「もしランチがやりたいんだったら、そっちへ専念したほうがいい」と言われて。それならもうご飯もののみでいこうと、そこからホットドッグはスパッとやめてしまいました。

――扱う商品を増やせば増やすほどコストが増える、と
先輩から「メニューを増やすとロスが増える。つまり、粗利が減ってしまう」と言われて、たしかにそうだなと。ホットドックの時は使っていなかったフォークとスプーン。あとはご飯ものなので炊飯器や保温ジャーの大きいものも必要になりました。扱う商品の数を欲張るとそれだけコストが増えるので、もうご飯ものに専念しようと覚悟を決めました。それからあらためてどんな商品がよいかを考えた時に、直感的に「どうせならホットドッグと同じアメリカのものがいい」と考えついたというわけです。また、肉がベストだけど、あまり競合がいない、自分が先駆けになるものがいい。そこで、アウトドア好きからも人気の高いプルドポークに決めました。

国からの援助もなく、苦しかったコロナ禍からのリスタート

――出店場所はどのように決めているのでしょうか?
出店場所に関するたくさんの案件を取りまとめて扱っている仲介業者がいて、そこへ登録しています。例えば、イベントなどがあるとその仲介業者を通じて募集がかかるので、自分で応募して、抽選で選ばれます。今は昔のように、飛び込みで「ここに出させてください」と出店場所へ直接営業をかけるようなことはほとんどありません。それよりも募集に対して距離的な近さや、商品がイベントに合う、合わないを考えながら応募したほうが効率的ですね。

「Ukichi-cafestation」の上矢祐一さんの写真 ――集客方法はどのようにしていますか?
基本的にはSNSのみで、InstagramとTwitterを活用しています。月々の出店スケジュールを配信すると、おかげさまで常連客が足を運んでくれるようになりました。やはり継続して発信し続けた結果だと思います。最初は、「インスタってどうやるの?」と友達に相談するところからスタートしました。イベントではなく、1人だけで出店する場合などは、自分で告知してなければ誰も来てくれません。偶然に来店したお客様のみに対する、完全に受け身の営業になってしまいます。でも、徐々にキッチンカー仲間が増えていき、彼らからさまざまなことを教わる中でSNSでの告知方法なども覚えていきました。

――営業をスタートしてからは順調でしたか?
順調だったことは今日まで一度もないですね。私の場合、営業を初めて約1年ちょっと経った頃にやってきたのが新型コロナです。それから3年間、キッチンカーは出店できるイベントがなく、大打撃を受けたにも関わらず、助成金も補助金も出ませんでした。国への不満はありつつも、それでも踏ん張ってきて、ようやく今年になって新型コロナが落ち着いてきました。最近はイベントも増えてきたので、ここからがリスタートだと思っています。

――今後の展開を教えてください
昔、ケバブが日本に広まり始めた時「この料理は何?」と、話題になりました。今ではもう多くの方がケバブを知っていますが、私はプルドポークも同じように広めていきたいと考えています。そのためにも、これからはトレンドの発信地である都心でのランチを積極的に展開していく予定です。今は飲食系だとやはり一番拡散力を持っているのがSNSなので、少しでも注目されるように出店場所を考えていきたいです。

他のキッチンカーは商売敵ではなく、信頼できる大切な仲間

――最後に、これから開業を考えている方にメッセージをお願いします
かっこいい言葉は何も言えませんが、一つアドバイスするなら「勢いではやらないこと」。まずは開業資金や運転資金など、独立後のことまで考えて一度計画を立ててみてください。私の場合、役に立ったのはメジャーリーグで活躍中の大谷翔平選手が使っていた目標達成シート(マンダラチャート)です。一時期話題になりましたが、私も起業前に取り組んだことがあります。中央に「売り上げ」を置き、マスを埋めていく過程で、いろんなことを考えさせられました。あれは独立して時間が経てば経つほど役に立っています。

――どのように役に立っているのでしょうか?
まず、視野が広がります。そして、選択肢が増えました。人は何かを始める時、つい先入観で物事を決めつけ、一つの選択肢しかないように思い込んでしまうことがあります。でも、そうした時こそ、俯瞰することが大切なんです。目標達成シートを活用すると、必要な要素がいろいろ見えてきて、私はとても役立ちました。また、そのシートは振り返りにも使えます。実際、私も毎日が課題の発見と反省の連続です。

「Ukichi-cafestation」のキッチンカーの写真 ――お話を伺っていると、周囲のアドバイスも非常に役立っているように感じます
先駆者に話を聞くことは本当に大事だと思います。キッチンカーはイベントなどの際、何台も集まって商売をします。そこでは顔見知りもたくさんできますし、さまざまな情報を得ることも可能です。彼らから教わることは本当に多いため、商売敵ではなく、仲間だと思っています。だからこそ、仲間とのつながりは一番大切にしています。そのほかにも、出店する場所を用意してくれる仲介会社や、毎回買いに来てくれる常連のお客様がいる。こうした人間関係がキッチンカーを成り立たせてくれることを忘れないよう、日々心がけています。

Ukichi-cafestation

※取材時点の情報です

https://www.instagram.com/ukichicafestation/

 マイナビ独立マガジンの最新記事

一覧を見る

 マイナビ独立フランチャイズマガジンの最新記事

一覧を見る
PAGE TOP