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先輩開業インタビュー

開業の費用は60万円。超スモールスタートながら世界とつながった3坪のコーヒースタンド

京成千葉線みどり台駅のすぐそばに店を構える「エウレカコーヒーロースターズ」。スペシャルティコーヒーと呼ばれる産地や生産方法にこだわった高品質なコーヒーの豆を販売するほか、本格的なハンドドリップコーヒーを求めやすい価格で提供しています。みどり台駅の近くには千葉大学があり、学生には本格コーヒーを1杯200円で販売。小さな街に元気をもたらす店となっています。
店内のスペースはたったの3坪。現在では、カウンターや戸棚が整いお洒落な佇まいとなっていますが、オープンから数年はガレージのような空間に借りてきたイスとテーブルが置いてあるだけの店舗でした。なんと開業資金はたったの60万円だったそうです。驚くほどスモールスタートで始まったエウレカコーヒーロースターズはどのようにして成り立ち、今に続いているのでしょう。店主の宮島英司(みやじま・えいじ)さんにうかがいました。

アルバイトを通じてコーヒーの奥深さを体感。「コーヒー道」に目覚めた

アルバイトを通じてコーヒーの奥深さを体感したと語る宮島英司さんの写真 ――焙煎コーヒーを販売されている方は、コーヒーに並々ならぬこだわりがありますよね。宮島さんとコーヒーの出会いはどのようなものだったのでしょうか?

宮島:大学卒業後はプログラマーとして働いていたんです。けれど、もともと大学院に進みたいという意志があって。働きながら大学院入試を受けたところ千葉大学の人文社会研究科に合格できたので1年で会社を辞め、大学院に通いながらアルバイトをする生活をスタートさせました。そのときのアルバイト先が大手コーヒーチェーンの特別店。当時まだ珍しかったエスプレッソを専門的に出す店だったんです。

研究の傍ら息抜きのつもりで始めたアルバイトでしたが、気がつけばエスプレッソの奥深さにすっかりはまってしまい、修士号取得後はコーヒーを極める道に進むことにしました。

――マシンを使って淹れるエスプレッソはハンドドリップコーヒーよりも簡単そうに見えてしまうのですが、より奥が深いものなのですか?

宮島:そうなんです。イタリアでは、エスプレッソは免許を持ったバリスタしか淹れることができないくらいなんですよ。1秒の抽出時間や0.1gの豆の量、わずかな豆の挽き具合によって味が大きく変わってしまうんです。その日の気温や湿度も考慮しなければなりません。あらゆる工程が味に変化を与えるコーヒーは、茶道や書道などの道のようにどこまでも追求していけるものだと思いました。

――コーヒーを極めることにした時点で、将来の展望は見えていたのですか?

宮島:具体的な展望は特にありませんでした。けれどコーヒーを突き詰めていけば、何か商売につながっていくかもしれないとは感じていました。

エウレカコーヒーロースターズで使用してるコーヒー器具の写真 ――ではそのころは起業をしたいという明確な意志はあまり持っていなかったのですね。

宮島:明確に持ったわけではありませんでしたが、心のどこかでは考えていたのだと思います。もともと組織の中で動くことは少し苦手なんですよ。もしも自分に何かの才能があるとすれば、それは一つの物事にじっくり取り組み続けられること。会社勤め時代、プログラミングの仕事は好きでしたが決められた時間の中で働かなくてはならないことはストレスでした。一度手をつけたら納得できるまで作業を続けたいのに、会社の中で働く以上そうはいかなかった。その点、独立・開業してしまえばすべて自己責任ですので思う存分時間をかけて物事を追求することができます。

業界に変革が起き始めたタイミングで、たまたま焙煎機を引き継いだ

――その後はどのような経過をたどったのですか?

宮島:修士号取得後はアルバイトをしていた店で今度は契約社員となって働き、さらに技術に磨きをかけることにしました。バリスタの大会にも出場し、全国で20位ぐらいに相当する評価をいただくことができました。 独立・開業につながることを始めたのはその後です。自宅のガレージでコーヒー豆の焙煎と販売を始めた方がいて、訪ねていくうちに仲良くなったので一緒に仕事をすることにしました。年齢も彼の方が一つ上というだけで親近感を感じ、刺激を受けたんです。そして、元の勤務先と二足のわらじ生活をスタートしました。ガレージで焙煎していた豆は美味しいものでしたが、店があったのは住宅街。待っているだけではお客様は来ません。そこでイタリアンレストランを中心に営業を始めました。ちょうど地産地消がブームになってきたころで、地元で若い人が頑張っているというと応援してくれる店がたくさんありました。

営業はサンプルの豆を持って行ってオーナーに試飲をしてもらったほか、レストランを訪れた方にお試しいただいて豆を買ってもらうこともありました。そのような営業活動は僕にとって初めて。正攻法がわからなかったので、いろいろな方法を試すことになりましたが、結果かなりの数の売り先を確保することができました。

スペシャルティコーヒーの写真 ――こだわりのコーヒーを提供したいと考える店はたくさんあるのですね。

宮島:ちょうどそのころ、日本の中でコーヒーに対する認識が変わり始めていたんです。フェアトレードのコーヒー豆の流通が始まったり、国ごとに管理されていた豆が農園ごとにラベリングされ「スペシャルティコーヒー」として販売されるようになったり。それによって高品質なコーヒー豆が続々と入ってくるようになり、誰もが新しいコーヒーを体験できるようになりました。コーヒー業界自体が過渡期にあったため、仕事は刺激的で自分自身も楽しかったですし興味を持ってくれる人もたくさんいました。

――そのような状況から開業のきっかけとなった出来事はあったのでしょうか?

宮島:できればのれんわけする形でガレージの店の2店舗目を作りたかったのですが、ちょうどいい物件を見つけられずに断念。そうこうしているうちに、その店のオーナーが結婚し少し状況が変わってしまったんです。次は何をしようかと思案していると、思いがけない申し出がありました。縁のあったコーヒー店の店主が亡くなられてしまい、ご家族に「焙煎機を引き継いでほしい」と言われたんです。時給を支払うから、その店で売るための豆を焼いてほしいという意図でした。その時点でコーヒーには7年ほど携わっていましたが、実は焙煎の経験はゼロ。もちろんいつも近くでは見ていましたが……。時給をいただくことは断わり、かわりにその店のコーヒー豆を焙煎する傍ら焙煎機を好きに使わせてもらうことにしました。そこで練習がてら自分のオリジナルコーヒーを作ることにしたんです。これが、独立・開業のきっかけになりました。

確保できた売り先を相手に、店を持たずにコーヒー豆を販売

オリジナルコーヒー豆の販売について語る宮島英司さんの写真 ――なるほど。でも当時はまだ店を開いていませんでしたよね?オリジナルのコーヒー豆はどのように捌いたのですか?

宮島:幸いなことに僕にはその時点で売り先の候補があったんです。当時(2006年頃)の千葉のカフェでは少しずつエスプレッソが導入されるようになりましたが、それをちゃんと淹れられる人はほとんどいなかった。そこでカフェ店などに依頼されてエスプレッソの淹れ方を教えて回っていたことがあるんです。そのときにつながりができた店が、オリジナルコーヒーの卸先になりました。売り先に困らなかった分、たくさん焙煎ができどんどん品質は向上していきました。

――店を持たずに開業したのですね。

宮島:そうなんです。店を持つことになったのもまた偶然で、大学院時代の友人に「みどり台の駅前にいい物件があるから見にきなよ」と声を掛けられたんです。彼が働くNPO法人と同じ建物に空き物件ができたと言われて。自分の中に「店を開こう」という意志があったわけではないのですが、通っていた大学院の近くであり、地縁を感じたのでなんとなく足を向けました。するとそこには不動産屋さんが待機していて、あれよあれよと話が進みました。「ちょっと待てよ」とは思いましたが、過去には物件を探してもみつからなかった経験があるので思い切って借りてみることに。だめならすぐに撤退するつもりで店を開きました。

店に置いたのはテーブルと廃校のイスだけ。究極のスモールスタート

エウレカコーヒーロースターズの店内写真 ――開店の費用はいくらぐらいかかったのですか?

宮島:物件の取得費で60万円ぐらいですね。なので、借り入れもせず手持ちのお金で事足りました。今でこそカウンターや戸棚がついてきちんとした店構えになりましたが、オープン当初はがらんどうのスペースにイスとテーブルを置いただけ。そのイスも友人が廃校からもらってきたイスを借りたものなんですよ。おまけに入り口の戸板はポリカーボをマグネットで取り付けただけのもの。千葉大で建築を学んでいる学生を無理矢理引っ張ってきて作ってもらいました。強度はまったくなく、台風の日にはお客様が手で扉を抑えていましたね(笑)。「東南アジアの夜市みたい」と言われてました。

こんな話をしてしまうととんでもないところのようですが、このような店だったからこそ良かったこともあるのですよ。何もないから、お客様同士で話をするしかない。自然とコミュニケーションが生まれ、みんなの憩いの場になっていったんです。

――驚きのスモールスタートですね。焙煎機以外の機器などはどうされたのですか?

宮島:もともと家にあったものを持ってきました。追加で必要な機材は数万円分ずつ購入。借金はせず、稼いだ分を投資するというスタイルです。2014年に開店してから5年かけて少しずつ今の形になりました。入り口と戸棚の改修は途中で100万円かけて行いました。これも破格だったんですよ。常連のお客様が「もっと居心地のいい店にしたい。いくらまでなら出せるの?自分が改修してあげる」とおっしゃってくださったんです。

経営時に苦労したことを語る宮島英司さんの写真 ――安全で確実な経営をされていたのですね。では、お店を開いたことで大変だったことはありませんでしたか?

宮島:卸売は掛売りになることが多いので、キャッシュが入ってくるまでにタイムラグがあるんです。なので、はじめのころは黒字なのに経営が苦しいということはありましたね。ひたすら我慢の日々でした。そういうときは、開店時に借り入れを検討すれば良かったかもしれないと思いました。ある程度の元手があれば広告を打つなどの手段も取れますしね。

あとは年間のサイクルが掴めるようになるまでは、焦りがありました。コーヒーって真夏は売れないんです。アイスコーヒーですら、本当に暑い日はなかなか売れない。この店は7月にオープンしたのでいきなりまったく売れない日が続いて焦りました。それでも、コーヒー店はある程度「待つ商売」だと思っていましたから、どんなに売れなくても必ず店は開けていました。店の前を通り掛かる人みんなに挨拶をしながら。人通りの少ない時間にはあまりに暇で店の中で寝てしまい、お客様に起こされることもありましたよ(笑)。やがて気温が下がってくると同時にお客様が増え営業は軌道に乗るようになりました。

――季節の移り変わり以外に、お客様が増えた要因はありますか?

宮島:卸売先ってある意味広告のような役割を果たしてくれるんです。小さな地域の狭い業界なので、口コミがすぐに広がるんですね。お店でコーヒーを飲んでくださった方が自分の店にも導入したいと問い合わせてくださるんです。

地域と世界に貢献できるコーヒースタンド

――この仕事のどのようなところにやりがいを感じられていますか?

宮島:一般的にコーヒーは人件費の安い国で作られます。かつてコーヒー農園で働く人は奴隷のような生活を強いられていましたが、スペシャルティコーヒーやフェアトレードによる流通が始まったことで、コーヒー業界は変わり始めました。そこに携わることができている点にはやりがいを感じます。僕は大学院では、人文社会研究科というところで経済や環境問題、社会における格差の研究をしていたんです。コーヒーを取り巻く状況を良くすることでマクロ経済にも影響を与えられるのかなと考えています。

――憩いの場を作られたということで、地域社会にも貢献されているのではないですか?

宮島:そうですね。千葉大学の近くでマルシェなどのイベントを開催し、地元の方々に喜んでいただいています。これは地域貢献だけでなく、商売に役立つことでもあるんですよ。マルシェに出店している店同士のお客様を共有することで、まだ店のことをご存知いただいていない方に、エウレカコーヒーロースターズのことを知っていただくことができるんです。

千葉大学と共同開発したオリジナルコーヒー豆の写真 ――この場所に出店して良かったと感じていることはありますか?

宮島:千葉大学と一緒に商品開発ができることです。千葉大学がアメリカの大学と業務提携をした記念にコーヒーを作ることになった際「近くで卒業生がコーヒー店を営んでいるらしい」と気がついてくださる方がいて、コラボ商品を一緒に作ることができました。そのほかの商品についても共同開発しているものがいくつかありますよ。

さらに千葉大学内でもコーヒー豆を販売できることになったので販路はどんどん広がりました。地縁のある場所に出店することはメリットだらけですね。

――今後の展望をお聞かせください。

宮島:自家焙煎コーヒー店が増えてきた今となっては、煎りたてのコーヒーを提供するだけでは他店との差別化ができないんです。そうなると重要なのはやはり原料である豆。通常コーヒー豆は商社が買い付けてきたものを購入するのですが、それではどこの店でも同じ豆を使うことになってしまう。そこで2018年に、個人店がチームを組み高品質なコーヒー豆を買い付けられる組織に入会しました。1年目は流れを掴むために組織の仕事を見ているばかりだったのですが、2年目からはメンバーとしての役割も与えられる様になったので、そこでの活動を頑張っていきたいです。実際に産地へ行き、良い豆をみつけてそれを広めていきたいですね。

千葉大学と組んで新商品を開発することも、バリスタの大会に出ることもどんどんやっていきたいです。ここはたったの3坪の店ながらやることはたくさんあるんですよ。

――最後に独立・開業を考えている方へのメッセージをお願いします。

宮島:スモールスタートであっても、自分がやりたい商売をすることは可能です。大切なのは、やり続けること。1杯400円の売上を積み重ねていけば、やがてまとまった利益になります。僕は開店から5年間、年末年始を除いて本当に毎日店に立ち続けています。辛いときもぐっと耐えてとにかく店に立ち続けていれば、面白いことは増えていきますよ。

エウレカコーヒーロースターズ

〒263-0023
千葉県千葉市稲毛区緑町1-8-16緑町中央ビル103

営業日時
月〜土・祝:8:00〜21:00
日:10:00〜18:00
※取材時の情報です

http://www.eureka-coffee.net/

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