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先輩開業インタビュー

マニアのゲームをみんなのエンタメに!ボードゲームの知られざる魅力を伝えてファンを拡大した専門店

若年層の間で数年前からブームが起きていると言われるボードゲーム。日常生活とは異なる頭の使い方ができ、コミュニケーションツールとしても使えることから、その面白さをいち早く知った人たちからジワジワと人気の輪が広がっています。
JR中央線・高円寺駅のそばにある「すごろくや」はボードゲームを販売するだけでなく、その楽しさを伝え、海外製品のローカライズやオリジナル作品の製作も手がける専門店。2006年の創業以来ファンを増やし続けています。「すごろくや」のオーナー丸田康司さんに、商品の特性を伝えながら物を売ることの魅力と、ニッチな市場で顧客を増やす秘訣をうかがいました。

「自分にしかできないこと」を求めて、テレビゲーム製作者からボードゲーム店のオーナーへ

「すごろくや」の創業前後について語る丸田康司さんの写真 ――「すごろくや」は2006年に創業、2010年に法人化されています。丸田さんは創業前は何をされていたのでしょうか?

テレビゲームの企画・開発をしていました。僕はテレビゲーム開発の専門学校を卒業後、3社のゲーム制作会社に勤務。糸井重里さんやポケモンを作った石原恒和さん、ドラゴンクエストの中村光一さんらに師事し、「MOTHER2」や「風来のシレン」といった作品を手がけてきました。しかし3社目に勤めた会社での規模縮小により、退職。同僚たちが同業者へ転職していくなかで、何か自分にしかできないことがないかと考え、店を開くことを思いついたんです。

――それがなぜボードゲームの専門店だったのでしょう。ボードゲームブームが起きる前にそれを見越す先見の明があったということでしょうか。

僕は今でもボードゲームにブームが起きているとは思っていないんですよ。ブームとは言われていますが、実際にその渦中にいるのは都心の若者だけですよね。そういう意味ではまだ、自分のやりたいことは実現できていないと思っています。けれど確かに創業時のボードゲーム人口はもっともっと少なかったですね。コアなプレイ人口は1000人くらいで、その面白さは知る人ぞ知るという状況だったと思います。販売店もほとんどない状態だったので、実際にボードゲームを手にとってその魅力を感じてもらえる場所をイチからつくってみようと思いました。

――丸田さんとボードゲームの出会いはどのようなものだったのでしょう?

僕が1社目のゲーム制作会社にいたころ、六本木にボードゲームを輸入している店があったんです。先輩たちがそれで遊んでいるものを見て、面白いものがあるんだなと思っていました。やがて自分でも遊んでみたり買ってみたりするうちに、自分ならボードゲームを一般の人にも広めることができると感じるようになったんです。当時のボードゲームはいわゆるマニアのためのもの。より幅広い層に魅力を伝える視点を持っている人はいませんでした。僕は仕事というのは「自分が他人に対して何ができるか」を考えることが重要だと思っています。ボードゲームは、自分がその機能をよく理解したうえで魅力を他人に伝えていくことができるものだと思いました。

――たしかに、テレビゲームと違ってボードゲームはプレイヤーがしっかりとルールを理解していなければ進めることができません。ルールを覚えてしまえば面白いけれど、そこに立つまでが大変でなかなか始めようと思えないところがあります。

そうなんです。コンピュータがお膳立てしてくれるわけではないボードゲームは、プレイヤーが自ら考えて場を動かさない限り遊べません。特にドイツ系のボードゲームが好きだという人は難易度が高いものを好むため、その需要に答えようとすると内容はどんどん先鋭化していってしまうんです。すると、ますますマニア以外の人は手を出しにくくなる。ここを上手く橋渡しすることが自分にはできそうだと感じたんです。一般的に、人は生活の基盤を整えることが一番大切。趣味はその上で成り立つものです。けれど、いわゆるマニアと呼ばれる人たちは生活と趣味の優先順位が逆転しているんです。そんなマニアに合わせたものだけしか売れない、作れないとなると、ボードゲームは限られた人たちだけのものになってしまう。それでも、一般の人に広く展開することはできるはずで、これを仕事にしようと考えました。

まだ人に知られていない商品を売るために、広報対応は厭わない

「すごろくや」の店内の写真 ――「すごろくや」を開業するにおいてどのような準備をされましたか?

事業計画書を商工会議所へ持っていってアドバイスをもらいました。それで若干の軌道修正をしましたね。会社勤めの間に資金は貯められたので、借り入れなどはほとんど行っていません。元手は400〜500万円程度だったと思います。物件を借りた以外のお金はほとんど店舗環境と商品の仕入れにつぎ込み、開店時には100種ほどのボードゲームを用意しました。物件は高円寺の駅前に決まり、半年間くらいはほぼ一人で営業をしていました。

――開店してから今までで大変だったことはなんでしょうか。

前述の通り、当時のボードゲーム業界は1000人程度のマニアによって支えられていました。マニアは当然、それまでに発売されている商品については網羅していますから新しいアイテムを待ち望むわけですが、一般の人をメイン顧客に設定にしていた「すごろくや」のラインナップはそれに叶うものではありません。開店日には大勢の方にお越しいただきましたが、その後は、マニアは買わない、一般の人には知られていない、当然来客数は数えるほど、という寂しい状況が1年ほど続きました。けれど昔の仕事のつながりでラジオに出て宣伝をしたり、ラジオパーソナリティに遊びにきていただいたりしたおかげで徐々に店を知ってもらうことができるようになりました。航空機の機内誌やカード会社の広報誌の取材などもどんどん受け、店や魅力的なアイテムを紹介。発信を続けることでお客様が来てくれるようになりました。

――広報にかける手間暇を惜しまなかったのですね。ウェブなどを使って自ら情報発信をすることもあったのですか?

ブログは開店の前から続けており、それを読んで来てくれる方もいらっしゃいました。SNSによる情報発信もずっと続けています。2010年にはTwitter割引というキャンペーンを行いました。フォロワーの数に応じて値引きをするというもので、200人のフォロワーがいる方なら200円引き、3000人なら3000円引きというものです。面白がってくださる方が多く、これは反響の多いプロモーションになりました。僕はわりと「こういう情報を発信したら、こういう人が反応してくれるだろう」という予測をするのが得意なんです。なので自分でさまざまなメディアを使って周知を続け、集客をしました。

安売りはしない。丁寧に魅力を伝えることでファンをつくり、価格の崩壊を防ぐ

「すごろくや」のボードゲーム体験コーナーの写真 ――ボードゲームの魅力を広めるにおいて、気をつけていることはなんですか?

ただルールを書き連ねても、ボードゲームの魅力は伝わらないんです。その作品はどういうことをテーマにしていて、面白いポイントは何なのか、特長はどんなところにあるのかを説明して、「面白そう」と思ってもらえるようにしています。

――ボードゲームはコミュニケーションツールとして活用できると聞きます。そのような機能をセールスポイントにすることはあるのですか?

実はほとんどのゲームはプレイ中にそれほどコミュニケーションが活発化するわけではないんですよ。けれどボードゲームで遊ぶことを決めたとき、本当に一緒に楽しめるのか、ルールは共有できるのか、難易度は高すぎないかなど、相手を慮る過程が生じます。これがコミュニケーションの第一歩。テレビゲームとは異なる点です。ゲームそのものがコミュニケーションを生むというよりも、一緒にボードゲームをするという状況がコミュニケーションを促進させるんです。とはいえ、人と話すことが苦手な方でもボードゲームを一緒に遊ぶことは、コミュニケーションのきっかけになります。

――「すごろくや」では、入店すると必ず店員さんが声をかけてくれ、商品のおすすめや遊び方の紹介をしてくれます。人件費のかかる販売方法だと思うのですが、なぜこのような方法を続けているのでしょう?

正直、ボードゲームは利益率が低いですから、このような売り方が割に合うとは思っていません。ただ、きちんと接客をして売ることがリピーターを生むことに繋がれば、それは意味のあることです。文化的に成熟している時代においては、「必要だから」という理由だけで購買活動をする人は少ないんです。物を買うことはエンターテイメント。物語やイメージを伝えなければ買ってもらうことはできません。安売りをすれば業界ごとすぐに崩れていってしまう。きちんとした接客をしたうえで適正な価格を守り、利益を得ていきたいと考えています。

――現在、従業員は何名いるのですか?採用の際に気をつけていることはあるのでしょうか。

従業員はアルバイトを含めて29名。採用の際は、マニアックすぎる方かどうかを気にしています。けして、これまでゲーム好きでなくてもいいので、相手の視点に立って物が言える方を優先して採用しています。商品知識は覚えさえすれば身につきますから、あまり自分の趣味に偏らず、いろいろなことを吸収してくれそうな人に働いてもらっています。

――「すごろくや」では、販売だけでなくオリジナルのボードゲームの制作もされています。事業の内訳はどのくらいの割合なのでしょう。

今は、卸・流通の利益が大きくなってきていて全体の3分の2を占めています。小売が残りの3分の1ですね。卸・流通させている商品は、完全に「すごろくや」オリジナルのものもありますし、もともとあったゲームをカスタマイズさせたもの、海外の作品を国内流通用にローカライズさせたものがあります。

――現在はどのくらいのアイテムを取り扱っているのですか?

700種ほどのアイテムを扱っています。仕入れのためには常にアンテナを張り、ネットをみたり国内外の見本市へ出かけたりしています。20社ほどある代理店からの案内にも目を通しています。個人が制作したものも人づてに評判を聞いて仕入れることもありますよ。まだあまり他の人が気づいていない良作をみつけたときには特別の喜びがありますね。

しかし、今のボードゲーム業界は供給過多ともいえる状態で、把握しきれないほど次々と新作が生まれています。ただ、作品数が増えた分、我々の基準を下回るものも増えました。いい作品を取りこぼさないようにするのも大切ですが、ボードゲームをきちんと楽しんでもらうためには目新しい商品に気を取られすぎることなく、本当にいい商品を慎重に見極めていかなくてはならないと考えています。

店に立つことはライブと同じ。目の前にいる人の反応を見られることが喜びにつながる

「すごろくや」の開業後エピソードについて語る丸田康司さんの写真 ――「すごろくや」をオープンしてから一番うれしかった出来事はなんでしょうか。

採用のために面接をしたとき、課題としてあるゲームの使い方を説明してもらったんです。その方は地方の在住で、会社を辞めて東京に出てこようとしていました。ところが後日、内定の連絡をしようと電話をかけると、向こうからお断りをされてしまったんです。なんでも、説明に使ったボードゲームを自宅に持ち帰り、家族とやってみたところ楽しくなって、やっぱり地元で家族と暮らしたいと考え直したのだそうです。採用はできず残念だったのですが、なんだか心に残る出来事となりました。

――今後の「すごろくや」の課題などはありますか?

お陰様で、店の利益も売上も上がっているのですが、この先成長していくためにはボードゲーム業界全体での制度を確立することが必要だと思っています。昨今、増えているボードゲームカフェはボードゲームの売上を頭打ちにさせてメーカーと制作者に還元されない仕組みになっていますし、安売りをやめられない業者もいます。ボードゲーム業界全体を縮小させてしまうことになりかねない動きを変えていく働きかけが必要です。

そのためにも、もっと自分の店を増やしていきたいですね。本店と同等のフルスペックの店舗を増やすのは難しいので、簡易版を地方などに展開していきたいです。ネットで価格ばかりを決め手にして購入してもらうのではなく、きちんとボードゲームの魅力を理解したうえで購入してもらえる場所を増やしたいんです。

――今の仕事のどのようなところに喜びや働きがいがありますか?

自分のことをボードゲーム芸人だと位置付けて考えると、店に立つことはライブだと思っているんです。ライブだからこそ、お客様のリアクションを間近で体感できる。それが喜びと蓄積につながっていくんです。「すごろくや」では月4回以上イベントを開催しているのですが、それもお客様のリアクションを見るため。決して利益の大きな事業ではないのですが、ボードゲームの魅力を知ってもらって、楽しんでもらって、それを肌で受け止めるための取り組みなんです。「すごろくや」ではボードゲームをお寿司と一緒に楽しむイベントや、小学生にボードゲームを作らせる取り組み、一つ買ってもらって会場でみんなで楽しんでもらう会などのイベントを開催しています。こうしたイベントを通してボードゲームを自分で「買う」、そして「活用する」という喜びも知ってもらいたいと思っています。

――最後に、今後独立・開業を考えるみなさんにメッセージをいただけますか?

店を開くときには、確実にうまくいかないことが判ったならすぐに撤退する覚悟で始めるといいと思います。だからこそ、十分に考えてから始めるべきだし「自分にはこれしかない」とか「這いつくばってでも続けよう」と思うのは危ないです。自分の「得意」にどうやら需要がないと判ったのであれば、意地になることはないと思いますよ。自分が他人に与えられるものと、それに価値を持ってもらえる人と環境があれば、店は続きますから。

すごろくや

東京都杉並区高円寺北2-3-8 日光ビル2F
03-5356-8869
営業時間 : 11時~20時
定休日 : 水曜日、年末年始
※取材時点の情報です

https://sugorokuya.jp/

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