セブン-イレブンのケンキュウ記事vol.03
インタビュー
ついに…聖域にメスが!?「ロイヤリティ1%引き下げ」という本部の決断に、現役オーナーは何を思う?

2017年4月、セブン-イレブンのロイヤリティが1%引き下げられることが発表されました。期間は2017年9月1日から当面の間。コンビニ本部にとってロイヤリティは「聖域」とも例えられ、「業界激震」と伝えるメディアもありました。「ロイヤリティ1%引き下げ」は、実際にどのような影響があるのか。現場のオーナーはどう思っているのか。セブン-イレブン 行田小見店の木村泰男オーナーにお話を聞いてきました。

profile

木村泰男さん(セブン-イレブン 行田小見店 オーナー)
セブン-イレブンのオーナーになる前は、別のコンビニチェーンの本部にてSVを担当。「独立するなら業界トップのセブン-イレブンで」と、29歳の若さでセブン-イレブンのオーナーに。行田小見店のオープン以来、順調に店舗数を増やし、現在は3店舗を経営している。

「ロイヤリティ1%引き下げ」のニュースをきっかけに振り返った、これまでの15年間

木村オーナー

──先日、2017年9月よりセブン-イレブンのロイヤリティが1%引き下げられると発表されました。木村さんは、その情報をどのように知りましたか?

木村:皆さんと同じように、4月にメディアを通じて知りました。インターネットのニュースサイトです。その後、本部の店舗経営相談員とも軽く話しましたが、詳細の確認はこれからですね。

──率直に、「ロイヤリティ1%引き下げ」と聞いて、どのように思われましたか?

木村:今回の「1%引き下げ」に限らず、これまでも環境の変化に応じて制度の変更はたびたびありました。私は間もなく開業してから15年が経ちますが、当時を振り返ってみると、埼玉県の最低賃金は確か時給660円くらいでした。それが今では時給845円。およそ1.3倍、金額にして200円近く上がっています。当時の人件費が仮に100万円程度だとすると、現在は単純計算で130万円の人件費がかかる環境になっているわけです。私の店舗には月給制で雇っているスタッフもいますから、実際にはもっと多くの人件費がかかっています。こんな話をすると、オーナーの負担が一方的に増えているように思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。15年の間に、開業当初はなかった支援制度がいろいろと生まれ、逆に利益が出やすい環境になっていると感じています。
たとえば、私は開業して4年目に2号店を持つことができたのですが、当時は複数店を経営しても、特にインセンティブはありませんでした。それが、2009年に「複数店経営奨励制度」ができ、開業後5年以上経過しているオーナーが複数店を開店する場合には、インセンティブチャージ(ロイヤリティ率の低減)が適用されるようになりました。翌年には、それとは別に、複数店全店を対象にロイヤリティが3%減額されるようになり、合わせて6%もロイヤリティが下がりました。その他、廃棄ロスの15%を本部が負担してくれる制度も、2009年にできました。今回の「ロイヤリティ1%引き下げ」も、そうした大きな流れの1つと言えるかもしれません。

せっかくの嬉しい誤算。今働いてくれているスタッフにできるだけ還元したい

スタッフとの会話

──確かに、「ロイヤリティの引き下げ」と聞くと大きなニュースに感じますが、これまでの流れを考えると自然なことのように思えますね。実際に、2017年9月から1%ロイヤリティが引き下げられるわけですが、木村さんはどのように活用しようとお考えですか?

木村:嬉しい誤算なので、良い意味で「どうしようか」と思案中です(笑) 私の店舗の場合、ロイヤリティが1%下がると、だいたい月に7万円くらい利益が増えることになります。3店舗経営していますので、7万円×3店舗でトータル約20万円。どう経営に活かすか。それを考えるのは楽しいですし、経営者としてのやりがいを感じますね。

──本部のニュースリリースを見ると、今回の引き下げの背景には、最低賃金の上昇や有効求人倍率の上昇、社会保険加入対象の拡大など「国内の雇用環境の変化」が挙げられています。加盟店の「人件費の負担を軽減すること」が本部の目的の1つだと考えられますが、それについてはどう思われますか?

木村:もちろん、使い道は1つではないと思いますが、やはり今働いてくれているスタッフに「できるだけ還元したい」という思いはありますね。たとえば、先日あった話なのですが、テキパキとよく働いてくれる女性のアルバイトスタッフから「お店を辞めたい」という相談を受けました。聞くと、仕事に不満はないものの、家庭の事情でもっと時給の良いところで働かなくてはいけなくなった、とのこと。時給が200円高い仕分けの仕事をしようと考えているという話でした。私は迷わずに「時給を200円上げるから続けてほしい」と説得し、その甲斐あって彼女は今も仕事を続けてくれていますが、正直時給を200円上げることは、そう簡単なことではありません。しかし、今回のロイヤリティ引き下げのおかげで、今後はそういう判断がしやすくなります。これは、経営的には大きなプラスですね。
また、私は以前から新しい人材を紹介してくれたスタッフには、5万円の謝礼金を支給するようにしています。周りにこの話をすると、「紹介料に5万円も出すの!?」とよく驚かれますが、人材を確保するためには決して高い金額だとは思っていません。折り込みチラシに人材募集の広告を出すのと、大して変わりませんから。これは私が行っている取り組みの一例ですが、今後は、こうした施策により積極的にチャレンジできるようになるかもしれません。できるだけ多くのスタッフを採用し、少しでも余裕のあるシフトを組むことで、スタッフが働きやすく、お客様へより行き届いたサービスを提供できる店舗にしていきたいですね。

「これなら利益が出る」と確信があって始めたコンビニ経営。より大きな期待を胸に次の15年へ

木村オーナー夫妻

──先ほど、人材を確保するためにいろいろと工夫されているというお話が出ました。ロイヤリティの件とは少し話がズレますが、最近では「セブン-イレブンオーナーが欠勤したスタッフに罰金を科した」といったネガティブなニュースが話題になることがあります。人材募集において、そういったニュースの影響はありますか?

木村:そうしたニュースが出たから人材が集まりにくい、という直接的な影響は感じません。私は3店舗経営していますが、やはりアルバイトスタッフの募集で一番大きな要因は立地ですね。集まりやすい店舗、集まりにくい店舗、ハッキリと分かれます。総じて人材募集は簡単ではありませんが、特に難しいと感じるようになってきたのは5年ほど前からでしょうか。人材の問題は社会全体の傾向であって、コンビニだから、セブン-イレブンだからというのはあまり関係ないと思いますね。
ニュースになるような問題を起こしてしまうオーナーさんは、スタッフをはじめ、本部やお客様とも関係をつくることが苦手なんだと思います。お互いに信頼関係があれば、あのような問題は起こり得ません。手前味噌な話ですが、私の店舗で働いているスタッフは、ネガティブなニュースを聞いても「ウチはそうじゃない」と思ってくれているはずです。逆に熱心なスタッフが多く、タイムカードを押しあとに仕事を続けようとするので、「お願いだから、サービス残業はしないでくれ」と私から懇願するくらいですから(笑) 

──最後に、再び話をロイヤリティに戻しますが、セブン-イレブンのロイヤリティは、コンビニ業界でも率が高いことで知られています。開業する際、その点は気にならなかったのでしょうか?

木村:フランチャイズに加盟するにあたって、もちろん細かくシミュレーションしました。セブン-イレブンは、確かにロイヤリティは高めですが、その分平均日販(1日の売上高)が圧倒的に高い。さらに水道光熱費の80%を本部が負担してくれる。ソロバンを弾いて、「これなら利益が出る」という確信があったので、まったく不安はありませんでした。
先ほどもお話しましたが、長く続けているうちにさまざまな支援制度ができ、現在、標準のロイヤリティよりもだいぶ有利な条件で経営させていただいています。9月にはさらに1%引き下げられ、10月には15年の契約が満期を迎え、さらなるインセンティブチャージがつきます。より利益が出やすい環境になるわけですから、次の15年が非常に楽しみですね。

chino

この記事の担当ライター:chino

ライター、Webディレクター、デザイナー。大手の求人媒体社を渡り歩き、長年にわたって求人広告の制作・ライティングや、サイトの企画・ディレクションに従事。マイナビ独立にはサイト立ち上げから携わる。