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先輩開業インタビュー

田舎の強みをフルに活かして事業を展開。Webスキルを学べるコワーキングスペース

働き方の多様化が加速度的に進む中、インターネットを活用して個人で働くフリーランスが増えています。しかし、オンラインで働くためにはWeb に関する知識は必須であり、学習機会を求める声も少なくありません。株式会社 Ponnufはそんなニーズをいち早くキャッチし、Webスキルを学べるコワーキングコミュニティ「まるも」を開業。場所は、千葉県の田舎町、富津市金谷。はたしてどんな施設なのか。創設者の山口拓也さんに話を伺いました。

田舎町で合宿型キャリアスクールを展開

株式会社Ponnufが運営するWebスキルを学べるコワーキングコミュニティ「まるも」の外観写真 ――「まるも」とはどのような施設ですか?

わかりやすく説明をすると、いわゆるコワーキングスペースになります。利用者は主にサイト制作を手掛けるフリーランスが多く、その他はデザイナーやライターなど、職種はさまざまです。また、企業の合宿スペースとして施設を提供している他に、専門的なWebスキルを学ぶことができる「田舎フリーランス養成講座」などのサービスを行っています。

――田舎フリーランス養成講座について教えてください。

地方に住みながらWebを活用した仕事を受注し、フリーランスとして活動する方法を学べるセミナーになります。受講期間は1か月で、内容はWebに関するさまざまな知識や、フリーランスとして必要なスキルを学ぶことができます。

受講者は遠方からやってくる方が多く、当社で用意しているシェアハウスに住みながら学んでいます。例えるなら、IT留学ですね。具体的な講座内容は、午前中にアフィリエイト(インターネット広告の一種)の基礎知識やイラストレーターなどの使い方について学び、午後は実際に自分で仕事を受注して作業をするなど、実践的なのが特徴です。

――合宿型だと受講者にどのようなメリットがあるのでしょうか?

地方ならではの静かな環境の中で集中して学べるので、知識や技術が身につきやすいという利点があります。また、実績作りの一環として受講期間中に仕事を請け負う際に、講師からのサポートをすぐに受けられるのもメリットの一つです。受注先からの要望に一人で対応することが難しい場合など、受講者同士で協力し合って解決している姿も見かけます。こうした関係を築いておくこともフリーランスにとっては大切。人脈作りという点においてコワーキングコミュニティは最適な場所と言えるでしょう。

千葉県金谷は“クリエイターの聖地”だった

Webスキルを学べるコワーキングコミュニティ「まるも」の独立・開業時について語る株式会社Ponnufの山口拓也さんの写真 ――独立・開業したのはいつ頃ですか?

実は企業に勤めた経験がなく、大学卒業後からフリーランスとして働いていました。そもそも僕が通っていた大学では在学中に起業する人がたくさんいて、僕も同じく事業を立ち上げたいと考えていました。ただ、特に明確な事業計画などはなかったので、在学中から手掛けていた企業サイトの制作やWebメディアの運営の仕事を、卒業後もひとまず続けることにしました。一つだけ決めていたのが、売り上げ目標です。もし3か月で売り上げが20万円に達しなかったら就職したほうがよいとは考えていました。また、次の目標として設定したのが、売り上げ100万円を達成したらチームで仕事をすることです。どちらもクリアすることができ、2014年に法人化をしました。

――学生の頃から企業の仕事を受注していたのですか?

ソーシャルメディアが広まり始めていた頃だったので、FacebookやTwitterを活用して知り合いなどに呼びかけ、仕事を請け負っていました。今ではフリーランスの仕事の探し方としてクラウドソーシングなどが知られていますが、当時も企業からの仕事をオンラインで受注することはそれほど難しくなかったんです。なので、仕事をする場所にもこだわりはありませんでした。卒業後すぐに金谷へと移住したのも、そうした理由からです。

――金谷に移住した経緯を教えてください。

金谷には以前「KANAYABASE(以下カナヤベース)」という、クリエイターを目指す若者がコワーキングスペースとして利用できるシェアアトリエがあり、アートイベントを開催するなど、町おこしなどの活動拠点になっていました。この施設の運営に携わっていた知り合いが声をかけてくれたことがきっかけで、大学卒業直後の2012年に地元埼玉から金谷へ移住し、カナヤベースを利用するようになったのですが、2014年の年末に建物の老朽化などの問題により閉鎖してしまったのです。このカナヤベースの宿泊施設だった建物を活用して立ち上げたのが、今のまるもです。

――居抜き物件を活用したということですね。

そうです。当時、金谷でフリーランスとして働きつつも、いずれは活動拠点を都内に移そうと考えていたのですが、カナヤベースにはたくさんの魅力的なクリエイターが集まっていて、創作活動において刺激的な場所だったんです。なくしてしまうには惜しかったこともあり、施設の一部を引き継ぐ形で2015年10月にまるもをオープンしました。

初期費用はほぼゼロ、その分広告に力を入れた

株式会社Ponnufが運営するWebスキルを学べるコワーキングコミュニティ「まるも」の内観写真 ――すぐにコワーキングスペースとして始動したのですか?

施設を引き継いだタイミングでは、肝心の事業内容のことは決めかねていました。ただ、企業向けの合宿所としてなら需要があるはずと思い、実際にサービスを始めたところ、予想以上に申し込みがあり、事業としては好調な滑り出しとなりました。同時に、以前から金谷で移住生活を始めていたクリエイターたちから「コワーキングスペースとしても利用させてほしい」という声もあって、今の運営スタイルに落ち着きました。

――集客はどのように行ったのですか?

すべてネット広告です。田舎なので施設の家賃が安く、都会に比べて経費を抑えられる分、広告に力を入れることができます。逆を言えば、広告さえ効果的に打つことができれば収益は確保できると考えていました。また、まるもは元からあった家具や装飾品をそのまま使ったので、内装などの初期費用はほぼゼロです。修繕費などに余計なコストをかけず、集客に注力できたことも大きいですね。

講座以外にも滞在者に充実したサービスを提供

株式会社Ponnufが運営するWebスキルを学べるコワーキングコミュニティ「まるも」の2階の写真 ――田舎フリーランス養成講座を始めたきっかけは何だったのですか?

まず、カナヤベースのシェアハウスとして使われていたまるもの2階がそのまま空いていたので、スペースをうまく活用したいと考えたこと。そして、僕が手掛けていたWebの仕事を手伝ってくれる人材を育てたかったことが講座を開設した主な理由です。それに、起業を目指して努力している人が身近にいると、僕のモチベーションアップにもつながります。そこで、フリーランスのスキルアップの場として、2016年2月に田舎フリーランス養成講座を始めました 。こちらも開講にあたって特に費用はかかっていません。

――反響はいかがでしたか?

初講座の月に5人、翌月に6人の受講生が集まり、順調なスタートを切ることができました。また、講座を修了した人の中には「金谷に残って仕事をしたい」という人が現れるようになり、今ではそのまま滞在するケースも珍しくありません。その方たちが引き続きコワーキングスペースを仕事場にしてくれるので、自然と施設の利用者も増えるという仕組みができあがりました。

――受講後もシェアハウスは利用できるのですか?

金谷は賃貸物件などが皆無で、滞在を希望する方が自力で空き家物件を見つけることはかなり難しく、住む場所を提供する必要があります。なので、講座の受講者や施設利用者向けの宿泊施設として、まるもの近くにシェアハウスやシェアアパートを用意しており、家賃さえ支払っていただければ継続して利用することも可能です。また、昨年には飲食ができて仕事場としても使えるカフェスペースもオープンしました。こちらはまるもの会員の方などに運営を手伝ってもらっています。

――金谷以外でも同様の施設を展開しているとか。

まるもと同じスタイルのコワーキングスペースを千葉県いすみ市と山梨県都留市に展開しています。2017年にいすみ市でオープンした「hinode」は、金谷での活動を注目してくれていたいすみ市の方から町おこしの一環として声をかけていただいたことがきっかけです。都留市の「teraco.」は、コワーキングスペースや田舎フリーランス養成講座をやってみたいというまるもの利用者だった方をサポートする形で、2018年にオープンしました 。徐々に利用者も増えていて、地元の大学生などにも活用していただけています。

提携先の開拓や新規講座の開設など事業拡大へ

独立・開業を目指す方へメッセージを送る株式会社Ponnufの山口拓也さんの写真 ――今後の展開をお聞かせください。

今後は直営ではなく提携という形で田舎フリーランス養成講座を広げていく予定です。施設などのハードは提携先に用意していただき、私たちは運営のサポートや講座プログラムなどのソフトを提供していく。講師は当社から派遣します。そうすることで僕たち運営サイドは講座の精度を高めることに集中でき、それが受講者の満足度に直結します。現在、すでに石川県能登や愛媛県大須、鹿児島県頴娃町などと提携していて、条件さえ合えば新しい地域でも開催したいと思っています。

――新しい講座などを開催する予定はありますか?

今年から新たにトラベルライター養成講座を開設しました。田舎フリーランス養成講座がWeb全般なのに対して、「旅人×ライター」をキーワードにライティングを学ぶ講座になります。最近はコワーキングスペースの利用者にもアドレスホッパーが増えており、旅を続けながら働きたいというニーズに応えてスタートしました。また、オンラインで受講できるマーケティングに特化したコースも作成中で、今後もキャリアスクールを中心にサービスを充実させていきたいと考えています。

――これから独立・開業を目指す読者にメッセージをお願いします。

起業はそれほど難しいことではありません。もし迷っている方がいるなら、すぐにでも行動してほしいと思います。例え失敗しても命まで取られるわけではありませんし、そうした意味ではそれほどリスクが高いわけじゃない。それよりも、やりたいことにチャレンジしないほうが、悔いが残ってしまいます。ぜひ成功を目指してがんばってほしいですね。

株式会社Ponnuf

千葉県富津市金谷3870

http://ponnuf.com/

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