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会社設立時の資本金とは?今後の経営を見据えて資本金の額を決定しよう

会社設立時には、資本金の額を決める必要があります。
会社法においては、資本金1円から会社設立が可能とされているものの、資本金の額は設立後の事業運営にも関わってくるため、事業運営をスムーズにするためにも適切な額を設定することが大切です。

では、資本金はなぜ会社の経営に影響を与えるのでしょうか。資本金の役割や、資本金額の決め方、資本金を増やす(増資する)方法について紹介します。

資本金とは

資本金とは

資本金とは、事業運営の資金となるものです。会社法32条の「設立時発行株式に関する事項の決定」では、会社を設立するときには資本金を決める必要があると定められています。

以前は、一部、特例制度はあったものの、会社設立時は最低でも1,000万円以上(株式会社の場合)の資本金が必要でした。しかし、2006年5月の会社法改正により、資本金1円からでも株式会社・合同会社の設立が可能になりました。

株式会社の場合、資本金を用意するために、出資者から資金を募る方法や、設立者(経営者)が自己資金を用意する方法があります。ただし、事業開始前に第三者から出資を受けることは難しい場合もあるため、「設立者の自己資金=資本金」となるケースが多いようです。


資本金は、返さなくてもよい「純資産」として扱われる

会社の財政状況を示す「貸借対照表」において、資本金は、事業による利益や、借り入れによる資金調達とは分けた「純資産」と捉えます。

【貸借対照表の項目例】

貸借対照表の項目例

純資産である資本金は、負債とは異なり返済義務がなく、負債利子も発生しません。そのため、資本金が多い会社は、安定性のある会社経営をしていると判断されます。


資本金の平均額

総務省・経済産業省の「令和3年経済センサス‐活動調査結果」から、資本金の目安を確認してみましょう。
まず、2021年時点の資本金ごとの企業数は次のとおりです。

資本金ごとの企業数

※総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査結果」(https://www.stat.go.jp/data/e-census/2021/kekka/index.html)を加工して作成

最も多くを占めるのは「資本金300~500万円未満」(約57.9万社)、2番目に多いのが「資本金1,000~3,000万円未満」(約55.6万社)となっています。


資本金と混同しやすい資金

資本金と間違いやすい支出として、「設立費用」や「開業費」があります。それぞれの違いについて確認しておきましょう。


設立費用

株式会社を設立するときに行う設立登記では、次のような諸経費がかかります。

●収入印紙代4万
●定款の認証手数料約5万円
●登録免許税約15万円など

これらの会社設立前にかかる設立費用は「創立費」に分類されます。会社設立前でも費用として計上することが可能ですが、創立費とは別に資本金を準備しておかなければなりません。


開業費

会社設立(登記手続終了後)から実際に営業が開始するまでにかかる費用です。例えば事務所契約にかかる費用や、デスクや書類棚などのオフィス用品、PCや複合機などの事務機器などの準備費用が当てはまります。営業開始前の光熱費も開業費に分類されます。


資本金の役割

資本金の役割

資本金には、複数の役割があります。


事業に活用する

資本金は自己資本として自由に活用できる資金です。事業拡大の好機となるタイミングを逃さず、温めておいたアイデアを最適なタイミングで実現するために活用できます。理由を問わず自社のタイミングで動かせる資金があるのは、事業運営において大きな武器となります。


事業リスクの低減

資本金は、返済の必要がない資金であることから、企業の体力や信用力を判断する材料としても活用されます。特に設立当初は支出が多く、キャッシュを得るまでに時間がかかる不安定なときです。万が一資金繰りが苦しくなったときでも、事業継続するために資本金が大きな役割を果たすでしょう。


利害関係者の信頼に繋がる

金融商品取引法により、上場企業には貸借対照表を含む決算書を開示する義務があります。また、非上場の会社であっても、会社法上の大企業に該当する場合は、同じく開示が義務づけられています。資本金額は、企業ホームページなどに掲載されている場合も多いでしょう。
また、公開されていない場合も、法務局で定款を閲覧することで誰でも企業の資本金を確認することができます。企業の資本金が一般公開されていることで、企業の財務状況の透明性を確保でき、利害関係者にとっては企業への信頼に繋がります。

上記の役割を持つことから、資本金は一定額を用意しておくのが経営上望ましいでしょう。次章では、資本金の決め方を紹介します。


資本金の決め方

資本金の決め方

会社設立後に資本金を増資することは可能ですが、手続きが必要ですし、手数料もかかります。そのため、設立時に資本金額は慎重に決めておく必要があります。
ここでは、資本金を決める際のポイントを紹介します。


「開業資金」+「3ヵ月分の運転資金」を考慮する

「開業後3ヵ月で売上の目途が立てば順調に会社を回すことができる」という考え方のもと、開業資金に加えて3ヵ月分の運転資金をまかなえる資本金を用意しておくとよいでしょう。
開業資金とは、前述の「開業費」にあたり、運転資金とは、事業運営に必要な費用を指します。運転資金の代表例は、原材料の仕入や、店舗や事務所の家賃、水道光熱費などです。なお、家賃や水道光熱費のうち営業開始前にかかる費用は「開業費(開業資金)」、営業開始後にかかる費用は「運転資金」と区別されます。

ただし、ここで指す「3ヵ月分の運転資金」とは一般的な目安であり、「事業安定までに時間を要する」「売掛金が多く資金回収までに時間がかかる」といった状況が見込まれる場合は、半年を目途に設定するなど、業種や事業の特性に応じて資本金を調整することが大切です。


最低資本金額が決まっている場合もある

業種によっては、会社設立の際に許認可が必要な場合があり、許認可を得るための要件として最低資本金額が設定されているケースがあります。

【許認可の要件として最低資本金額が設定されている主な業種】
●有料職業紹介業 500万円以上
●労働者派遣業 2,000万円以上
●一般建設業 500万円以上
●特定建設業 2,000万円以上
●貨物利用運送業(第一種) 300万円以上
●第1種旅行業 3,000万円
●第2種旅行業 700万円
●第3種旅行業 300万円
●地域限定旅行業 100万円

※最低資本金額の他にも、満たす必要のある要件がある場合があります。設立時は、自身の業種の詳細を確認してください。


顧客や取引相手からの見え方を考慮する

資本金額は、自社の安定性や財務状況を示すための一つの指標となります。
取引してもらうためには、相手となる企業に信用してもらう必要があるため、企業向けのサービスを提供する場合や、企業が仕入先となる場合は、資本金が多いほうがよいといえます。


融資の要件を確認する

資本金は、融資の受けやすさにも関係します。例えば、日本政策金融公庫の新創業融資制度では、1期目を終える前に融資を受けるとき「創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)を確認できること」が要件の一つとなっています。
今後の事業拡大のために融資が必要である場合は、必要な額の資本金を準備しておく必要があるでしょう。
上記のほかにも、資本金の大きさに応じて、税金や手数料の負担が変わる可能性があるため、確認しておくことが大切です。資本金額が影響する手数料や税金については後述します。

出資者を募って資本金を用意する方法

出資者を募って資本金を用意する方法

株式会社であれば株式を発行し、出資を受け付けることができます。設立者自身が株主となり自己資金を資本金に充てるケースもありますが、ここでは出資者を募る場合のステップを紹介します。


適切な株式の金額を決定する

株式の金額の決め方として、「資本金の額」と「出資可能な最低金額」を目安にする方法があります。例えば資本金の500万円を5人の株主が出資するとします。その際、出資できる金額が最低10万円の人がいれば、それに合わせて1株10万円以下にする、という決め方です。
それぞれの株主の出資額に合わせて、株式の数を計算するとわかりやすいですが、当初の株単価が高いと以後の増資が難しくなるリスクがあります。設立後の増資も視野に入れて適切な株式金額を設定します。


出資者を募る

設立時に出資者を募る場合、出資者は設立する会社の株式を取得し、会社設立後は株主となります。株の取得割合は原則出資金の割合に応じて決定します。設立者自身の意思で会社を動かしたいときは、設立者の株式の取得割合をある程度確保しておくことが望ましいでしょう。

大きな額を出資してもらうのは難しい場合に、少額の出資を多くの人から受けようと考えるかもしれませんが、出資者が増えると設立者の意思が通りづらくなるため注意が必要です。


資本金を振り込む

① 個人口座へ振り込む
設立前は、法人名義の口座はありません。そのため発起人の個人口座への振り込みを行います。発起人は払い込み用の口座を新設する必要はありません。
このとき、設立者が複数人の場合には、資本金の負担割合を確認できるように、誰が払い込みをしたのかがわかるよう「預け入れ」ではなく「振り込み」にする必要があります。

② 添付書類を準備する
通帳をコピーします。通帳は、振り込みが行われたページだけでなく「表紙」「裏表紙」も必要です。
インターネットバンキングを使用した場合は、取引画面を印刷します。また通常は通帳の表紙に記載されている銀行名と支店名、口座種別と口座番号、名義人などの情報を確認できる画面も印刷します。

③ 払込証明書を作成する
添付書類を参考に「払込証明書」を作成します。証明書には、次の項目を記載します。

●払込金額の総額
●払込があった株数
●1株あたりの払込金額
●日付(最後に資本金が払い込まれた日付)
●会社の所在地(本店)
●会社名(商号)
●代表取締役の氏名

設立時の資本金となる「出資額」は、定款(※)の絶対的登記事項でもあります。そのため、上述の「払込日」は定款認証日よりも後になるようにします。

※定款……会社の経営方針や基本的情報が記載されたもので、設立時に作成することが義務付けられている。


資本金と税金の関係

資本金とは

資本金の大きさに応じて、税金や手数料の負担が変わる可能性があるため、これらの関係性を確認しておくことが大切です。
ここでは、資本金額が影響する手数料や税金を紹介します。


定款の認証手数料

●支払うタイミング:定款認証の手続き時

株式会社を設立するときは、定款を認証する必要があります。このときに手数料が発生し、手数料は資本金額に応じて以下のように変わります。

資本金額
認証手数料
100万円未満
3万円
100万円以上300万円未満
4万円
300万円以上
5万円

なお、合同会社においては、認証は不要です。


登録免許税

●支払うタイミング:原則として登記時まで

設立登記においては登録免許税を支払います。株式会社の場合は「資本金額の0.7%」です。ただし、「資本金額の0.7%」で算出した額が15万円に満たないときは、15万円となります。
合同会社の場合も、同じく「資本金額の0.7%」で、算出した額が6万円に満たない場合は6万円となります。

主な納付方法は次の3種類とおりです。

1. 現金納付
あらかじめ銀行の窓口で、納付書と一緒に登録免許税額を現金納付する方法です。領収書が発行されるので、領収書を登記の申請書に貼り付けて登記所に提出します。

2. 収入印紙
郵便局や登記所で収入印紙を購入し、収入印紙貼付台紙に貼り付けて提出します。ただし、登録免許税額が3万円以下の場合のみ選択可能です。また、提出時には収入印紙の割印は不要です。

3. インターネットバンキングやATM
設立登記をオンライン申請する場合はインターネットバンキングや電子納付対応ATMでの電子納付が可能です。これらの方法で納付するときは、事前に金融機関での手続きが必要なであったり、申請書情報及び添付書面情報を登記・供託オンライン申請システムに送信した後に納付したりする仕様です。フローが上の2つと異なるので、利用の際は法務省のサイト等で詳細をご確認ください。


消費税

●支払うタイミング:毎年、事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内
(例:事業年度が1月1日から12月31日までであれば、納付期限は2月末日まで)

消費税は、認証手数料や登録免許税と異なり、毎年継続的に発生する税金です。

原則として課税取引を行えば消費税の納税義務が発生しますが、課税売上高が1,000万円以下の場合は納税義務の免除が可能です。この「課税売上高」は法人の場合、その事業年度の前々事業年度の課税売上高で判断します。
新たに設立された法人については、前々事業年度の実績がないので2期目は原則として消費税の納税義務が免除されます。ただし、資本金の額(または出資の金額)が、1,000万円以上の場合は納税義務が免除されません。該当する場合は、設立当初から消費税の納税額を意識して事業運営を行う必要があります。


消費税

●支払うタイミング:毎年、事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内

法人税は、利益が出る限りは、毎年継続的に納める税金です。
法人税率は資本金の額によって変わります。資本金1億円以下の普通法人は原則として、利益の額に応じて次の税率が適用されます。

・年800万円超の部分 23.2%
・年800万円以下の部分 原則15%

ただし、資本金1億円を超える法人は一律23.2%の税率が適用されます。


資本金を増やす(増資する)方法

資本金を増やす(増資する)方法

設立後も、自由に資本金を増やす(増資する)ことができます。資本金を増やすことで、前述したように融資の可能性や信用力を向上させたり、事業の柔軟性を高めたりすることができるため、設立後も機会があれば積極的に増資を検討しましょう。
主な増資方法は次のとおりです。


1.株式発行による出資を受ける

新たに株式を発行し、出資金を資本金に充てる方法で、次の3つの種類があります。

第三者割当増資
特定の第三者に新株を引き受けてもらう方法。取引先や関係のある金融機関、もしくは自社役員などを対象に行われることが多い。
株主割当増資
既存株主に新株を引き受けてもらう方法。既存株主が保有している株式の割合に応じて、新株引受の権利を与える。ただし、新株を引き受けるかは株主の任意となる。
公募増資
公募によって一般の投資家に新株を引き受けてもらう方法。知名度のある上場企業が取る方法で、非上場の会社では実施が難しい。

2.事業で得た利益を資本金にする

事業で得た利益を資本金に組み入れれば、新たな出資を行わずに資本金を増やせます。ただし、どの利益も資本金にできるわけではありません。資本金へ組み入れられるのは、以下をはじめとした所定の純資産のみです。

資本準備金
設立時や株式発行などにより株主が会社に払い込んだ資金のうち、資本金として計上されなかった金額。
利益準備金
株主への配当を実施する際の積立金。(会社法で、配当金の10分の1を積み立てることが義務付けられている。)
その他利益剰余金
利益準備金以外の任意の積立金。事業によって得られた利益の積立も該当する。ただし、事業年度の途中で生じた利益は、決算後に資本金へ組み込む必要がある。また、剰余金を組み入れる際は、株式総会での決議が必要。

3.現物出資を行う

現金以外の資産を出資してもらい増資することも可能です。その場合も出資者に株式を割り当てます。
出資できるのは有価証券や自動車、土地建物などの不動産などです。ただし、事業に必要なものであることが前提です。また、現物の価値は適切に評価しなければなりません。そのため、次のようなケースでは価値の妥当性を判断する検査役による調査が必要となります。

●現物出資する金額が500万円以上である
●現物出資により発行される株式数が発行済株式の10分の1を超える
●有価証券が市場価格を超える など


増資するときの注意点

増資するときの注意点

増資を行うときには、どのような点に注意が必要なのでしょうか。


登記時の注意点

増資すると、資本金の額や発行済株式の総数が変わります。どちらも定款の絶対的登記事項であるため、2週間以内に変更登記が必要です。
2週間を過ぎてしまっても登記は可能ですが、過料が科される可能性があります。
また、定款変更の登録免許税がかかります。登録免許税は「3万円」と「増資額×0.7%」のうち、どちらか高いほうの金額が適用されます。


新規可能株式数にも注意

資本金を増やす際は、定款に定められている発行可能株式総数を超過しないように注意します。発行可能株式総数も定款の絶対記載事項です。そのため、変更をする場合は原則として株主総会の特別決議で定款変更の決議をする必要があります。

変更の手間がかかるため、発行済株式数に留意しながら、資本金の増加を検討するとよいでしょう。設立当初から発行可能株式総数に余裕を持たせておくことが望ましいです。


まとめ 事業運営への影響を踏まえて資本金を決定しよう

資本金とは

会社法上は、資本金は1円からで問題ありませんが、十分な資本金を用意すれば、取引先からの信用が高まり、融資について有利に運びやすくなることもあります。また、そもそも一定以上資本金を用意しないと会社が設立できない業種もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
資本金は、会社設立後の事業運営においてリスクを減らすことにも繋がるため、設立後の事業運営までを考慮して必要な額の資本金を用意しましょう。


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