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先輩開業インタビュー

ベトナム好きが高じてベトナムサンドイッチ専門店をオープン。気がつけば、ママたちに優しい店ができていた

小田急線・祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩20分。複数の路線バスが通る通り沿いではありますが、決して交通の便がいいとは言えない場所にバインミー専門店「ăn di(アンディ)」はあります。
バインミーとはバゲット風のパンになますや肉・魚類を挟んだベトナム発祥のサンドイッチのこと。近年のエスニック料理ブームによって広く知られるようになりましたが、「ăn di」がオープンした2013年にはまだまだ認知度の低い食べ物でした。
さまざまな人が行き交う都心にあるわけでもなく、知名度もない料理を売っていた「ăn di」ですが、開業資金はたったの2年で回収したうえ、その後も売上を堅調に伸ばしています。一体何が成功の鍵となったのか。店主の島田孝子さんにうかがいました。

ようやく見つけた物件がたまたま病院と公園の前だった

出店の理由を説明する島田孝子さんの写真 ――まず、店名の「ăn di」の意味について教えてください。

島田:ベトナム語でănが食べる、diは行くを指します。
直訳すると「食べに行こう!」というニュアンスなのですが、私たちは願いを込めて日頃は「『食べに来て』という意味です」とお伝えしています。

――まさにわざわざ食べに足を運ばなければならない立地にあるわけですが、なぜこのような場所に出店されたのでしょう?

島田:はじめは都心部で物件を探したのですが、予算が合わず、たまたま検索で引っかかったのがこの場所だったんです。出店を考えていたころは自宅からの距離はあまり考慮していなかったのですが、調べてみるとそこそこ近かったので自転車で見に来てみました。それまでは都心のビルの中にテナントとして出店することを想定していたのですが、実際に現地に行ってみて、大きな公園が近くにある環境を目にしたら「ここしかない」と直感的に思いました。駅が遠いことが気にならないくらい、なんだか自然に癒やされてしまったんですね。

あと、物件が一軒家だったことも気に入りました。なんだかベトナムっぽいなぁと思って。一軒家の貸し物件はあまり多くないので、現地視察をしたら、なんとかここに出したいと考えていました。

――来客の見込みはあったのですか?

島田:お店の向かいに大きな病院があるのですが、そこを調べてみると、長期療養が必要なお子さんが入院や通院をしているところでした。周辺に飲食店が少なかったので、病院で働く方やケアに来られている保護者やお見舞いにこられた方のニーズはあるのかなと。テレビの撮影スタジオも近辺にあったので、そこの需要も見込めました。今は撤退してしまったのですが、開店当初は近所に全国チェーンのハンバーガーショップがあったんです。そこのマーケティングはしっかりしているので、その店がある場所なら「人は来る」と聞いていたことも頭の片隅にありました。

――実際に、お客さんの層は見込みどおりでしたか?

島田:そうですね。病院の中にはあまり付き添いの方が食べられる場所がないようで、患者のご家族と見受けられる方にイートインスペースをご利用いただいています。看病の合間に来られて、ちょっと息抜きをしていただくのにちょうどいいのだと思います。研究施設を併設した大きな病院なので、研究員の方などにも来ていただいています。海外出張などを多くこなされている方の中にはベトナムでバインミーを食べたことがあるという方がいらっしゃり、バインミーの知名度が低いうちからよくご利用いただいていました。スタジオで働かれている方々も時折来てくださっていますね。

バインミー専門店「ăn di(アンディ)」の外観の写真 ――立地選びは大成功でしたね。では開店当初から経営は順調なのですか?

島田:いえいえ。そもそもバインミーが知られていなかったので最初は苦労がありました。それでも、1回食べてもらえればリピーターは必ず現れると思っていたので、覚悟して続けました。開店して数年後にパクチーブームが起きたことはありがたかったですね。売上が上がったのは2階をイートインスペースとしてオープンさせてからです。開店当初から構想はあったものの、手が回らずオープンから3、4カ月はテイクアウトのみの販売でした。2階を改装してゆっくりしていただけるスペースを作ったところ、前述のようにくつろぎに来られるお客様が増え、売上につながっていきました。

人生を見つめ直し、バックパッカーとして海外を巡ったことが転機に

バインミー料理の写真 ――そもそも島田さんはなぜバインミーの専門店を作ろうと思われたのですか?開業までのヒストリーをお聞かせください。

島田:料理は好きだったのですが、昔から店を持とうと考えていたわけではありませんでした。20代の前半までは、内装工として働いていたんです。インテリアデザインの専門学校を卒業して、美術展などの内装を請け負っていました。ほぼ大工のような仕事です。実はこの技術は後々生きることになり、この店の内装は全部自分たちで作ったんですよ。

20代の半ばで人生に迷いが出てきて、このままの自分でいいのか悩み、とりあえず1年、オーストラリアにワーキングホリデーに行きました。そこで募集のあったベトナムレストランで働いたことが、ベトナム料理との出会いになったんです。生春巻の美味しさを知ったのはこのころですね。

ワーキングホリデーを終えるとそのまま半年ほどバックパッカーとしてアジア各地を巡りました。それで最後に行き着いたのがベトナム。当時、日本ではまだあまりベトナムの文化が知られていなかったので、たくさんの衝撃を受けました。バインミーはもちろん、オーストラリアのベトナムレストランにはなかった料理も含めて、何を食べても本当に美味しい。かわいい雑貨もたくさん売られていて、すっかりベトナムにハマってしまいました。

――それがベトナム料理の店を開くことにつながるのですね。

島田:そうですね。帰国するころには、次は料理の道へ進もうという意思がありました。海外を回っていたとき、知り合った人に寿司を巻いてあげたことがあるんです。学生時代にチェーンの寿司屋でアルバイトをしていたので見よう見まねでやってみたら上手に出来て。いろいろな人にとても面白がられて「料理って楽しい」と感じたことから、それまでの内装の業務から路線転換することにしました。

とはいえ、いきなり開業する技術も資金もありませんでしたから、さまざまな飲食店にアルバイトとして入ってキッチン業務の経験を積みました。カフェ、ビストロ、ベトナム料理店。ベトナム料理店は通算3店ほど経験し、うち2店は掛け持ちで働いていました。若い時期だからできたことだと思います。アルバイトをしながら調理師免許も取得しました。これは開業において必須ではないのですが、自分の自信になりますね。ケータリングやパーティへの出張サービスも始めました。自宅のキッチンで調理したものをお届けしたり、知り合いに声をかけてベトナム料理パーティを開いてもらいそこで料理を提供したり。実際に食べてもらうことで反応を見て、これが商売として成り立つのかを考えました。そんな生活を4〜5年続けたころ、雇われシェフとしてバインミーの店を持たないかという提案をいただきました。

――独立・開業 ではなく、一人のシェフとしてお店を任されることになったのですね。

島田:はい。けれど、オープンしてわずか2カ月後に東日本大震災があり・・・。経営が軌道に乗る前に、消費が冷え込んでしまいました。理由はそれだけではなくいくつかあったとは思うのですが、とにかく店は1年を待たずにクローズ。辛い経験でした。お世話になっていた業者の方々にも迷惑をかけてしまいました。

――それからなぜ自分で開業しようと思われたのですか?

島田:前回の失敗は、人の考えたプランにただ乗っかった自分がいけなかったんだと思ったんです。自分の責任で、自分の力でやってみたら違う形になったかもしれない。迷惑をかけてしまった業者のみなさんにお詫びするためにも、もう一度自分の力でイチからお店をやってみようと思いました。幸いにもレシピはある、取引業者もいる。あと足りないのは物件とお金だけでした。そこでいろいろな人に助けてもらい、開業の準備をしながらレストランのアルバイトをしたり、レシピ開発の仕事を請け負ったりしました。

内装は手作り、業態はテイクアウトのみのミニマムスタイルで開業

――開業にあたり資金はいくら用意しましたか?

島田:親戚から400万円を借り、同額を日本政策金融公庫に融資してもらいました。賃貸料、施工料、備品代でだいたい400万円ぐらいになりましたね。塗装を含めてリノベーションは自分たちで行なったので初期費用は低く抑えられ、親戚に借りたお金はそのまま手付かずで返すことができました。

――ベトナム料理全般ではなく、バインミーの店を開こうと思ったのはなぜですか?

島田:第一に私がバインミーを好きだったこと。元々パンが大好きでベトナム料理でもとくにハマったのがバインミーだったんです。それから、当時は日本にバインミーを売る店がほとんどなかったこと。ケータリングサービスをしているときに、みなさんから好評だったのもバインミーで、これならいけると思いました。実は開店当初はベトナムのいろいろな料理を知ってもらいたかったのでお惣菜の販売もしていたのですが、バインミーが売れるようになったので徐々にメニューを絞り、今は本当に専門店になりました。

バインミー専門店「ăn di(アンディ)」の2階の写真 ――開業時にはどんな苦労がありましたか?

島田:やっぱり最初の数カ月はなかなか人に来てもらえず、苦しかったですね。オープンから2カ月はなんだかんだで人は集まってきてくれるんですよ。けれど3カ月目にガクンと来客が減って。どうしようかなと思っていたころに、ようやく2階のイートインスペースの準備が整いました。それからはオープン時よりもお店が賑わうようになり、軌道に乗りました。店を切り盛りしながら2階の改装を進めていたころは体力的に一番キツかったですね。

――苦しい時期に持ちこたえられた理由は何だと思いますか?

島田:従業員は私のほかにアルバイトの方が一人いるだけだったんですよ。だからギリギリの売上でも持ちこたえることができました。その方は、最初にシェフをやることになった店でも働いてくれていた方で、高い時給は出せないとわかったうえで一緒に働いてくれました。とてもありがたかったです。

――イートインスペースをオープンして軌道に乗った後も、売上は堅調に伸びているようですがその要因は何だと考えていますか?

島田:目に付きやすいように看板をつくったり、SNSで拡散したりといった施策も打ちましたが、一番は病院内で口コミが広がったことだと思います。看病にこられているママさんたちが広めてくださり、じわじわと客数が増えていきました。おかげで返済は2年くらいで終わらせることができました。月々借金があるという状態が嫌だったので前倒して返済したんです。

ママたちを中心に採用。女性が働きやすい環境を整え、互助精神で店を支える

バインミー専門店「ăn di(アンディ)」での採用について話をする島田孝子さんの写真 ――人手不足に悩む飲食店は少なくありませんが、「ăn di」ではどのように人を採用していますか?

島田:オープンして間もないころは知人の手を借りていました。あちこちの飲食店で働いていたので、要領よくキッチン業務をこなせる仲間がたくさんいるんです。独立志向の高い人が多い職場ばかり経験してきたので、当時の仲間たちは今はそれぞれでお店を持っていますよ。お互い様ということで私が手伝いに行く日もあります。

オープン7年目の現在、「ăn di」では女性を中心にアルバイトを雇っています。ママさんが多く、うちの子を預かって面倒をみてもらうこともあり大変助けられています。幸い「ăn di」では募集をしていないときでも、子育て中のママさんが働けないかと相談に来てくれます。子どもを育てながら働くということは本当に大変。店の雰囲気や業務をなんとなく知っている方が「ここなら働けそう」と声をかけてくれるんです。

――島田さんにはお子さんがいらっしゃったのですね。

島田:実は今年出産をしたんです。目の前の病院で出産をしたので、ギリギリまで働いていました。そのため今年はこれまでのような働き方はできないのかなとは思っています。現在「ăn di」の営業時間は10時から16時です。これはママさんたちにとって働きやすい時間帯。オープン当初は18時まで営業していたのですが、だんだんと短くなっていきました。飲食店は夜営業をしてアルコールを出してこそ利益が出るという考え方もあるのですが、それでは自分もスタッフもあまりに大変。みんなが働きやすい営業時間に縮小しました。最近では、ママさんたちが充実感を持って働ける職場を維持していくことが目標の一つになっています。

焼き菓子やアーティチョーク茶の写真 ――営業時間もメニューも無理して拡大することはしないのですね。

島田:なんでもやりながら最適化してきた感じですね。なんでも柔軟に対応する。これは女性が多い職場ならではの特徴ではないでしょうか。売上の拡大は無理して図らない一方で、焼き菓子やアーティチョーク茶の販売をしているんですよ。焼き菓子は病院にちょっとした手土産として持っていくのにちょうどいいから需要があるんです。アーティチョーク茶はベトナムの文化を広げたいという私の思いでやっていますが、収益化できるのはまだまだこれから。ノンカフェインで、妊婦の方にも楽しめるものなのでぜひ広めたいなと思ってやっています。

――日々、独立してよかったと思うことはありますか?

島田:なんでも自分で決めて、自分でやれるということは本当にストレスが少ないです。好きなことを好きにできる。同じような仕事内容でも、雇われていた経験があるから余計にそう思いますね。これから独立・開業を考える方には、本当にその対象が好きかどうか、続けていて楽しいと思えるかどうかをよく考えてもらいたいと思います。私は「料理」と「ベトナム」が好きで、それが合致したのがこの仕事だったんです。本当に、出産前日にわざわざ別のベトナム料理店に行くほどにベトナム料理が大好き。だからどんな大変なことよりも「好き」の気持ちが上回るんです。好きだという気持ちがあれば、あとは走り続けながら考えればいい。「子どもを育てながら働くのは大変ですね」と言われることもありますが、何がどう大変なのかはやってみないとわからないですよね。好きな気持ちがあるのであれば、なんでもまずはやってみて最適化していくのがいいのかなと思います。

ăn di(アンディ)

東京都世田谷区砧3-4-2
03-3417-3399
営業時間 : 10時~16時(パンがなくなり次第終了)
定休日 : 木曜日
※取材時の情報です

http://www.andi-setagaya.com/

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