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スペシャルインタビュー

株式会社アクア(Build’s) 代表取締役 金子正裕── 「想い」のある本部を選ぶ『トップの肖像』

株式会社アクアが展開するビルクニーニングのフランチャイズ事業「Build’s(ビルズ)」。2014年のスタート以来、売上保証というユニークなモデルで着実に加盟店を増やし続けている。なぜそのようなモデルが可能なのか。そもそもどのような想いでフランチャイズ事業を立ち上げたのか。金子正裕社長に会社の創業からフランチャイズ事業立ち上げに至る経緯や想いについて、率直に語っていただきました。

アクア金子社長

営業力には自信がある。
売上保証のビジネスモデルで、
オーナーさんの人生を豊かにする
お手伝いをしていきたい。

売却が決まった事業を継承するカタチで独立・起業。メンバーに夢を持たせておいて、自分だけ抜けるのはズルいと思った。

金子社長インタビュー01

──金子社長が株式会社アクアを立ち上げたのは2006年のことです。起業前はどのような仕事をされていたのでしょうか?

以前は、大手清掃用品・サービス系のフランチャイズ加盟店運営を中心に幅広い商材を手がける会社で働いていました。最初は友達と一緒にアルバイトで入って、すぐに辞めるつもりだったんですが、結果的には17年も勤めることになりました(笑)。入社して5年後には清掃事業の本部長を任され、それから節電器を取り扱う環境エコロジー事業やIT関連事業、オフィスコーヒーサービス事業などの本部長を歴任し、長年にわたって集客・顧客開拓を担ってきました。ずっと営業一筋のキャリアですね。

──17年勤めた会社を辞め、起業されたのはなぜでしょうか?その経緯を教えていただけますか?

簡単に言うと、「任されていた事業が売却されることになった」ことがきっかけです。当時、新しい事業としてボトルウォーターサービスを展開していたのですが、あまりうまくいっておらず、その建て直しを任されていたんです。昔一緒にやっていたメンバーを集め、「必ず成功させて出世しよう」「自分たちの存在感を示そう」と発破をかけて、みんなで熱意を持って取り組んでいました。その結果、1年間で1000件の顧客を開拓。あと1年で黒字化できる。そんな見通しが立った矢先に告げられたのが、「事業を売却する」という決定でした。トップの判断なので仕方がないことでしたが、ショックは相当大きかったですね。一気に力が抜けました。一方で肩の荷が下りたというか、「もう一度同じ熱量で仕事に向き合えるか」ということに対し、それほど簡単に答えを出せずにいたのと、以前から考えていた独立をするのであれば、会社に迷惑をかけなくて済むこのタイミングしか無いと思い、次のミッションをもらう前に会社を離れようと決めたんです。

──会社からは引き止められなかったのでしょうか?

社長からは、新しいポジションとして身に余るような人事を提示されましたが、素直に拝命する気持ちにはなれませんでした。少し考える時間をくださいと伝え、私のことよりも真っ先にメンバーの人事を決めてほしいとお願いしました。それから数日間、この先どんな道に進むべきか自分なりに考え、一緒にやっていた主力メンバーにも相談しました。すると、思わぬ提案を受けたんです。「だったら、独立して続きを一緒にやりましょう!」と。それを聞いて、彼らもボトルウォーター事業に賭けていたんだなと痛感しました。独立して特にやりたいことがあったわけでもありませんし、メンバーに夢を持たせておいて、自分だけ抜けるのはズルいかなと。それで、社長に起業する意思を伝え、ボトルウォーター事業の売却先候補の1つとして検討してください、とお願いしたいんです。

──社長からはどんな言葉をかけられたんですか?

「その判断は間違っていないと思う」と言われました。背中を押された気がして、嬉しかったですね。その後、すぐに役員会で社内独立制度が整備され、3カ月後に新会社で事業を継承することが決まりました。

──その新会社がアクアですね。事業の滑り出しはいかがでしたか?

最初は水を保管するのに必要な倉庫を確保するお金が無く、仕入れ量に見合った規模の倉庫を借りる事も出来ず困っていました。そんな状況でしたが、メーカーから紹介を受けた同業の社長に相談をしたところ、その会社が利用している倉庫の一部を無料で間借りできることになったんです。そこで事務作業もできるようにと、事務所代わりとなるスペースと机や電話まで用意してくださって、そのおかげでなんとか事業を始めることができました。

──それは大きな後押しでしたね。

そうですね。その他にも、キャッシュフローの改善をアドバイスしてくれる方がいたり、私の営業力を見込んで営業コンサルティングの仕事を依頼してくれる方がいたりと、立ち上げ当初は本当に周りの人に助けていただきました。ボトルウォーター事業は、配達効率を考えるとエリアを広げて顧客を開拓するわけにもいかず、なかなか売上を拡大することが難しかったのですが、コンサルティグ事業で安定した売上を立てることができたため、設立1年目から赤字を出さずに済みました。

──苦労をしながらも、事業の歯車がうまく回り出したわけですね。その後の事業展開について教えてください。

設立から4年でボトルウォーター事業の顧客数が3000件を超え、事業として安定化する中で、地域密着のシナジー効果を狙って、2010年に「パパズワークス」という便利屋サービスを始めました。結論から言うと、このサービスを始めたのは時期尚早でしたが、この経験を通じて地域で信頼されるためには何が必要なのかということを学びましたね。2012年には不動産会社と提携したネット回線の紹介事業をスタートし、こちらは順調に成長を続けています。

本部が顧客を開拓して、オーナーに売上を保証する。営業力を活かしたフランチャイズモデルを構築。

金子社長インタビュー02

──いくつかの事業がカタチになる中で、2014年に立ち上げたのがビルクリーニングのフランチャイズ事業「Build’s」です。どのようなきっかけでスタートしたのでしょうか?

あるとき知り合いの不動産管理会社から相談を受けたんです。内容は「管理物件の清掃を委託している会社がつぶれることになったので、どうにかしてもらえないか?」というものでした。元々前の会社で大手清掃用品・サービス系の事業運営に関わっていましたし、日常清掃サービスの顧客開拓コンサルティングを手がけた経験もあったので、「何かやれそうだな」と感じました。ただ、その会社で働いている方々を採用して新しいビルクリーニング会社を始めたとしても、これまでと同じような賃金で効率よく働いてもらうだけになってしまう。そんなビジネスは楽しくないし、将来的な広がりもない。どうせやるなら違う方法でやってみようと考え、思いついたのがフランチャイズでした。清掃というルーチンワークになってしまいがちな労働集約的な仕事も、フランチャイズオーナーなら新しい事業として可能性を感じ、やりがいを持って続けてもらえるのではないかと考えたんです。

──とはいえ、フランチャイズとなると加盟店の開拓が必要です。自社で完結する事業とは異なりますが、不安はなかったのでしょうか?

もちろん、そう簡単なものだとは思っていませんでしたから、ビルクリーニング業界をはじめ、いろいろなフランチャイズビジネスを研究しました。フランチャイズで問題になるのはとてもシンプルなことで、加盟前のシミュレーションと実際の売上にギャップが出てしまうこと。「見込んでいた収入と違う」という状況が、フランチャイズオーナーとのトラブルにつながりやすいことがわかりました。だったら、私たちが顧客を開拓してオーナーに売上を保証するモデルだったら、勝算があるのではないか。すでに他社で売上保証モデルを確立し成功しているフランチャイズ本部もありましたから、そのやり方を真似てみようと思ったんです。ずっと営業やコンサルタントとして集客・顧客開拓に関わってきたので、仕事を取ってくることには自信がありましたし、大手のビルメンテナンス会社が手を出さない案件を開拓すれば絶対にいけるというイメージもありました。

──では、最初から自信があったわけですね?

いえいえ、もちろん不安でしたよ。知名度もない、信用もない、後ろ盾もない。そんな後発のフランチャイズブランドに自分の人生を賭けてくれるオーナーさんがいるのかなと。最初は、元々相談を受けた清掃会社に勤めていた方々を中心に加盟していただきましたが、当時はフランチャイズ本部として未熟なことも多く、今思うとよく我慢してくれたなという印象です。「連絡が来ない」「顧客情報の引き継ぎが足りない」「指導内容がコロコロ変わる」と、さまざまなご指摘をオーナーさんからいただきました。それでも大きなトラブルにはならなかったのは、「安定した売上を保証する」という約束は守っていたからだと思います。

──売上を保証するためには、フランチャイズ本部が顧客を開拓し、案件を用意しなくてはいけません。簡単ことではないと思いますが、なぜ「Build’s」では、それができるのでしょうか?

先ほどもお話ししたように、私はずっと営業畑でキャリアを積んできました。これまで培ってきた知見をもとに、営業のプロセスを体系化しているところが他社との違いかもしれません。こういうときはこうアプローチする、こういう場合にはこのツールを使う。営業の手順や方法が明確に決まっているので、営業スタッフ個々の能力差がほとんどないんです。それから、これは前の会社から引き継いだ社風なんですが、営業スタッフには「面倒なことは率先してやろう」と伝えています。たとえば、お客様に連絡すべきことがあれば、些細なことであっても必ず電話を1本入れる。そうした「ひと手間」を大切にしているんです。お客様とのコミュニケーションにおいて、面倒くさがらずに「もう一歩頑張れる」ところが、私たちの強みと言えるかもしれません。

「Build’s」全体で家族的な連帯感を大事にしたい。交流会を定期的に開き、オーナーさん同士の関係づくりもサポート。

金子社長インタビュー03

──2014年の立ち上げから、撤退した加盟店は1件もないと聞いています。売上保証のモデルを含め、本部とオーナーさんとの関係がうまくいっている証拠だと思いますが、加盟店との関係づくりで大切にしていることはありますか?

特別なことは何もありませんが、とにかく「良いフランチャイズ本部になりたい」という一心で、常にオーナーさんのために何ができるかを考え、全力で向き合っています。また、オーナーさんは1人でやっている方がほとんどですから、「Build’s」全体で家族的な連帯感を大事にしたいという想いも持っています。だから、同じ事業をやっている仲間として、オーナーさん同士が日常的にコミュニケーションを取れるように、定期的にオーナー交流会も開催しているんです。たまに「オーナーさんを交流させるのは良くないのでは?」と否定的なアドバイスをくれる方もいますが、仮にそうした繋がりが本部にとってマイナスになるようなら、本部のやり方にそもそも問題があるはずですし、オーナーさん同士が交流を深めて働きやすくなるほうが本部としてもメリットが大きいと考えています。

──金子社長ご自身が、オーナーさんとコミュニケーションをとることはあるんでしょうか?

必ず加盟前の最終面接で会うようにしています。この事業を一緒につくっていく想いを持っている方なのかを確かめながら、私自身がどんな人間なのかも知っていただく。お互いの人となりを知るための時間として大切にしています。皆さん、それぞれに人生のストーリーがあって、決意と覚悟を持って加盟してくださる方ばかりです。中には以前加盟していたフランチャイズで痛い目にあって、借金の返済に追われる中で「今度こそは」と私たちを信用して加盟を決断してくださった方もいます。話を聞いていると、思わず涙が出そうになることもありますよ。面接を終えるたびに責任の重さを感じますし、スタッフたちと共に「本気でやるぞ」と気持ちを引き締めています。

──加盟後も、オーナーさんと直接お会いする機会はありますか?

開業してから3カ月後に面談を行っています。この時期は悩みや不満が出てくる頃なので、「ギャップはないですか?」と確認し、問題点を吸い上げるようにしています。また、バーベキューなどのイベントで年2回くらい会う機会もあります。お酒を呑みながら「社長、これは良いフランチャイズだと思うよ」「最初は売上保証って本当かなと思っていたけど、今はこの仕組みに感謝しています」と直接声をかけていただくことも少なくありません。中にはスタッフの成長や頑張りを褒めてくださるオーナーさんもいて、本当に一緒に事業をつくっている感覚がありますね。

──今後、新たに取り組もうとしていることがあれば教えていただけますか?

オーナーさんとのコミュニケーションで言うと、今後は1年に1回面談をして、オーナーさんが今後どうなりたいのか、どうなるべきなのか、将来像を一緒に考える取り組みを始めます。日々忙しく働いていると目の前の業務に追われて、じっくりと先の展開を考える機会を持つことができないものです。だからこそ、本部のスタッフが事業ビジョンやライフプランを共有し、オーナーさんの未来を一緒につくっていくサポートをしていきたいと考えています。

──事業に関してはいかがでしょうか?今後の展望を教えてください。

現在、1カ月に3名程度のオーナーさんが開業していますが、この人数を5名以上に増やしたいと考えています。そのために、営業スタッフの採用を強化し、新しい営業拠点の展開も視野に入れています。売上保証のモデルを崩すわけにはいきませんから、しっかりと本部の体制を整えながら、着実に成長していきたいですね。また、既存の加盟店オーナーさんへのサポートとして、より多くの収入を得られるような新しいサービスやビジネスも模索していきます。「Build’s」の追加サービスにするのか、同じような売上保証モデルで新しい事業をつくるのかはわかりませんが、何らかのカタチでオーナーさんの収益源を増やすお手伝いをしたいと考えています。

──最後に、これから独立・開業しようと考えている方にアドバイスをお願いします。

私自身の経験からアドバイスするとしたら、自分にどんな事業が向いているのかを考えるときに、「やりたいこと」ではなく「できること」を考えたほうが良いということでしょうか。「やりたい」ことは年齢と共に移り変わりますし、そもそも「やりたいこと=できること」ではありませんから、仕事になるのかどうかもわかりません。一方、「できること」を仕事にすれば、間違いなく誰かの役に立つことができます。「Build’s」の場合、「清掃なら自分でもできる」という気持ちで始められるオーナーさんが多いんですが、皆さん口々におっしゃるのは、お客様から「キレイになって良かった」「ありがとう」と言われるのが嬉しいということ。すごくシンプルなやりがいですが、誰かの役に立っているということが、仕事を続けるモチベーションにつながっているそうです。人から感謝されて嬉しくない人はいません。自分のできることで、人から「ありがとう」と言われる仕事は何か。そうした軸で事業の可能性を検討するのも、1つの方法ではないでしょうか。

  

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金子正裕社長の「想い」をまとめると…

  • フランチャイズビジネスなら、清掃という労働集約的な仕事にも、オーナーとして新しい可能性を見出してもらえるのではと感じた
  • オーナーさんのために「安定した売上を保証する」という約束は守り続ける
  • 「Build’s」全体で家族的な連帯感を大事にしたい

挨拶を交わして早々「他の経営者さんと違って、私にはそんな立派な想いなんてないですよ」と謙遜しながらも取材の席についた金子社長。話を伺ってみると、案の定、その想いは熱く、十二分に「立派」でした。さまざまなエピソードを通じて感じたのは、人との縁を大事にされていること。とあるオーナーさんの話題になったときには、目にうっすらと涙を浮かべながら、その方の成功を喜ばれていました。人への「感謝」や「義理」を重んじる、まっすぐで世話好きな親分、という印象を受けました。

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