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先輩インタビュー
伝統ある日本酒業界でWEBメディア「SAKETIMES」がつかんだ新ビジネスとは?

世界中で日本のカルチャーが評価されている近年、日本酒もまた世界中でブームを巻き起こしています。そんな「世界に誇るSAKE文化を広く、深く伝えていく」をコンセプトに、2014年にスタートしたWEBメディアが、株式会社clearが運営する「SAKETIMES」です。代表者は生駒龍史さん。2年間の社会人経験を経て、2012年、クラウドファンディングを通じて他に例のなかった日本酒の定額制購入サービス「SAKELIFE」を成功に導き、日本酒ダイニングの共同運営を経て「SAKETIMES」を立ち上げました。生駒さんが築き上げてきた「日本酒」に特化したネット事業のアイデアは、教育機関やコンサルティング企業からのセミナー依頼が舞い込むほど注目を集めています。そんな若き日本酒イノベーターのオリジナリティーあふれる取り組みと、これまでの道のりについて話を聞きました。

酒屋の友人がきっかけで「日本酒を飲む文化」に可能性を感じた

cont01.jpg――生駒さんは、大学卒業後、サラリーマンとして2年間働かれ、その後独立。ECサイトおよびネット事業で独立していらっしゃいますね。

生駒:はい。最初はIT企業でシステムインテグレーターの営業でした。そのサラリーマン時代に、もっと自由に働ける仕事はないかな? と思ったのが独立開業のきっかけです。そういう意味では、志を高く持って……というよりは、自分の力を試したい、もっと違う生き方があるんじゃないか? という、自分探しに近い感覚。特別な資格もないし周りに起業家もいなかったので、どう起業していいかの方法も分からなかったんですが、運の良いことに2009年あたりは円高バブル。海外の品をネットオークションサイト「eBay」で買いつけ、国内で売るビジネスモデルが流行ってもいた。そこで、有名アウトドアブランドの商品を平行輸入販売するECサイトを立ち上げました。もともとは、そんな「うっかり起業」なんですよ(笑)。

――そのECサイトは1年ほどで辞められたそうですが、なぜでしょうか?

生駒:たまたま大学の同級生が、千葉県香取市小見川の500年続く老舗酒屋の25代目を継ぐことになり、「これからは酒もネットで売らなくてはならない時代だ」と、ECサイトをやっていた僕に協力を求めてきてくれたんです。でも、当時の僕はそもそも日本酒が好きではなかった。ところが、彼が持ってきた日本酒、熊本県酒造研究所の「香露」を飲んでみたら……めちゃめちゃ美味しかったんですね。彼がオススメしてくれた日本酒は全部美味しい。そこで興味を持ちまして、日本酒マーケットを調べてみたら、国内の市場規模は縮小傾向にありつつも海外はすごく伸びている。酒造メーカーの経営者もちょうど代替わりを始めていて、若いオーナーが増えてきていた。若い人が参入するチャンスがあり、ネット通販で売る兆しもあった。長い歴史のある「日本酒を飲む文化」は、きっとなくならない。日本酒業界の今後に非常に可能性を感じ、それまでのECサイトを友人に譲渡して、25歳で新たな日本酒EC事業を準備しました。

――そこで始められたのが「SAKELIFE」という日本酒の定額制購入サービスですね。それまで生駒さんがやられていたECとはシステムがまったく違いますが、このサービスでやっていこうと考えた理由は?

生駒:当時、北米でサブスクリプションコマース(定額制購入サービス)が爆発的にヒットしていました。定額制購入サービスとは、定額料金を支払うと厳選されたコーヒー豆やワインなどが定期的に届くECサービスなのですが、嗜好品の場合は数が多すぎて、素人には何を購入したらいいのか分かりにくい。だから、プロが厳選してオススメする品が届けば便利だと。日本酒でいえば、まさにその素人が僕でした。日本酒が美味しいことは分かりましたが、何を飲めばいいのかまでは分からない。だったら、時々の旬の日本酒……秋なら「ひやおろし」、春ならできたてのお酒といったように、プロが選んで届けてあげれば、もっと日本酒ファンが増えるだろうと思ったんです。そこで北米の成功例を参考に、日本酒のキュレーションをするなら、この定額制購入サービスが最適だし、日本でも成功しうると考えました。

――ご自身の経験から生まれたアイデアだったんですね。

生駒:僕が日本酒の素人だったのが功を奏したのだと思います。友人がきっかけで日本酒の美味しさを知り、もっと美味しい日本酒が飲みたいと思った経験と、詳しくなっていったプロセスをそのままお客さんにも体験していただきたかった。原動力は、自分の感動体験をもっと広めたいというエゴなんですよ(笑)。

――とはいえ2012年当時、「SAKELIFE」のような日本酒の会員制定期購入サービスというのは、国内に前例はなかったそうですね。どのように「SAKELIFE」を構築していかれたのですか?

生駒:まず、相方が酒屋だったので、最初から日本酒を売る準備がひととおり揃っていたことが恵まれていました。商品もあるし、倉庫もある、発送もすぐできる。あとは僕がコマースのサイトを立ち上げるだけでしたから、パートナー選びで苦労したことはなかったんです。残る課題は、集客だけなんですが、そこで目をつけたのが、2012年当時にスタートしたばかりのクラウドファンディング。目新しい集客システムは日本酒にとっても新しい試みですし、既存の日本酒ファン以外のITリテラシーの高い人たちにも日本酒の魅力を知ってもらえるチャンスだと思い、2011年に創業したばかりの「CAMPFIRE」で「SAKELIFE」サイト制作と開業に伴う資金調達を始めました。

「SAKELIFE」では個人のニーズに応えるサービスを提供

cont02.jpg ――定額制購入サービスもクラウドファンディングも、既存の日本酒販売にはないものをチョイスする先見の明があってのスタートでしたね。

生駒:新しいビジネスチャンスは、一般的には思いつかないというか選択肢に入らないものを、あえて選択肢に入れてトライしていくことが重要な考え方だと思うんです。実際、クラウドファンディングの反応も、驚くほど良かった。「CAMPFIRE」以外では何も告知しなかったんですが、79万円という当時にしてはとても高額の資金が集まりました。日本酒には興味があるが、どれを飲めばいいのか分からない人が多くいる。自分の予想はある程度正しかったんだなと。当時は「SAKELIFE」が初の日本酒クラウンドファンディングでしたが、今は相当、日本酒のプロジェクトが増えているようです。

――「SAKELIFE」を始めるにあたって、気を使ったことは何でしたか?

生駒:当時は僕らも定額制購入サービス、クラウドファンディング両方ともノウハウがないので、お客さんが参加しやすいカタチは模索しました。「SAKELIFE」は日本酒を好きになるきっかけになってほしいので、1万円を超えるような高額コースの設定は不可能。まずは手軽に支払える3000円コースから入ってもらい、より深く味わいたい方用にバラエティーに富んだ銘柄をキュレーションできる5000円コースを用意し、日本酒と同じく月替わりの酒器、美味しい飲み方や日本酒知識を提案するメルマガもセットにして、お得なパッケージ感を出しました。そこから、より高級志向の方がいれば随時、コースを増やすこともできるので。

――入門編としては入り込みやすいパッケージ感ですね。

生駒:じつは、日本酒はウィスキーやワインのような「ヴィンテージ」という概念が浸透しきっていないので、他の酒に比べて単価も利益率も安い薄利多売の商売になってしまう傾向にある。ほとんどの酒屋は、飲食店への大量卸しで利益を立てています。でもそれをB to Cでやるのはナンセンス。いかに付加価値をつけるかが重要だなと。そこでもう一つ、「SAKELIFE」ならではの付加価値として、日本酒銘柄を会員一人ひとりの味の好みに応じて、届けるシステムに変えたんです。会員になってもらった最初の3か月間は、おすすめの銘柄を全員に送り、感想を送ってくれた方はその好みをデータとして蓄積し、好みに合う味が届くようにしました。「SAKELIFE」の根本的なコンセプトは、「あなただけのとっておきの1本をお届けする」なので。

――かゆいところに手が届くサービスですね。なぜ、お客さまの好みに合わせようと考えたのしょうか?

生駒:今でこそECにもさまざまなカスタマーサービスが附属しますが、当時は「接客」という概念がなかったんです。でも、街の酒屋さんはそもそも地域密着で、顧客と密なコミュニケーションをしながらやってきた商売。それをWEBで再現する方法はないかと考えた結果ですね。僕が並行輸入をやっていた頃、海外のECサイトには、お客さまが質問すると担当者がすぐに返事をくれるチャットサービスがあり、とても助かりました。その経験を活かし、もう少し緩やかに個人のニーズに応えるシステムを考えた取り組みでした。

――会員を増やすために工夫したことは他にありましたか?

生駒:会員数が増えるきっかけはやはり、メディアで取り上げられたことですね。日本酒のネット通販を若い起業家がやったというだけでもキャッチーでしたので、さまざまな媒体で記事にしていただけた。ネットビジネスをやる上では、そういう伝播力はとても大事。ただ、「SAKELIFE」に興味を持っていただいても、いきなり月額制というのはハードルが高かった。日本酒好きには「待ってました!」のサービスでしたが、それはあくまで表層のお客さま。もっと潜在層を掘り起こすには、リアルな日本酒体験が必要だと思い、起業家の友人5人の共同出資の合同会社を作って、渋谷に日本酒ダイニング「sakeba」を開店し、うちの取扱商品をサンプリングできる場を設けました。

人情に厚い日本酒業界の魅力はWEBメディアで発信する

cont03.jpg ――たしかに、ネット通販でモノを探しても、実際にどんな商品か確かめてからのほうが買いやすいですからね。そこから生駒さんは、2014年になってこれまでの「SAKELIFE」と「sakeba」から手を引き、新たな事業に乗り出されましたね。どちらも経営は順調だったのになぜでしょうか?

生駒:おかげさまで「sakeba」の評判もよく、「SAKELIFE」会員数も増加していったんですが……もっと日本酒好きを掘り起こすために何ができるかを、ずっと考えていました。もっと広い層に「日本酒を飲んでみたい」と思わせるには、より入口を広くしなければならない。その入口ってなんだと考えると、日本酒の魅力について情報発信する場だなと。そこで次はWEBメディアだと思いましたし、ベンチャーをやるなら複数の経営に携わるのではなく、一つの会社に注力すべきだという持論もあって、「SAKETIMES」を立ち上げました。

――WEBメディアを作り、そこに集まった人たちでリアルなコミュニティーを作り、ブランディングが整ったところでネットビジネスに繋げるのが一般的かと思いますが、生駒さんはその逆を行かれた。新しいアプローチですね。

生駒:たしかにそうですね(笑)。ただ、日本酒業界は一つ大きな特徴がありまして、縁戚をとても大事にするんです。通販をやるにしても、飲食をやるにしても、ある流通経路を使うと他の流通は使いにくくなる。人情に厚い業界なんですよね。それはとてもいいことなのですが、僕は流通の棲み分けに関係なく、全部の魅力を伝えたかった。そうなると「売る」という選択肢を放棄せざるを得ないんです。それがメディアなら、全てを扱うことができるので必然的にWEBメディアを選ぶことになったという理由もあります。ちなみに今も「SAKELIFE」は相方だった酒屋「油忠」が運営を続けていますし、「sakeba」も存続していて、日本酒ファンに好評いただいています。

――ところで、今までは商品を売って生計を立ててきたわけですが、WEBメディアでマネタイズするのは、既存の媒体でも非常に苦労しているところです。ビジネスとして成り立たせるために、どうされたのですか?

生駒:それに関しては、2つ考えました。実は「SAKELIFE」をやったときに、自社でサブスクリプションサービスを簡単に始められるシステムを開発していて、そのシステムをシンガポールのネット通販ソリューションサービスの会社に、数百万円ほどで売却をしました。さらに日本政策金融公庫から400万円ほど借り入れ、「SAKETIMES」を立ち上げたんです。ただ、「SAKETIMES」をリリースしてからの1年間は、まったくマネタイズには着手せず、僕も含めた社員3~4人で蓄えを切り崩しながら運営していました。

――そして現在、「SAKETIMES」は日本最大級の日本酒専門メディアとしてユーザーを集め、酒蔵を対象としたWEBプロモーションを行う月額会員制サービス「SAKETIMESパートナーズ」でマネタイズのシステムも築かれていますが、そこに至るにはどういう考えで進めていったのでしょうか。

生駒:まず、最初のフェーズとなったノーマネタイズの約1年数か月は、いかに「SAKETIMES」をいい媒体にするかだけに注力しました。社員全員で日本酒にまつわる記事を書き、業界認知が高まって、ある程度ブランディングができたところで、知り合いの酒蔵さんにも声を掛けていただき、一緒に企画をやっていけるようになったんです。ただし、単発の案件は受けないと決めていました。「SAKETIMES」を安定して存続させつつ、酒蔵さんのファンを増やすためには、長期的かつ継続的な連載記事などの企画がいい。ならば、「SAKELIFE」で経験した月額課金制がベスト。こちらからは、記事制作と同時に読者のリアクションや読者層の丁寧な分析レポートを提出して、顧客獲得にいかしてもらっています。

――日本酒に興味ある人たちがどういう人たちで、どこにいるかを酒蔵にお伝えして。

生駒:はい。これまでの酒蔵さんは、試飲会を通じて地道にファンを増やすのが当たり前のやり方。メディアを通じて日本酒情報を受け取る潜在的ファン層、若い人たちの情報は、まったく収集されていなかったので、僕らのデータは非常に重宝されています。また、長年お付き合いのあるみなさんなので、WEB戦略以外に細かい相談にも、のらせていただいて、良好なパートナー関係を築いています。今ではパートナーの酒蔵さんも十数社と順調に増えていますし、今まで地道にコツコツ人間関係を築いてきたことが、実を結んでいるのだと思います。

――では今後、「SAKETIMES」をどう成長させていきたいですか?

生駒:一つは「SAKETIMESパートナー」を増やすことですね。そのためには、「SAKETIMES」というメディアのブランド価値を一層上げていくよう、いい記事作りと日本酒にまつわる情報発信を広く、深くの両面から継続した日本酒ポータルサイトにしたいです。そしてより強固で海外にも通じる日本酒情報の流通を作りたい。そのさらなる一歩として今、「SAKETIMES」英語版を準備していて、間もなくリリースする予定です。海外でも日本酒ブームの兆しを見せており、国内でも日本酒を見直す人が増えている。僕らが先駆けとなって、世界的な日本酒情報のインフラが作れるよう、頑張っていきたいです。

SAKEカルチャーを世界に広げる日本酒WEBメディア「SAKETIMES」

http://jp.sake-times.com/

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