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先輩開業インタビュー
育児をしながら独立・開業。元SEの自宅料理教室が成功した理由とは

家賃も通勤時間もかからず、手軽に始められる「自宅教室」は、最小限の投資で自らのスキルを活かせる仕事として、近年育児中の母親などからも注目を集めています。しかし、開業しやすいということは、それだけライバルも多く、無数にある教室から「選ばれる」ことは簡単ではありません。

2012年にスタートした「食育教室 おやこキッチン」は、親子一緒にレッスンを受けられ、2歳児から参加できる数少ない料理教室として評判です。主宰する古谷真知子さんは2児の母であり、もともとシステムエンジニア(SE)として企業で働いていた異色の経歴の持ち主。料理のプロだったわけでもない彼女は、どのようにして開業し、人気教室をつくり上げたのでしょうか。自宅兼教室であるマンションに伺いました。

競合ひしめく自宅料理教室。「3歳以下の子ども連れ」という隙間に目をつけた

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――もともと企業でSEをされていたそうですが、どのような経緯で料理教室を開業することになったのでしょうか?

古谷:結婚、妊娠を機に会社を退職したのですが、前職はインターバルができてしまうと、知識的にも、技術的にも、戻ることが難しい職場だったんです。それに、徹夜や残業も多かったので、体力的に子どもを見ながらSEを続けることは厳しいと判断しました。

夫はフルタイムで仕事をしているので、当分は専業主婦をやろうと思っていましたが、だんだん子どもが大きくなって手が離れてきたら、何かやりたいなという気持ちが出てきて、下の娘が幼稚園に入園する前に教室を始めました。

――他の仕事に再就職することは考えなかったのですか?

古谷:保育園に子どもを預けたかったのですが、待機児童が多い地域だったので無理でした。それに、一度退職して仕事にブランクがあるので、就職活動もままならなかった。でもちょうどその頃、自宅で幼児教室を始めた知り合いがいて、そういう選択肢もあるんだと気づいたんです。

SEのときから週末起業に興味があって、少しだけ勉強していたんですけど、そのとき読んだ本のなかに「自分の人生で、いちばんお金を使ったことで起業するといい」と書いてありました。私はバイクに乗ったり、スキューバダイビングしたりと、お金のかかる趣味もしていたんですけど、いちばん多く使ったのは食べることだなと。もともとシステムコンサルタントを目指すためにSEになったので、人に何か説明するのは得意なほうだったのもあり、料理教室を開くことを現実的に検討するようになりました。

――もともと料理は得意だったんですか?

古谷:お店で修行した経験などはありませんが、両親が共働きで、中学生の頃から夕飯の支度を担当していたこともあり、子どもの頃から料理はできるほうでした。スーパーやコンビニでお惣菜を買うよりは、金額と味を考えたら自分でつくったほうが安くておいしいと思っていました。とはいえ、自分の料理の腕は平均的な主婦のレベルだとも思っていたんです。でも、子どもが生まれてから知り合いのお母さんと話していたら、じつはそうでもないということと、食に対する考え方が異なることに気づいたんです。

もちろん「疲れたからお惣菜を買う」という考えを否定するわけではありません。私も時々利用します。でも、あまり頻繁だと経済的ではありませんし、味つけが濃かったり、油分が多かったりするお惣菜だと、体に負担がかかります。意外とシンプルで簡単なものでも充分おいしく食べられるお料理になるということを、お母さん、お父さん方に知ってほしいと思ったんです。私自身も子どもが生まれてから、食べるものにより気をつけるようになりました。

だから子どもと一緒にお料理の体験ができて、お母さんたちの食の悩みに寄り添った家庭料理の教室を始めたら、喜んでもらえるんじゃないかと思ったんです。ただの親子料理教室ではなく、「食育教室」と名乗っているのはそのためです。

――幼い子どもでも参加可能としたのはなぜですか?

古谷:私の上の子が小さいときに気がついたのですが、3歳以下の子どもと一緒に料理を習えるところがなかったんです。小さい頃から料理を教えたり、見せたり、触らせたりすることって、すごく大事だと思うのですが、大手の料理教室は4~5歳からしか参加できないところがほとんどなんです。子どもが参加可能であっても、ある程度の意思疎通ができることと、「先生の指示を聞ける」年齢になっているのが前提なんですね。そこは差別化できるポイントではないかと考えました。

当教室では、料理に対する好奇心が出てくる2歳頃から受け入れていて、2歳前でも自分で立って机上での作業ができるなら、参加OKにしています。赤ちゃん連れの場合でも、私やお客さまが目の届く居場所を確保できるので、連れてきていいですよっていうスタンスにしたんです。サービスレベルを落とさず自分の注意が及ぶ規模にしたいので、レッスンは1回4組までの少人数でやっています。

――スタジオを借りずに自宅にしたのには、何か理由があるのでしょうか?

古谷:外のスタジオを借りると、調理台の高さも子どもが使う前提ではないので、踏み台を用意しないといけないですし、場所代もかかります。

また、自宅なら、もし包丁で手を切っちゃっても、すぐ消毒して絆創膏を貼ってあげられます。子どもは何をするかわかりませんが、たとえば食材をこぼしたり、落としたりしてしまっても、たいていのことに対応できます。外で同じようにしようと思ったら、あらゆるトラブルに対応するための道具を用意しなければいけないので、引越しするくらいの荷物になってしまいます(笑)。そういった意味でも、小さな子どもと一緒に料理するには、どうしても外では難しいんです。

初期投資額は約50万円、宣伝は口コミやSNS。自宅だからこそ低コストで始められる

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――開業にあたっては、どんな準備をされたんですか?

古谷:ただふわっと始めても生徒さんは集まらないので、知識と技術があることを証明するために、食育インストラクターと食品衛生責任者の資格を取りました。そういった勉強と並行して、食器とか、子ども用の包丁とか、道具類を揃えて準備をしていました。

――初期費用はどのくらいかかりましたか?

古谷:2つの資格取得で6万円くらい。食器類や調理器具を揃えるのに10万円くらい。そこから随時、IHの卓上コンロなど必要になったものを買い足したり、キッズキッチンインストラクターの資格を取得したりしているので、トータルとしては40~50万円かなと思います。

――料理教室を開業するには、自治体や保健所へ申請が必要となるのでしょうか?

古谷:保健所に聞いてみたら、「教えるだけであれば申請はいりません。」といった回答でした。本人がつくったものを本人が食べるなら問題ないそうです。それに、調理師の資格も不要とのことでした。あと、念のため大家さんからの了承は取りました。

――集客や宣伝はどのように行いましたか?

古谷:開業準備段階からブログを開設して、情報発信をしていました。あとは、お友達に「料理教室を始めたのでよかったら」と声をかけて来てもらいました。チラシもつくりましたが、なかなか置いてくれるところがないし、あまり効果もありませんでしたね。開講当初はぜんぜん予約が入りませんでしたが、料理教室検索サイトに登録をしたところ、少しずつ予約が増えていっていまもそこからコンスタントにご予約があります。SEをしていたからか、「教え方が論理的でわかりやすい」と好評をいただくこともありました。

――SNSも活用されていますか?

古谷:Facebookページとブログがメインで、Twitter、Instagram、LINE@もやっています。教室のウェブサイトの作成や運営、SNSの活用などは、前職で培った知識と技術があったため、抵抗なく取り組むことができました。

――料理の写真は撮り方が難しいと思いますが、気をつけていることはありますか?

古谷:ブログやSNSにおいしそうな写真は必須ですね。料理写真の撮り方の本を出されている先生のレッスンに何度か行きました。広告宣伝費は基本ゼロなんですが、これは集客とスキルアップのための投資です。

パーティーシーズンは集客アップ。季節によって予約数が大きく変動する理由

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――季節によって生徒数が変動することはあるのでしょうか?

古谷:はい。特に4月は、新年度が始まって親子ともにバタバタしているので予約が入りにくく、5~6月から少しずつ予約が入って、7~8月は夏休みなので予約が埋まりやすくなります。9~10月になると少し客足が鈍って、10~11月はパーティーシーズンになるので、ハロウィン料理など、おもてなし料理のレッスンを開くと、多くの方にご予約していただけます。

――意外と季節に左右されやすいんですね。

古谷:そうですね。旬の食材を使った季節のメニューに加えて行事食のレッスンもやっているので、特に左右されやすいのかもしれません。たとえばひな祭りのちらし寿司と桜もちをつくったり、クリスマスのおもてなし料理をしたり。いまはSNSで行事の様子をアップされる方も多いので、行事食は予約が埋まりやすいようです。

新しい取り組みとしては、今年から6回完結のコースレッスンも始めました。短い期間で集中して学べるため、お客さまにとっても通いやすいようで、たくさんの予約をいただいています。

――レッスンで教えているメニューは毎年変えているんですか?

古谷:当教室は、未就園児のお子さんを持つお母さん、お父さんがメインのターゲットなので、年齢が上がって幼稚園や小学校に入ると、子どもが忙しくなり、通い続けるのが難しくなってしまうんです。そのため、基本的にお客さまはほぼ入れ替えになるので、レッスンのメニューはあまり変えていません。

もちろん毎年新しい生徒さんを募集しなければいけないのは、リスクでもありますが、このようなシステムにすることで、新メニュー開発の負担は軽くなっています。

――レシピづくりにおける差別化で意識されていることはありますか?

古谷:基本的に「つくりやすさ」を重視しています。小さい子どもがいて、バタバタしながら料理するのに、大さじ1と1 / 2とか計っていられないので、砂糖とみりんとしょうゆを同量ずつ入れればOKですとか、シンプルで覚えやすいレシピにこだわっています。あとは、子どもがつくっても、ちゃんとおいしいと感じられるレシピづくりをしています。

――食材の仕入れはどこでされていますか?

古谷:普通のスーパーで買っています。特別なところから仕入れたり、無農薬野菜を使ったりしても、ご家庭でつくったときに「同じ食材じゃなかったからおいしくできなかった」と思われてしまうと意味がないので。スーパーで普通に売っているような食材でも、おいしくできることが、当教室の付加価値だと思っています。

――価格設定をするときは、食材のコストなども計算されているんですか?

古谷:ざっくりですが、計算しています。そのときどきでスーパーの値段も違うので、特売で安く買えると利益は増えますし、生鮮食品はタイミングが悪いと仕入れ値が上がってしまいます。鮮度のよいものを仕入れるためには仕方ないことです。

業務スーパーに行ったり、冷凍のものを使ったり、安くあげる方法はいくらでもありますが、どこまでやるかは、理念や方針次第だと思います。私はそこまでして利益を増やそうとは思わないので、あくまで普通に買えるものを基準に、食材を選んでいます。

一人でやっているからこそ、お客さまの急病やドタキャンにも臨機応変な対応ができる

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――レッスンの価格設定は、何を基準に決められたんですか?

古谷:2歳でも参加できて、赤ちゃん連れで通える料理教室って、競合がほとんどいないので、参考になる相場がないんです。最初は実績もなかったので、食材の原価+αに設定していました。いまはレッスンによっても異なりますが、5,000円~6000円くらいに価格設定しています。

――レッスンはどのくらいのペースで開催されているんですか?

古谷:いまは週1~2回ほどです。最近は、おやこキッチンのブログやウェブサイトをご覧になった方からの依頼でWEBメディアに記事を書いたり、お客さまからの要望で、座学のみの食育講座をやったりすることもあります。ほかには築地市場の見学に行くなど、小学生くらいのお子さんを持つご家庭でも楽しめるようなイベントを実施することもありますね。

――自宅教室はお客さまとの距離が近いと思いますが、コミュニケーションで苦労した点はありましたか?

古谷:やはりご予約のキャンセルです。レッスン開始30分前に連絡が来るとか、困ることもあります。ただ、子どもの具合が悪くてとか、ご自分が体調不良で、みたいなときは、事情はわかりますし、私一人でやっているので、臨機応変に対処しています。

あとは、メールでレッスンについてお問い合わせいただいた際、こちらから返信してから音沙汰がなくなってしまうことはたまにあります。電話番号が書いてあればこちらからお電話するのですが、メールアドレスのみの場合はそれ以上連絡を取る手段がないので、少し困りますね。

――自宅教室を続けてきたなかで、いちばん大変だったことはなんですか?

古谷:息子がインフルエンザで寝込んだときですね。さすがに生徒さんに感染させるわけにはいかないので、そのときは中止にさせていただきました。自分の体調不良で休んだことは一度もないんですけど、家族の健康管理も主婦の仕事なので、そこは気をつけなければいけないなと思います。

育児をしながら仕事の実績を積める。女性の再就職にも役立つ自宅教室

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――妊娠を機に退職した女性は、再就職が難しいこともありますが、自宅教室はひとつの解決策になるように思いました。実際はいかがでしょう?

古谷:おっしゃる通りだと思います。自宅教室なら、子どもの学校行事などにも時間の融通がきかせやすいし、もし子育てが終わって再就職するときも、教室を経営していた実績は評価されると思います。

私もいずれ就職が必要であれば、食品メーカーや食べ物関係の出版社、食育関係の会社の門を叩こうかなと考えています。自宅教室は、子どもの進学など、家族のライフステージの変化に合わせて、自分の働き方を柔軟に変更しやすい仕事だと思います。

――開業以前と以後で、育児と仕事のバランスは変わりましたか?

古谷:基本は平日の子どもたちが学校に行っている時間にレッスンをやっているので、大きくバランスが変わったとは思っていません。子どもたちが帰ってくるまでに、後片付けが終わらなくて焦ることはありますけど(笑)。

――実際、開業してよかったなと思うことは?

古谷:いろいろありますが、まず収入があることですね(笑)。自宅教室なら、育児と両立しながらある程度の収入が得られ、自分の好きなことが自由にできる。子どもにお金がかかるので、自由に使えるお金が少しでも確保できることは、自宅教室を続けていられるモチベーションとしてはかなり大きいと思います。

専業主婦が辛いのは、定期的な収入がないという経済的な問題だけでなく、家族以外の大人と何日も話していなかったり、社会とのつながりが断たれてしまったりという精神的な問題も大きいと思うんです。でも、教室を運営していることで、レッスンを通してお客さまとコミュニケーションを取ったり、新たに仕事をもらえたりと、社会とのつながりをしっかり感じられます。その点においても、開業してよかったと思います。

――今後の展望や目標は、どのようにお考えですか?

古谷:子どもも大きくなったので、レッスンの数はいまより増やそうと思っています。それと、レシピや食育講座で話した内容など、これまでの活動を本にまとめることを、ひとつの目標にしています。あとは、子どもがさらに成長したら、教室を縮小して外で働くかもしれないですし、逆に規模を大きくして、専用スタジオをつくる可能性もゼロではないと思っています。そのときそのときで最適な選択ができるように、選択肢は多くしておきたいですね。

食育教室 おやこキッチン

東京都台東区
※自宅教室のため住所は非公開。レッスン、予約は要ウェブサイト確認
※取材時点の情報です

http://oyakokitchen.com/

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