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先輩開業インタビュー
40代で外資系企業をリストラ。未経験のビストロ開業で学んだ、飲食ビジネス

異業種、しかもサラリーマンからの独立・開業にはさまざまなケースがあります。東京・西麻布の人気レストラン「ビストロアンバロン」のオーナー・両角(もろずみ)太郎さんは、東京大学を卒業後、MBA留学を経てゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなどの外資系金融企業でキャリアアップを続け、45歳のときに飲食業界へと転身した経歴の持ち主です。
MBAや前職時に培ったマーケティング、経営コンサルティングのスキルをいかしてオープンした「ビストロアンバロン」は、5年連続で『ミシュランガイド』に掲載される人気店になりました。しかし、両角さんは、「ずっと試行錯誤の連続。いまも悩みながらやっているんです」と語ります。40代でセカンドライフ、独立開業を考えたときに直面する苦労と、やりがいについてうかがいました。

40代半ばでリストラに……。第二の人生を考えたとき、大好きな飲食に関わりたいと思った

――両角さんは、金融業界で輝かしいキャリアを積まれた後、2009年に「ビストロアンバロン」をオープンさせました。まったくの異業種に転身されたきっかけはなんでしたか?

両角:直接のきっかけは、2008年秋のリーマンショックで外資系金融企業をリストラされたこと。当時、ぼくは40代半ばでした。外資系金融では45〜50歳がキャリアのゴールといわれており、セカンドライフとして起業する人は多くいました。ぼくは、そもそも金融が全然好きではなかったので(笑)、これからの20年を考えて、異業種で起業しようと思いました。

――数ある選択肢のなかで、なぜ飲食店の開業を選んだのですか?

両角:起業するうえで選択肢は3つあったんです。1つはコンサルタント業。実際、休職期間中に3軒ほど、レストランの経営コンサルをやりました。でも、零細店はお金がないのでビジネスにならないし、大手のお店は大手コンサルが対応してしまううえに、クライアントとして面白みがない。

2つ目は、レストランライター。美味しいものを飲み食いするのが大好きで、ミシュランなどを活用して海外でも食べ歩きを続けていましたし、嗅覚にも自信がある。それに、「チーズプロフェッショナル」や「ワインエキスパート」の資格も持っていました。でもぼくはすぐ本音を言ってしまいますから(笑)、プロとしては向いていない。

そして3つ目に考えたのが、飲食店の経営です。これまでの食べ手としての経験をいかせて大好きな飲食にも関わることができて、なによりもいちばん面白く仕事ができる現場。そこで、ワインを軸とした飲食店の経営をしようという考えにたどり着きました。

――周りの人は異業種の開業に驚かれたのでは?

両角:そうですね。飲食店経営はぼくのような経歴の人間には難しい世界だと、飲食業の先輩たちに止められました。でもぼくは、飲食店経営にしっかりとしたマーケティングを持ち込もうと考えていました。だから、友人も納得するような「ビジネスを成功させるための10年シナリオ」を、完璧な事業計画書に落とし込んだんですよ。前職の経験から、プレゼン資料をつくるのは得意ですから(笑)。

綿密な事業計画とともにオープン。しかし、5か月で客足が止まった

――外資系金融を退職されて約1年後の、2009年12月に「ビストロアンバロン」を開店されています。飲食未経験者としては、ずいぶん短期間で準備を進められましたね。

両角:ビジネスにスピード感はとても大切なので、1年でのオープンは遅いくらいですよ。先ほどお話しした綿密な事業計画は、退職から約半年後には完成していました。お店のコンセプトは「自分がもっとも行きたい店」。ワインバーとしても楽しめるカジュアルなフレンチレストランを想定していたので、それを実現させるために、2か月間、敬愛する恵比寿のレストラン「ル・リオン」で修行をさせてもらいながら、開業に向けて店舗探しなどをしていました。

――最初から現在の西麻布で開店しようと思われていたんですか?

両角:いえ、最初は深夜までJRの電車が走っていて、街の雰囲気や客層も合いそうな恵比寿を考えていました。でも恵比寿の賃料は破格に高い。表参道なども探しましたが、イメージに合う物件がなかなかなく、西麻布でやっと理想の物件にたどり着いたんです。ほかと比べると西麻布は値段も抑えめでしたし、もともと西麻布に住んでいたのでなじみもありました。そして内装や調度品にもこだわりました。店構えも、高い天井があり、テラス席があり……と、理想のビストロを具現化しています。

――実際に開店していかがでしたか?

両角:綿密な事業計画書をもとに開店したものの、いざ蓋を開けてみると、思惑通りにはまったくいきませんでしたね……。3年に1店舗くらいずつ増やして、それぞれの現場はスタッフに任せようとイメージしていたんですが、まさに絵に描いた餅でした。

会社員時代の人脈を通じて約3,000人に案内状を出したので、開店から4か月目まではたくさんお客さんがいらしてくれた。当時は、テーブル32席、カウンター9席、テラス席を、厨房4名、ホールを3名で回していましたが、それでもてんてこ舞いなくらい繁盛していました。ところが、5か月目からぱったり足が止まってしまい、そこから厳しい状況が1年半続いたんです。

――それはなぜでしょうか?

両角:そもそもこの店は、Tシャツと短パン、サンダルで気軽に行けるワインとフランス料理の店をめざしていました。そのおかげで幅広い方々に来ていただきましたが、一度は足を運んでもらえても、「フレンチ好き」ではないかぎり、リピーターにはなかなかなってもらえませんでした。

ワインリストも充実させて、ぼく好みのマニアックなワインも用意していましたが、皆さんが飲みたいのはやはり有名どころ。同じ嗜好のお客さまは、そうそういなかったんですよ(苦笑)。個人資産を切り崩しながら店の経営を続けていくうちに、2011年に東日本大震災が起こり、ますます客足が遠のいてしまいました。

グルメサイトなどのプロモーションは、店の特性に合わせて使わないと効果を得られない

――そこから、どのように顧客増を図ったのですか?

両角:好転できたきっかけは、メールマガジンとFacebookでした。メルマガは、3度ご来店くださった方に送るようにしていたんですが、それを1回でも来てくださった方全員に、毎月送るようにしたんです。すると、以前来られていた方がうちを思い出して、また来店されるようになりました。

そして内容も、新メニューなどの情報だけではつまらないので、ワインの蘊蓄など読み物として喜んでもらえる内容を心掛けた。すると、それを楽しみにしてくれるお客さまが増え、来店につながりました。その読み物の評判が高じて、いまはワイングラスメーカーのリーデルのホームページで「脱サラソムリエが本音で語るレストラン利用術」という連載をやらせていただくようにもなりました。

――Facebookでは、どういう活動を?

両角:お店のイメージ作りと顧客の発掘です。お店で提供している料理のほかに、日々の賄いの写真をアップしました。「賄いが美味しい店は、料理も美味しいだろう」というイメージができ、興味を持ってくださるお客さまが増えたと思います。実際、お客さまとのFacebookでのやり取りから、賄いを食べる企画『賄いナイト』も生まれました。

顧客の発掘については、「友人の友人」に対する情報発信が効果的でした。Facebookでは、「いいね!」を押されると友人の友人にも投稿が拡散されますから、顧客が広がりましたね。さらに、社会人になってから中高一貫校時代の同級生や大学時代の仲間とはほぼ疎遠になっていたのですが、Facebookを通じてつながったことをきっかけに、店に来てくれるようになったんです。彼らのおかげで、お店を軌道に乗せられました。

大学の仲間もそうですし、会社員時代からおつき合いのある企業の皆さんもそうですが、やはり大切にすべきは「人」だなと実感します。そういう経緯もあって、自分を支えてくれている方々がいるからこそ店を続けていけるのだという感謝の気持ちが、年々高まっていますね。

――飲食店は顧客をいかに掴むかが大切なんですね。

両角: ぼくも当初は、飲食店のプロモーションとして一般的なフリーペーパーや大手グルメサイトなどを試してみましたが、カジュアルなフレンチというコンセプトが一般的でなかったのか、ほぼ効果がなかった。一方で、ぼくの特殊な経歴に注目して、取材に来てくださったメディアが多くあり、ありがたいことに店の認知を高めることができました。

マーケティングにはProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の「4P」が戦略として大切といわれます。でもそれは、お客さまと店の特性に合わせて活用しなければ意味がないということが、よくわかりましたね。

『ミシュランガイド』でビブグルマンを獲得。常連さんが店を自慢に思ってくれることが最大のメリット

――2018年で5年連続『ミシュランガイド』に掲載されたことの影響はいかがですか?

両角:じつはそれも、顧客増加には影響していません(苦笑)。うちの店は、90%がリピーターのお客さまで、残りの10%のご新規の方も、ほとんどが既存のお客さまのご紹介なんです。なので、ミシュランへの掲載によって、顧客の皆さんがより満足し、自慢していただけるというのが、いちばんのメリットですね。

『ミシュランガイド』は、星の数による評価のほかに、安くて美味しい店に与えられるビブグルマンという称号があります。うちはビブグルマンとして紹介されており、店のサービスや内外装などを含めた快適度が高いことを表す赤のフォークとスプーンのマークがついている。さらに「興味深いワイン」が飲めることを示したワインマークもいただけた。非常にうれしいですね。

――ワインへのこだわり、味だけでなく、店がいかに魅力的かを評価されているわけですからね。

両角:お客さまに「美味しかった」よりも、「楽しかった」と言っていただくことをめざしています。ただ食事やお酒を飲みに来ていただくだけでなく、お客さまの琴線に触れる「記憶に残るサービス」を提供したい。なので、メニューの説明を時間が許す限り丁寧に行っているほか、お客さまとのトークも積極的にさせてもらい、暑苦しいくらいのサービスを心掛けています。うるさいと思われる方もいらっしゃるとは思いますが(笑)。

幸せに過ごしながらも、金融業時代と同じくらいのプレッシャーのなかで毎日闘っている

――そんな両角さんの魅力に惹かれて、皆さんリピーターになられるんでしょうね。そしてもう一つ、両角さんは「婚活コンサルタント」としてもメディアで注目を浴びていますが、それもお店の顧客獲得を見据えた施策だったのでしょうか?

両角:いえ、婚活パーティーは、お客さまから「誰かいい人はいない?」という相談があって、自然発生的に始めたものですね。そこから、私自身の婚活が記事になったことをきっかけに、婚活コンサルティングをスタートさせました。どちらも、婚活市場の客観的な定量分析とお客さまに対する定性分析を元に、解決策を提供しています。口コミもあり、徐々に相談者が増えていきました。

すでに3組の結婚カップルができるなど成果はあるのですが、婚活が話題となったため、常連のお客さまに「店の雰囲気が変わった」と言われてしまった。いま婚活情報は婚活コンサル専用のFacebookページに集約し、実際の面談はビストロ営業の時間外に行うなど、切り分けるようにしています。ただ、婚活コンサルをきっかけに新しいお客さまも増えたので、うまくバランスをとっていければいいですね。

――そうした両角さんのさまざまな努力が、「ビストロアンバロン」の人気を支えていますが、今後はどのようにお店を発展させていきたいですか?

両角:正直、いまだに経営は順風満帆とはいいがたいです。当初考えていた複数店舗の経営というのも、人材育成が難しく実現はできていません。いまはなんとかやれていますが、飲食業は景気にも大きく左右されるので、つねに次の一手を探している状態です。だからといって、世のトレンドに乗ることはしたくない。

こだわってきたクオリティーの高い店づくりのなかで、いかにお客さまの満足度を上げて、リピーターを増やせるかにはいつも悩んでいます。金融業時代と同じくらい、ものすごいプレッシャーのなかで毎日闘っているんですが、昔からの友人にいわせると、あの頃とは顔つきがまったく違うそうです。それくらい、いまの仕事がとても楽しい。人はレストランに幸せな時間を過ごすためにいらっしゃいますが、ぼく自身もいま、苦しいながらも幸せな毎日を過ごさせてもらっていますね。

「この状況を招いた要因は?」。飲食店でも日々の売上をロジカルに考える

――次の一手となる新しい施策は、いまも考えていらっしゃいますか?

両角:はい、もちろん。たとえば、既存の宴会プランをさらに使い勝手のよいものに変えて、近いうちに導入しようと思っています。ほかにも、お酒をたくさん召し上がる方には、一定量以上はディスカウントさせていただくなど、いまより低価格で楽しめる施策を設けて、より満足度を高めたいですね。

――これから飲食業で独立・開業をめざす方にアドバイスをお願いできますか?

両角:精神的なこととしては、まず自分を過信しすぎずにとにかく一生懸命やること。そして、何事もお客さまの立場に立って考えることですね。ぼくも、Facebookとメルマガであえてお客さまに辛口のコメントをいただく機会を設けて、いまの問題点を洗い出し、次につなげようとしています。

そして具体的な行動では、日々のデータを冷静に分析し、効果的なマーケティングを考えていくことです。金融業時代に数字を見る習慣をつけていたので、開店からいままでの売上に関するデータはすべて、前年度と比較できるように用意しています。ただ記録しておくのではなく、そこから「いま、この状況を招いた要因はなにか?」を読み取れるようにする。それはとても大切なことですね。

ビストロ アンバロン

東京都港区西麻布1-9-7
03-6438-9699
日曜定休
11:30〜15:00 18:00〜23:00
http://www.bistroenballon.com/
※取材時点の情報です

ビストロ アンバロン

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