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注目の開業立地

大阪ラーメン流行の気配。新規開業の手がかりは、転入者のニーズにあり

いまや完全に国民食として定着したラーメン。「食い倒れの街」大阪でも広く愛されているが、「大阪ラーメン」といえる名物は不在。うどんやたこ焼き、お好み焼きと比較して、大阪とラーメンの結びつきは、やや薄いようにも感じられる。しかし近年、「高井田系ブラックラーメン」の再評価とともに、その傾向に変化が起きているという。
商圏分析データ「マケプラ」によれば、大阪でのラーメン最激戦区は東梅田駅。新宿駅周辺、池袋駅と並ぶ、全国上位のラーメン店密度を誇っている。そんな大阪でいま注目すべき新しいラーメン激戦区がJR大阪環状線 福島駅だ。なぜ、福島駅がラーメン激戦区となったのか? その理由を紐解きながら、周辺環境やライフスタイルを中心に、福島駅と類似した駅をピックアップ。ラーメン店新規開業のための手がかりを探る。

JR大阪環状線 福島駅
新たなラーメン激戦区は、ビジネス街からの好アクセスによって誕生?

以前の記事で取り上げた札幌のように、全国区の「ご当地ラーメン」こそないものの、大阪市東成区が発祥の「高井田系ブラックラーメン」が人気を集めている大阪ラーメンシーン。濃厚醤油スープと極太のストレート麺を特徴とするこのラーメンの最古参は、布施駅にある老舗「光洋軒」「住吉」の2店。近年では、天満橋駅の「麺屋7.5hz」や、深江橋駅、梅田駅、江坂駅などに店を構える「金久右衛門」ら新興店でも人気となり、大阪市内の多くの店で提供されている。また、2017年には『ラーメン女子博』『ラーメンEXPO』といったイベントが大阪の中心地で開催された。確実に、ラーメン熱が高まっているといえるだろう。

そんな大阪において、東梅田に続きラーメン激戦区となっているJR大阪環状線 福島駅の半径1kmには、現在25店舗のラーメン店がある。人気の筆頭格は、2017年の「ラーメンWalkerグランプリ」大阪部門で第3位の「ラーメン人生JET」と、「金久右衛門」出身の店主2人が営む「燃えよ 麺助」。そのほか、とんこつラーメン専門店「まんかい」や、「天下一品」「太陽のトマト麺」といったチェーン店など、バラエティー豊かな店舗がそろっている。

「マケプラ」によると、「下町」「アーバンミドルクラス」(※)が半分以上を占める福島駅周辺のライフスタイル構成は、全国屈指のラーメン激戦区である東京の高田馬場駅と類似。専門学校も複数あり、若年層の来訪者が多いという環境からも、この地でラーメン需要が高まった要因が読み取れる。

また、福島駅周辺は、隣駅の大阪駅がビジネス街であることから、単身赴任者の人気も高いという。「マケプラ」のデータを見ても、20代から30代の人口が38%を占め、単身世帯が圧倒的に多い。総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」を基に、NTTデータ経営研究所が作成した人工転入超数推移データによると、大阪市は2001年以降、全国有数の転入者数を記録。とくに20代の若者層は、2011年から2016年にかけて毎年1万人前後の転入超が続いている。さまざまなジャンルのラーメン店がしのぎを削る福島駅の背景には、他地域からの転入者増加によって表面化した、新たなニーズも影響しているのかもしれない。

そこで今回は、ライフスタイルや人口傾向のほか、転入者、街の再開発といったファクターを加えて近郊の駅をリサーチ。新たに、ラーメン激戦区予備軍といえる3駅を提案する。

※「下町」:マケプラ内の分類。昔ながらの街並が広がる地域に定住する、シニアの夫婦及び、単身者を示す。または、長年その地域に定住する熟年層と新社会人の混合地域。
※「アーバンミドルクラス」:都心部で比較的余裕のあるライフスタイルを送るグループ。単身者や核家族が多く、年齢層が高い世帯に至っては長く住み続ける傾向がある。

【1】市営地下鉄御堂筋線 江坂駅
「住みたい街」上位にあがる好立地。激戦区化前夜のいまがチャンス?

地下鉄御堂筋線と北大阪急行電鉄が直通運転を行い、大阪中心部へのアクセスがいい江坂駅は、商業ビルやスーパーが充実しており、住環境も抜群。不動産サイトが発表する「住みたい街ランキング」の上位にランクインすることも多い人気エリアだ。御堂筋線の始発駅であることや、エースコックやミスタードーナツなど数々の大手企業がオフィスを構えるビジネスの拠点でもあることから、福島駅と同じく単身赴任や転勤族のサラリーマンからの人気が高いのも特徴のひとつである。

江坂駅の半径1kmにあるラーメン店は、台湾まぜそばの「マルショウ」や行列の絶えない人気店「麺屋えぐち」など10店舗。「住みたい街」上位で注目を集めているだけでなく、ファミリー層向け高層マンションの建設が活発に行われているため、さらに人口と需要が増え、早晩の激戦区化は必至だろう。夜の部限定のメニューも人気を集めている「麺屋えぐち」を参考に、飽きさせないための工夫が鍵を握りそうだ。

【2】京阪電鉄中之島線 市営地下鉄谷町線 天満橋駅
大規模な再開発が目前? 街の未来を予測する、先見の明が重要

京阪電鉄中之島線と地下鉄谷町線が乗り入れる天満橋駅は、福島駅周辺と同様に20代から30代の人口構成比が42%と高く、「下町層」が多いというライフスタイルの割合も、共通している。また、大阪城にほど近く、宿泊環境も整備されていることから、外国人を含む旅行客が多いことも、大きな特徴といえるだろう。ラーメン店の数は、「Ramen 辻」「山麺」といった人気店を筆頭に半径1km以内に17店舗と江坂駅よりも多いが、両路線合わせて1日に7万人あまりという乗降者人数を考えれば、まだまだ新規開店の余地は十分に残されている。

京阪電鉄の加藤好文社長は「創業の地である天満橋で大きな再開発をやりたい」と発言。また、国土交通省によって都市再生緊急整備地域にも指定されている。いずれも時期は明らかにされていないが、今後は街の様相がガラッと変わる可能性を秘めている。開業にあたっては、街全体の未来を予測する先見の明が成否をわけるだろう。大規模なオフィスやホテルの開業も予想されていることから、ビジネスパーソンや外国人観光客にターゲットを絞るのも一手かもしれない。

【3】JRおおさか東線 河内永和駅
「聖地」の隣駅。コストパフォーマンスに優れた店に勝機がある?

近鉄奈良線とJRおおさか東線が通る河内永和駅は、郊外といわれる立地でありながら、近鉄奈良線の大阪難波駅までわずか10分あまりという中心部への好アクセスが魅力。単身世帯が多いのは福島駅と共通しているが、その年齢層は40代から60代が中心と高め。しかし、2019年にはおおさか東線の全線開通によって新大阪駅まで直通となり、さらなる利便性の向上が期待されるため、居住者の層にも変化があるだろう。

河内永和駅の半径1kmにあるラーメン店は6店舗と、これまでの駅に比べると少ないが、近鉄奈良線の隣駅である布施駅周辺が「高井田系」の聖地であることからラーメンファンにとってはなじみ深い地域であり、ラーメンを受け入れる土壌は整っているだろう。

駅周辺は年収300万円未満の世帯がもっとも多いため、新規開店にあたっては、コストパフォーマンスの高さを打ち出すことが、強みのひとつとなるのではないだろうか。あるいは、近隣に大阪樟蔭女子大学のキャンパスがあることから、『ラーメン女子博』の流れに乗って、鶏ダシ系や貝ダシ系のあっさりしたラーメンを売りにするのも有効かもしれない。

認知の低さはポテンシャルの高さ。街と人の変化を捉えた戦略が重要になる

大阪市には、全国にある飲食店のじつに4.2%にあたる、約26,000軒もの飲食店がひしめき合っている(2014年大阪市調査)。対して、大阪市の人口271万人は日本の人口の2.1%であることから、いかに大阪市民が「食」に強い興味を持っているかがわかるだろう。そのなかで、「高井田系ラーメン」は流行の兆しを見せているものの、まだまだ「ご当地ラーメン」と呼ぶには決め手にかけるというのが現状だ。

しかし、上述のとおり、近年は生粋の大阪人だけではなく、他県からの転入者が増え続けている。今回紹介した3駅は、近い将来、再開発や路線開通によって街の変化が予想されるため、転入者に向けた新規開業を狙うことで、十分に繁盛店になるポテンシャルがあると考えられる。そこから、「高井田系ブラックラーメン」に続く人気ラーメンが誕生する可能性もあるだろう。

また、大阪全体を見ても、2025年の万博の誘致が進行中。開催が決定すれば、さらなる巨大な変化が引き起こされる。その意味では、人と街の変化をつぶさに観察し、未来のニーズを嗅ぎとることが、より大切な地域であるといえるかもしれない。

※データ:商圏データ「マケプラ」調べ(2017年12月現在)

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