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先輩開業インタビュー

群雄割拠のジム業界。独立開業の鍵は、実績やスキルではなく「お客さま目線」

健康志向による需要の増加で、急速に注目を浴びているパーソナルトレーニングジム。開業資金が少なく済むことや、特別な資格が必要ないことから新規出店が相次ぎ、激しい競争が繰り広げられています。
そのなかでも赤坂、新宿、渋谷、表参道に計4店舗を構える「Kenz」は、既存のジムとは異なるスタイリッシュな内装や、長期的な視点でトレーニングをマネジメントする「生涯フィットネス」というコンセプトで差別化に成功。代表の野島賢さんは、歌舞伎町でナンバーワンホストとして活躍後、パーソナルトレーナーに転身したという経歴の持ち主です。
波乱万丈だった開業までの道のりから、寝る間もないほどの人気店に成長するまでの経緯、そして数々の失敗や後悔を糧に築き上げた独自のジム運営術について、語っていただきました。

お客さま一人ひとりに向き合った経験が、パーソナルトレーナーにも活きた

――元ホストというご経歴から、パーソナルトレーニングジムを独立開業されたそうですが、そのきっかけは何だったのでしょうか?

野島:歌舞伎町のホストクラブで苦労してナンバーワンになったのですが、雇われオーナーとして経営を任されたお店を半年で潰してしまったんです。それが14年前、27歳のときですね。

それまではわがもの顔で歌舞伎町を歩いていたのですが、店を失ってスーツを脱いだら、ビール腹だし、顔もパンパンで、全然かっこよくなかった。それで、ダイエットのためにジムに通い始めました。もともと体を鍛えるのは好きだったのですが、体重が落ち、筋肉がついて面白くなってきたときに、トレーニングマシンの横で女の子と楽しそうに話している人を見つけたんです。

――それが、パーソナルトレーナーという仕事との出会い?

野島:そうなんです。当時のぼくには、ホストの売るものが「お酒」から「トレーニング」に変わっただけに見えて、「これ、自分に向いてるんじゃないか?」って思ったんですよね(笑)。自分でもトレーニングの素晴らしさを体感していたし、その素晴らしさを伝えたいと思っていたところだったので、ジムを開いてパーソナルトレーナーになろうと決めました。

――パーソナルトレーナーになるというだけでなく、自分でジムをオープンする、と決めたんですね。そこからは、どのような行動を起こしたんですか?

野島:パーソナルトレーナーに特別な資格は必要ないので、すぐに名乗ることはできたのですが、お客さまに受け入れてもらうには「説得力」が大事なんじゃないかと思ったんです。それで考えたのが、ボディビル大会で優勝すること。

――極端な発想ですね!

野島:実績があれば、人はぼくの言うことに耳を傾けてくれると思ったんです。なので、スキルや理論を学びながら、『東京オープン』というボディビル選手権大会で優勝を目指して、バイト先とジムを往復するトレーニング漬けの生活を始めました。なんとか3位になることができたのですが、結局、優勝できないまま4年が経ってしまった。

その時点で33歳だったので、年齢的にもう始めなきゃと思ったのですが、自分のジムを開くお金はない。そこで、まずは南青山にあったトレーニングスタジオを間借りするかたちで、「Kenz」という看板を掲げて、パーソナルトレーナーの仕事を始めたんです。

「『いつ開業する』と決めずにダラダラしていたことを、めちゃくちゃ後悔した」

――ようやく、パーソナルトレーナーとしてのスタートラインに立つことができたんですね。

野島:そうですね。ただ、やはり現場に立ってみないとわからないことが多く、お客さまの期待に応えるために苦戦する日々でした。当時、1時間のトレーニング指導で2,500円という料金に設定していたのですが、スタジオの利用料は1時間2,200円。利益はほとんどありませんでしたが、修行のつもりでやっていました。

でも、あるときトレーニングスタジオのプロデュースを手がけていたトレーナーの方に、「価値のあるトレーニングを指導しているんだから、料金を1万円にしたらどうか?」と言われたんです。一気に4倍です。不安になりながらも、実績のあるトレーナーの方からの言葉だったので、言われたとおりに1万円にしてみたら、当時のお客さま全員が「1万円でも高いとは思わない」と言ってくれたんですよ。

――それだけの価値を、お客さまはちゃんと感じられていたんですね。サービスを売る商売であるパーソナルトレー二ングでは、価格の設定が難しい?

野島:そうなんです。だから、価格を上げるときに明確な理由を説明することができず、苦しむパーソナルトレーナーも多い。そのトレーナーの先輩に、「価値に見合った価格をつけるべき」と言ってもらったことが、自信になりましたね。いまは、90分の指導を4万円で提供していますが、その言葉はいまでも心に残っています。

――そこから、開業に向けて資金を貯めることができたんですか?

野島:そのはずだったんですけど、貯まらないんですよね。収入は上がっていたし、夢もあったけど、具体的に「いつ開業する」と決めていなかったんです。いま思えばダラダラしていました。そんなときに、間借りしていたトレーニングスタジオが急に閉鎖することになってしまったんです。

準備をしっかりしていれば、このタイミングでジムを開くことができたのに、とめちゃめちゃ後悔しましたね。偉そうに夢ばっか語って、なんの準備もしてないなんて、ダサすぎると。でも、違うスタジオで活動したところで、同じことを繰り返すだけだと思ったので、お金を借りてでもジムを開こうと決意しました。そのときに初めて、自分の夢を実現させるためには、どれだけのお金が必要なのかを具体的に計算したんです。

ジムは100万円から開業できるが、「Kenz」の初期費用は700万円。そこに込められた思いとは?

――パーソナルトレーニングジムの開業には、どのくらいの資金がかかるのでしょうか?

野島:やろうと思えば、いくらでも安くできるんですよ。基本的なトレーニングはダンベルとトレーニングベンチがあればできるのですが、中古であれば3万円で買えます。店舗取得費は場所によりますが、小規模なら内装工事も含めて100万円もあれば十分でしょうね。だから、いまは「マイクロジム」と呼ばれる小規模なジムが一気に増えているんですよ。

――設備投資のレベルによって、資金を抑えることができるんですね。ですが、「Kenz」にはさまざまな機材がありますし、初期費用はかなり必要だったのではないでしょうか?

野島:そうですね。ぼくは理想のジムのイメージをはっきり持っていたし、どうせお金を借りるなら金額が小さかろうが大きかろうが一緒だと思っていたんです。消費者金融を利用したり、さまざまな人に協力してもらったりして、700万円くらい集めました。

――その理想のイメージというのは?

野島:ぼくは「生涯フィットネス」というコンセプトを掲げて、お客さまが自分自身でトレーニングできるようになることを目指しています。パーソナルトレーニングって、すごく価格が高いじゃないですか。お客さまがずっとぼくのジムでトレーニングをしてくれればいいのですが、金銭的な負担を考えると、それはなかなか難しい。でも、自分自身でトレーニングができるようになれば、どんな環境であっても続けられますよね。

ただし、大手のジムにはいろいろなマシンが置いてあるから、そのマシンの使い方も教えてあげなきゃいけない。そう考えたので、機材をそろえる必要があったんです。

――利用者の目線ではすごくありがたいですが、ビジネス的には、そのコンセプトを成立させるのは難しいんじゃないかと思ってしまいます。

野島:いつまでこんな理想を言っていられるかわからないですけどね(笑)。でも、自分がお客さまの立場だったら、自分の体は自分でプロデュースできるよう指導してくれるトレーナーと出会いたい、と思ったんです。ホストとしての経験があるからか、お客さまがなにを求めているかということは、人一倍考えているとは思います。

これは結果論かもしれませんが、そういったことを心がけて、お客さまに寄り添ったサービスを続けてきたことで、ほとんどの方は「Kenz」でトレーニングを続けてくれていますね。

――お客さま目線に立ったサービスが、ほかのジムとの差別化につながっているのかもしれませんね。パーソナルトレーニングと聞くと、短期集中で一気に効果を出すイメージがありますが、野島さんはすごく長いスパンで考えているんですね。

野島:大手のジムは、単価の高い短期集中型のプログラムが主流です。ただ、つねにお客さまを入れ替えて、回していく集客力が必要なんですよ。うちにその力はないし、そもそものスタンスが違うと思っています。スポーツジムに限りませんが、大手と違う方針、サービスを打ち出すことも、差別化のポイントになるかもしれないですね。

――赤坂という場所や、内装など、トレーニングとは直接関係ない部分にもこだわられている理由についても、教えてください。

野島:立地については、もともと活動していたスタジオが南青山にあったので、既存のお客さまが来やすい場所にしたい、ということが前提にありました。それ以外にも、「内装がきれい」とか「おしゃれな街にある」ということが、お客さまにとって、「それに見合う体をつくっていこう」という力になると思うんです。

あとは、お客さまが情報を拡散してくれるにはどうすればいいだろう? ということも考えていますね。内装だけでなく、匂いや音など、細部にこだわりを持つことで、「こんなところでトレーニングしています」とお客さまが教えたくなる、素敵なお店をつくっていきたいなと思っています。

「行動を起こさなきゃならない状況をつくるために、一気に3店舗増やしたんです」

――赤坂に一号店をオープンしてからは、順調に集客することができたんですか?

野島:既存のお客さまが、いろんな人を紹介してくれたおかげで、すぐに軌道に乗ることができました。一時期は90分セッションが月に280回あったんです。朝8時から夜中1〜2時くらいまでやって、そこから予約メールを返信して、掃除して、だいたい終わるのが4時。家に帰る時間もなかったので、ずっとジムにいましたね。

ただ、結局は「時間売り」なので、自分一人でやっていては、単価も含めて必ず成長の限界がやってくる。だから、信頼できるトレーナーを雇って、自分は経営に時間を費やすことにしたんです。

――経営者としては、どういう施策を打っているんですか?

野島:マーケティングの勉強もして、いろいろ試したのですが、ぼくに興味を持ってくれる方が多いので、自分の露出を増やすことが売上につながるとわかりました(笑)。だからSNSやYouTubeへの投稿や、ブログの記事を充実させることに注力しています。

いまは、低予算で細かなセグメントターゲティングが可能なFacebookの広告が、いちばん効果がありますね。どこに届けるべきかを自分で考えて広告を出すことができ、その効果を数値で体感できる。その意味ではトレーニングと似ていますし、ぼくには向いているのだと思います。

――そういった施策の効果もあってか、2017年8月には、新宿、渋谷、表参道にも店ができて、全4店舗になりました。なぜ一気に3店舗も増やしたんですか?

野島:「生涯フィットネス」を実現するための機材が、1店だけでは置ききれなかったんです。本当は大きいスペースを借りたかったのですが、まだそこまでの資金はない。だから小さいスペースを複数借りて、マシンを分散して置くことにしました。

それに、赤坂店が軌道に乗ってきたことで、そこにどかっと座って、具体的な行動を起こさなくなる自分の姿が見えたんですよね(笑)。行動を起こさなきゃならない状況に自分を追い込むためにも、一気に3店舗増やしたんです。

「パーソナルトレーナーの本質は、『お客さまの本当の悩みを解決すること』」

――既存のお客さまからの紹介が集客に直結したというお話がありましたが、1対1でつき合うことになるパーソナルトレーニングジムでは、お客さまと良好な関係を築いていくことが、より重要になる?

野島:そうですね。パーソナルトレーナーの本質は、「お客さまの本当の悩みを解決すること」だと思っています。「痩せたい」とか「胸を大きくしたい」とか、さまざまな要望を持ったお客さまがいますが、その要望の奥には「コンプレックスをなくしたい」というような本当の悩みがあるはずなんです。その悩みを共有して、トレーニングというツールで解決していく。そうすることで、いい関係を築くことができ、長くつき合っていけるのかなと思います。

ぼくよりもテクニックやスキル、知識を持っているトレーナーは山ほどいますけど、それとお客さまが継続して来てくれるかどうかというのは別のこと。実際、ボディビルのチャンピオンになれたかどうかなんて、まったく関係なかったですからね。どんなビジネスであっても大切なことは一緒で、その人とどこまで向き合えるか、そしてその覚悟があるかというだと、ぼくは理解してます。

――最後に、今後の目標を教えてください。

野島:だんだん自分の仕事に自信を持てるようになってきて、「生涯フィットネス」という考えをもっと広めるべきだと思えるようになってきました。そのために、東京以外の地域にも出店したいですね。それと、口に入れるものはすべてトレーニングにつながるので、食品やサプリメントも自分でやっていきたい。いずれはトレーニングウェアもつくりたいと思っています。やるべきことは、たくさんありますね。

――「生涯フィットネス」を広めたいという目標があることで、なにをすべきかも明確になったのかもしれませんね。

野島:そうですね。開業時期を決めずにダラダラしてしまったという過去もありますし、目標に向けて動き続けていないとダメなんだと思います。4店舗に増やしてから少し時間が経って落ち着いてきたので、早く新しい刺激を入れたいです。

パーソナルトレーニングジムKenz

赤坂本店 東京都港区赤坂6-9-13 ラファエロ氷川坂 スペースB
9:00〜23:00(年中無休)
http://www.kenz-gym.com/
※取材時点の情報です

パーソナルトレーニングジムKenz

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