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先輩開業インタビュー

世界初の荷物預かりシェアサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」はどうやって生まれた?27歳創業者に聞く

「荷物を預けたい人」と「荷物を預かるスペースを持つお店」をつなぐ世界初のシェアリングサービスとして、2017年1月に東京でスタートした「ecbo cloak(エクボクローク)」。荷物を預かるのは、おもにカフェやショップなどの店舗で、日本を訪れた外国人観光客を中心に大好評。
日本初の「コインロッカー」が生まれた1964年以来、50年ぶりに「荷物預かりサービス」を進化させたとして、メディアからも注目を浴びています。そんな「ecbo cloak(エクボクローク)」を展開するのは、2015年に弱冠24歳でecbo株式会社を立ち上げた工藤慎一さん。独立起業のきっかけと「ecbo cloak(エクボクローク)」のアイデアがどのように生まれ、展開していったのかを伺いました。

「20代前半なら失敗してもやり直しはきく」。起業に踏み切った決意

――2015年に24歳でecbo株式会社(以下、ecbo)を設立するまで、どのようなことをされていたのですか?

工藤:大学時代は、配車サービスアプリで有名なUber Japan株式会社(以下、Uber)で1年半のインターンをしていました。当時、Uberは日本に上陸したばかりでしたが、ITを活用した伸び盛りのビジネスというだけでなく、時間や車といった資産を「シェア」するという新しい文化を広めていた。ぼくもITベンチャーに非常に興味があったので、インターンから大学卒業後も約半年間残り、お世話になりました。

――もともと、新しいビジネスを自分でつくり出すことには興味があった?

工藤:そうですね。父が中国のアンティーク家具の修繕や、ホテルやレストランの内装をデザインする仕事をしており、幼少期にアジアの国を転々としていたのですが、父をとおして経営者の方に会う機会が多かったため、企業や商売は身近に感じていました。小学生の頃には、日本で購入したカードゲームを中国のカードショップに売るという個人輸入の真似事のようなこともしていて(笑)。

中国では入手が難しいカードを持っていくと、ショップの人がとても喜んでくれたんです。その「ありがとう」という言葉が嬉しくて、「いつか自分も人の役に立つビジネスをしたい」という気持ちが高まっていきました。

――その思いがUberでの経験と結びついて、起業へと至った。

工藤:Uberで働くうちに、これからは「シェア」の発想から生まれるサービスが、日本にもどんどん浸透していくという手ごたえがあったんです。Uberにそのまま勤める、ほかの会社に転職する、フリーランスで働く……と、起業以外の選択肢も考えたのですが、20代前半なら、もし起業がダメでもやり直しはきく。後悔はしたくなかったんです。大きなリターンを目指してチャレンジしてこそ自分だ、と思って仲間と2人でecboを立ち上げました。

新たなサービスを生み出したきっかけは、外国人観光客との偶然の出会い

――ecboを立ち上げて、すぐに「ecbo cloak(エクボクローク)」をスタートさせたのですか?

工藤:いえ。じつは最初にやろうとしたのは、ユーザーがアプリで管理できる、荷物の保管サービス「ecbo storage」でした。いわゆるトランクサービスの自由度を高くしたもので、お客さまがアプリでオーダーして、スタッフが預かりや取り出しを行うというもの。すごく便利なサービスだと考えていたのですが、理想を追求しすぎて、細かい数字を見ていなかった。

――荷物の受け渡しまで工藤さんたちが賄うとなると、人件費もかなりかかりますし、場所を用意するのも大変ですよね。

工藤:そうですね。それでも1年ほど続けてみたのですが、「本当にこのビジネスでいいのか?」と迷い始めていました。そんな2016年の夏、渋谷を歩いていたら、外国人観光客に「スーツケースが入る大きさのコインロッカーがどこにあるか知らないか?」と声をかけられたんです。あとで調べてみたら、渋谷には1,400個ほどのコインロッカーがあるのですが、そのうちスーツケースが入る大きさのものは90個しかなく、しかもそれらは朝の早いうちにすべて埋まってしまうということがわかりました。

――国内外から大勢の観光客が集まる渋谷でその数は少なすぎるし、旅行者にとってはかなり不便ですね。

工藤:2020年の『東京五輪』を前に、日本を訪れる観光客はどんどん増えていますが、荷物預かりに対する需要と供給が、まったく合っていなかったんです。

――そこから、現在の「ecbo cloak(エクボクローク)」につながっていったんですね。

工藤:最初は「単純にコインロッカーを増やせばいいのでは?」とも考えました。ですが、渋谷の駅前などの好立地にコインロッカーを増やすのは場所や資金面で現実的ではないし、そもそもコインロッカーは形や大きさが決まっているので、大きなスーツケースを預けるのは難しい。荷物預かり所をつくるのはどうだろう? とも考えましたが、渋谷の一等地に部屋を借りるだけで数千万円かかってしまいます。人件費もかかりますしね。

ユーザーが荷物預かりサービスに求めているのは、「安心・安全」と「簡単な予約システム」

――荷物預かりサービスは、クリアするべきハードルが多いんですね。

工藤:解決策にたどり着くために、「ユーザーが求めている荷物の預かりサービス」というものを再定義する必要があると感じました。コインロッカーにしろホテルでの荷物預かりにしろ、ユーザーは「安心・安全」を感じることに魅力を感じている。であれば、渋谷にたくさんあるカフェなどの空きスペースで荷物を預かることができれば、店員の目も行き届いていますし、ユーザーは安心できるんじゃないかと考えたんです。

――なるほど。たしかに、ホテルのフロントに荷物を預けるときも、安心できますよね。

工藤:さらに、「確実に預けられる」ことも大切だと考えました。コインロッカーが空いていなくて、右往左往するのはよくあることです。だから、スマートフォンで預かってもらえる場所を検索して、予約するまでを簡単にできるシステムが必要だと感じました。

そこで思いついたのが、荷物を預けたい人と、預けられる場所をマッチングさせる、シェアリングの視点です。これはニーズの幅も広いと確信しました。しかも、そんなシステムは世界でも例がない。折しも、国内でもカーシェアリングや民泊など「シェアリング文化」は定着しつつありましたし、スマホで検索してものを買ったり予約をしたりという行為も浸透している。「ecbo cloak(エクボクローク)」を始めるには、いまが最適だと思ったんです。

――その発想が固まるまでに、どのくらいの時間がかかりましたか?

工藤:渋谷での一件から、2週間くらいですね。特別な技術を必要とするアイデアではないので、ほかにも思いつく人はいるだろうし、「世界初」のインパクトはいい宣伝にもなる。2020年に向けて、今後ますます観光客が増えるのは当然なので、始めるなら早いほうがいい。早急に法的に問題がないかをチェックして、2016年8月には実現化に向けて動き出しました。

――取り組みが早い!

工藤:そこが、ITベンチャーのいいところですね(笑)。当時はぼくを含めて5名が社に在籍していたのですが、ある程度「ecbo storage」の下地ができていたところだったので、社内もかなり混乱しました。でも将来性という意味では、ここで舵を切ることが絶対に必要だと思い、決断しました。

――「ecbo cloak(エクボクローク)」が本格的にスタートしたのが2017年1月。半年もかからず、サービスのローンチまで漕ぎつけたんですね。

工藤:「ecbo storage」での経験があったのも大きいですね。うまくいかなかったことを反面教師にできましたから。

「荷物をただ預かるだけではなく、その地域やお店ならではの体験をしてほしい」

――サービスのローンチまでに、もっとも苦労したことはなんでしたか?

工藤:協力店の確保ですね。日本でもUberやAirbnbなどのシェアリングサービスが認知され始めていたといえ、セキュリティー面などが問題となって、なかなか理解されませんでした。利益としても、バッグサイズが1日1個300円、スーツケースサイズ以上は1個600円からと、コインロッカーと同じくらいの料金設定にしていますから、大儲けできるものでもない。

それでも、熱意をもって説明することで、少しずつ協力していただけるようになって。社会に役立つサービスである、ということに共感をいただけたのが、とても励みになりました。

――どのようにして協力店を増やしていったんですか?

工藤:飛び込み営業です。店員さんが常駐していて目が行き届きやすいカフェに始まり、居酒屋やマンガ喫茶などへと徐々に範囲を広げていきました。いまではお店だけでなく、企業のオフィスや神社にも広がっています。営業活動をはじめてから、最初の2か月はテスト期間と決めていたのですが、それでも100店舗以上に協力店を増やし、複数の投資家から資金調達を受けられた。事業拡大への自信にもつながりました。

――協力を依頼するお店は、どのような基準で決めたんですか?

工藤:サービス利用者に、「こんないいお店があるんだ」という気づきを与えたい、ということは考えていました。理想は、ただ荷物を預けるだけではなく、そのお店ならではの体験をしてほしい。「ecbo cloak(エクボクローク)」は、荷物預かりを介して、「人と人」「人と場所」をつなぐハブとして活用できるシステムだと思っています。実際、協力店の方から、これまで来店されないような層のお客さまと触れ合うことができたという声をいただいていますし、リピーターが増えているお店も多いと聞いています。

――ユーザーを増やすための施策は、どのように考えていきましたか?

工藤:サービスローンチを発表したときは、国内のメディアにも多く紹介していただけて、ecboのコーポレートサイトがダウンするほどでした。ですが、現状ではサービスを利用されるのは海外の旅行者がメイン。海外で影響力のあるツーリスト情報サイトなどには積極的にアピールしましたね。

――実際に利用した方の声はいかがでしょうか?

工藤:「こういうサービスを待っていた」という声をたくさんいただいています。1人目のお客さんは台湾の方だったのですが、すごく喜んでくれたので、ぼくも感動して一緒に写真を撮らせてもらいました。小学生の頃に感じた喜びを思い出して感無量でしたね。

――ビジネスとしてのスケール、利益はいかがですか?

工藤:2017年1月に渋谷でスタートしたのを皮切りに、まずは新宿、池袋、赤坂・六本木、浅草と東京のなかでエリアを拡大し、そこから京都、大阪、福岡へと展開、直近では沖縄と北海道でもサービスをスタートさせました。協力店も、約1,000店まで増えました。単価は小さいですが、規模が大きくなることで利益も毎月数10%単位で伸びています。

大切なのは、「人はなにに対してお金を払うのか?」をコツコツと考え続けること

――将来的なビジョンは、どのようにお考えですか?

工藤:いまはまだ土台づくり期間と認識していますが、2018年3月までには、1万店以上の参加を目指して奮闘中です。大阪や京都をはじめ、有名な観光都市ではすでにサービスを開始していますし、将来は海外展開も視野に入れています。

2020年に向けて、ニーズがより高まっていくのは確信していますが、このサービスを利用した外国の方が本国に帰れば、自国でも「ecbo cloak(エクボクローク)」を利用したいと思ってくださるはず。2018年上半期には、台湾、香港など、アジア圏でも「ecbo cloak(エクボクローク)」を展開し、将来的には欧米圏にも広げていきたいです。

――「ecbo cloak(エクボクローク)」のような、世界初の斬新なアイデアを生み出すために、必要なことはなんだと考えますか?

工藤:「ecbo cloak(エクボクローク)」は特別なアイデアではなく、「人はなにに対してお金を払うのか?」「どんなことに世の中のニーズがあるのか?」を、毎日コツコツと考えていた結果だと思っているんです。ただ、インバウンドの需要が増加している、シェアリングの文化が浸透し始めている、という時代の方向性とマッチした、絶妙なタイミングの良さがありました。ですから、いちばん必要なのは10年先のマーケットや時代の方向性を想像したときに、そのサービスがどれだけフィットしているかだと思います。そして、誰もやらないうちにやるスピード感ですね。

――ニーズをコツコツと考え続けていたからこそ、多くの人が必要としているサービスをかたちにすることができた。

工藤:革新的といわれるサービスは、Uberの例にもいえますが、あらゆる課題を本質的な解決に導く「シンプル」で「シングル」なものなんです。「ecbo cloak(エクボクローク)」は、「荷物を預けられる場所が少ない」「どこにあるか、空いているかがわからない」といった複数の課題を、たったひとつの、「シングル」のサービスで解決することができた。さらに、スマートフォンで完結するシンプルなシステムに落とし込んだからこそ、多くの人にわかりやすく受け入れられたんだと思います。新しいビジネスを始めるうえでは、シンプルさの追求は大切です。

ecbo株式会社

https://ecbo.io/

ecbo cloak
https://cloak.ecbo.io/ja/
※取材時点の情報です

ecbo cloak(エクボクローク)

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