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注目の開業立地

大阪は「学習塾」の激戦区。開業の狙い目は年収700万円以上のエリアにある

2017年3月に公開した東京町田市の学習塾事情の記事(※1)では、独自カラーでの新規開業を提案しましたが、今回は全国のなかでも通塾率が上位だという大阪エリアに注目しました。
駅前に40もの塾が軒を連ねる激戦区・大阪上本町駅周辺をリサーチし、商圏分析サービス「マケプラ」のデータからライフスタイルやターミナル事情が類似する駅をピックアップ。次に注目するべき学習塾エリアと、勉強に前向きな親子が多いという大阪府民の「通塾事情」に迫ります。

近鉄難波線・奈良線 大阪上本町駅
駅近に40もの学習塾が密集。周辺は年収700万円以上の世帯が暮らすエリアだった

文部科学省が2015年に行った調査から大阪府の通塾率を見てみると、中学生で70%と全国5位、小学生でも52%が通塾しており全国6位の数字となっている。やや古いデータであるが、大阪府が行った別の調査(2011年)を見てみると、大阪府内の学習塾の件数は3,204件、売上はなんと780億円という巨大産業となっているのだ。

そんな学習塾が乱立する大阪のなかで、特に激戦区となっているのが大阪上本町駅。駅周辺には「個別教室のトライ」「日教研ゼミナール」「日能研」など、なんと40もの学習塾・進学塾が軒を連ねており、小中高合わせて8つの学校も立地。

また、大阪上本町駅の場合、「トレンディライフ」層(※)に分類される世帯が46.6%を占める。これは近鉄奈良線の沿線平均11.1%を大きく上回る数字だ。

※「トレンディライフ」層:マケプラ内分類。都心部に居住し、経済的に余裕のあるファミリーや単身者を示す

さらに世帯年収で見ても、700万円以上の世帯数は沿線の24駅のなかでトップを示し、世帯年収500万円以上の割合も35%あまりと、ほかの街に比べて高い結果となっている。では、そんな大阪上本町の次を担う学習塾激戦区とはいったいどこなのか? マケプラのデータから、次を占ってみよう。

【1】JR大阪環状線 玉造駅
教育熱心な親から注目される「天王寺区エリア」。JR大規模改修により、ファミリー層の移住が増加?

JR大阪環状線と市営地下鉄の長堀鶴見緑地線が乗り入れる玉造駅は、大阪上本町駅から距離にしてわずか2kmあまりしか離れていない。しかし、マケプラで街に住む人々のライフスタイルを見てみると、その様相は大きく異なり、「トレンディライフ」層に分類される世帯はわずか27.4%。駅から0.5km以内の学習塾も7店舗に留まっている。

そもそも、大阪環状線は、駅の老朽化や古い車両などから、あまりいいイメージを持たれていなかった路線。しかし、そんなイメージを打破するために、JR西日本では、近年、環状線の駅の大規模改修に着手している。

2014年、玉造駅には商業施設「ビエラ玉造」がオープン。環状線の車体にそっくりなその建物も話題となったが、そのなかには「健康と日常生活支援」をテーマに、保育園、フィットネス、医療機関、スーパーマーケットなどが入居しており、住みやすさは以前に比べてはるかに向上。そのため、近年では玉造駅周辺でマンションの建設工事が相次いでいるのだ。

また、玉造駅のある天王寺区には、大阪星光学院、四天王寺、明星、清風といった有名私学や公立トップの中学校・高校が立地している。教育熱心な親からの注目度も高いエリアで、今後も学習塾のメインターゲットとなる若いファミリー層が移り住んでくる期待は高い。

【2】市営地下鉄御堂筋線 昭和町駅
大阪上本町と同様に高収入の世帯は46%。激戦区になる要素はそろっている

日本一の高層ビルとして知られる「あべのハルカス」の南側に位置する昭和町駅は、大阪上本町駅と同様に「トレンディライフ」層が46.4%、500万円以上の世帯年収を持つ層も30%以上となっており、街の類似性は極めて高い。

そんな好条件にもかかわらず、学習塾の数は駅から0.5km以内に13と上本町の3分の1しか存在しないことから、学習塾の需要がまだ見込まれるエリアと考えられる。また、メインターゲットである10~19歳の人口が1,197人と、地下鉄御堂筋線の沿線平均668人より多いことも気になるポイントだ。

「あべのハルカス」「キューズモール」そして「天王寺MIO」など、大型商業施設が近隣に3つも存在しており、生活の利便性は抜群の昭和町駅。また、阿倍野区は公園がたくさんあり子育てに向いている環境であることや、天王寺区と同様に高い教育レベルを誇る学校が多く存在するなど、学習塾を開設するためのポジティブな要素が数多いのも魅力的だ。大型開発によって激変を遂げる阿倍野区は、学習塾激戦区になるポテンシャルを十分に秘めている。

【3】市営地下鉄谷町線 野江内代駅
シニア世代が集まる下町エリア。交通の利便性向上がカギとなる

市営地下鉄谷町線の野江内代駅周辺は、下町らしい閑静な住宅街が広がっているエリア。大阪の中心地・東梅田駅(JR大阪駅とつながっている)まで電車で約10分と交通の便も抜群。だが、駅周辺0.5kmに学習塾はわずか4つしか存在しない。じつは、野江内代駅周辺は古くからの街ということもあり、高齢者世帯が多く、世帯年収データも300万円以下が一番多い。そのため、学習塾の需要は多くないようだ。

しかし、2018年度には駅から約0.5kmのところにJRおおさか東線の野江駅(仮称)が開業予定となっており、野江内代駅が乗換駅となる。将来的には新大阪駅ともつながる予定になっており、交通の利便性の向上によって今後、注目が高まるエリアなのだ。

マケプラで地域住民のライフスタイルを見てみると、「トレンディライフ」層の住民はわずか7.1%で、「下町」層(※)の住民は61.7%を占める。上記2駅とはまったく異なる環境だが、これからの街の変化を敏感に捉え、中間所得層だけにとらわれない世帯をどのように開拓するかが、野江内代駅で学習塾を開業するためのカギとなりそうだ。

※「下町」層:マケプラ内分類。昔ながらの街並が広がる地域に定住する、シニアの夫婦及び、単身者を示す。または、新社会人と長年その地域に定住する熟年層の混合地域

「学習塾に通う」文化が根づく大阪。新規参戦の勝機はまだまだある

全国的に見て学習塾が多い大阪府だが、子どもたちの学力平均からは意外な事実が見えてくる。今年発表された全国学力テストの結果によれば、各政令市のうち、大阪市の小中学校は算数のAを除きすべての科目で最下位。その結果に、大阪市の教育委員会も「非常に厳しい結果」と危機感を募らせている。

また、大阪市は各家庭による学力・収入格差などの問題解決や、子育て世代の経済的負担を軽減するため、塾代助成事業を実施。中学生を対象に学習塾などの習いごとにかかる費用を月額1万円助成するなど、市全体が子どもの学力向上に取り組んでいる。

大阪はすでに塾激戦区のため、新規参入のハードルは高いものの、裏を返せばすでに学習塾に通う文化が根づいているとポジティブに捉えることができる。大阪ならではの事情を考慮し、ニーズに合致した学習塾を開業することができれば、十分に勝機があるはずだ。

※データ:商圏データ「マケプラ」調べ(2017年9月現在)

(※1)東京町田市の学習塾事情 ―「学習塾」は独自カラーが成功への近道。個人開業に向いたエリアの特徴とは

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