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先輩開業インタビュー
カフェバイトから独立へ。30代で中目黒に飲食店を開業した女性店主の想い

都内でもおしゃれ感度の高い人々が集う街として有名な中目黒。雑誌で取り上げられる人気のセレクトショップや飲食店が軒を並べる目黒川沿いは、都内屈指の花見スポットとしても大人気です。近年は駅前の再開発も進み、こだわりのある飲食店が次々に出店し、しのぎを削っています。
そんな中目黒の駅から徒歩数分。大通りから少し入った住宅街の小さなビルの3階に、野菜メインの家庭料理とお酒をふるまうアットホームな飲み食い処「のひのひ」があります。店主の、やまさき きよえさんは、グラフィックデザイナーから飲食店経営へと転身した料理人です。そんなやまさきさんに、異業種からの独立・開業の経緯と、人気のグルメエリアで飲食店を営むためのノウハウを聞きました。

デザイナー時代に掛け持ちしていたカフェのアルバイトが独立のきっかけに

――やまさきさんは、グラフィックデザイナーから飲食業へと転身し、2009年に飲み食い処「のひのひ」を開店されたそうですね。かなり大胆な方向転換でしたが、きっかけは何だったのですか?

やまさき:もともと料理は好きだったんですが、美大を出て数年はエディトリアルデザインの会社に勤めていました。その後、フリーのデザイナーとして活動する傍ら、空いた時間を利用して週に3日ほど知人のカフェでアルバイトをしていたんです。

――飲食業の経験はあったのですか?

やまさき:いいえ、ありませんでした。仕事はとてもハードでしたが、とても勉強になりました。そこを辞めるとき、女性オーナーが「飲食の仕事の醍醐味は、片手間のアルバイトではわからない。ベタづきで働かないと」とおっしゃったんです。私も飲食の仕事が楽しくなっていた頃でしたし、「じゃあ今度はフルタイムでやってみよう」と、一軒家ダイニングバーに4年ほど勤めたんです。その後、行きつけのバーの店主に誘われて代官山のダイニングバーで開店準備から携わり、店長として3年ほど働いて、2009年に中目黒で「のひのひ」を始めました。

――グラフィックデザイナーのお仕事はすでに辞めていたのですか?

やまさき:フルタイムで働き始める以前はデザインの仕事を掛け持ちしていましたが、徐々にフェイドアウトしていった感じです。

――それは、ご自分には飲食業のほうが向いていると感じたから?

やまさき:そうですね、昔から料理は好きだったので。エディトリアルデザインの仕事でも、一番やりたかったのは料理本でしたし、デザインの仕事をいかしたフードスタイリングもやりたい気持ちはずっとありました。

――でも、自分のお店を持つとなると、それはまた別の話かと。開業に不安はありませんでしたか?

やまさき:私の場合は、いろいろなタイミングが重なった開業だったんです。店長を任されていた代官山のダイニングバーが閉店することになって「どうしよう?」と困っていたところ、お店の常連さんたちから「じゃあ独立だね!」と後押ししていただきました。何か新しく始めるなら30代のうちにやっておきたかった。

収入面だけを見たら、個人飲食店はけっして恵まれるものではないと、それまでの経験でわかってはいましたが(苦笑)、常連のお客さんとも離れがたかったですし、私自身が居心地よく楽しめる仕事をしたくて、決断しました。

女性経営の場合、「大通りに面していない、2階以上」が物件条件になることも

――開業の場を、たくさんの飲食店が軒を並べる人気エリア・中目黒に決めたのはなぜですか?

やまさき:じつは不動産屋さんには、飲食店向け物件が多い、隣り駅の祐天寺や学芸大学を薦められたんです。でも、代官山時代の常連さんが来やすくて、私自身もなじみのある場所は中目黒でしたし、まったく知らないエリアにお店を出すのは不安でした。お店を出しても来てくれる人がいなければ続かないので、代官山から歩ける距離の中目黒が一番いいと思って決めました。

――しかし、中目黒にはカフェやバーなどの飲食店も多く、ライバルがいるなかでの経営は難しいのでは?

やまさき:中目黒はたしかにレストランや居酒屋がたくさんありますが、メインはだいたい肉料理。予約殺到の焼き肉店なども多いですし、「中目黒=肉の街」というイメージがあります。その点、うちは野菜料理が中心なので、棲み分けはできると思いました。

――たしかに、駅前だけでも10軒以上の焼き肉屋がありますね。ほかに、物件探しでこだわったことや苦労したことはありましたか?

やまさき:最初から、私一人で店を切り盛りするつもりだったので、あまり広い物件はいらなかったんです。ところが中目黒は、大きな店舗用物件はあっても、こぢんまりした物件がそもそもなくて、いまの場所を見つけられたのはラッキーでした。

人気エリアで家賃相場も高めなのですが、いまの物件は飲食店向けではなかったので、保証金などの初期費用などが抑えられ、安く借りられました。あと、条件的に譲れなかったのは、大通りに面していないことと、ビルの2階以上であること。地下と1階の路面店は絶対にイヤでした。

――大きな通り沿いの路面店や地下1階のほうが、フリーのお客さんも入りやすく、集客が見込めそうですが、なぜでしょう?

やまさき:安全面からですね。忙しいときにはスタッフがサポートしてくれますけど、それも全員女性。大通り沿いの路面店だと、泥酔したお客さんもふらっと入って来やすく、地下だとトラブルがあったときにすぐ逃げられない。男手がいないので、安全にはかなり気を使っています。

定番メニューを「つくらない」ことで、常連客の心をつかむ

――飲食業に限らず、女性だけのお店は、安全な立地条件にも気を使うべきなんですね。そんな「のひのひ」はオープンする際、集客のためにどんな施策を?

やまさき:始めから、前の店の常連さんがいらしてくれたので、宣伝はやっていなく、インターネットで情報発信をしているくらいです。開店当初から「中目黒 「のひのひ」 晴れの日も、雨の日も。」というブログを立ち上げ、Instagramと私個人名義のTwitterでは毎日、開店したら写真をアップしています。あとはFacebookページがありますが、そちらはあまり更新していないかも(笑)。


――いまやSNSはプロモーションの必須ツールになりましたが、工夫していることはありますか?

やまさき:お店の情報はInstagramとTwitterの同時投稿をしているんですが、店名の「#のひのひ」のほかに「#中目黒」「#foodphotography」など、ハッシュタグを複数つけるようにしています。「#中目黒」は、美容師さんがInstagramでやっているのを知って始めたのですが、エリアのハッシュタグ検索で見つけてもらえるのでいいなと思い、真似しました(笑)。

――実際、SNSの手応えはいかがですか?

やまさき:最近は、SNSを見ていらっしゃる新規のお客様もけっこう多く、効果は感じます。うちは表通りからは奥まっていて、ビルの入り口にも大きな看板を出していないので、たまたま前を通ったから……と、来店される方はまずいないんです。だから新規のお客様は、SNSを見た方や常連さんの知り合いの方がほとんど。そういう、「お店に行きたい」と思ってわざわざ足を運んでくれた方のほうが、リピート率は高いですね。

――もちろん料理の美味しさあってこそ、常連さんが増えていらっしゃるのだと思いますが、小さな飲食店ほどお店の居心地の良さも大切だと思います。お店づくりでこだわっていることはなんでしょう。

やまさき:定番メニューを作っていないことですね。ドリンクメニューは紙で用意していますが、食事メニューは黒板に毎日手書きしています。

――その理由は?

やまさき:野菜料理は、旬の食材をいかにシンプルに美味しく食べてもらうかが大切なので、毎日、メニューが変わってしまうんです。それに、常連さんが多いので、同じメニューではお客様もすぐ飽きてしまう。私自身も新しいレシピを考えるのが楽しいので、定番メニューを「置かない」というより、「置けない」といったほうが正しいかも知れません(笑)。

ブランドが確立しているエリアでの出店はメリットだが、そのお店にしかない個性も大事

――では、お店づくりでデザイナーとしてこだわっているところは?

やまさき:こだわりというほどではないのですが、居心地のよさを意識したインテリアには、これまでの経験が活きているかもしれないです。デザイナーの仕事は、素材をいかに心地よく配置してキレイに見せるかが大事。そのポイントは平面でも立体でも一緒なので、よく使う食器や自家製のフルーツ酒などを棚に並べて「見せる収納」にしたり、棚に友人の作家さんの作品を展示販売したり、見て楽しいインテリアは心がけています。

――「のひのひ」を開店させて8年が経ち、順調に顧客を増やされているやまさきさんですが、中目黒のような有名なグルメエリアで飲食店を始めようという方へ、アドバイスを送るとすれば?

やまさき:中目黒の場合、テレビの情報番組などで扱われることが多いので、「おしゃれエリア」としてブランドが確立しているのはメリットですね。首都圏以外でも知られているので、休日や花見シーズンは外から訪れる方がたくさんいる。その代わり、平日は地元の方しかいないので、コンスタントな集客は難しい。

人気エリアで開業して「続けて」いくには、戦略的な宣伝や店づくりが必要だと思います。それと、続ける気力・体力と、金銭的な維持。たとえば、桜の季節に花見客が殺到する川沿いのエリアは、そこで1年分の家賃を払えるくらいの売上を見込んでいるところもあるので、生き残るには大変な街だと思います。

あとは、その店にしかない個性を大事にしたほうがいいというのは、長年飲食業界に携わっている身として実感しています。私も近所のお店にごはんを食べに行きますが、そのお店に何か印象深いものがあると、また訪れたくなりますね。

小さい店こそ、お客さんとのほどよい距離感を大事にしたい

――そこで大事にしている「のひのひ」の個性とは?

やまさき:うちは居酒屋でもなくバーでもなく「『野菜メインの家庭料理』をふるまう飲み食い処」。中目黒エリアにはあまりないコンセプトのお店なのが、功を奏しているのかなと。

――グルメエリアにも、ほかにない飲食店の「隙間」がまだあるのですね。

やまさき:あとは、お客様とのネットワークを大切にしています。たとえば、自分になじみのある土地であれば会話も弾みやすいので、ご近所に住む常連さんとのネットワークもつくりやすい。そこからの口コミ効果も高いと思います。新規のお客様がいらしたときも、気の合いそうな常連さんの隣に席をご用意して、お客様同士のネットワークを作っていただくことも意識しています。そうすると、お互い居心地もよくなりますし、長く通ってくださるようになる。小さな店だからこその「ほどよい距離感」をこれからも大事にしていきたいですね。

飲み食い処「のひのひ」

東京都目黒区上目黒3-16-4 長岡ビル3F
03-6412-8680
17:00〜24:00(土曜は15:00〜22:00)
日曜休 祝日不定休
ブログ http://nohinohi.exblog.jp/
Instagram @sakiccyodrill

飲み食い処「のひのひ」
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