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先輩開業インタビュー
鮮度命の野菜で「無在庫の宅配サービス」を目指す、青果ミコト屋の偉業

会社勤めをしていて、「ずっとこの仕事を続けるのか?」「このままでいいのか?」と疑問に思う人は多いかと思います。現在、オーガニック野菜の宅配・通販をする「青果ミコト屋」の経営者、鈴木鉄平さんと山代徹さんもその当事者でした。二人は自分なりのやりがいを求めて脱サラし、世界へ旅に出ます。帰国後、農家で修業を積んだのち、自らキャンピングカーを運転して全国各地の農家を巡り、自分たちが納得した質の高い野菜を仕入れています。
2011年の起業以来、「旅する八百屋」をキャッチコピーに、ライフスタイルを提案する青果店として注目を集め、いまでは全国津々浦々から注文が殺到。週末はさまざまな食イベントに招待され、出張移動販売に出向いています。「自分の仕事」を見つけ、事業を伸ばし続けている青果ミコト屋のお二人に、そのこだわりとノウハウを聞きました。

自分の生活程度ならなんとかなる。脱サラで手にした自分らしい働き方

cont01.jpg――鈴木さんと山代さんは、高校時代の同級生で、社会人になっても同じ会社に勤め、ともに脱サラ。その後、青果販売を行う「青果ミコト屋」を一緒に立ち上げられたそうですね。

山代(左写真 / 左):はい。前職では、飛び込みなども含めたいわゆる営業職をしていました。売上が良くて給料もけっこう貰えていたのですが、いつの日か「このままでいいのか?」と思うようになり。

鈴木(左写真 / 右):働いていた会社も、こういってはなんですけど、あまり人に胸を張って自慢できる商売ではなかったんです。それに以前から、いつか独立して自分で何かをやりたいと思ってたこともありまして。

山代:ぼくが3年ほど勤めたところで、二人とも会社を辞めてネパールやインドなどアジアを旅しました。

――帰国後に二人は「暮らしと食」のもとになる「農業」を実践。それぞれ準備を整え、2011年に「青果ミコト屋」を始められた。独立開業を志すときに、飲食店経営などを含めて「食」にまつわる事業を選ぶ方は多いですね。

鈴木:そうでしょうね。やはり、生活のなかで「食」はとても大切なことですから。ぼくは同じ食事を摂るなら、やはり農家の方が丹精込めて作ったいい野菜を食べたいし、ほかの人にもそれを食べてもらいたい。自分がいいと思うナチュラルなライフスタイルが、自然農法などに結びついていたんです。

それにスーパーでは1年中、バラエティーに富んだ野菜が何種類も売られていますが、本来は、それぞれに旬があり、美味しい時期や、栄養価も違う。起業前の農業経験のなかで、野菜や農家の人を大切にするぼくらの想いやライフスタイルに共感してくれる人に直接野菜を売る仕事なら、自分たちでもできるんじゃないかと思ったんです。それが青果店をやってみるきっかけでした。

――起業・独立という道を選ぶのに不安はありませんでしたか?


山代:あまり深刻には考えませんでしたね。もし失敗しても、小規模な仕事から始めればやり直しもききますし。

鈴木:いまは仕事を手伝ってくれるスタッフが数人いますが、最初は本当に山代と二人だけ。自分たちの生活程度なら、なんとかまかなえるだろう、と。いま振り返ると、もうちょっと厳しく見通しを考えてから始めたほうが安心だったかな? とは思いましたけど(笑)。それでも、サラリーマン時代よりいまのほうが、やりがい、働きがいという気持ちのうえでは幸せですね。

青果ミコト屋の想いをクリエイティブに発信することで、お客さんの心をつかむ

cont02.jpg ――実際、「ミコト屋」をスタートするまでに準備されたことはなんでしたか? 山代さんはマーケティングの勉強などもされたと伺いましたが。

山代:(鈴木)鉄平のやりたいことを実務面からフォローできたらいいなと、「中小企業診断士」の勉強をしました。現実的に、事業のマーケティングでものすごく役に立っているわけではないですが(笑)、知識はあって良かったかなと。

――サラリーマン時代の仕事で、独立に役立ったことはありますか?

鈴木:仕入れ先である農家の人たちやイベント出店で出会うお客様たちとのコミュニケーションには、営業マン時代の経験がいきている気はしますね。うちの商売は、たんに野菜を買いつけ、売って終わりにはしたくない。農家の方ともお客様とも価値観を共有する「仲間」のような感覚で長くおつき合いをしたいので、関わる方とのコミュニケーションは大切にしています。

――現在はどのように運営しているのでしょうか?

鈴木:現在のお客様は、ぼくらが全国の農家から仕入れた野菜をウェブで宅配注文いただく方がメインです。あとは、キャンピングカーを使った移動式販売でイベント出店して直接、野菜を買ってくださる方のほか、全国に20店舗ほどの飲食店と取引があります。個人のお客様に対しては、友人の料理家に考えてもらったレシピを載せたオリジナルの小冊子を配っています。

—購入した野菜を美味しく食べていただくための工夫ですね。

鈴木:あと、ぼくらは毎年、キャンピングカーを転がして、全国各地の新しい生産者さんの発掘と美味しい野菜探しの旅に出ているんですね。そこで出会った生産者さんの人となりやこだわりなどをお伝えする冊子も作っています。冊子では、作り手の想いを伝えられますし、ぼくらが届ける野菜により愛着を持っていただけるかなと。飲食店さんも、オーダーがあればどこにでも出荷するのではなく、野菜のよさを最大限にいかしてくれる方とのおつき合いを大事にしています。

――お二人の想いや店のコンセプトをお客様に伝えることで、自らのブランディングを行い、「青果ミコト屋」そのもののファンになっていただくわけですね。

鈴木:そうですね。レシピの冊子も、いわゆる料理本に載るような凝ったものやお洒落なものではなく、野菜そのものを美味しく食べてもらえるシンプルなレシピを提案しています。一人暮らしの男性でも手軽に作れるのでとても好評ですし、保存方法も載せて役立てていただいています。

また冊子自体の作りにもこだわっていて、小さな写真集や読み物としてずっと手もとに置いてもらえるよう、キレイなデザインを心掛けています。読んだら捨てるという考えは、作り手の想いを大切にするぼくらのやり方には反する。それに「食」はそもそもクリエイティブな要素があるものだと思うし、ぼくらの仕事からもクリエイティブなライフスタイルを伝えられたらいいですね。

鮮度を保ち、在庫ロスをなくす。その秘策は「決められた日」にお届けする定期販売にあり

cont03.jpg ――野菜などの生鮮食料品を宅配で扱う場合、在庫管理が大きな問題になると思います。鮮度の高いものを届ける施策はどうされているのでしょうか。

鈴木:とくに葉物類などは繊細ですしね。うちは最初からバラ売りではなく、産地から届いた旬な野菜をこちらでセレクトして、セットにしたものを受注販売することにしました。お届け日も毎週火曜日と決めて、必要なぶんをその日までに仕入れて配送する方式です。

定期配送のタイミングも「毎週コース」「月2回コース」「月1回コース」の3コースを用意。セット内容も野菜が約6種類入った一人暮らし用(SSセット、¥2,400)から、約12から14種類の野菜を詰めた4、5人のご家族用(Lセット、¥4,500)まで、4種類に決めています。新規のお客様向けには、より低価格のお試しセット(¥2,300)もあります。

定期購入も新規もあらかじめ登録してくださったお客様が相手ですし、配送日も最初から決めておく。この方法なら在庫を持たないからロスもないですし、大きな倉庫も必要ないんですよ。メニューの野菜もその時々の旬なものをぼくらがバランス良く選んでいます。

首都圏なら毎週末どこかでマルシェがある。イベント出店や口コミで広がった

cont04.jpg ――宅配や移動販売で店舗を持たないという業態では、お客さんに知ってもらう機会が少ないのではと思います。知名度をどのように上げたのでしょうか?

鈴木:ありがたいことに、ほとんどが口コミですね。ミコト屋を始めた頃は、自分たちが車で直接届けられる範囲の30組ほどのお客様……といっても、ぼくらの地元・横浜の知り合いや友人が相手でしたが(笑)、そこから口コミで広がって、いまは宅配を利用されている個人のお客様は15倍ほどに増えました。

――特別な宣伝はされていないのですか?

鈴木:していないですね。あとは、キャンピングカーで男二人が全国の農産地を回って……というやり方に興味を持ってくださった雑誌やネットメディアの方が取材に来てくれて、評判を広げてくれたのも大きい。そしてオーガニック系のマルシェなどのイベント出店も大きかった。首都圏だけでも毎週のようにマルシェは開かれていますし、そういう場所に来る方は食に対する意識も高く、うちを気に入ってくださる方との出会いも多いです。

――その口コミ効果を高めているのが、お二人のコンセプトを伝える丁寧なブランディングなのでしょうね。ちなみに「青果ミコト屋」の業態では、どの程度の開業資金がかかりましたか?

鈴木:まず買ったのは、ぼくらが生産者のところを回るために必要なキャンピングカーでしたが、当然中古で購入しました(笑)。それに150万円くらいかかりましたが、起業して数年間は自宅で在庫管理と荷造りをしていたので家賃もなかったですし、全部で250万円くらいしかかかってないと思います。店舗を持たない受注宅配なので、一般的な開業に比べると資金は破格じゃないですかね?(笑)

どんな商売でも手を広げすぎたら回らなくなる。自分たちに合う販売方法を続けていきたい

cont05.jpg ――いまはネットショッピングも多彩なので、顧客を増やすための工夫も必要かと思います。

鈴木:生協はもちろん、野菜宅配業者はここ数年でかなり増えていますから、価格競争になってしまうと大手にはとても敵わない。ただ、ぼくらはそこでの競争はしたくないんですね。実際、有機野菜や低農薬野菜の宅配でいえば、薄利多売をしていないので価格は決して安くはありません。でもそのぶん、生産者一人ひとりの顔が見える安心な野菜、品質のいい野菜を適正価格で買っていただくことができます。

—店舗を持たないぶん、お客さんとはイベントやレシピ冊子などでのきめ細かなコミュニケーションが重要になってきますね。

鈴木:お客様が野菜を食べた感想は、農家の方にもしっかりお伝えしますし、生産者の想いもお客様にお伝えする。農家とお客様との架け橋になることが、この仕事を始めた理由の一つでもあるので、安さを売りにせず、ガツガツせずにやっていけたらいいですね。現実問題、けっして儲かる仕事ではないので、家族には裕福な思いはさせられていませんけど、やりがいはとても感じています。

――地道に続けていくことが大切だと。

鈴木:いきなりお客様が倍増しても、宅配と移動式販売の両方をやっていると、実際問題、ぼくらだけでは手が回らない、というのもありますけどね(苦笑)。ただ、どんな商売でも、ブームのように急に売上が増えていくと、落ちるときも急じゃないですか。好調なときに手を広げすぎると、ピークが過ぎたときに大変なことになる。

その点、うちは口コミが主なので、ぼくらに信頼を寄せてくれるお客様が、じわじわと増えている状態です。それを絶やさないように、今後は努力していきたい。これからも移動式販売などで、「青果ミコト屋」を好きになってくれる方を増やしながら、時代にマッチした食の提案をしていきたいですね。

旅する八百屋 青果ミコト屋

045-777-0558
9:00〜19:00
http://micotoya.com/
MAIL info@micotoya.com
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