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知る人ぞ知る、コーヒー店の激戦区・仙川駅。地元に愛される店作りのコツ

京王線の仙川駅は、1日の乗降客数7.5万人。これは、乗降客数11万人の調布駅や8万人台の府中、分倍河原、京王多摩センター駅などと比較しても、突出して大きな数字ではない。しかし、そんな仙川駅は、カフェやコーヒー店の激戦区でもある。どうして閑静な住宅街で、カフェが脚光を浴びているのだろうか? 各店舗に取材を重ね、その要因を分析した。

開業するなら「地元」だと考える、仙川出身の店主たち

商圏データ「マケプラ」によれば、仙川駅の半径0.5㎞以内には、9軒のカフェや喫茶店が集っている。この数字は、新橋や銀座などの都市部と比べると決して多くはない。しかしスターバックスなどの大規模チェーン店はもちろんのこと、猿田彦珈琲の2号店「猿田彦珈琲 アトリエ仙川」や「星乃珈琲店」、カルディコーヒーファームのカフェ店舗「カフェカルディーノ」といった話題店が隣接するほか、こだわりのある個人経営の店舗など、この規模の駅周辺に、あらゆるタイプのコーヒー店がひしめき合っているというのは、とても珍しい状態だ。

いったい、なぜこぞって仙川に開業するのだろうか? 個人経営店「カフェカホン」店主の平村潤雨さんは出店の理由をこう語る。

「4年半前に開業したのですが、一番の理由は最寄りとして利用していたのが仙川駅だったから。当時、周辺に自家焙煎のコーヒー店もなく、チャンスがあるのではと考えたんです。開業準備を始めた頃、すでに激戦区となりつつありましたが、チェーン店が多く、自家焙煎で品質のいい豆を提供するお店はありませんでした」

また、ライブや教育イベントなどを精力的に開催する「キックバックカフェ」の柳田さんも「弊社オーナーが周辺出身であり、土地勘や地域に対する思い入れがあったこと」から、隣駅のつつじヶ丘駅に開業、さらに2004年から仙川駅に移転オープン。新規出店が続く人気店・猿田彦珈琲も、オーナーの地元だったことから仙川で2号店の開業を決めている。他の土地からビジネスのために乗り込んできたというよりも、縁がある土地だから開業したというカフェが少なくないようだ。

激戦区だからこそ、厳しくも温かいお客さんの目線が大切

とはいえ、どんなに地域に対する想いがあっても、顧客がいなければコーヒー店は成り立たない。仙川はどのような街なのか? という問いに対し、キックバックカフェの柳田さんはこう語る。

「当店が移転してからの12年間で、道路やマンションが整備され、それにともなって飲食店や衣料雑貨店が増加していきました。大規模なホームセンターが出店したことにより、週末の買い物客も増加し、安藤忠雄の建築群が軒を連ねるなど、おしゃれな街の代名詞になりつつあります。そんな状況が重なり、住宅地として人気が急上昇してきたことが、カフェ激戦区になった要因ではないでしょうか」

住宅街として人気が高く、休日には、近隣に居住する人だけでなく、高級住宅が並ぶ成城や三鷹エリアのファミリー層など、さまざまな人々がコーヒー店に足を運んでいる。そんな客層の特徴を、カフェカホンの平村さんはこう語る。

「仙川のお客様は、品質にこだわり、厳しい目線を持っている。けれども、そんな厳しいお客さんも、一度認めてくれたら、比較的長い間リピーターとなって繰り返し利用してくれるんです」

安かろう悪かろうではなく、多少高くても品質のいいものを選択し、日常の中に取り込む。仙川のコーヒー好きはシビアな目線を持ちながらも、こだわりを持ち努力をするお店ならば積極的に利用してくれる。平村さんの話からは、厳しくも温かい仙川の客層が見えてくる。

「隙間」を狙った開業に、チャンスはあるのか?

では、そんな仙川で、並み居る競合店との差別化を図っていくためにはどうしたらいいのだろうか? お子さま連れの家族が多い「キックバックカフェ」が差別化のキーワードとして挙げているのが「安心・安全」というキーワード。可能な限り国産の原料を使用し、無農薬野菜などをふんだんに使った安心で安全な商品の提供を心がけているという。また、オーナーがミュージシャンという経歴を活かした音楽ライブの開催やトークライブなども実施し、カフェのみならず、情報発信の場所としても役割を果たしている。

一方、カフェカホンでは、豆の品質に徹底的にこだわり、中米のコーヒー農園の視察や、オランダ・ギーセン社製の焙煎機を日本で初めて導入するなど、チェーン店には真似できない品質の高いコーヒーの提供に特化している。ただし、平村さんによれば、「あらゆるタイプのコーヒー店がそろった仙川には、新規参入のチャンスは残されていない」という。

「いまから仙川エリアに参入することは、あまりおすすめはできません。ライバルが増えるのが嫌というわけではなく、個人で開業するすき間が残されていないのです。仙川ですき間を探すよりも、他の街を狙ったほうが成功の確率が上がるのではないでしょうか」

大きな資本を持つコーヒーチェーン店に、個人店として立ち向かっていくためには巧妙な戦略と実力が求められる。激戦区のすき間を狙うのか、それとも、これから再開発が進むエリアなど未開拓の街を探すのかは、独立開業を目指す人にとって重要な分かれ道となるだろう。しかし、今回話を聞いた二つの店舗とも、地元に根ざし、地元への愛を持っていることは特筆すべき事柄。そんな街への愛着もまた、店を成功させる「戦略」の一つとなるかもしれない。

データ:商圏データ「マケプラ調べ(2016年5月現在)

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