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先輩開業インタビュー

わが子の“困りごと”をきっかけに商品を開発!まったくの素人からスタートした“発明ママ”の経営者としての道のり

「発明で一攫千金!」誰もが一度は思い描くストーリーではないでしょうか。そんな夢を、まさに実現させたのがHOLUDONA代表の和田美香さんです。和田さんが発明したのは、レインコート収納ポーチKAPAPA(かっぱっぱ)。発明のきっかけは、当時小学生だった息子さんが、雨が降ってもレインコートを着なくて困ったことだったとか。KAPAPAはテレビで取り上げられるなど話題となり事業も順調にスタートしますが、和田さん自身は経営についてはまったくの素人。これまでの起業家としての道のりは苦難の連続だったそうです。そんな “発明ママ” 和田さんに、これまでの経営について、経験談や発明のコツなどを伺います。

メイン事業は「親子の移動をサポートする雨具作り」

――現在の事業内容について教えてください
レインコート収納ポーチKAPAPAをベースにしたオリジナル雨具の企画・製造・販売を行っています。そのほかに、企業から依頼があれば、オリジナルグッズやアイデア商品なども制作しています。具体的には、プロスポーツチームへレイングッズなどの提案や、保育園からの依頼で園児用のレインコートを作ったり、それにまつわるグッズの提案を行うなど、受注による制作・販売なども展開しています。

――オリジナル雨具とはどのような商品ですか?
当社は親子の移動をサポートする雨具作りをメイン事業にしていて、現在販売しているのは、ポンチョ&レインコートセットです。子どもの通学用雨具と、大人の自転車用雨具の2種類があり、KAPAPAシリーズとして展開中です。もともとKAPAPAは子どもの通学用に作ったものだったのですが、大人用もほしいという声があり、開発にいたりました。

――KAPAPAの特徴を教えてください
まずKAPAPAとして最初に作ったのがポーチで、これが当社事業をスタートするきっかけとなった商品です。簡単に言えば、ランドセルの上に取り付けられるポーチで、これにレインコートを入れておくことで、雨が降ってきてもすぐに着られるように工夫されています。だから名称も「パッと出してパッと着られてパッと収納できる」から、KAPAPAなのです。

HOLUDONAのKAPAPAの写真 ――大人用雨具にはどんな工夫がされているのですか?
ママさんたちの意見として、「どうしても雨の日に自転車に乗っていると、顔、手、膝が濡れてしまう」という悩みを多く耳にしていました。そこで、顔が濡れないようにフードにゴムの芯を入れたり、絞れば頭にフィットするようにコードを付けたりと、さまざまな工夫が盛り込まれています。また手足が濡れないように、手の甲もスッポリ入る手指カバーや、ポンチョをマジックテープで自転車に留められるテント機能が備わっているなど、実際の声を反映して作られたアイデア商品になります。

「面倒だから着たくない」わが子の一言からKAPAPAを発明

――KAPAPAはどのようにして生まれたのですか?
現在、20歳になる長男が、小学校1年生になったばかりのことです。通学や遠足にレインコートを持っていくのですが、雨が降っても着ないで濡れて帰ってくることが続きました。「レインコートを持っているのに、なぜ着ないの?」と聞くと、「面倒だから着たくない」と言われました。どうやらランドセルの上から着られないし、そもそも出し入れが手間とのことでした。これはなんとかしないといけないと思い、自分で息子が着たくなるようなものを作ってみようと考えました。

――ハンドメイドで作ろうと考えたのですか?
そうです。幼稚園に通っている時や小学校に上がりたての頃というのは、通学バックなど親がハンドメイドで何かを作る機会があります。だから、自宅に布や紐など材料があったので、それで作ろうと思いつきました。まずランドセルの上からでもレインコートを着られるように、ポーチ型でランドセルに付けられるタイプにしました。また、ポーチ内に留め具を付け、そこにレインコートを引っ掛け、いつでもすぐに広げられて、簡単に着られるように工夫もしました。

――実際に作ってみるという発想がすばらしいですね
ただ、作ってみたものの、息子に着させるだけではもったいないので、当初他のアイデアを応募していた「発明コンクール」に応募してみるのもおもしろいかも、と軽い気持ちで送ってみたら、なんと入賞してしまい、とても驚きました。たしか2011年のことです。でも、私は当時、保育士として働いていたので、特許を申請したものの、すぐに発明品で起業しようとは考えませんでした。

――その後、KAPAPAをどうしたのですか?
どこかの企業が作ってくれないかと、ひたすら売り込んでいました。ネットで雨具メーカーを調べては企画書を送っていたと思います。実は当時、パソコンを触ったこともなくて、ちょっとした表を作るのにも何時間もかかっていて。でも、夢のある「趣味」と思って取り組んでいました。そうしているうちに下の子も小学校に上がり少し時間に余裕ができ、せっかく特許も取ったので自分でやってみようかと考え、起業したのが2015年になります。

地元野球チームのグッズになるも、ものづくりの厳しさを知ることに

――起業後はどのように展開されたのですか?
仲のいいママ友に手伝ってもらいながら、ハンドメイドのKAPAPAを地域のフリーマーケットやお祭りなどで販売していました。今考えると、それがテストマーケティングになっていたと思います。お客様からの反響も良くて、これはいけると。ですが、その次のステップがまったくわからなかったので、そこで初めて女性起業家に特化したセミナーに通いました。そこでは事業計画を作ってビジネスコンテストに応募することが最終目標に設定されていたので、がんばって3カ月間毎週通い、プレゼンもできるように努力しました。最後に3つのビジネスコンテストに応募したのですが、すべてファイナリストに残った時は興奮しましたね。おかげで、各行政の支援団体からサポートしていただくこともできました。

HOLUDONA代表の和田美香さんの写真 ――KAPAPAがどれほど優れた作品だったかがよくわかります
本当にうれしかったです。実際に支援団体からのサポートがスタートして、まず中小企業診断士の方から聞かれたのが、「今後どうしていきたいか」でした。そこで私が答えたのが「地元のプロ野球チームのグッズにしたい!」でした。そしたら中小企業診断士の方のお力添えもあり、ご縁がつながってとんとん拍子に話が進み、KAPAPAポンチョとポーチセットを納品することになりました。当初は個人事業だったので、球団との取引を機に法人化しました。

――事業としてスムーズにスタートできたのですね
ただ、初めての契約で大きな失敗も経験しました。中国の工場で、KAPAPAの生産を開始したのですが、実際に届いた商品を見ると約60%が不良品。スタッフ(元ママ友達など)と夜な夜な納品日に向けて、検品しては汚れを拭いたり補修したりする毎日でした。縁あってスムーズに進んだ話ではありましたが、やはり経営者としての経験もスキルもなかったので、それがはっきりと結果として出た、まさに“洗礼”のような出来事でした。納品が終わった後、本当に悔しくて、不甲斐なくて、思わず泣いてしまいました。

――海外生産の怖さを知る大きな経験になった、と
その通りです。日本の工場であれば、きちんとした仕様書を出せばそのまま出来上がってくるイメージがあると思います。私もそうでした。でも、中国の工場だとそうはいきません。仕様書に曖昧なところがあったり、「わかるだろう」なんて考えたりしていたら、もう絶対にダメ。すべてを書いておかないと後々必ず揉めます。そうしたところが、経営者として、メーカーとして、私の甘かった点だったと今にして思います。

現役ママたちのダイレクトな反応がマーケティングになる

――発明にコツといったものはありますか?
困りごとに敏感になることは大切かもしれません。当社はスタッフのほとんどがママさんたちなので、子ども用品などの困りごとや、あると便利なものといった話は、ありがたいことにダイレクトで聞くことができます。定期的にスタッフで行うアイデア出しなどの会議では、それ自体がマーケティングに近いものがあります。私が「これ、いいと思わない?」とアイデアを出すと、すぐにその場で反応をもらえる。アイデアのブラッシュアップは素早く行えますね。

――これまで事業をやってきてよかったと思う瞬間はどんな時ですか?
当社が作ったものを、購入してくれた人が使っているところを街中で見かけた時や知り合いから「学校で使っている子がいたよ」と聞いたり、実際に使っている人から「雨の日役立ってます!」「細かな所まで考えられた仕様がありがたいです」などの感想を聞けるととてもうれしいですね。私の仕事が人の役に立っていることを実感します。今も催事販売や地元のイベントなどでの販売も行っているのですが、そこでいただける実際に使っている人からのご意見やご感想も次の製品作りに活きていて、ありがたいばかりです。

HOLUDONA代表の和田美香さんのKAPAPAの写真 ――事業の中で大変だと感じることはなんですか?
挙げればきりがないほどありますが、事務所にかかるコストはその一つですね。会社を立ち上げたばかりの頃は自宅で作業していたのですが、仕事上、在庫を抱えるので、商品やダンボールを置く場所が必要になってきました。そこで、レンタルオフィスなどを借りていたのですが、それにも限界が来て、今の事務所を借りることにしました。やはり毎月固定の経費になるので大変ではあります。でも、デメリットだけではなくて、事務所を構えることで「さあ、これまで以上にがんばるぞ!」と、気持ちに張りが出たというか。おかげでよりよい商品をお客様に届けたいという気持ちも増して、ものづくりへの姿勢にも良い影響がありました。

成功の秘訣は、起業前に「応援してくれる人」を見つけること

――今後予定している展開などはありますか?
今後は現在販売しているKAPAPAシリーズをバージョンアップしていきたいと考えています。また、当社はライセンス契約によるコラボ商品も販売していて、さまざまな企業とコラボしていきたいですね。当社の強みは、発明から始まったこともあり、「発想」にあると思っています。できればアイデアの提供をメイン事業にしたい。今後はそうした展開をしていけるように、ベストなパートナーができればとも考えています。

――最後に、独立・開業を目指す読者にアドバイスをお願いします
思いついたアイデアやサービスを形作るのは本当に楽しいし、やりがいもあります。だけども、やはり現実として、自分で会社を起こして、さらに経営していくことは大変でもあります。だからこそ、起業前にできるだけ経験を積んだり、応援してくれる人を見つけたりと、準備をしてから臨んだほうがより失敗が少なく、スムーズに事業を進められると思います。ただし、経験やご縁は、運などの要素もあって、自分だけで望んでも得られないものです。そうした意味で、チャレンジするならしっかりとタイミングを見たほうがいいとも私は思っています。そして、スタートを切ったら後はもうがむしゃらにがんばるのみですね。

――応援してくれる人たちを見つけるために、和田さんはどんなことをしてきましたか?
共感できる人たちがいそうな場所に足を運ぶことは大切ですね。私の場合、ものづくりをしている人のセミナーや、今だとオンラインサロンに入って、情報を集めています。自分がやりたいことをやっている人の話は本当に参考になりますから。そしてもう一つ、とにかく自分がやりたいことを発信する。そうすると、共感してくれた人からアドバイスをもらえるし、話すことで自分の考えも整理できます。以前、関係がなさそうだと思っていた人に事業アイデアを話していたら、のちに応援者となってくれる人とつなげてくれたこともありました。どこでどんなご縁があるかわかりません。どんどん発信してみてくださいね!

HOLUDONA株式会社

所在地:神奈川県横浜市神奈川区六角橋2−23−19
TEL:045-294-2887
メール:info@holudona.com
※取材時点の情報です

https://holudona.com

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