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先輩開業インタビュー

「したいことは全部する!」OLからフリーライター、PR会社代表と進化を続ける女性起業家

近年、女性の社会進出が一気に加速したとはいえ、まだまだ課題も多く、企業や周囲のサポートが足りていないのが現状です。特に子育て世代の女性にとって家庭と仕事の両立は難易度が高く、夫の理解や協力が必要です。ましてや起業家ともなると、さらに厳しい状況になることも。そうした悩みを持つ女性も多い中、起業家として理想的な働き方を続けているのが、株式会社グラヴィティ代表取締役の山田佳奈恵さんです。育児・家事と仕事のバランスや、コロナ禍での経営難など、さまざまな課題や困難にも負けじと興味のあることに着手し、進化し続けている姿は社会進出を目指す女性に勇気を与えてくれます。そんな山田さんに、起業のきっかけや仕事へのモチベーションについて、詳しくお話を伺いました。

コロナ禍をきっかけに事業転換して業績アップへ

起業後の苦労を語る株式会社グラヴィティ代表取締役の山田佳奈恵さんの写真 ――どのような事業を展開しているのでしょうか?
現在の主な事業は、広報PR代行・コンサルティングになります。例えば、個人事業主や小規模の会社だと、広報の専任担当がいることはまれです。そうした企業の広報業務を請け負っています。また、広報部があっても「新聞やネットニュースなどのメディアに取り上げてもらいたいけどやり方がわからない」「メディアに掲載されたことはあるけど認知度や売上の拡大につながらない」といった悩みを持つ企業を対象に、専門家としてアドバイスするコンサル業もしています。 

――広報業務やメディアPRが事業の強みなのですね
そうですね。世の中に広く商品やサービスを知ってもらうには意外と地道な作業が必要で、例えば新聞やテレビ番組に取り上げてほしいもののリリース情報や挨拶状を1通1通送付していくようなこともしています。蓄積されたノウハウや経験を元に、なるべく取り上げてもらえるようリリースの作り方、送り方に工夫を凝らし、これまで取り上げられた実績も数多いので各メディアとのつながりがあるのも強みの一つです。 

――PRの代行やコンサルティングを始めたきっかけは?
実は、コロナ禍を機に事業内容について大きく舵を切りました。コロナ前はライター業を主軸にしていて、編集プロダクションと提携して取材や記事作成をしたり、独自でライティング講座を催したりしていました。ですが、コロナ直前に請け負っていた仕事が話題の飲食店や女性向けのマッサージ店、エステサロンといった店舗に足を運び、体験記事を執筆するような内容だったので、コロナの影響で一気になくなってしまったのです。2020年4月頃には月収数万円の時期もあり、正直に言えば廃業も考えました。

――どのように業績を回復させたのですか?
当時、企業がSNSで配信するメッセージや画像の作成、メルマガの原稿作成といった仕事で細々と食いつないでいたところ、知人からコロナ融資について教えてもらいました。私は以前、日本政策金融公庫に勤めていたのですが、ずっと本店勤務でいわゆる「現場」に出たことがなく、恥ずかしいのですが融資の知識は浅かったのです。しかし、「古巣にお世話になるタイミングはここしかない!」と、思い切って100万円を借りることにしました。そして、知人の「融資は脳みそに投資すること!」というアドバイスに従って、融資からいくらか捻出して、数年前からFacebookで見かけて気になっていたPRについてのノウハウを学べる講座を受講しました。数十万もする長期講座を受けたのは初めてだったので1日でも早くPRの仕事を受注しようと行動し、受講開始2カ月でPRの仕事を請け負うことができ、4カ月の受講期間中には受講料以上の売上を立たせることができました。それからPRを専門に事業展開しているというわけです。

ライター業に魅力を感じてフリーへと転身

――起業時はライター業をメインに展開していたということでしたが、きっかけは何だったのでしょうか?
2004年に新卒で入庫した、日本政策金融公庫の前身である「農林漁業金融公庫」で、入庫2年目から広報部に所属したのが始まりです。女性4人で3つの雑誌を編集していたこともあり、私も着任当初から情報誌の副編集長を担うなど、充実した毎日を送っていました。北は青森から南は鹿児島までほぼ一人で取材にいく生活を3年半させていただき、一般人はもちろん芸能人の方にお話を伺う仕事はとても刺激的でした。そのうち、ライターの仕事をもっと続けたいと思うようになって、広報部から異動するタイミングで退社し、転職先でも同様の仕事ができる専門家として働いていましたが、ちょうど30歳を節目にフリーライターとして独立しました。2012年のことです。 

――フリーライターになってからは順調だったのですか?
そもそもライターとしての人脈がなく、仕事なんてもらえる状況ではありませんでした。なので、まだ会社員だった頃に事前準備として、著名なライターのSNSやブログをチェックし、その中でも検索で上位に表示される人が単発でライター講座を開催していたので、人脈作りも兼ねて受講しました。そこはライティングの基礎知識だけでなく、仕事の取り方なども教えていて、独立後には案件をいくつか紹介していただきました。それ以外だと、仕事の依頼をいただく窓口となっていたのが個人で続けていたブログです。当時、フリーライターになるためのノウハウや、新規でいただいた仕事などライターの日常を記事にして発信していました。それが好評で、閲覧数も徐々に増えていき、ブログ経由で仕事をいただけるようになっていきました。  

――ブログに直接仕事依頼が届くのですか?
そうです。独立して初めていただいた仕事もブログ経由でした。また、Twitterでもライター業について発信していたのですが、反応として意外と多かったのがライターを目指す方からの相談です。ライターの養成講座を開講したのも、そうした声がきっかけになっています。2015年頃になると、編集プロダクションからの仕事依頼がかなり増え、私もフリーライターの方々とのつながりがほしくなっていた時期だったので、それならいっそのこと育てようという発想でスタートしました。当社の講座のメリットに、私が抱えていた案件をすぐに振ることができるということがあったので、定員の倍以上の申し込みがありました。 

株式会社グラヴィティ代表取締役の山田佳奈恵さんと受講生の写真 ――どのような形式で講座を開いていたのですか?
ホテルのラウンジや小さな会議室で、基本は3〜4時間ほどの単発形式で開催していました。開催地は千葉や東京のほかに、大阪もありましたね。四国や九州やアメリカ在住の日本人の方も申し込んでくれたので、その方々にはSkypeを活用してオンライン受講していただきました。内容はライターとしての基礎知識を始め、SEO対策やSNS集客するためのライティング方法。また、人気だったのが、企業との契約を単発で終わらせず、長期契約を結ぶためのノウハウですね。これは私の経験を元にしたもので、特に受講生から好評でした。何と言ってもフリーライターにとって長期のお仕事は魅力的ですから。 

“お付き合い”で法人化した結果、意外なメリットに驚き

――法人化したのはいつ頃ですか?
2014年です。これについては、売上が増えたとか、節税対策といった主だった理由があったわけではありません。知人が法人化したいということで協力したついでに、私もお付き合いで一緒に会社にしたという程度のことです。なので、当時は資本金もそれほど入れていません。ですが、実際に法人化してみると、大手企業との仕事が増えたり、仕事の幅が広がったりと、意図していなかったメリットがとてもありました。 

――個人にはない、企業としての信用がついてきた、と
信用度は個人の時と比べて目に見えて変わりました。やはり依頼する側は企業として見るので、取材記事を依頼するにしても、細々とした単発仕事ではなく、パッケージとして一定数をまとめてご依頼いただけるケースが少なくありません。相手の企業としてもフリーライターを探すよりも1社へ一度にお願いするほうが楽ですからね。依頼内容も、デパートのアプリや飲食・美容系のポータルサイトに掲載する記事作成などで言えば、通常のコンテンツ制作に加えて季節のキャンペーンやイベントなどの案件も一手に引き受けることが多くて、ボリュームという点でも変化は大きかったと思います。それは今、主軸となっている広報PR代行やコンサルティングでも同じで、企業にお願いするほうが安心なのでしょう。 

――結果論だとしても、法人化したメリットはかなり大きかったのですね
仕事を受ける立場だけでなく、外部に仕事をお願いする場合にも企業のほうが信用されると後になって気づきました。編集プロダクションから毎月何百件という記事作成の依頼を受注する際は、マンパワーが必要です。そうした時に、個人としてフリーライターと提携するよりも、株式会社グラヴィティとして提携したほうが、仕事を受けるほうも安心してくださるんです。また、会社のホームページにライター募集の告知記事を出せば応募がくるなど、SNSだけで呼びかけるのとは反応はかなり違いました。  

ストレス解消法は「仕事」「家族」「ソフトテニス」のバランスにあり

――事業の運営を続けている中で、大切にしていることはなんですか?
今、4歳になる息子がいて、何があってもお迎えに遅れないことです。起業してからずっと自宅を仕事場にしているのですが、平日は息子を保育園に預けています。ただ、子どもの気持ちを考えると、やはり家にいるほうが好きだと思うし、保育園でも早く帰りたがっているようです。だから、保育園のお迎えは遅くても17時前には行くようにしています。朝も8時半や9時と、できるだけ遅めに預けていて、少しでも息子といられるように努力しています。すると、自然に仕事や家事は時短を心がけるようになり、今ではメリハリがついた生活を送れるようになりました。 

――仕事に家事、子育てと大変だと思いますが、ストレスはたまりませんか?
家族はもちろん、仕事も大事で、どれも私にとって欠かせないものです。でも、どっちもがんばっていたらストレスも当然たまってしまいます。そこで、ストレス発散のために打ち込んでいるのが、中学・高校時代に打ち込んで、出産後の37歳からクラブに所属して再開したソフトテニスです。仕事、家族、ソフトテニスの3つはどれも全力で取り組むようにしていて、ソフトテニスが中途半端だと仕事も中途半端で、仕事が中途半端だと家庭も中途半端になるなど、どれが欠けてもダメ。仕事でストレスを溜めないにはソフトテニスもしっかりがんばる。家族を大切にするためには9時半から16時頃までの時間内で仕事を終わらせるように集中して取り組む。こうしたバランスをうまく取ることがストレスをためない秘訣ですね。 

――山田さんの仕事に対して家族は応援してくれていますか?
今は応援してくれていますが、紆余曲折はありました。私がフリーライターになるために会社を退職する時、夫は「いいと思うよ」と応援してくれて。でも、その代わりに条件があって、家事をおろそかにはしないでほしいと言われました。その言葉の真意は、「もうそんなにがんばって働く必要はない」ということだったと思います。当時は子どもがいなかったので、これから家庭を築く上で不安を感じたのかもしれません。そんな中で私の仕事が順調に上向きになって、家を長時間空けるようになると、若干の不満を漏らすようになって。それで、多少の喧嘩はしました。 

ストレス解消法について語る株式会社グラヴィティ代表取締役の山田佳奈恵さんの写真 ――どのように解決したのでしょうか?
夫はもともと心配性で、私が30歳を超えても全国を飛び回り、夜中まで仕事をしていたら身体を壊すのではないかと思っていたようです。しかし私の性格上、心から「やりたい!」と思っていることを抑圧されると爆発してしまう(笑)。なので、家族とのバランスを取ることは常に自分の中の最重要項目で、それで夫が「すごい!」と思えるほどの売上を上げられたら何も言わないんじゃないかと思ってはいました。実は、広報PRの仕事を始めた2021年度の売上は過去最高で、担当してくれている税理士さんがわざわざ「がんばりましたね!」と電話をかけてきたほどでした。その電話が偶然隣にいた夫に聞こえていたみたいで、そこで「そんなにがんばっていたんだ?」と気づいてくれて。その出来事から家事や育児にそれまで以上に協力的になってくれて、本当に助かっています。また、いくつかの出版社や企業から受けたインタビュー動画や取材記事をネットで見てくれているようで、おそらくこの記事も読んでくれるのではないでしょうか(笑)。  

「後悔」を自分の人生の中に増やしたくない

――今後の展開について教えてください
現在のPR代行やコンサルティングの仕事に加えて、これまでの経験を元に独自で広報PR代行のスクールを開く準備をしています。私と同じように、個人で独立してPR関連の仕事を請け負いたい方向けの専門講座になる予定です。後は、地元・千葉の雇用も作っていきたいと考えています。現在、業務委託でリモート協力してもらっている各分野のスタッフは、都内近郊や海外在住の方なのですが、事務所でやらなければならない細かな作業などは地元の方々にお願いしていくつもりです。例えば、PR資料の発送業務でも100通以上を送るとなると、私一人だと大きな負担になります。そこで、地元の大学生などにアルバイトとして手伝ってもらえば、それをきっかけに「こんな仕事もあるんだ」と広報PRの仕事に興味を持ってくれるかもしれません。そうしてこの先の進路の参考にしてもらえたらうれしいです。  

――身につけたスキルをフル活用して次々に事業展開していますが、何が原動力となっているのでしょうか?
座右の銘、と言えば大袈裟ですが、「後悔先に立たず」という言葉は常に意識しているかもしれません。やらなくて後悔したことがこれまでたくさんある中で、そうした心残りをもうこれ以上自分の人生で増やしたくない、というか。もし失敗しても、再チャレンジする仕事なら他にもたくさんありますし、パートやアルバイトでもまったく問題ない。コロナ禍のダメージで廃業しかけた時も、それまで「後悔をしない」選択肢を選び続けてきて自分なりにがんばってきた思いがあるのでまったく恥ずかしいとは思わなかった。だから、どんなチャレンジもそこまで怖いと思わないんです。何に対しても「絶対にやり切らなきゃ!」といった気負いもないので、やりたいと思ったらすぐに行動するのが私の特徴かもしれませんね。 

――最後に、独立開業を考えている方にメッセージをください
独立するだけならそれほどお金はかからないので、ハードルもそこまで高くないはずです。おそらく皆さんが一番気にされるのは、今までの収入を断ち切ることや、それまでのキャリアを捨てることへのリスクだと思うんです。でも、逆を言えば、一歩踏み出しさえすれば、 人はお尻に火がついてがんばります。人生は意外と短いと思っていて、いつやりたいことができなくなるかわかりません。私は今、自分の人生に終わりがきても、それほど後悔はないと思っています。その状態を保つなら、今やりたいことはすぐに行動していくべきですよね。皆さんももし、少しでも起業したいという気持ちがあるのなら、絶対にするべきだと思うし、踏み出したその一歩が今後の人生において自信になるはず。私は皆さんを応援しています! 

株式会社グラヴィティ

所在地:千葉県千葉市緑区
TEL:090-4433-9489
※取材時点の情報です

https://gravity-g.com

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