1. 独立・開業・フランチャイズ情報TOP
  2. マイナビ独立マガジン
  3. 先輩開業インタビュー
  4. ワーママの厳しい現実を知って起業を決断。女性起業家を全力でサポートしたい!
先輩開業インタビュー

ワーママの厳しい現実を知って起業を決断。女性起業家を全力でサポートしたい!

最近では、結婚や出産をしてからも夫婦共働きを続ける人は多く、子育てに関する考え方も多様化しています。しかし、実際に出産や子育てで一度仕事を離れたあと、仕事復帰をしようにも、出産前と同様に働けるのか、育児と仕事の両立はできるのかといった悩みは尽きません。そんなワーキングママ、略してワーママたちの味方になりたいと、事業を立ち上げたのが、女性起業家向けの支援サービスを幅広く展開する蜂谷詠子さんです。起業のきっかけは、まさに自身の子育て体験にありました。今回は、支援事業のエキスパートである蜂谷さんに、会社設立の経緯や事業内容などについて詳しくお話を伺いました。

手がけるのは、女性の活動の幅を広げるための支援事業

蜂谷詠子さんが立ち上げた会社の写真 ――最初に、事業内容を教えてください
2013年に立ち上げ、2015年に法人化した株式会社BEEVALLEYと、2018年設立の株式会社ブルーコンパス、この2つの会社の代表を務めています。BEEVALLEYは 女性起業家を対象にしたWeb制作会社で、要件定義から設計、デザイン、制作、納品後のアフターフォローまでをワンストップで請け負っています。また、Web制作後に続く名刺や会社案内、チラシや展示会用POPなど、紙媒体の制作も一気通貫でご依頼いただくことが多くあります。

――ブルーコンパスについてはいかがでしょうか?
メイン事業は女性専用のコワーキングスペースの運営です。その中で女性の起業支援や、小学生から高校生までを対象にした女子専用学習塾の経営などを展開しています。起業支援については、例えば事業計画書の書き方を教えたり、補助金について情報提供したりと、コワーキングスペースの会員向けにスクールなども行っています。あとは、行政や公的団体が進める女性起業家を支援する活動の事業を受託して、イベントなどのプロジェクトも手がけています。

――女子専用学習塾についても詳しく教えてください。
ブルーコンパスの役員の一人が塾を経営していて、そのフランチャイズとしてコワーキングスペースを使い運営しています。そもそも母親が働いている間、子どもが目の届かない場所にいるというのは不安なものです。ワーママが働く場所と子どもが勉強している場所が同じなら安心ですし、一緒に家に帰ることもできます。そうした環境で学べる塾というのがコンセプトとなっています。また、当塾の講師は基本的に答えを教えることはありません。その理由として、講師が答えを教えると、子どもたちは理解できていなくても理解したつもりになってしまい、講師がいなければ勉強ができないという癖がついてしまうからです。問題の答えや解法はすべて教科書・参考書に記載がされているため、生徒が自力で答え・解法を読み、理解する力を身に付けられるようにサポートするのが、当塾の講師の役割となります。また、成績が伸びないもう一つの原因として、問題文そのものが理解できていない場合があります。それを導くだけでも十分に結果がついてくるのです。

――かなり幅広くいろんな事業を展開しているのですね
私たちが運営するコワーキングスペースは、女性の活動の幅を広げるための施設と位置付けています。当社がこれまで展開してきたコンテンツはすべて女性向けで、その点では一貫しています。ある意味、ニッチな分野といえるでしょう。また、シニア向けや地域事業として起業家支援のサポートを行うこともあります。例えば、地域女性の活動拠点を作りたいという相談があったとしたら、企画段階から入っています。また、行政が行う起業家向け支援事業にも積極的に取り組んでいます。

職場復帰の難しさから起業する女性が少なくないという事実

――今の事業を始めた理由を教えてください
大学を出てから、システムエンジニアとして12年間働いていました。何度か転職はしましたが、会社勤めは継続し、結婚後も働いていました。2011年には子どもを出産するために産休と育休を取り、すぐに職場復帰をしたのですが、そこで子育てをしながら仕事をすることの難しさに直面したんです。朝、出勤の準備をしていても、子どもがベビーカーに乗らないとか、着替えないとか、ご飯を食べないとか。とにかく思い通りにいかない。こんなに大変なのかと打ちのめされました。また、保育園に預ける時も、まだ話せない我が子を置いて逃げているような感覚に陥り、罪悪感を持つようにもなっていったんです。

――想像以上に大変だったということですね
その通りです。それに、多忙な毎日を過ごしていると、「なぜこの仕事をしてるんだろう?」と、思い悩むようにもなりました。そもそもシステムエンジニアとして特段優秀だったわけではなく普通レベルでしたし、その職種で特に成し得たいことがあるわけでもない。そう思うと、自分にしかできない仕事をしたほうがいいんじゃないか、という気持ちが芽生え、だんだんと強くなっていくのがわかりました。保育園に子どもを預けることの罪悪感への言い訳として、自分にしかできない仕事をしていれば、子どもにも「この仕事はお母さんにしかできないからやっているんだよ」と言えると思いました。それで、すぐに会社を辞めて転職活動を始めました。

――どんな仕事を探していたんですか?
システムエンジニアとしてのキャリアは活かしていくべきだと思いました。そこで、女性向けの商品やサービスを提供している会社のシステムエンジニアになろうと思い立ち、女性をターゲットにしたサービスを展開している会社に片っ端から応募していきました。でも、結果はどこも不採用。応用情報技術者試験(AP)やプロジェクトマネージャ試験(PM)といった資格を持っていたこともあり、書類審査は通るのですが、面接になると落とされるんです。気になったのは、面接官から必ず聞かれる「子どもの急な発熱で保育園から呼び出しがかかったらどうしますか ?」という質問でした。当然、親として「すぐに帰ります」と伝えると、それがダメだったのか、不採用が10社以上も続きました。

――子育て期の母親が直面する問題ですね。
不採用になった原因はともかく、誰も雇ってくれないのであれば起業するしかないと、気持ちを切り替えました。そこで立ち上げたのが、BEEVALLEYです。実は、Web制作を仕事にしようとあれこれ調査していくうちに気づいたのが、自分と同じように子育てによってキャリアが中断し、職場復帰が難しくなったため起業したという人が少なくないという事実でした。ただ、起業しても稼げていない女性は多く、その原因を調べると、そもそもWebに詳しくなくてホームページを立ち上げられない、Web広告が仕掛けられないという、スタート時からつまずいている人ばかりだったんです。そこで、そうした女性向けに特化したWeb制作会社を立ち上げようと考えました。

実感したのは「女性は女性のために仕事をする」ということ

――起業することに対して家族の反応はいかがでしたか?
実は主人もシステムエンジニアで、起業前は同じ職場だったんです。なので、職場でも家庭でも顔を突き合わせていて、当時はギスギスしていました。そうした事情もあって、独立については説得するまでもなく、すぐに賛成してくれましたね。ただ、私の両親は独立に反対していて、「会社員のほうが安定している」「失敗したらどうする?」といったネガティブな意見をたくさん言われました。そこで、「なぜ私がこの事業を行いたいのか」「なぜ私がやらないといけないのか」について両親に話をしたところ、最終的には私の熱意を尊重してくれて、現在では応援してくれています。

蜂谷詠子さんが立ち上げた株式会社ブルーコンパスの写真 ――起業後、集客はどのように行ったのですか?
まずは女性起業家と知り合うために、ネット検索や、行政や公的団体のメルマガなどで見つけた交流会と名がつくものには積極的に参加しました。女性の多くがWebに苦手意識があると気づいたのも、交流会で知り合った方々にヒアリングしたことが大きいですね。そこで女性起業家たちが何に困っているかをリサーチして、サイト制作だけでなく、パソコンやofficeの使い方のレクチャーなど、彼女たちがわからないということに対して、当初はなんでもサービスとして提供していました。

――「女性向け」にこだわった理由はなんですか?
今まで1000人以上の女性起業家と話をしてきた中での実感ですが、女性の多くは自身の実体験を起点に起業される方が非常に多いです。なので、必然的に女性をターゲットにした事業で起業します。例えば、子育てやママの悩みを解決するためのサービスを提供したり、士業だと女性社長向けのサービスプランを展開するなど、「女性は女性のために仕事をする」と感じています。だからこそ、同じ女性の視点で作るWebサイトは好評でした。また、忙しくなると私一人では受注が難しくなり、外部の方に協力してもらっていたのですが、そこでもライフスタイルの変化によって働けなくなってしまった女性のシステムエンジニアやWebデザイナーに業務をお願いしていました。当社に依頼していただくことが、女性の社会復帰に役立つと伝えると、お客様も喜んでお仕事を依頼してくれました。

――ブルーコンパスで展開しているコワーキングスペースの募集はどのように行いましたか?
実は、今の役員が「好立地の物件を見つけた」ということで、ひとまず物件を押さえるために内装などは何も手をつけず、契約だけして無理やりオープンしたんです。それが2017年11月でした。それからリノベーションを行うために同年12月にクラウドファンディングで資金を集め、そのリターンとして会員を募集しました。金額は100万円に設定し、約110万円が集まりました。でも、最初に集まった会員は10名ほどで、口コミではそれほど広がらなかったこともあり、後にリスティング広告で会員を募集しました。リスティング広告は目に見えて効果がありました。徐々に人数も増え、おかげさまで現在は80名ほどの会員が集まっています。

自分の目で直接確かめてこそ、「情報収集」と言える

――会社を運営している中で、特に意識していることはありますか?
情報を自分から取りにいく姿勢ですね。会社に勤めている時は、そんなに意識してなくても情報がいろんなところから入ってくると思うんです。上司や同僚、クライアントとの話題はもちろんその業界の話ですし、情報が向こうからやってきやすい状況でした。でも、起業や独立をすると、自分から積極的に取りにいかないと、最新の情報を逃してしまいがちです。そうならないよう気をつけるようにしています。

蜂谷詠子さんが立ち上げた会社の棚の写真 ――具体的には、どのように情報を収集しているのでしょうか?
ネットで調べたり、専門書を読んだりすることは誰でもしていると思います。でも、一番重要なのは、自分の目で見にいくということ。例えば、私の事業で言えば、女性起業家の支援を行うにしても、それが国の政策の方向性とあっていなければ事業は広がりません。そこで、国は今、女性の働き方に対してどういうところに予算を割いているのか、どんな補助金があるのかを調べるんです。すると、さまざまな取り組みが行われていることがわかります。そして、そこでストップせず、実際に省庁に出向き、担当者と意見交換をする。そうすると我々としても、今後どういうところで支援をしていけばいいのかがわかります。情報を取りにいくとはこういうことだと私は考えています。

――見聞きするだけでなく、会いにいくことも大切だと?
そうですね。ただ、そうした考えも起業してから学んだことで、失敗もたくさんしています。今振り返ると、もったいなかったなと思うのが、我々が提供するサービスに実際にお金を出してくれる人の声をもっと探すべきだった、ということです。「女性専用コワーキングを作ろうと思うんだ」と周りの女性に話すと多くの人が「すごくいいね!」と称賛してくれましたし、「私も使いたい!」と言ってくれた人はたくさんいました。けれど、その多くは社交辞令で顧客にはなりませんでした。自分にとって都合の良い意見ばかりを聞くのではなく、いくらなら会員になるのか、どんなサービスにいくら支払えるのか。要は、お金を出してでも解決したいという課題にもっと着目していれば、よりスムーズに会員を集めることもできたはずですし、サービス内容もまた違ったものになっていたと思います。

女性が起業するなら家族に応援してもらえる根拠づくりを

起業の苦労を語る女性起業家向けの支援サービスを幅広く展開する蜂谷詠子さんの写真 ――今後の展開について教えてください。
これまでは女性の起業支援をメイン事業として進めてきましたが、これからは女性のキャリア支援についても並行して取り組んでいく予定です。具体的に言えば、ライフスタイルによって働き方を変えられるようにサポートしていく仕組みを構築していきたいです。例えば、子育て期に起業したとします。数年後、子どもにあまり手がかからなくなったら、今度は会社に再就職する。そして、子どもが巣立ったら自分で仕事を始めるというように、ライフスタイルに応じて起業と就職とをうまく使い分けて、常に社会と関わり合っていく。そんな働き方を選べる社会を作っていきたいと考えています。

――たくさんの事業を並行している蜂谷さんに伺いたいのですが、ビジネスの種を見つけるコツはありますか?
私が徹底して実践しているのは、人に会ったら「今、困っていることは何ですか?」と聞くことです。名刺交換をする時、つい最初に、私はこういう事業をしていて、こういうことができるんです、と自分を知ってもらうための自己PRから入ってしまいます。ですが、まずは相手の言葉を聞くことが大切で、話をさえぎらずに一通り話していただく。そして、相手から困りごとなどが出たら、自分に何ができるかを伝える。これだけでも仕事のきっかけになることは十分に考えられます。

――最後に、独立・開業を目指す読者にアドバイスをお願いします
私は女性の起業支援をしているので、特に女性に対してお伝えしておきたいのが、開業や独立は絶対的に家族の応援が必要だということです。家族を説得できないと起業は夢のまた夢になってしまいます。家族に理解してもらい、協力を得るためには、説得のための根拠や材料が必要で、それは徹底したリサーチと少しのアクションでしか得られません。「この商品は売れると思う」だとか、「こんなサービスが喜ばれるはず」だと、やはり家族の理解は得られないでしょう。そこで、最低限でも同様のビジネスをしている人に会いにいって、話を聞いてくる。もしくは専門家の本を読む。その情報は説得材料になります。まずは徹底的に調べ尽くすことから始めてみることをおすすめしたいですね。そしてその次に、少しだけアクションをしてみる。徹底したリサーチと少しのアクション。この繰り返しこそが、家族の説得材料になっていくと思います。

株式会社ブルーコンパス

所在地:神奈川県横浜市西区平沼一丁目40番1号 嶋森ビル8階
TEL:045-532-4192
※取材時点の情報です

https://bluecompass.co.jp

 マイナビ独立マガジンの最新記事

一覧を見る

 マイナビ独立フランチャイズマガジンの最新記事

一覧を見る
PAGE TOP