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先輩開業インタビュー

目指すは「月曜日が楽しくなる会社」!経験を武器に58歳で起業した凄腕マーケター

多くの企業が自社ブランドの価値を高めようと、商品・サービス作りに勤しみ、広告戦略を立て、マーケティング活動に注力しています。その取り組みのエキスパートがマーケターであり、長年マーケティングを専門に第一線で活躍してきたのが、株式会社OHKマーケティング代表の本多宏哉さんです。女性下着メーカーを始め、各業界でヒット商品や話題の広告の“仕掛け人”として知られる存在ですが、58歳にして起業。ブランドと消費者の関係を構築し、「売れる」ではなく「売れ続ける」ことにこだわったマーケティング・サービスを展開しています。今回は、そんな凄腕マーケターの本多さんに、還暦を前にして起業した理由や、理想の会社像などを詳しく伺いました。

仕事は商品・サービスの魅力を伝える仕組み作り

――まずは事業内容について教えてください
弊社は主に依頼主のブランディングにつながるサービスを提供しています。具体的には、長年、マーケティングに携わってきた経験をもとに企業の課題を探り、売り上げの拡大を図るための解決・改善案をご提案します。「あなたの会社のマーケティング部」をキャッチフレーズに、マーケティング部門をお持ちでない会社のマーケティング業務をワンストップで代行するのが特徴で、単に“売る”仕組みではなく、“売れ続ける”ことにこだわったブランド戦略を得意としています。創業は2017年5月で、今年で6年目になります。

――具体的にはどのようなサービスになりますか?
ブランディングやマーケティングと言うと、広告戦略に特化した業務と思われがちですが、そうではありません。当然ですが、営利を目的とした会社は「これは絶対に売れる!」と確信を持って商品・サービスを世に出しています。それなのに、残念ながら売れないものが大半です。その原因の一つは、その商品やサービスの良さが伝わってないからです。これを改善するには、消費者視点が何よりも大事になります。つまり、私の仕事は商品・サービスの魅力を正しくユーザーに伝える仕組みを構築すること。そして企業や商品・サービスのファンになってもらうことです。そのためにブランドの根幹となるコンセプトやキービジュアル、また広告戦略などすべてに関してアドバイスをしています。

――どのような業種や分野を対象にしているのでしょうか?
基本的にはBtoCの商材を得意としています。これまで携わってきた商品だと、健康商材や美容関係などがあります。また、飲食については、繁盛店作りも数多く手がけ、今も継続してお手伝いしている会社があります。私は調理人のエキスパートでもなんでもないですが、顧客視点ということに関しては、来店するお客様と同じ目線で評価することはできます。むしろ外部だからこそ顧客の気持ちがわかるのです。これはブランディングでも同じ考え方になります。ただし、飲食という業界については素人ですので、料理や内装といった専門分野については、飲食のプロと協業して店作りを行っていきます。

経験豊富で人脈もある年齢での起業はむしろ有利

――マーケターの仕事を始めたきっかけを教えてください
私が初めてマーケティングに携わったのは、大手の下着メーカーでした。そこで主力商品のマーケティングやブランディングを15年にわたり担当しました。具体的には、どんな商品が世の中に求められているのかをリサーチして、その結果からどんな商品を作ればよいかコンセプトを作ります。それをもとに商品作りをしていくのです。その後、ネーミングも含めて、価格や流通、プロモーションなど、マーケティング戦略を立てていくのが私の仕事でした。とてもやりがいがあり、ヒット商品を生み出すことができたこともあって、自分に向いている仕事だと実感しました。

――大手下着メーカーを退職後も、同じくマーケティングやブランディングに携わっていたのですか?
はい。より活躍できる場を求めて、まったく分野の違うメガネ業界へ転職し、店舗全般のブランディングを任せていただきました。また、企業として日本で初めてYouTubeを使った販促を仕掛けたことで話題になったこともあります。今でこそYouTubeは広告戦略の主戦場になっていますが、当時は著作権などのルールに関してあいまいで、媒体として評判があまりよくありませんでした。でも、逆の言い方をするとそれだけ注目されているということです。これをうまく使えばインパクトのある宣伝になると思い、プロモーションに活用しました。おかげでメディアにはかなり取り上げてもらうことができました。

独立したきっかけを語る凄腕マーケターの本多宏哉さんの写真 ――独立することになったきっかけはなんですか?
マーケティングの世界では顧客第一主義が当たり前であり、企業としての姿勢もそうであるべきです。しかしそうは言いながらも、組織人としては利益を重視した決断を迫られることもあります。そんな日々を過ごす中で、長年マーケティングに携わってきた身として、本当の意味での顧客第一主義を確立したいという欲求が高まっていきました。すでに58歳ではありましたが、自分の理想を追求してみたいと、チャレンジの意味も込めて独立することを決め、1年の準備期間を経たあと、会社を立ち上げました。そうした経緯から、弊社では「すべてはお客様のために」という理念を掲げています。

――58歳での起業ということで勇気がいったのではないですか?
そうしたご意見をいただくこともありますが、私は逆だと思っています。若くして経験なく起業する人のほうがリスクは高く大変だろうな、と感心します。むしろそれなりの年齢の方のほうが経験豊富で人脈もあり、リスクは低いと考えています。また私の場合、58歳で起業したのには理由があって、もし60歳を過ぎて独立した場合、リタイア後の趣味程度で立ち上げた会社だと思われるのではないか、という不安があったんです。真剣に取り組んでいないと思われるのが嫌だったので、本気度を伝えるために還暦前には起業したかったというのは理由として大きいですね。子どもも社会人になっていますし、迷惑をかけるなら妻くらいかな、と決断しました。

交流会に参加して営業にかかるコストを削減

――起業にあたって資金調達はされましたか?
しました。先輩に相談したところ、「お金はいくらあっても困るものではないから、借りられるときに借りたほうがいい」とアドバイスをいただいたこともあって、日本政策金融公庫から借りています。用途はほとんど運転資金です。私の仕事はコンサルティングと違い、戦略を立ててそれを実行し、目に見える結果を出すこと。つまり、アイデア出しだけでなく、カタチにしていくことが必要です。例えば、チラシを打つことが必要になった場合、印刷費や経費を安く抑えるために提携している印刷工場やポスティング会社へ前払いをするなど、いわゆる外注費が必要になります。そのための資金の確保は非常に重要でした。

――集客はどのようにされたのですか?
最初は営業先もなく、ひたすら知り合いにお客様を紹介してもらっていました。また、創業当時は少しでも信頼していただくために、成果報酬型で依頼を受けてもいました。会社を立ち上げたばかりの頃は実績がありません。お客様の気持ちを考えると、そんな会社に自社のブランディングやマーケティングを任せたいと思うわけがない。そこで、契約料をかなり低く設定し、前年度の月別の売上と比較して設定したパーセンテージをこえていたら報酬をいただくようにして、少しでも依頼しやすいような体制を整えていました。

――仕事が順調にもらえるようになったのはいつ頃からですか?
最初の半年くらいは知り合いからの紹介が主でしたが、安定して仕事をいただけるようになったのは交流会に参加するようになってからです。きっかけはやはり知り合いの紹介で、ゲストとして招待されてから継続して参加するようになりました。私の場合は、さまざまな業界の方が集まる異業種交流会に参加していて、そこで知り合った方々とお互いに仕事を出し合うことで多くのお客様とつながることができました。交流会は探してみると大小さまざまなものが各地で催されていて、今では私自身も30人規模の会を主催しています。私が利用しているレンタルオフィスで知り合った個人事業主の方々と一緒に立ち上げたのがきっかけです。

――交流会に入るメリットはなんですか?
営業にかかる負担が少なくなるのは間違いありません。紹介であればスタート時からある程度の信頼性を保ちながらお客様とつながることができます。しかも、実績だって疑われることなくストレートに伝わる可能性が高い。私の場合、下着メーカーで働いていたこともあり、紹介していただいた方が女性だったら、「あの商品を使ったことあります」と、親近感を持ってもらえたことがきっかけで話が進むこともあります。言ってしまえば、無駄な費用や時間のコストが削減できるというわけです。

クライアントの言うことがすべてと思わず、忖度しない

起業後の苦労を語る凄腕マーケターの本多宏哉さんの写真 ――起業後、特に苦労したことはなんですか?
これは私の理念である「すべてはお客様のために」に関係することでもあるのですが、つい何でも引き受けてしまい、後で大変な目に遭うことがあります。仕事柄、お客様と戦略を立てて実行していくのですが、アイデアの時点でお客様からたくさんのご要望をいただきます。もちろんすべてコストがかかることですから、費用感はこちらで握っておかないといけません。しかし、つい「お客様のためなら……」と採算を度外視して引き受けてしまうんです。これが、私だけが無理すればすむ話ならいいのですが、外注先にも結果的に無理を強いてしまうことになるケースも少なくありません。これは私にとっていまだに課題ですね。

――事業を進める中で、新型コロナの影響はいかがでしたか?
ブランド戦略どころではなくなったお客様もいて、私も一部の取引先からフィーを下げられたりもしました。その中でも大きな学びとなったことがあります。それは、補助金を活用した仕事の受注は慎重に行う必要があるということです。コロナ禍で事業者向けの補助金がいくつか制定されましたが、これらは基本的に採択されて初めて活用できるものです。しかし、これを機に補助金を使ってブランド戦略を立てたいという方は私のお客様の中にもかなりいました。そこで、実際に申請してみると採択されないケースもあり、補助金がおりなかったのです。こうなると、乗り気になっていたお客様の失意の念の矛先が、私に向けられてしまうこともありました。私は補助金活用の際は必ず、採択されない可能性があること、また、補助金がなければ行わないブランド戦略はおすすめしないことを事前に説明します。それにもかかわらず、不採択になると気まずい関係になってしまう。これは学びの多い失敗でした。

――お客様との関係の中で大切にしていることはなんですか?
バブルの頃などは“作れば売れた時代”ですが、今は商品やサービスがユーザーの方向を向いていないと間違っても売れません。しかし、そんな時代になってもまだまだ売り手の自己満足に終始してしまっている商品・サービスは多い。スペックがどれほどすごいものでも、誰が喜ぶものなのかを捉えられていないものが少なくないのです。だからこそ、私のような存在が必要だと思っていて、売り手と買い手(ユーザー)のズレを修正すれば商品・サービスの魅力はもっと伝わるはず。そのためにも、例え言いにくいことでもしっかりとクライアントに意見をぶつけることが大事です。クライアントの言うことがすべてと思わず、忖度しないことを心がけています。結果を出すことが私の仕事ですから。

「楽しくなければ仕事じゃない」を体感できる会社を作りたい

――独立してよかったことを教えてください
勤めていた頃と比べて、会社の看板(名刺)で出会った人たちの100倍近くの人と出会うことができたと思っています。これは起業しなければ絶対に味わえなかった人間関係です。業種はもちろん、年齢もさまざまで、20代の若手と一緒にものづくりができるのは本当に楽しい。仕事上だけでなく人生の醍醐味として素敵なご縁をいただいています。たくさんの人とリスペクトし合えることは、今の私の財産になっていると感じています。

――今後予定している展開などはありますか?
私が会社を立ち上げた理由の一つに、雇用を生み出したいという思いがあります。実は、弊社のキャッチフレーズの一つが「月曜日が楽しみな会社」です。楽しくなければ仕事じゃない、というのが私のモットーで、それを体感できる会社を作りたかったんです。まだ実現できていませんが、今年度中には若い人材を雇用して事業拡大をしていく予定です。私自身もこれまでマーケターとして働いてきましたが、人を育てるステージに来ていると思っています。マーケティングは時代にあわせて新しい考え方が生まれていますが、どんな時代でも商品・サービスの対象は「人」にかわりはありません。これまで培ってきたノウハウや経験を若手に託していきたいです。

――最後に、独立・開業を目指す読者にメッセージをお願いします
もしあなたが、日曜日の夕どきに「明日は会社か……」と、ガクッと肩を落としているようなら、自ら月曜日が待ち遠しくなる会社を作ってみてはいかがでしょうか。「会社員として勤務時間が過ぎるのをただ待っている毎日です」なんて話を伺うこともありますが、そんな働き方はつまらないはず。結果はすべて自分次第、それが起業の醍醐味です。ぜひ、「早く会社に行って仕事がしたい!」と思える事業を立ち上げることにチャレンジしてみることをおすすめします。

株式会社OHKマーケティング

所在地:東京都中央区銀座7-13-6 サガミビル2階
TEL:03-5050-2270
※取材時点の情報です

https://www.ohk-marketing.co.jp/index.html

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