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先輩開業インタビュー

「手料理で好きな人を幸せにしたい!」食品がお客様に届くまでの“裏側”を学んで起業したフードコーディネーター

「手作りの料理で好きな人を幸せにしたい」そんな思いを掲げ、食品ビジネスの分野で起業したのは、フードコーディネーターの細野沙也加さんです。一般的にフードコーディネーターといえば料理メニューを考案する仕事であり、専門学校に通って資格を取ったり、プロのアシスタントをしたりして、スキルや知識を修得していくものです。しかし、細野さんは、食品商社に入社し、物流という“ものの流れ”から学ぶという、一風変わったアプローチでビジネスのノウハウを身につけたとか。今回は、なぜ物流に着目したのか、また、起業の経緯などを詳しく伺います。

高校生の頃の実体験から食への興味が強まった

フードコーディネーターの細野沙也加さんが提供しているレシピ本の写真 ――まずは事業内容について教えてください
一言でいえば、食品にまつわる仕事です。具体的には、レシピの考案がメインのお仕事で、それにまつわる写真の撮影だったり、動画の撮影だったり、商品開発だったりと、各企業さんにあわせたサポートをさせていただく事業を展開しています。クライアントは幅広くて、わかりやすいところだと大手の食品メーカーさんや調味料メーカーさんになります。もっとニッチな分野になると、外食店の商品開発も行っていて、季節メニューなども手がけたり、料理本へのレシピの提供などもしています。作業はすべて自宅で行なっていて、今は新型コロナの影響で社員も在宅で働いていますが、基本は私の家のキッチンに集まって仕事をしています。

――依頼はどのようにして届くのですか?
案件が発生するタイミングは、自分から営業をかけるパターンと、お声がけいただくパターンの2種類があります。前者の場合は私のほうからプロジェクトを探してお声がけをします。つまり営業ですね。後者は、ホームページ経由でご連絡をいただいたり、今まで取引のあった会社さんからのご紹介でつないでいただいたりするパターンで、「こういう商品をご提案いただけますか?」と、やんわりした依頼内容から発生する場合がほとんどです。そのほかにも、例えばレシピを掲載したInstagramの運用はできますか、とか、新商品5つの開発をお願いできますか、といったご相談を受けて、我々ができることを提案していくような流れになります。

――ビジネスとして食に注目した理由はなんですか?
理由は2つあります。まず1つ目が、高校生の時に好きだった人に気持ちを伝えるのにロールケーキを作って手渡したことがありました。そしたら喜んでくれて、付き合うことができたんです。それが成功体験となって、手料理には人の思いを伝える力があると気づきました。もう1つは、バスケットボールを中学から続けていて、練習が厳しいと有名な高校に進んだのですが、そこでは食事の取り方についての指導がありました。とにかく体づくりのために食べないといけなくて、ご飯を自分の意志とは別にたくさん食べることが求められました。とても辛くて、大好きな食べることがあまり好きではなくなる期間がありました。その体験から、栄養も大事だけれど、まずは心を満たす食事が大切だと強く思うようになり、その時に生まれた食への興味関心が今の仕事につながっています。

商社で学んだ、商品がお客様の手に届くまでの流れ

業を立ち上げた経緯を語るフードコーディネーターの細野沙也加さんの写真 ――今の事業を立ち上げた経緯を教えてください
高校時代の経験から、人のために料理を作って喜ばれることが自分自身の喜びでもあるし、相手の幸せにもつながるという考え方を持っていたので、食にまつわる仕事をすることは大学生の頃には決めていました。ただ、どんな職種を選ぶかについてはまったく見えていなくて、それで大学の先生との面談や、OB・OG訪問でたくさんの意見を聞いて回りました。そのなかで大学卒業後にすぐに起業するか、まずは就活をして一般企業に就職するか、2択で迷ったのですが、結果的に大手の食品商社に就職することにしました。

――なぜ食品商社への就職を選んだのですか?
商社はただ料理を作るだけでなく、開発から物流まですべてを手がけています。なので、商品が誕生してお客様の手に届くまでの一連の流れを知ることができるという魅力がありました。もともと独立志向だったので、「3年で起業する」という目標を持って就職し、物流という“裏側”を見たいと思ったのです。実際、入社後は研修として工場でのライン作業からスーパーのお惣菜作りといった、現場仕事を経験できました。また、経理部署やコールセンターなど、販売後のお客様へのフォローやお金の流れまでにも携わり、食品ビジネスの一連の業務を理解することができました。

――のちの起業時にはその経験が大きな武器になったのでは?
とても貴重な財産になっています。食品商社では営業が商品を開発するのも特徴の一つで、例えばレストランから「春に向けて新商品を出したい」と相談がきたとします。そうすると私たちのほうから、「春といえばイチゴですよね。でも、人気の品種はどこも使っているので、珍しいスカイベリーはどうでしょうか?」と、提案するんです。そして、それを実現するためには仕入れ先の農家を知っていないといけないし、工場のラインも押さえないといけない。それを理屈だけじゃなく、体感として身につけることができたのは大きな武器になっています。

――本当に3年で退職されたのですか?
当初予定していた3年から約1年前倒しして、2017年6月に退社しました。それからはフリーランスとしてレシピ動画メディアからの業務委託でレシピ提案をするなど、フードコディネーターの仕事を始めました。それと同時に起業の準備も進めていて、勤めている頃から趣味で始めていた料理教室のメンバーと会社を立ち上げようと決めてもいました。ただ、たまたまシンガポールの空港で販売するお弁当の開発の求人を見つけ応募したところ、採用され1年半の間、現地に駐在するという寄り道もありましたが。それでも、メンバーに待ってもらっている間に、会社のコンセプトや事業内容、借りる物件などを週末にオンラインで綿密に打ち合わせ、帰国後約1週間で起業しました。それが2019年1月です。

創業後、必死で見つけ出した「検索」という営業手法

――起業後はどのようにして売上を伸ばしていったのですか?
帰国したばかりということもあり、起業した時点では売上がまったく読めない状態でした。スタート時の仕事といえば、共同創業者である友人がフリーランスで受けていた数万円の案件のみ。そこで、一から営業活動を行い、仕事を作っていくことからスタートしました。また並行して行ったのが、会社のお披露目会です。以前から私の個人ブログを読んで応援してくれていた方々から、起業するにあたって必要な冷蔵庫や炊飯器などを支援していただいていました。そのお礼にお披露目会を開いて料理でおもてなしをし、感謝を伝えるとともにつながりを強くしていきました。そうして会社の認知度を高めたり、フリーランスの時につながりのあった会社さんからお仕事をもらったりして、徐々に売上を伸ばしていき、実際に経営が安定してきたのは3、4か月目くらいでしたね。

――営業はどのようにかけていたのでしょうか?
私の営業手法の一つに、求人を検索するというのがあります。例えば「食品 商品開発 業務委託」と検索すると、関連する求人が出てきます。そのなかで興味のあるものに直接、自分たちに何ができるかをメールするのです。普通に考えると雇用の求人なので的外れのように思えるかもしれません。しかし、お客様は何かしらの課題を抱えているから求人を出しているわけで、求めているのは課題解決のはずです。そうしたお客様の困りごとを予測して、私たちに何ができるかをアピールし、寄り添うことでお仕事をいただけることは少なくありません。

お寿司屋さんがお花見シーズンに販売する商品開発の仕事で作成したお弁当の写真 ――かなりハードルが高そうに思えるのですが?
それが意外と、そんなことないんです。今、取り組んでいるものに、お寿司屋さんがお花見シーズンに販売する商品開発があるのですが、これも同様の営業手法で獲得した案件です。検索によってプロジェクトの開発メンバーを募集している正社員の求人を見つけたので、チャレンジしたいと思い、我々はこういう会社で、こういったサポートができますとメールしました。そのあと、一度お会いする機会をいただいたので、オンラインでミーティングをして、抱えている問題をヒアリングした上で、こんな解決策を提案できますとお伝えし、正式にご依頼いただきました。

――トライ&エラーを繰り返して磨き上げた営業手法というわけですね
そうですね。ただ、これまでの経験で生まれた手法、といったらすごくかっこよく聞こえるかもしれませんが、要はやるしかなかったんです。創業したあとはとにかく仕事をとらないといけないので必死です。明日、生きるためのお金を作らないといけない状況になると、人はなんでもやるし、知恵もしぼります。何度もトライするなかで相手に納得してもらいやすい話の進め方を身につけていきました。

雇用したメンバーの生活を守るためにエゴを捨てる

――運営を続けるなかで気をつけていることはありますか?
一番気を付けているのはお金です。私はいわゆる「ライスワーク(食べるために働くこと)」と「ライフワーク」のバランスがすごく大事だと思っていて、起業した以上はライフワークの継続がモチベーションを保つのにとても重要になると思っています。しかし、企業として雇用している人の人生を背負うようになると、エゴだけで会社を続けることはできません。みんなが稼ぎたいと思っている目標金額に到達するまでは、仕事を選ばずにきちんと分配していけるだけの売上を確保する。そこはシビアに考えて取り組んでいます。

――現在はどのような体制を組んでいるのですか?
元は2人で起業して、その後、私一人になり、今は3名の社員と、6名の業務委託を結ぶメンバーで運営しています。社員の一人は以前、広告代理店に勤めていたので、資料作成などに長けていて、大手食品メーカーさんからいただく商品開発の資料作りなどのお仕事も受けられるようになりました。また、業務委託として協力してくれているメンバーは、結婚して母になった学生時代の仲間たちで、レシピを一部頼むなど、それぞれの強みを活かせる組織になってきていると思います。

――SNSなどは活用していますか?
TwitterやFacebookで活動内容やイベント情報などを発信しているほかに、自社のレシピをInstagramに掲載しています。こうした情報を見た方からレシピの依頼が届くこともあります。あとはYouTubeにも料理動画を載せていて、こちらは収益化を目指しているというよりも、企業への営業をする際のサンプルとして活用しています。私たちはこんな料理が得意で、このレシピだとこれくらいの視聴回数が取れますよ、と動画を使って説明すると伝わりやすいというメリットがあります。

“どんな自分が好きか”がわかると、やりたい仕事が見えてくる

今後予定している展開を語るフードコーディネーターの細野沙也加さんの写真 ――今後予定している展開を教えてください
ギフト商品として、初めてとなる自社開発の「フルーツのフィナンシェ」の販売を企画しています。商品の詳細はまだ内緒ですが、商品自体に意味を持たせて、もらった人がなぜこれをもらったのか背景や想いがわかるものです。これをECサイトと店舗で購入できるようにしたいと考えています。そのために店舗兼オフィスも借りられたらいいなと計画中です。

――最後に、独立・開業を目指す読者にアドバイスをお願いします
具体的なアドバイスは難しいですが、やりたいと思っていることがあるなら、すぐにチャレンジすることをおすすめします。ただ個人的には、始める前に本当にやりたいことかどうかをきちんと確かめて、自分のなかで「絶対にこれをやりたい!」という確証を得ることも同じくらい大切だとも思います。逆をいえば、それを確かめられたら、さらに前向きな気持ちでチャレンジできるはずです。

――自己の思いを徹底的に“掘る”ということですね
そうです。お仕事をする上で……もっと言うと生きていく上で自己分析はとても重要だと思っています。それは、自分にとっての幸せな生き方を実現することにつながるからです。自己分析というと堅苦しいですが、つまりは自分のことを知ることです。まずは自分の「好き」と「嫌い」の軸を見つけることが大切だと思います。そして、「得意なこと」「不得意なこと」を考えて、掛け合わせていくと、自分にできることが見えてきます。そして最後に、どういう時の自分が一番好きかを考えるんです。一緒にいる人や、取り組んでいることなど具体的にどんなシーンの自分が一番輝いているかを考えていくと、本当の自分が見えてくるのではないかと思います。自分のことを知った上で、自分自身が好きな自分で居続けるために必要なことを見つけていく。それをお仕事にできると、本当に楽しいと思います。

合同会社HITOOMOI

所在地:東京都杉並区上井草3丁目
※取材時点の情報です

https://charmingcookingcla.wixsite.com/hitoomoi

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