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先輩開業インタビュー

鎌倉なのに「逗子カレー」?経験なし、知識ゼロから店を立ち上げたカレー専門店

近年、カレー業界の新たなジャンルとして台頭している“スパイスカレー”。この本格的なスパイスが楽しめるカレーを、日本有数の観光地として知られる神奈川県・鎌倉の由比ガ浜通りで提供しているのが「ZUSHI-CURRY(ズシカレー)」です。北インドカレーをベースにしながらも日本人の口に合うオリジナルのスパイスカレーを提供しているお店で、店主の中村さんは、妻の「カレー屋を始めたい」という一言をきっかけに、経験・知識ともにゼロから店作りを始めたとか。今回は、開業までの経緯や店作りのコツや苦労を中村さんに詳しく伺いました。

おいしいカレーと心地よい音楽を提供する空間を目指す

おいしいカレーと心地よい音楽を提供する空間を目指す「ZUSHI-CURRY(ズシカレー)」の写真 ――まずお店の特徴を教えてください
北インドの料理をベースにしたカレー専門店です。メニューにはいわゆるライスカレーをそろえていて、日本人でも食べやすい味を日々追求して作っています。また、お店のコンセプトとして「グッドカレー、グッドミュージック」を掲げていて、お客様においしいカレーと心地よい音楽を提供することにこだわっています。お店に立っているのは僕一人ですが、音楽業界で働いている妻もお店作りや運営に関わっていて、お客様にリラックスしてもらうために店内で流す曲などを選定してもらっています。

――店名に「逗子」が入っているのに、なぜ鎌倉で開店されたのでしょうか?
僕と妻はどちらも逗子出身なので、本当は逗子でお店を出そうと考えていました。ですが、なかなか出店できる場所が見つからなくて。その間に東京都渋谷区の国連大学前広場で催されていた「ファーマーズマーケット」にブース出店することになり、とりあえず名付けたのが「ZUSHI-CURRY」です。その時に来てくれた方々に名前を覚えてもらってもいたので、店名を変えることなく、そのまま鎌倉で出店したというわけです。

妻と店を出すという夢を実現するために会社を退職

お店を始めたきっかけについてを語る「ZUSHI-CURRY(ズシカレー)」の店主中村さんの写真 ――お店を始めたきっかけを教えてください
妻の影響が大きいですね。僕は大学を卒業後、都内の印刷会社に8年間勤めていて、その間に小中学校の同級生だった妻と結婚しました。妻とは付き合っている時から趣味嗜好がとても合っていて、「この人と何か仕事を始めたらおもしろいだろうな」とぼんやり考えたりしていました。その時は具体的な業種などは考えていなかったのですが、ある日、妻から「カレー屋を始めてみない?」と言われて、その言葉を聞いた時になぜか将来の自分の姿が想像できてしまったんです。妻は元々カレーが好きで、いつかお店を出したいと考えていたそうで、誰かキッチンに立つ人を探していたところ、料理を作るのが大好きな僕が適任だと思ったようです(笑)。

――経験なしでまったくの異業種に飛び込むのに不安はなかったのですか?
当時、勤めていた印刷会社で働き続けるかどうかを悩んでいた時期でもありました。自分の人生の先行きを考えた時、一生サラリーマンでいることがベストなのか、迷いながら悶々とした日々を過ごしていたと思います。今考えると、妻はそんな僕を見て声をかけてくれたのかもしれません。また、妻とカレー屋についてアイデアをあれこれ考え始めた時に、会社で早期退職の募集が始まったのも退職を決意した大きな理由です。これは運命とばかりに応募し、2010年に退職しました。

――カレー作りはどこで修行されたのですか?
妻からの一言でカレー屋を開くことにしたものの、専門的な知識は一切なかったので、まずは人気のカレー専門店でアルバイトをすることにしました。結果、2018年に店を開業するまでの8年間で、都内や鎌倉のインド料理店など計6店舗で働かせていただきました。また、料理の基礎知識を身につけたくて、昼間はカレー屋でアルバイトをする一方、夜は調理学校の夜間部へ一年半通っていました。

――結婚後に会社を辞めてアルバイトで生計を立てるのはかなり勇気がいったのでは?
いえ、そんなことはなかったですね。明確な目標があったから不安にもならなかったし、世間体なども気になりませんでした。「自分と妻の夢を叶えるために今はこれが必要なんだ」ということを誰よりも自分が一番わかっていたので。お金の面では、妻が働いていたこともあって「生活は大丈夫だから」と、常々言ってくれていたのも心強かったです。もちろん収入は減りましたが、当時からそれほど浪費するような生活スタイルでもなかったので、我慢を強いられるようなことはなかったですね。

カレーの修行を始めるも接客が苦手でアルバイトをクビに

ZUSHI-CURRY(ズシカレー)のカレーの写真 ――アルバイトとして修行していた期間で何が大変でしたか?
実はとにかく接客が苦手で、最初に働いた店と次の店はどちらもそれが原因でクビになってしまいました。当然ですが接客業なので、お客様と接するには元気さや愛想が必要です。でも、僕は昔から無愛想と言われることが多く、当時の店長から見たら態度が悪く見えたのでしょう。カレー作りの前に、まず接客業を理解していなかったし、その余裕もなかった。サービスを受ける側と提供する側ではまさに180度視点を変えないといけません。その苦い経験からお客様が何を求めているかを常に考え、一歩引いて冷静に状況を見る習慣を身につけたところ、少し気持ちに余裕を持って接客ができるようになりました。

――お店で出すカレーの味はどのように決めていったのですか?
店を出す前に、知り合いのライブハウスや「ファーマーズマーケット」でカレーを販売していたので、そこでお客様の反応を見つつ味を確立していきました。ただ、味を最終的に決めているのは妻です。僕が作ったものは必ず妻がチェックして、OKが出たものをメニューに加えていました。毎日作っているとどうしても味に偏りが出てしまいます。なので、一般的な感覚を持っている人に確認してもらうことはとても大事だと思っています。

飲食店初心者がぶつかる壁に四苦八苦することに

ZUSHI-CURRY(ズシカレー)の店内の写真 ――物件探しにかなり苦労したそうですが?
物件が見つかるまでに2年ほどかかったのですが、それには飲食店ならではの理由がありました。カレーという香りの強い料理を出す場合、大家さんから敬遠されてしまうことが多いんです。例えば住宅街などはかなり難しくて、トラブルになるケースも少なくありません。一度こじれてしまって嫌われてしまったら、客商売のスタートとしては最悪ですから。それと、もう一つ物件探しが長引いた理由が、不動産会社に相手にしてもらえなかったこと。向こうにしてみれば、素人が飲食店を始めるなんて、どこまで本気かわかりませんからね。そこで、本気度を伝えるために不動産会社に何度も足を運びました。そのうちに僕らのことを気にかけてくれるようになり、担当者のほうからお電話をくれるようにもなりました。

――店内の内装がとても素敵ですね
知り合いに紹介してもらった業者にお願いしました。ただ、実際に内装作りを経験してみて教訓になったのは、できるだけ自分たちを知る身近な人にお願いしたほうがよいということでした。というのも、僕らがお願いしたのは初対面の方で、僕たちの性格や好みをまったく知りません。つまり、デザインという感覚的なものを、お互いゼロから認識を擦り合わせる必要があります。これはかなり大変な作業でした。

――業者に自分たちを知ってもらうことからスタートしなければならない、と
そうです。あともう一つ苦労したのが、厨房の設備です。当初は内装業者に冷蔵庫や機材の手配をお願いしていたのですが、物件のオーナーから「相見積りを取ったほうがよいのでは?」とアドバイスをいただいたんです。たしかに値段が安くなるかもしれないと思い、結局は自分たちで設備業者を見つけて手配しました。そうしたら、いざ工事が始まると、僕らが内装業者と設備業者の間に立ってやり取りをすることになってしまい、知識のない中で両者の確認を取りながら進めるのは本当に労力がいりました。これから初めて飲食店を開業する人にアドバイスするなら、設備と内装は同じ業者にお願いしたほうがよいと伝えたいですね。

――開業にあたり資金調達はどうされましたか?
開業までに約800万円かかったのですが、早期退職で得た退職金と妻の貯金で準備できました。ですが、商工会議所の方から「多少でも銀行から借りて信用をつけておいたほうがいい」とアドバイスをいただき、借りることにしました。つまり、現金を手元に置いておけるだけでなく、完済すれば信用がついて次に何かあった時に借りやすくなるというわけです。なので、地元の信用金庫から200万円だけお借りしました。結果的に銀行とつながりができましたし、担当者の方にも何かと親身に相談に乗っていただけました。

アイデアをノートに「書く」ことで夢が近づいた

「これから開業を考えている方におすすめ」と語る「ZUSHI-CURRY(ズシカレー)」の店主中村さんのアイデアノートの写真 ――開業前にターゲット層やコンセプトづくりなどはしましたか?
そうした部分については主に妻が担当してくれました。鎌倉は観光地ということもあり、観光客の需要が見込めます。そこで、ターゲットに30代から50代の女性を想定して、店の雰囲気やメニューなどを決めていきました。雑誌でいうと、「じゃらん」や「まっぷる」よりも、「ことりっぷ」や「OZmagazine (オズマガジン) 」といった、より女性ウケを狙ったようなイメージで店全体を作り込んでいます。

――お店の雰囲気づくりに雑誌を活用したのはおもしろいアイデアですね
女性ならではですよね。あと、これから開業を考えている方におすすめなのがアイデアノートです。なんでもいいから思いついたことを書き溜めるノートを用意し、お店の雰囲気をこうしたいとか、こんなメニューを出したいなど、落書き程度のことや絵なども加えてまとめていく。会社を退職した時から常に持ち歩いていて、雑誌の特集や、旅行で出かけた先のお店を参考に思いついたアイデアなども書き込むようにしていました。これがのちにお店作りの段階で役立ちましたし、書くことでイメージを徐々に具体化していくと、段々とお店の開業という目標が向こうから近づいてくる感じがするんです。

――いわゆる「引き寄せの法則」みたいなものでしょうか?
まさにそれですね。また、僕は退職してからというもの、友達などに「40歳までに必ず店を出す!」と宣言していて、それも今となってはよかったと思っています。もうやらざるを得なくなるというか、達成しないと嘘つきになるのでそれだけは避けたいですからね。また、「おいしいカレー屋を立ち上げる」と具体的に人に話していると、僕が何をしようとしているのかがより伝わって、周囲がそれに対するアドバイスやヒントをくれるようにもなりました。有言実行は、夢の実現に有効な手段だと実感しています。

――最後に、独立・開業を目指す読者にアドバイスをお願いします
ビジョンを持つことは非常に大切だと思います。行動はもちろん大切ですが、イメージをカタチにしている人は少ないようです。おすすめは、自分が何をしたいのか、どうしていきたいのかを言葉やイラストなどに落とし込んでみること。夢や目標はできるだけ具体化して固めたほうが達成しやすくなるはずです。僕の場合は、40歳で開業すると数字も決めて自分にプレッシャーをかけていました。実際は、物件探しに手間取って42歳になってしまいましたが(笑)。ぜひ皆さんにも試してほしいと思います。

ZUSHI-CURRY

所在地:神奈川県鎌倉市笹目町6-7-103
Instagram:https://www.instagram.com/zushi_curry_kamakura/
※取材時点の情報です

https://www.zushicurry.com

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