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先輩開業インタビュー

元エンジニアのチャレンジ精神が漫画を進化させる!漫画家が抱える課題を解決する新しいビジネスモデル

近年、漫画はただのエンタメではなく、絵とストーリーでわかりやすく説明するツールとして広く活用されています。広告漫画もその一つで、文章だと読み飛ばされてしまう商品やサービスの説明も、漫画なら魅力的に伝えることが可能です。まだまだビジネス領域において可能性を持つ漫画ですが、実は作り手の漫画家のほとんどが雑誌の連載だけでは生活できていないという現実があります。この状況を打開しようと起業したのが、株式会社まんがたりの前田雄太さんです。漫画業界に携わったことがなく、経験ゼロでスタートしたという前田さんに、起業のきっかけや事業内容について、詳しくお話を伺いました。

国内外の漫画制作依頼にワンストップで応える

株式会社まんがたりが担当している漫画の写真 ――事業内容について教えてください
主に2つの事業を行なっていて、1つが企業向けサービスとして展開している広告漫画制作事業です。企業の商品やサービスを漫画にして、広告や営業支援ツール、採用支援ツールとして活用していただき、会社の魅力を伝えるお手伝いをさせていただいています。媒体は紙やWebを問わず、チラシや冊子にしたり、最近だとYouTubeで動画の形にして紙芝居的に配信する漫画動画を制作させていただいたりもしています。もう1つは一般読者が楽しむための漫画制作で、出版社からご依頼いただいて作成する商業連載事業になります。

――企業の広告や市販されている漫画など、形態にかかわらず漫画化したいという要望に対応しているということですね
おっしゃる通りです。そのためにプロの漫画家や漫画編集者と提携し、企画からテーマ設定、利用方針、配信にいたるまで、2つの事業のどちらもワンストップで請け負っています。社員は雇っていないのですが、副業でお手伝いいただいているメンバーが十数人いて、その方々にディレクターとして入ってもらったり、営業をお手伝いしてもらったりしています。その他にも、漫画動画を制作する時には声優に声入れしていただくために、声優事務所とも提携しています。

――これまでに手がけた仕事を教えていただけますか?
最近手がけたおもしろい仕事だと、外務省からご依頼いただき海外への渡航者向けに注意事項を説明する漫画動画を制作しました。例えば、「旅行中にアイスクリームをドンとぶつけられたと思ったら後ろから財布をすられていた」という事例を文章やイラストだけで説明するよりも、シチュエーションを漫画動画で見たほうがより危険性が伝わります。学習コンテンツとしての漫画動画の可能性をすごく感じた仕事でしたね。

――海外からの依頼もあるのですか?
少し前に中国の企業からホームページの問い合わせフォームに「漫画を作ってほしい」といったご相談がありました。また、今まさにメキシコの企業から自国の漫画アプリで連載する作品を作ってほしいという依頼があり、商談の真っ最中です。その他にも、中国の企業が自国で人気の漫画アプリを日本で配信する時の翻訳を手伝ってほしいというものもありました。漫画の翻訳は普通の翻訳と違い、漫画っぽさが求められます。ドンと音が鳴った時、それがそのままドンなのか、バンなのか、ポフなのかでトーンが変わり、漫画の世界観を左右します。これは漫画をよく知る者でなければできない仕事であり、今後もこうした案件は増えていくと思います。

20代で問題解決能力を伸ばし、30歳での起業を目指す

株式会社まんがたりのTシャツの写真 ――事業を始めたきっかけを教えてください
私は出身が福岡で、就職を機に東京へ来たのですが、最初に入社したのがITのベンチャー企業でした。企業向けの経理や総務が使うようなソフトウェアを開発している会社で、私はその中でエンジニアをしていました。入社のきっかけは大学生向けの企業説明会で、社長の話がとてもおもしろかったんです。「これからは答えのない仕事に取り組み、ゼロからイチを生み出していくスキルを身につけていくべき。そうした人材が育てば日本は元気になる。そのためには、問題や課題の解決に成功した回数ではなく挑戦した回数が大事である。当社には新卒に一番難しい仕事を丸投げする環境があり、入社してくれたら20代のうちに問題解決能力を伸ばして、30歳になったら全員会社をやめて起業してほしい」とまで言っていたのが印象的でした。

――とてもユニークな方針ですね
すぐに入社を決めました。私自身はそれを真に受けて、30歳になる前に起業しようと考えるようになり、それまでに自分が興味のある社会的な課題がないか探すようになりました。そのおかげで20代はたくさんの失敗をしています。教師になりたいと思い、会社にいきながら通信大学に通って教員免許を取ろうとしたのですが、レポートを書くのが大変で挫折しました。また、新聞販売店で働く友達が抱える問題を解決するアプリを作ろうとして、これもまた失敗。自分の中であれかな、これかなと試行錯誤しながらやっている間に、30歳を迎えました。

――退社する準備はできていたのですか?
それがまだでした。そろそろ起業しないとまずいかな、と考えていた矢先の2017年の秋、31歳の時です。たまたま知り合いから漫画家志望の方を紹介してもらえる機会があり、根っからの漫画好きの僕は何か裏話でも聞ければいいな、なんて思いながらお会いさせてもらいました。その時に、漫画業界はプロの中でもトップ3%くらいしか漫画の仕事一本で食べることができておらず、ほとんどの方がアルバイトや副業をしていて、制作に専念できていないというお話を伺い、衝撃を受けました。そして、自分に何かできることがないかな、とふと思ったんです。その時は事業にしようとまでは思いませんでしたが、結局はこれが起業のきっかけとなりました。

――すぐにまんがたりとしてスタートしたのですか?
実は、漫画家志望の方との出会いのすぐ後に、友人が勤めていた社食サービスを展開する会社からスカウトがあったんです。その会社は30人規模のサイズで、社長とも直接話せるような社風だったこともあり、起業前に経営を学ぼうと思って、2018年1月にその会社へ転職しました。すでに漫画事業を立ち上げたいという思いがあったので、入社前に事情を話し、理解してもらった上で入社の2ヶ月後に週末起業という副業の形で、個人事業主としてまんがたりを立ち上げました。その後、2019年8月に退職し、まんがたり一本に絞ったという流れになります。

踏み込めないなら、それは自分がやりたいことじゃない

起業後にしたことを語る株式会社まんがたりの前田雄太さんの写真 ――会社を立ち上げて、まず何から着手したのでしょうか?
私が起業した目的は「漫画家が食べられるようにしたい」です。なので、まずは多くの漫画家が抱える課題のファクトを把握したいと思い、情報収集から始めました。Facebookにゆるく募集するという意味で「ゆるぼ」と書いて、「漫画家を紹介してほしい」と投稿したところ、友人が紹介してくれたので、漫画家の現状を詳しくヒアリングすることができました。さらにそこから知り合いの方をご紹介いただいたり、Twitterで漫画家向けに役立つ情報をひたすら発信してつながりを増やしたり、そうしたことを続けていくうちに1年間で200人くらいの漫画家にお話を伺うことができました。

――ヒアリングでどんなことがわかりましたか?
3つの問題があることがわかりました。「お金がない」「情報がない」「横のつながりがない」の「3つのない」です。これを解決しようと決めて事業をスタートしました。まず初めに、どの漫画家さんも「確定申告が面倒だ」と言っていたので、確定申告の代行サービスがいいのではないかと思いつきました。もともと会計ソフトを作っていた人間なので知識は素人の方よりは持っています。しかし、代行するとなったら当然、料金をいただく必要があり、お金のない漫画家さんをターゲットにしたビジネスとしては成り立ちません。反対に、お金を持っている連載中の作家の多くはすでに税理士にお願いしているケースがほとんどだったので、この事業はスタートしてすぐに成り立たないと気づきました。

――その他にも考えた事業はありますか?
例えば、横のつながりがないという悩みを解決するため、漫画家向けのコワーキングスペースをイベントとして開催したこともあります。漫画家しかいない空間で、作品を見せ合ったり、気分転換にコミュニケーションを取ったりできると考え、漫画家には好評いただきました。20回ほど、隔週末に開催して、最後の方は毎回満員でしたが、特にビジネスとして広がりもなく、独立できるほどの事業に成長させるのは難しいと考えました。後は、プロの漫画家さんと漫画家志望の方をマッチングする漫画家専門の家庭教師サービスのプラットフォームを作ろうとも考えましたが、プロにそれほどお支払いができないとわかり、これも挫折。そうして大小50個ほど試してみましたが、今思えばかなりずれたことをやろうとしていましたね。

――お話を伺っていると、チャレンジ精神がすごいですね
最初に就職した会社の社長の「成功した回数より、挑戦した回数が大事」という言葉の影響が大きいと思います。創業1年目に自分に言い聞かせていたことが一つだけあって、それは「踏み込め」でした。どんなにすばらしいアイデアを思いついても、そこで踏み込めないとしたら、それは自分がやりたいことじゃない、他にもっとやりたいことがあるはずだと考えるようにしていました。本当に自分がやりたいことだったら、どんなに難易度が高く、リスクがあっても、踏み込めるはずです。思い返せば、深く踏み込み続けられなかったのが教員免許であり、新聞販売店向けのアプリ開発です。うまくいかなかったのも、人生をかけてやり続けたい、というほどの楽しみや持続的なモチベーションを持てなかったからだと思います。

漫画はあくまで方法論、相手の課題解決が優先

――今の事業に移行したきっかけはなんですか?
前職で働きつつも、まんがたりを週末起業してから1年が経った頃に、起業家を対象にしたインタビューを受ける機会がありました。そこで「事業で漫画家を救いたいと思っています」ということを話ました。そうしたら取材をしていた方が、取材中に「弊社のWebメディアで広告漫画を配信することを検討しているのですがお願いできますか?」と、唐突に依頼を受けたのが、初めての広告漫画の案件でした。その場で「経験はないですが、必ずやり切るのでお願いします」と返事をし、これはチャンスがきたと思って迷わず踏み込みました。

――今の事業がスタートしてから営業活動はしていましたか?
Facebookで「こんな仕事をしました」と投稿して、そこには必ず「同じようなご相談があればぜひご連絡ください」といったことを記載していました。主に会社員時代の知り合いなどに向けて投稿して、仕事の依頼がくればラッキー、くらいの感じではありましたが。後は会う人、会う人に、自分はこういうことができるので仕事があったらぜひやらせてもらいたいと、ひたすら言い続けていました。

――安定して仕事をもらえるようになったのはいつ頃ですか?
安定したのは最近だと思います。今は平均で月に10件から20件ほどの案件を平行して動かしている状況です。起業したばかりの頃は、月に1件来るかどうかといった状況で、とにかく貯金が減っていくのを不安に思いながら眺めていたのを覚えています。かなりの恐怖でしたね。その後、徐々に仕事がもらえるようになって、2020年1月に法人化し、そのタイミングで日本政策金融公庫から創業者向けの融資を受けました。クライアントからの入金前に制作陣に協力費などを支払うこともあって、余裕を持って1000万円を借入しました。そこでようやく資金的に安定した感じです。

――仕事を続ける中で特に意識していることはありますか?
単純に漫画を作るのではなく、クライアントの問題解決を漫画という方法を通してできているか、というのはすごく考えています。漫画制作を依頼するということは、その企業は何か抱えている課題があるということです。漫画がその解決にならなければ断るようにもしています。そもそも広告漫画というのは加速装置だと思っていて、商品やサービスがある程度、洗練された後にそれをさらに多くの人に広めるタイミングで活用するような、加速するための手段です。初期フェーズでは、マンガでの広告の前にもっと先に行ったほうがよい施策も多いので、タイミングによっては広告漫画の効果が出にくいことも少なくありません。その点について事前のヒアリングで見極めるようにしています。

広告漫画だけの雑誌を作って大手少年誌のライバルを目指す

――まったくの異業種から漫画の業界に入って、不安はなかったのでしょうか?
まったく不安ではなかったと言えば嘘になりますが、実際のところ、技術というのは繰り返していれば身につきます。それよりも、一つの仕事にどれくらい真剣に向き合うかということが大事だと思っています。漫画はアーティスティックなものではありますが、多くの漫画家の先生が制作術の本を書いていることからもわかるように、技術も大切な要素になります。そして、技術を言語化できるということは、再現性があるということでもあります。そうした技術の習得は常に意識していて、漫画のコマの配置やキャラクター作りなど、漫画の研究には弊社のメンバー全員で日々取り組んでいます。

――提携しているプロの漫画家に意見をすることに難しさはありますか?
最初は難しさを感じることもありました。しかし、自分が「最初の読者としての感想を伝える」という考え方で、率直に意見を伝えております。また、漫画家側も、意見と真摯に向き合ってくれる考え方の方としか仕事をしないようにしています。弊社のビジョンの一つとして「次世代漫画家の活躍する場を作る」、つまり新しい漫画家として挑戦する場所を作っていくということを掲げています。これをおもしろいと思ってくれる人としか提携していなくて、漫画家は現在4人としか契約していません。彼らはまんがたりの社員のような目線で、どうやったら漫画をおもしろくできるかを考えつつ、漫画家としてのキャリアについてもチャレンジしている人たちです。なんでも話し合っていますし、漫画の技術についても遠慮なく意見をぶつけ合うようにしています。

――今後の展開を教えてください。
広告漫画は今の世の中にあわせてもっと進化できると思っていて、新しい形式を生み出したいと考えています。名付けるなら「広告漫画2.0」ですね。実は今、オリジナルストーリー広告漫画というサービスをスタートしています。これは、週刊誌の連載漫画のようなハイクオリティな内容の広告漫画で、商品を中心に置きつつもしっかりとストーリーがおもしろい広告漫画のことです。作品がおもしろければ話中に登場するモノ(商品)も買いたくなるはずです。そうしたレベルの高い広告漫画を制作することが今の目標です。最終的には、例えば広告マンガだけを扱った新しいビジネスモデルの漫画雑誌を作って、大手少年誌の良きライバルになりたいと本気で思っています。

――読者にアドバイスをお願いします。
やりたいことがあるなら早く行動に移したほうがいいですし、興味がないと思ったらやめて別の事業にシフトしてもいいと思います。やりたい、興味がある、おもしろうそう、チャレンジしたいとどれだけ思っていても、やってみないと本当にやりたいものかどうかわからないものですから。もし、人生をかけて手がけたいと思っていたことが、実際に取り組んでみたらまったく違ったとわかっても、がっかりするんじゃなくて、早めにわかってよかったと思うべきでしょう。さっさと切り替えて、どんどん新しいことにトライして、どんなに大変でもおもしろいと思えることを事業にしたほうが絶対に幸せです。ぜひチャレンジし続けてほしいですね。

株式会社まんがたり

所在地:東京都千代田区神田神保町1-6 神保町サンビルディング3F
※取材時点の情報です

https://www.mangatari-comictalk.com

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