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人気開業エリア分析

美容院の人気エリア・下北沢。「カルチャーの街」に集まる理由とは?

下北沢といえば、多くの小劇場やライブハウスが集積する、都内でも有数のカルチャー発信エリア。そんな下北沢に美容院の数が多い理由、生き残るための工夫を探った。

下北沢開業の理由は「この街から全国へ」という狙いから

小田急線の地下化が完了し、近年、街の姿が大きく変わりつつある下北沢は、美容院の激戦区でもある。商圏データ「マケプラ」によれば、駅から0.5km以内にある美容院は84店舗と、渋谷や池袋などのターミナル駅に並ぶ勢いだ。

美容院開業ラッシュの波が、ここ数年でさらに高まっていると語るのは「FRUITS」店主の大林弘樹さん。同店が開業した2009年以降だけでも、下北沢の美容院の数は増加の一途をたどっているという。

「原宿や青山はサービスの値段も高く、一時期あった勢いはなくなりつつあります。その代わりにカルチャーの街、下北沢、吉祥寺、高円寺に注目が集まっているんです。私が下北沢を選んだのも、街に個性があったから。個性的な髪型をお客さんと一緒に作っていきたいと思って開業を決めました

一方、下北沢の美容院に長年勤務し、今年4月に独立した「LOAWe」店主の江田有希さんは、戦略的な意味でも激戦区・下北沢をあえて選んだ。

「都心では、どの街でも美容院は飽和状態で激戦区となっています。他の人気エリアに出店するよりも、馴染みのある下北沢で開業しようと考えました。また、店舗を増やしていくことを視野に入れたとき、『下北沢』というネームバリューが他店との差別化になる。全国に出店することも視野に入れて下北沢を選びました」

独特なカルチャーを形成してきた「下北沢」という街の名前は、流行の発信拠点として全国に知れ渡っている。記念すべき1号店を下北沢に開業し、次の時代を作っていくという野心ある美容院が多いことも、激戦区となる要因であるようだ。

激戦区では「合理化」「技術力」「ニーズの細分化」でライバルに差をつける

しかし、激戦区で勝ち残っていくのは至難の業。価格、技術、ブランド、さまざまな試行錯誤を繰り返しながら、各店舗はサバイバルしている。では、その秘訣は、いったいどこにあるのだろうか? 先に紹介した「FRUITS」は大林さんが、一人で切り盛りを行う小さなお店。だからこそ、徹底的な合理化を行い、顧客目線のサービスを提供することを可能にしている。

「営業時間外の深夜に髪を切りたい場合でも、時間外手数料なしで対応しています。指名料もないし、ワックスやシャンプーといった商品の販売もしない。雑誌も、ヘアカタログやファッション誌は置かないようにしています。業界の慣習にとらわれずお客さん目線に立って、いらないものを省くことを心がけているんです」

古着屋の数が都内の駅で第3位というマケプラデータからもわかるように、ファッションに対してこだわりの強い若者が多く、彼らが手に届く価格でサービスを提供するためには、徹底的な合理化は不可欠。そんなこだわりも、下北沢に集まる人々と共鳴しているようだ。

また、「おしゃれ」のイメージが強い街だからこそ、そこに流されることなく技術の高さを打ち出していくことが大切だと、「LOAWe」の江田さんは語る。

「『アットホームなお店』『隠れ家的なお店』と、雰囲気を打ち出すお店は少なくありませんが、お客さんはまず髪を切りに来ている。うちでは、雰囲気ではなく、アッシュカラーやトリートメントといった『技術力』を武器にしているんです。そんな技術の裏打ちがあって、初めてお店の雰囲気が生きてくると思っています。」

街の文化を活かしながら「隙間」を狙った開業がおすすめ

再開発の真っ最中である下北沢エリアはこれからも大きな変貌をとげることが期待される。その一方で、昔から変わらぬ若者文化はこれからもどんどんこの街から発信されていくだろう。

FRUITSの大林さんは、「激戦に耐えかねて、近年は閉店を決める美容院も少なくない」と認めつつ、「ファッションや音楽が好きな、こだわりの強いお客さんに響くように、しっかりとニーズを細分化して捉えていくことが重要」と述べる。また今後、下北沢に美容院を出店する人に向けて、「LOAWe」の江田さんは「誰も気づいていない隙間はあるかもしれません」とエールを送る。そんな隙間を探し、潜り込むことができれば、激戦区にもまだまだ商機はありそうだ。

データ:商圏データ「マケプラ調べ」(2016年5月現在)

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