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先輩開業インタビュー

職業は「まちづくり」。型にはまらず複数経営で多岐にわたる活動を続ける一級建築士

蔵づくりの建物が多く、江戸時代の町並みを思わせることから「小江戸」の愛称で親しまれている、埼玉県川越市。都内からの交通の便もよく、近年は観光スポットとして存在感を増しています。そんな川越の一角で、昭和30年代に建てられた長屋をリノベーションしてコワーキングスペースを運営しているのが、一級建築士の荒木牧人さんです。個人で建築事務所を立ち上げながら、法人として川越のまちづくり事業を展開するなど、その活動内容は建築士の枠に納まらず多岐にわたります。今回は、そんな一風変わった事業展開を行う荒木さんに、今に至るまでの経緯や現在の仕事内容、またこれからの展望についてお話を伺いました。

建築分野にかぎらず興味が湧けばすぐに行動!

コワーキングスペース「coworking & shareoffice ダイクマチ」の室内写真 ――個人事業主と法人、2つの事業を展開していますが、それぞれ事業内容を教えていただけますか?
まず、個人事業主として運営している建築事務所「maao」では、建物の設計や耐震診断など、いわゆる一級建築士の仕事全般をしています。もう一つは、株式会社80%(※以下、80%)の代表取締役としての仕事です。こちらでは主に川越市を中心としたリノベーション事業とコワーキングスペースの運営を行なっています。川越市内の空き家となっていた長屋をリノベーションして、飲食店などが入居する「旧大工町長屋」をオープンしたり、「coworking & shareoffice ダイクマチ」「coworking & shareoffice ロッケンマチ」の2つのコワーキングスペースを展開したりしています。

――建築とはまったく別の活動もされているとか
実はこの他にも、住まいのある川越市内の南古谷という地域で、週に1回、駄菓子の移動販売をしています。三輪自転車に駄菓子を乗せて主に地域の子どもたちに販売しているのですが、これが意外と人気なんです。僕は子どもが4人いるのですが、一番下の子が小学校を卒業するまでの6年間で、何か地域の子どもたちに喜んでもらえることをしようと思ったのがきっかけで始めました。また、今はソーシャルな活動として、川越市内にある新河岸川と九十川の清掃をしています。地域の人たちがカヌーやSUPなどをして遊べるようにしたいと思い、川によい活動「カワイイ活動」を行なっています。

自治会長就任がきっかけでリノベーションの世界に

「自治会長就任がきっかけでリノベーションの世界に」と語る一級建築士の荒木牧人さんの写真 ――建築士としてはどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?
子どもの頃から建築に興味があったのですが、設計を極めるには「図面上だけではなく実際の納まり(ディテール)も知らないと!」というこだわりがあったんです。それなら現場仕事をしないとだめだと思い、就活の一環として川越の建設会社に片っぱしから手紙を送り、そのなかの1社に拾ってもらったのがキャリアのスタートです。現場監督を経験しながら施工を10年学び、その後に設計事務所へ転職、6年間修行するなかで1級建築士を取得しました。そして独立したのが2013年です。

――独立後、仕事は順調でしたか?
建築士として大きな仕事をもらえるわけでもなく、かなり苦しかったですね。蓄えもなく、退職金として設計事務所からいただいた1か月分の給料を元手に開業したので、ギリギリの生活ではありました。なので、深夜に力仕事のアルバイトもしましたが、体がもたずにすぐに挫折。同じアルバイトでも、できるかぎり設計に関わる仕事がしたくて、建築士の友人から構造図だけを描くような、いわゆる“ヘルプ案件”をもらって、コツコツと仕事を増やしていきました。

――経営が安定したのはいつ頃ですか?
今も安定はしていませんが、仕事の幅が広がったきっかけは、一般社団法人リノベーション住宅推進協議会主催の「リノベーションアイデアコンペ」での受賞です。今振り返るとすべてがつながっていたと思うのですが、独立したばかりの頃に偶然、自治会の集まりに参加する機会があり、その場のなりゆきで自治会長になってしまったんです。そこで、ハザードマップを調べたり、空き家の比率を調査したりと、自分なりに建築士としての知識をいかして地域の分析していた時に、「空き家問題を解決せよ!」というテーマを掲げたコンペが開催されていることを知りました。そこで、ちょうど分析していたデータを活用して、住まいのエリアをベースに、具体的な空き家活用の提案を送ってみたところ、なんと優秀作品賞(2位)に選出されてしまった。これがきっかけとなってリノベーションの世界に深く足を踏み入れることになったのです。

川越でもエリアリノベーションを起こしたい

「旧大工町長屋」の外観写真 ――コンペでの受賞が80%の立ち上げにもつながっているのですか?
はい、受賞してからリノベーションについて興味が湧き、全国に目を向けてみると、熱海や北九州、仙台などで、小さなエリアからまちを活性化する「エリアリノベーション」が起こっていることを知りました。「これはおもしろい!」と思い、建築士としての仕事をしながらも、何かリノベーションに関わることができないかと考え始めたのが2015年だったと思います。その後、川越で市内の物件をリノベーションする行政主催のイベント「まちづくりキャンプ」が開催されたので、もちろん参加しました。そこで「旧大工町長屋」の二棟の内、一棟をリノベーションして再生する事業提案をしたというわけです。80%のメンバーともここで出会い、2016年に会社を立ち上げました。

――コワーキングスペースの運営を始めた理由はなんですか?
「旧大工町長屋」を立ち上げた際に、銀行から借り入れた約1000万円をつぎ込んでしまったので、80%は借金からのスタートでした。そこで、次の業態をメンバーと話し合った結果、電源とWi-Fiがあればできるコワーキングスペースにしようという案が出たのです。また、二棟連なる長屋の一棟だけの再生だとまちの拠点としてはインパクトが弱く、二棟の完全再生をしたいという思いもありました。そこで、同じ長屋の並びを改築し、コワーキングスペースを始めたのですが、感度の高い人たちから注目されていたようで、作っている最中から何件も問い合わせがあり、オープン時には募集人数が埋まっている状態でした。

――2019年12月には同じエリアに2店舗目となる「coworking & shareoffice ロッケンマチ」を立ち上げていますね
ダイクマチがあっという間に満員となってしまい、需要があることがわかったので、すぐに店舗を増やすことにしました。僕たちは「旧大工町長屋」を中心に半径200メートルのスモールエリアにある空き家を集中的に再生していこうと考えています。川越市といっても広いので、あちこちに拡散して展開しても失敗するだろうと。そこで、自分たちで決めた範囲内に絞って、小さくとも積極的に攻めていこうと決めていて、「coworking & shareoffice ロッケンマチ」はまさにそのエリア内に入っていたので迷わず動きました。

これからは建築士もまちづくりのキーマンになる

夜の「旧大工町長屋」の外観写真 ――コワーキングスペースは今後増やしていく予定ですか?
今のところ予定はないのですが、川越市街だけでなく、郊外にも需要はあると考えています。コワーキングスペースがあると楽しくなりそうな場所があれば、仕掛けていく価値はあるとメンバーとも話し合っています。ただ、現在は2つの店舗をメンバーだけで管理しているので、もし店舗を増やすとしたらスタッフを雇う必要もあり、人件費が掛かってしまうので、そこは慎重にいきたいと思っています。僕たちはみんな40代なので、年齢的に楽しみベースでやりたいという思いも強いですからね。

――個人と法人の2つで活動することにメリットはありますか?
単純に、片方が失敗した時に収入がゼロにならないという安心感はあります。また、僕はソーシャルな活動にも力を入れているので、内容によって個人や企業の仕事と絡めることもできるのがメリットの一つですね。いわゆる“お金にならない”活動も、そこから人脈が広がったり、新しい仕事につながったりすることもあるので、僕にとっては大切な取り組みです。特に今はSNSで人とつながりやすくなり、何かを始めるにもハードルはかなり低くなったといえます。仕事もやりたいことも社会貢献も、同時にできるすばらしい時代になったと思っています。

――荒木さんの活動はまさにそれを証明しています
まちづくりにおいては、建築にかぎらずいろんな分野のコーディネートを行うのも建築士の役割になりつつあります。リノベーション界でも有名なある建築士は、設計事務所を経営しながら同じ建物内でパン屋を営んでいます。しかもとてもおいしくて地域の人気店です。そういう事例が少しずつ出てきていて、建築士が「プラスアルファ」を手がけることもメジャーになりつつある。設計やデザインを考える職業なので、そうした展開をしやすい分野でもあるのが理由の一つです。

僕らは火種、次世代に「おもしろいこと」をつなげたい

――今後の展望をお聞かせください
80%はようやく空き家の相談ができる場所として川越の皆さんから認知されるようになりました。また、まちづくりやコワーキングスペースの運営について全国から講演依頼が来るようになり、アドバイザー的な活動も増えています。僕らは80%の活動はすべて“火種”だと思っていて、次の世代が僕らの動きを参考にして、新しいことにどんどんチャレンジしてくれるといいな、と思っています。そのためにも「あのおじさんたち、何かおもしろそうなことやってるな」と思ってもらえることを、これからも続けていきたいです。

――最後に、読者へメッセージをお願いします
これから何かを始めたいけど、何から始めればいいかわからず迷っている。そんな人がいたら、お話ししましょう、ぜひ会いにきてください。僕は人の話を聞くのが大好きなので、建築やまちづくり、また仕事について悩んでいる人から、老若男女問わずたくさん相談を受けています。実は悩みを話していると、モヤモヤしていた頭のなかが整理されて、本当にしたかったことがはっきりとわかるようになることが多いんです。もしかしたら僕の経験が何かの役に立つかもしれない。これを読んで会いに来てくれたら、本当にうれしいですね。

株式会社80%

所在地:埼玉県川越市連雀町27-1
※取材時点の情報です

https://80per.net

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