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先輩開業インタビュー

パン作りへの強いこだわりから誕生した、たった一人で運営するコッペパン専門店

一見、パン屋さんとは思えない外装やユニークな店名が目を引く、神奈川県相模原市のコッペパン専門店「月刊アベチアキ」。メインとなる商品も、赤ワインをベースに手づくりジャムを挟む「サングリア」、味も見た目もさわやかな「チョコミント」、ラーメンとピリ辛の自家製肉味噌をあわせた「タンタンメン」など、他店にはないラインナップが並んでいます。このインパクトのある店を立ち上げたのは、東京都町田市に本店をかまえる人気のベーカリー「パン・パティ」で店長として活躍していた阿部千秋さんです。この前衛的なパン屋さんを立ち上げたきっかけや、運営について詳しくお話を伺いました。

すべて自分で作って納得のいくものを提供したい!

コッペパン専門店「月刊アベチアキ」の外観写真 ――とてもユニークな店名ですね。
ありがとうございます。お客様からもよく言われます。名前の由来を説明すると、まず「月刊」は、ページをめくるたびに楽しい気分が広がるファッション誌のイメージで、来店するたびに新しい発見があるお店にしたいという意味を込めています。「アベチアキ」はそのまま本名で、インパクト重視でストレートにつけました。

――お店の外装や内装もインパクトがありますが、すべてご自身のアイデアですか?
実は、お店を立ち上げようと思い立った時に、タイミングよくベーカリープロデューサーの岸本拓也さんと知り合い、打ち合わせを重ねながら店名やデザイン、メニューなどを決めていきました。岸本さんは高級食パン専門店などをプロデュースしている、メディアなどでも活躍中の方で、プロ目線でいろいろアドバイスを受けながらこの店を完成させました。

――コッペパン専門にしたのはなぜですか?
私はとにかくパンへのこだわりが強くて、独立するならすべて自分で作って納得のいくものを提供したいと考えていました。なので、お店を一人で切り盛りをすることを前提にしていたのですが、当時勤めていたパン屋さんの社長から「それなら扱うパンの種類を1つにしぼったほうが負荷も少ないんじゃないか?」とアドバイスをいただいて、それでコッペパン専門店にしようと決めました。

後輩たちに独立という新たな道を示したかった

コッペパン専門店「月刊アベチアキ」の阿部千秋さんがオススメメニューの1つチョコミントを作っている写真 ――パン作りとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?
高校を卒業後、ある中小企業で事務として働いていたのですが、就職後にデスクワークが苦手なことに気づいてしまって、何か違うことをしたいと漠然と思っていたんです。子どもの頃からお菓子作りが好きだったので、製菓の仕事に憧れがあったものの、専門学校にいくような度胸もなかった。そんな時に、お菓子作りの料理教室にいく機会があったのですが、そこではパン作りも教えていて、体験した途端、一気にパンの魅力に取りつかれました。

――それでパン屋さんへの転職を決意したわけですね
すぐにパン屋さんで働こうと思って、地元のお店を中心に求人を探しました。最初に個人店のパン屋さんに面接にいって、残念ながら不採用だったのですが、面接してくれた社長さんが「近くのお店でも募集しているよ」と、知り合いのパン屋さんを紹介してくれたんです。そこが前職のお店「パン・パティ」で、そこから約10年勤めました。

――独立したきっかけを教えてください
「パン・パティ」に長く勤めていたことで後輩も増えてきて、気づけば従業員の中でも私が一番上のポジションになっていました。そうなると、早く私のポジションを後輩に譲らないと成長の妨げになるような気がして、10年という節目に退職しようと考えるようになりました。また、同店には独立・開業した人がまだいなかったこともあり、後輩たちに退社後の新たな道の一つを示すことができればと思い、社長の後押しを受けて起業したというわけです。

――どのような準備から始めたのでしょうか?
私の場合は本当に運がよくて、前職の社長が岸本さんと知り合いで、紹介を受けてコンサルタントとして構想段階から入っていただきました。そのおかげで、店に何が必要で、どんな準備をし、業者の手配まですべて教わりながら店づくりを進めることができました。また、店名やデザインなど、私のイメージを伝えることで具現化していってもらうなど、プロにトータルで見ていただけたのはラッキーでした。

集客は人気ブロガーや地域新聞社などをフル活用

コッペパン専門店「月刊アベチアキ」の内観写真 ――実際に店ができあがるまでにどれくらいの期間がかかりましたか?
2年くらいになります。物件探しが長引いて、それだけで1年はかかりました。「ここだ!」という場所が見つからず、岸本さんと何軒も見て回っている中でいくつかピックアップし、最終的に今の場所に決めました。決め手は、目の前が信号で停車した車から店舗がよく見えるので、インパクトのある外観を作ればかなり目立つところですね。実際にお客様からは「前から気になっていたよ」と言われることが多く、狙い通りになりました。

――オープン時の集客はどのようなことをしましたか?
まずは店の半径3km圏内にチラシを撒きました。あとはメディアを使ったPRです。ここは駅前でもないので、オープンしたことをとにかく広く知ってもらう必要があります。試作会を催して岸本さんの知り合いのブロガーにSNSで拡散してもらったり、地域新聞の記者を呼んで広告記事を掲載してもらったりもしました。おかげで集客に成功し、ネットでも話題の店として紹介されることが多かったと思います。

コッペパン専門店「月刊アベチアキ」の厨房写真 ――立ち上げまでにどれくらいの費用がかかりましたか?
プロデュース料や厨房設備などすべて含めて、1800万円ほどです。資金は銀行から借り入れをしました。始めは小さく開業して徐々に規模を拡大していこうかとも思ったのですが、こだわっているうちにどんどんと費用がかさんでしまって。借りる直前はかなり度胸がいりましたね。

ただ、前職の社長が銀行とのパイプを持っていて、担当者を紹介してもらったので意外とスムーズに借りることができました。

スタイルを微修正しながら地域密着型を目指す

オープン後の運営状況や営業を続ける中で気をつけていることについて語るコッペパン専門店「月刊アベチアキ」の阿部千秋さんの写真 ――実際にオープンしてから運営は順調でしたか?
オープン前に集中してPRに力をいれたこともあって、オープン後は呼び込みなどの活動をすべてストップし、パン作りに集中したことが功を奏して、着実にリピーターが増えている手応えはありました。また、相模原市にコッペパン専門店がなかったこともあって、最初は興味本位で来られる方が少なくなかったのですが、徐々に常連客が定着していったので売上は安定しています。オープンから2年後の2019年には、地元の商工会議所が催している、味や接客などを総合的に評価する「お店大賞」の副賞を受賞できたのはうれしかったですね。地域から認められた証拠ですから。

――営業を続ける中で気をつけていることはありますか?
地域にパン屋さんはたくさんあるので、差別化は特に意識しています。コッペパン専門店という枠組みの中でも、他ではあまり扱っていない具材をチョイスして、お客様が飽きないように新商品作りなどに力を入れています。オープン当初は月替わりに新作を出していましたが、お客様から「あの新作はもうなくなっちゃったの?」と、惜しむ声もあって、今は2カ月に一度のペースで、その期間しか味わえない新しい商品を必ず一つは提供しています。

――ターゲットとしてはどれくらいの層を想定していたのですか?
20代から30代のファミリー層です。なので、タンタンメン、チョコミント、サングリアなど、若い層に受けいれられそうなラインナップをそろえていました。ですが、実際にオープンすると意外と主力になったのが、オーソドックスな「北海道つぶあんマーガリン」や「粒ピーナッツ」。その理由は、地元の年配の方たちがリピーターとして来店してくれたことにありました。常連の方の中には60代のお客様もいて、地域密着型を目指す当店としてはうれしい誤算でした。

とにかく「好き」だからハードワークでも問題なし!

コッペパン専門店「月刊アベチアキ」の阿部千秋さんがオススメメニューの1つピリ辛タンタンメンを作っている写真 ――お店を立ち上げてよかったと思った瞬間はありますか?
ありきたりですが、お客様から直に「おいしかったよ」と言われた時です。「パン・パティ」でもお客様からうれしい感想をいただくことは多かったのですが、レシピを考えているのは基本的に社長であり、喜びもチームとしてでした。ですが、今回はすべて一人でパンのレシピを考え、作っています。その中でいただける「おいしかった」「また食べたくてきたよ」「友達に紹介するね」といった声は、また格別です。独立したからこそ味わえる満足感ですね。

――反対に、これまでの中で大変だったことはなんですか?
一人なので、誰も相談相手がいないところでしょうか。例えば、今回のようなコロナ禍になった時に「どうしようか?」と、一緒に頭を悩ませる人がいるだけでも心強いだろうな、と思うことがあります。夫婦で開業したり、共同経営者がいたりするお店を見ると、たまにうらやましくなる。自由がある分、メンタル的につらい時は正直ありますよ。

――お一人で運営していると、かなりハードワークになりますよね?
そうですね。一般的にパン屋さんは朝3時から4時くらいに稼働しますが、私は少し遅めに出勤していて 、5時スタートにしています。営業後は、片付けが終わるのが19時半。そこから材料など必要なものを買い出しにいくので、自宅に帰るのが21時を確実に過ぎます。それが毎日なので、ハードワークと言えるかもしれません。ただ、それ以上にパン作りが大好きなので、作業中はまったく苦ではなく、毎回焼き上がりの瞬間は楽しくてしかたない。だからこそ一人で続けられているのでしょうね。

――今後の展開を教えてください
もっと地元に根ざした営業をしたいと思っていて、地域に貢献できるような活動に取り組んでいきたいと考えています。つい最近では、幼稚園や保育園で子どもたちにパンを作る楽しみを体験してもらう教室を開催しています。パンに塗るジャムやクリームを子どもたちに手渡し、「自分の好きなように作っていいよ」と伝えると、本当にうれしそうに笑って一生懸命作ってくれます。自分がパン作りをしている理由はこの笑顔にある、と心から思える瞬間です。今は新型コロナの影響もあって多くの場所を回ることはできませんが、今後はさらに広く活動していきたいと思っています。

月刊アベチアキ

所在地:神奈川県相模原市中央区千代田2丁目11-10
※取材時点の情報です

http://abechiaki.com

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