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先輩開業インタビュー

元ホテルマンが54歳からまったくの異業種に参入!経験ゼロから始めた介護タクシー

体の不自由な被介護者の移送を専門に行っているタクシーがあります。それが「介護タクシー」です。車椅子やストレッチャー、時には酸素吸入器なども必要になる被介護者にとって移動は大変であり、専門知識を有した人のサポートが必要です。そんな専門職をまったくの異業種から素人のまま飛び込んだのが、あべケアタクシーの阿部誠さんです。そこにはどんな経緯があり、どのようにして事業を成長させてきたのか。阿部さんに詳しくお話を伺いました。

365日、お客様からのどんな要望にも応える介護タクシー

入院患者さんや障がい者の方々の移送を行う介護タクシー(あべケアタクシー)の写真 ――事業内容について教えてください
一般的に入院患者さんや障がい者の方々の移送を行うのが介護タクシーです。弊社も2台のワンボックス車を保有していて、それぞれ車椅子や車輪が付いた簡易ベッドのストレッチャーなどを積み込めるようになっています。また、さまざまな障がいを抱えた人が利用できるように、酸素ボンベや痰の吸引器なども準備しています。

――あべケアタクシーの特徴はなんですか?
ただ送り届けるだけでなく、おでかけの際のサポートや通院の付き添い介助など、お客様からのどんなご要望にも「NO」を言わない点だと思います。例えば、レストランに行きたいと言われたら、一緒にお店に行って食事のサポートをします。また、カラオケに行きたいと言われたら、曲の入力のお手伝いもします。時には日帰り旅行に付き添うこともあって、車椅子を私が押して観光地を巡ることもしています。

――幅広くサポートするために専門的な資格もお持ちなのでしょうか?
そうですね。2種免許やヘルパーの資格はもちろん、介護技術と旅の業務知識をそなえた外出支援の専門家であるトラベルヘルパーの資格も取得しています。ただし、移送中の痰の吸引などは医師や介護士、研修を受けた者でないとしてはいけないので、看護師同乗サービスなどで対応しています。休みは特に決めずに、365日、いつでも依頼があればお客様のもとに伺うようにしています。

開業の理由は「偶然見た新聞広告が気になったから」

介護タクシーを始めるきっかけを語るあべケアタクシーの阿部誠さんの写真 ――介護タクシーを始めたきっかけを教えてください
高校を卒業してから34年間、ホテルマンとして都内や埼玉県内のホテルに勤めていました。レストランのウェイターからスタートし、ルームサービスのマネージャーや、バンケットルームでウェディングプランナーを担当するなど、さまざまな現場を経験してきたのですが、52歳の時に会社都合で早期退職することになったんです。本当はホテルマンを続けたかったものの、仕方なく次の職探しを始めました。

最初は地元・秩父市の年金事務所に勤めたのですが、事務仕事などをしたことがなかったので、仕事に馴染めず10カ月ほどで退職してしまいました。途方にくれていた時に、偶然新聞で介護タクシーのオーナーを募集する広告を見つけたのです。

――すぐに応募したのですか?
はい、それまで介護などにまったく興味がなかったのに、その広告がなぜか気になり「ホテルマンで培った接客技術を生かせるかもしれない」と、ふと思ったんです。すぐに電話で問い合わせたところ、全国介護タクシー協会に入会する必要があることを知り、そこで2種免許とヘルパーの資格を事前に取得してから入会することにしました。理由は、もし入会後に免許や資格が取れなかったら元も子もないと思ったからです。無事に取得できたので入会すると、どんな車両を用意して、どのような設備が必要かなど、協会はずぶの素人の私を一からサポートしてくれました。おかげで広告を見てから8か月後の2012年5月に開業できました。

――スムーズに開業できたのですね
最初は介護タクシーの経験が長い同業の方に仕事を振っていただけたので、順調にスタートを切ることができました。しかし、せっかく個人事業主として独立したにもかかわらず、自分では一切営業に回らずに、先輩のタクシー業者から仕事がくるのをただ待っているだけ……。そんなの日々が1年ほど続いた後、いざ独り立ちすると、一人で仕事を取ることができず、途端に収入が激減してしまったのです。

ホテルマン時代に培った「気持ちを察する」能力

入院患者さんや障がい者の方々の移送を行う介護タクシー(あべケアタクシー)の社内の写真 ――独り立ちしてからはどのような動き方をしたのですか?
それまで毎日1、2件ほどコンスタントに仕事がきていたのが、待てど暮らせど電話も鳴らないし仕事もこなくなりました。当然ですよね、営業を一切していなかったのですから。「これはもうまずいぞ」と、そこで私も本気になったわけです。ただ、営業なんてしたことがない。ホテルマンは接客を得意としていますが、自ら仕事を取りにいくことに慣れていません。どうすればいいのか、ノウハウもなかったので、この時が一番つらい時期でした。

――実際にはどのような営業を行なったのですか?
名刺とパンフレットを持ってひたすら病院や介護施設を回りました。もちろん一度あいさつにいったからといって仕事をもらえるわけがありません。各病院、施設にはすでに古くから付き合いのある介護タクシー業者がいるのです。そう簡単には入り込めません。そこで、ただ回るだけでなく、病院内のナースステーションにも足を運んで、そこにパンフレットを置かせてもらうようにしました。現場の看護師さんや患者さんに直接、社名を覚えてもらうためです。そうした泥臭い営業を続けていくうちに仕事は着実に増えていきました。売上が安定したのは開業後3年目くらいです。

――ホテルマンの経験が役立ったことはありますか?
お客様である患者さんやご家族の方などの気持ちを察することができる、ということでしょうか。ホテルはさまざまな性格の方が訪れ、その人の雰囲気や口調からどんなお客様かを読み取らなければなりません。そして気持ちよく過ごしてもらうために、お客様の気持ちをつかむ必要があります。介護タクシーを利用するお客様のなかには、うまく話すことができない障がい者の方もいて、そうした方々は特にこちらをよく観察しています。こちらから心を開いて接することが大事であり、相手に合わせた接客はホテルマンの強みといえますね。

早期退職で得た退職金を開業資金にして"借り入れなし"に

入院患者さんや障がい者の方々の移送を行う介護タクシー(あべケアタクシー)の車いすを乗せる写真 ――開業にどれくらいの資金がかかりましたか?
1台目のワンボックス車は中古なのですが、約240万円しました。あと、全国介護タクシー協会への入会に50万円かかり、その他に資格の取得や備品の購入などを含めると、諸費用で400万円ほどかかったと思います。すべて早期退職に応じて得た退職金でまかないました。なので借り入れは一切していません。開業から3年ほどたって忙しくなり始めた頃、妻に仕事を手伝ってもらうことになり、2台目を購入したのですがこちらは中古で約100万円でした。でも、中古車は必ずあちこちにガタがくるので、修理費などがかさばります。あと介護タクシーは1年車検なので、そうしたところでもかなり維持費がかかっています。

――奥様が手伝うようになった経緯を教えてください。
徐々に忙しくなるのはありがたかったのですが、車両が1台しかないので同時刻に依頼が入ると片方は断るしかありません。創業3年目にもなると、多い時に5、6件くらい重なるようになったので、そのタイミングで増車しようと決意したのです。そこで隣町のグループホームでヘルパーをしていた妻に手伝ってほしいと相談してみることにしました。同業者の方が自身の妻を誘って断られた話をよく耳にしていたので不安でしたが、快諾してくれた時はほっと胸を撫でおろしました。ただ、開業からデータを取り続けていますが、2台体制になった今でも年間160件の依頼を断っているのが現状です。

――かなりの件数ですね。ちなみに、どんなデータを取っているのですか?
売上や依頼件数は当然ですが、病院や施設からどれほどの依頼があったか、依頼主やお客様の顧客データなどを予約帳にまとめて記載しています。そこに断った件数も書いているのですが、その目的の一つに、増車する機会を見誤らないようにするためというものがあります。また、介護タクシーは待ちの仕事でもあるので、売上を予測するためにも過去のデータは重宝しています。

――そのなかでも特に役立っているデータはありますか?
データではないのですが、顧客リストとしてまとめてあるお客様の名前はかなり大事だと思います。患者さんや障がい者の方のお名前を読んで「お元気ですか」とあいさつするだけでも距離は縮まります。障がいでうまく話せない人でも、ニコニコと表情で応えてくれます。だから、できるだけお客様の名前を覚えて、依頼を受けた瞬間に顔を思い浮かべられるようにしています。そうしてこちらから顔なじみとして接すると、お客様も私の顔や名前を自然と覚えてくれるものです。

介護タクシー業界はこれから必ず伸びると予測

――今後の展開を教えてください
昨年からのコロナ禍で一旦は依頼件数が落ち込んだものの、今年になってまた回復してきています。今度はさらに依頼が増えてくることが予想されるので、事業拡大のためにさらなる増車を予定しています。また、そのタイミングで法人化しようとも考えていて、3台、4台、5台と台数を増やしていこうと思っています。私が目指しているのは、介護タクシーをお願いする際に、まず一番にあべケアタクシーを思い浮かべていただくことです。言い換えれば、それは信頼されている証でもありますから。

――介護タクシーは需要としてはまだまだ伸びると思いますか?
間違いなく伸びると思っています。実際にこれまで介護タクシーの仕事をしてきて、需要と供給が見合っておらず、2台ではまるで対応し切れていないのが実情です。同じ県内で知り合いの介護タクシー業者が10人ほどいるので、当社でお断りしたお客様の対応をお願いしているのですが、それでも受け切れないことがあります。もし介護タクシーを始めようと考えている方がいるのであれば、やり方次第で成功することも可能だと思います。

――やり方次第とはどういう意味でしょうか?
私の経験上言えることは、介護タクシーも接客業だということです。決して、ただお客様を目的地に送り届ければいいというものではありません。この仕事をビジネスとして割り切って捉えていると絶対に失敗すると断言できます。なぜなら、お客様はそうした人を見抜く目を持っているからです。やはり大切なのは、寄り添う気持ちです。これは接客業の基本でしょう。好感を持てなければ、誰もそのタクシーには乗りたくない。ありきたりな言葉ですが、介護タクシーにこそ「おもてなしの心」が必要なのです。

あべケアタクシー

埼玉県秩父市上宮地町20−15

http://abekea.versus.jp

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