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先輩開業インタビュー

子育てをがんばるママたちに寄り添いたい。わが子との思い出づくりからスタートした「おひるねアート」

赤ちゃんの姿をアート作品として残すことができる「おひるねアート」は、ママたちの間で大きな話題となり、メディアなどでも注目を浴びた人気サービスです。「育児が楽しくなった」「ちょっとした自慢になる」など、一度始めたらやみつきになる人が急増し、現在もSNSなどにわが子のアート写真をアップする人も少なくありません。そんな短い幼少期の思い出をかわいく撮影するコンテンツの仕掛け人が、一般社団法人日本おひるねアート協会の代表理事、青木水理(あおきみのり)さんです。今回は、おひるねアートとの出会いや、事業を立ち上げたきっかけ、また運営についての苦労など、さまざまなお話を伺いました。

主に資格取得者のビジネス展開をサポート

おひるねアートの写真 ――まずは事業内容を教えてください
一般社団法人として日本おひるねアート協会を運営しています。主におひるねアートの認定講師を育て、資格を付与し、全国の企業が主催するイベントに派遣するなどの事業を行っています。また、2020年からはオンラインコンテンツも用意し、Webを使ってのおひるねアートの認知活動をスタートしました。まだ始まったばかりですが、写真を通じてご家族様の絆を深くする「家族写真プロジェクト」などの新規事業も進めています。

――資格を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか?
まずは、おひるねアートの名称を使用したビジネスができるようになります。 そのためのサポートも行っており、当協会に加盟している認定講師に仕事の紹介もしています。また、勉強会も開催しており、スキルアップの機会も充実させています。現時点(2021年2月現在)で約600名の講師を輩出していて、今は新型コロナの影響もあってアクティブに活動している講師は200名強ほどになります。7割がママで、多くの方が個人事業主として活躍しています。

――認定講師にどのような仕事を紹介してるのですか?
例えば、住宅展示場で土日に開催されているフェアや、商業施設の集客を狙った催し物としておひるねアートの撮影会を開いています。認定講師がおひるねアートに必要なセットを現場にお持ちして、お客様の撮影をお手伝いするといった仕事内容が多いですね。商品の販促のお手伝いや制作監修なども請け負っています。そうした企業案件が年間800件くらいあるので、各地の講師に振り分けてお願いしています。また現在はオンラインの案件も増えてきて、自宅にいながらでも仕事ができる環境を整えています。

1日1枚ブログにアップした息子の写真が話題に

――今の事業をはじめる前はどのような職業についていたのですか?
専門学校を卒業後、トリマーとして2年ほど勤めていましたが、結婚して長女を出産すると同時に家庭に入りました。それから育児をする中で乳児を対象にした仕事に興味が湧いて、赤ちゃんとジェスチャーを使ってお話しする育児法「ベビーサイン」の資格を取得し、個人事業主として6年ほど活動していました。

――おひるねアートとの出会いはいつ頃だったのでしょうか?
2012年7月に第二子となる息子を出産してすぐのことでした。とにかく暑い夏の日で、外にも出られないし、暇だったので趣味として始めていた写真で何かおもしろいことができないかとネットで探してみたところ、海外で赤ちゃんのアート写真を撮影している女性を見つけたのです。寝ている赤ちゃんをとてもかわいく撮影していたので、思わず私も同じように息子を撮ってみました。それが今のおひるねアートで、写真をブログにアップしているうちにハマっていきました。

おひるねアート本の写真 ――ブログに載せた写真の反響はいかがでしたか?
たくさんの方から「すごくかわいい!」とコメントをいただき、予想以上に好評でした。それで1日1枚のペースで写真をアップしていたら、メディアの方からもお声がけいただいて、民放のテレビ番組にも多数出演させていただくことができました。夕方のニュースやゴールデンのバラエティ番組などで“アート作品を撮影するママ”といった感じで紹介されて、少しだけ話題になっていたと思います。そこで、どうせなら思い出作りに撮影した写真を本にしようと考え、出版社に相談したところ、意外とあっさり書籍化が決まったのには驚きました。

――ご自身で企画を持ち込んだのですか?
はい、企画書の作り方がわからなかったので、写真と目次を載せた見本誌を作って持っていきました。そしたら「なるほど、こういう本を作りたいのね」と、イメージが伝わったようで、その後の展開もスムーズでした。担当者さんも子を持つママで、出演した番組を観てくれていたのもあって、これならきっと売れるだろうと、初版で9000部ほど刷ってもらえました。実はおひるねアートという名前も、担当者さんとの話し合いの中で生まれたもので、ネーミングが決まってからさらに認知が広まったように思います。

趣味を仕事にすることに葛藤するも需要を感じて起業

――法人化した経緯を教えてください
本を出版したのが2013年3月で、その後に加盟していた日本ベビーサイン協会の事務局長から「一緒に協会を立ち上げよう」と誘われ、私が代表となって法人化したのがその年の10月です。なぜ半年かかったかというと、一度お誘いをお断りしたからです。自分の息子の思い出作りで始めた趣味なのに、それでお金を儲けることにすごく抵抗があって仕事にするのが嫌でした。また、子育てに集中したくて1年くらいは専業主婦でいたかったということもあります。ただ、すでにおひるねアートに関する依頼が絶えなくて、大手企業のCMやホームページのビジュアル作成に携わるなど、思いとは裏腹に仕事だけは増えていったのです。

おひるねアートが企業とタイアップした写真 ――企業から個人に直接依頼があったのですか?
そうです、とてもびっくりしました。CMには息子と一緒にモデルとして出演させていただき、今ではとても貴重な思い出になっています。また、その頃からさまざまな企業から撮影会を開催したいので協力してほしいという依頼も増えてきて、もう私一人だとどうにも手が回らなくなってしまって。それでも子育てをおろそかにしたくなくて、子どもを一緒に打ち合わせに連れていくなどして対応していましたが、それももう限界でした。

――一人では抱えきれなくなり、組織化したのですね
それもありましたが、仕事をする中でおひるねアートを楽しいと感じてくれる人がこんなにもいるんだなと実感したことも大きな理由です。私が趣味で楽しんでいただけのものなのに、撮影方法をお伝えすると多くのママたちがすごく喜んでくれて、楽しそうに写真をたくさん撮っていってくれる。おひるねアートは世の中に需要があるものなのかもしれないと可能性を感じたのです。また、誘ってくれた日本ベビーサイン協会の事務局長は資格事業を熟知しているので、ビジネスパートナーとして最適だと感じ、一緒に組んで今の事業を立ち上げる決意をしました。

理念がなく自分を見失い、社員との意思疎通も困難に

一般社団法人日本おひるねアート協会の今後について語る代表理事 青木水理(あおきみのり)さんの写真 ――法人化する際の資金はどうしましたか?
出版した本の印税と、個人で受けていた仕事でいくらかの貯蓄があったのでそれを活用しました。ビジネスパートナーと共同で会社を起こしたので、それぞれ50万円ほど出資して法人化しました。それからほぼ無借金で運営してきたのですが、2019年に事業を拡大しようと国民金融公庫から1000万円の融資を受けています。ただ、融資を受けた途端にコロナ禍になり、結果的に資金繰りに回すことになりました。さらに追加で1000万円を融資してもらい、どうにかピンチをしのぐことができました。

――現在、新しい事業の展開は考えていますか?
2015年からおひるねアート専用のフォトスタジオを運営してましたが、2020年の年末に閉店しました。理由は新型コロナの影響だけではなく、Webでの展開を本格的にスタートするためでもあります。事業内容の詳細はまだお話しできないのですが、AIを活用したサービスを2021年春にリリースする予定です。この企画はおひるねアートを一緒に広めたいと、私たちに共感してくれた企業からの技術提供によって実現しました。子どもは未来の宝であり、子育てにまつわるコンテンツ開発を進めている企業は少なくありません。そうした方々と今後も一緒に新しいサービスを作っていければと考えています。

――これまでの事業運営でどんなことに苦労しましたか?
会社を立ち上げた当初はマネジメントにかなり苦労しました。趣味からスタートしたということもあって経営の柱となる理念がなく、会社が大きくなるにつれて、自分はどういうスタンスでこの会社をリードしていけばいいのか、すごく迷うことになったのです。また、ママたちがおひるねアートに夢中になる理由もまだ掴めていない中、仕事だけは増えていく状態が1年半ほど続いていました。もちろん代表として全責任を負うし、絶対に会社を潰さないという思いはあるものの、どこを目指してがんばればいいのか、すごく考え込んでいた時期でした。

――事業を続けている理由がわからなくなった、と
一度自分の立ち位置がわからなくなると、社員との意思疎通も難しくなっていきます。どのように立ち振る舞えばよいのかわからなくなり、経営理論が書かれた書籍を読み漁ったりもしました。でも、そうしたものを参考にしてみても、社員には絶対に見抜かれます。むしろそんなものに頼り切っていると、余計に頼りなく見えてしまうものです。そんな私に対して、それまでついてきてくれた事務局の中心メンバーも「もうついていけない」と去ろうとした時があって、それが何よりきつかったですね。とにかく孤独を感じて、一人で空回りしていました。

ヒットの理由をお客様に直接伺い、それを事業の柱にする

おひるねアート協会のスタッフや認定講師たちの写真 ――どのように乗り越えたのでしょうか?
最初はとにかく、なぜおひるねアートに夢中になるのか、お客様であるママたちに直接聞いて回りました。まずわかったのは、孤独を感じているママが多いということでした。ママ同士が集える場所が欲しいという方や、子どもと楽しむ時間が生きがいになっているという方がいて、そうした人たちをつなぐコンテンツがおひるねアートだったのです。中には「初めて子どもがかわいいと思いました」といった声まであり、「こんなに育児に苦しんでいるママがいるんだ」と初めて気づきました。私はただ楽しいものを提供したいと思っていたのが、実はママたちの心を救うことにもつながっていた。それなら、このコンテンツで「産後うつを少しでもなくす」ことや、「少子化を食い止める」といった思いが湧いてきたのです。

――やりがいを見つけたわけですね
何のために私たちがこの事業を手がけているのか、それがはっきりしたことで初めて語るべきことがわかり、講師にもその思いを伝えることができました。すると、社員が「やっと青木さんが目指しているものがわかりました」と言ってくれて、関わっているスタッフや認定講師たちと私の見ている方向が一緒になったという気がしました。今、コロナ禍で経営がかつてないほど苦しいですが、あの時期以上につらいことはありません。同じ思いを持つ仲間がいるだけで、どんな苦しいことがあってもがんばろうと前向きになれるものなのです。

――これから開業を目指す読者にアドバイスをお願いします
私が会社を運営する中で、何よりも覚悟が決まった瞬間は、法人化した時ではなく、社員を雇った時でした。社員を雇用すると自分一人の会社ではなくなり、重い責任がのしかかってきます。社長はいつだって会社を必ず守るという覚悟が必要です。そのためには、事業に専念する環境づくりが大切になります。特に私と同じようにママであれば、子育てとの両立を求められます。私は仕事を優先したので、正直に言えば長女が不安定になってしまった時期もありました。やはり家族の理解は必要です。家族と仕事、どちらを優先するべきか。もし女性が起業するなら、そうしたことも一度真剣に考えておくべきだと私は思います。

一般社団法人日本おひるねアート協会

所在地:東京都中央区日本橋人形町2-4-9双葉ビル802

https://www.ohiruneart.com/

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