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先輩開業インタビュー

日本初「クラウドキッチン」をオープン。デリバリー専門店が集う施設づくりで飲食業界を応援したい

新型コロナの影響により、飲食業界が大きく変化しています。コロナ対策をはじめ、営業方法について見直す店舗が増える一方、コロナ禍になってデリバリーやテイクアウトを利用し始めたという人も少なくないようです。そんな中、注目されているのがデリバリーに特化したクラウドキッチン「KitchenBASE(キッチンベース)」。展開しているのは株式会社SENTOENです。2018年に創業すると、次々と新しいビジネスモデルを考案し、急成長を遂げています。今回は、代表の山口大介さんに、起業のきっかけやクラウドキッチンを立ち上げた理由などを伺いました。

厨房のみの店舗が集まる施設を運営

KitchenBASE(キッチンベース)中目黒店の内観写真 ――事業内容について教えてください
デリバリーに特化したクラウドキッチン「KitchenBASE」の運営をしています。クラウドキッチンとは、ネット注文に特化した、客席を備えないキッチンのみの店舗のことで、「KitchenBASE」はそうしたデリバリー専門店がテナントとして複数入ることのできる施設になります。現在は都内の中目黒と神楽坂の2か所に施設を展開していて、3月には浅草に3店舗目がオープンする予定です。入居いただいた事業者にキッチンを提供しているほか、僕たちが直接運営している直営店も入居しています。

――施設についてもう少し詳しく聞かせてください
イメージとしてはシェアオフィスのキッチン版で、テナントに2~3坪の厨房を提供しています。中目黒は4区画、神楽坂は21区画を用意していて、デリバリーに必要なもの以外を省いた店舗になります。近年、実店舗を持たずデリバリーのみで営業する「ゴーストレストラン」が注目されていますが、クラウドキッチンは1キッチンで営業するゴーストレストランが集まったシェア型の施設といえばわかりやすいでしょうか。

――テナントにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
規模にもよりますが、通常は飲食店を開業するには、テナント費や内装費、設備の購入など、準備に1,000万円以上するといわれます。その点、Kitchen BASEは必要なキッチン設備を事前に用意しているので、開業までにかかるコストを約50万円まで下げることができます。また、デリバリーという専門性の高い業態に対して、ノウハウはもちろん、売上予測や戦略的マーケティング支援など、さまざまなサポートをしているので、飲食店の経営が初めての方でも安心して開業することができます。

人と人が繋がるコミュニティづくりをビジネスに

――創業のきっかけを教えてください
大学を卒業後、ベンチャー企業でアプリ制作などに1年間携わった後、コンサルティング会社に転職しました。その会社のビジネスモデルは少しユニークで、ただコンサルをするだけではなく、最終的にクライアントと一緒に合同会社を立ち上げるのです。そこで仕事をしているうちに起業について興味を持ったのですが、事業については特にアイデアはありませんでした。何か起業の種はないか考えていたある日、鍵を会社に忘れて家に入れなくなるという出来事がありました。自宅周辺に友達もいなかったので、ホテルに泊まろうかと考えたのですが、その時にふと思ったんです。生活圏にこれだけ人がいるのに、誰とも助け合える関係を築けていないことが悲しいなと。そこで、人と人との繋がりを大事にできるコミュニティづくりをビジネスにしようと思いつきました。

――まずどんなことを始めたのでしょうか?
事業テーマは決まったのですが、具体的には何も決まっていないのに、先走って会社を辞めてしまいました。その後、ビジネスアイデアを見つけたいという思いもあって、世界一周の旅をしたんです。その時に出合ったのがイタリアの公衆浴場「テルマエ」でした。かつてのローマ帝国ではテルマエでコミュニケーションをとって強力な軍隊を作っていたという話を聞いて、これはおもしろいなと。日本に帰国した時に、日本の銭湯も一つのコミュニティだと思い、それなら地域の人々が交流できる銭湯を運営してみようと考えました。社名のSENTOEN(セントーン)も、この発想から生まれています。

――会社を立ち上げるにあたって資金の準備は?
最初に入社したベンチャー企業からコンサルティング会社にいたるまで、ずっと副業をしてお金を貯めていたんです。当時、民泊のAirbnb(エアビーアンドビー)が流行ってたので、少し大きめの家を借りて、空き部屋を外国人に貸し出したり、古民家を借りてシェアハウスとして提供したり。そうやって少しずつ稼いでいって、その後にケーキ屋を立ち上げたのですがそれは見事に失敗。でも、あるアプリを開発したところそれがヒットして、最終的には1000万円くらい貯蓄できていたので、それを資金に同じ大学の仲間2人と一緒に起業しました。2018年4月のことです。

――銭湯の運営は順調だったのでしょうか?
横浜にある銭湯を借り受けて運営することにしたのですが、実際にやってみてわかったことは、お客様はコミュニティを求めて銭湯にきているわけじゃないということでした。銭湯は体を洗い湯につかる場所であり、ここで人とつながることを期待してはいなかったのです。また、やる前に気づくべきでしたが、銭湯は誰もが入れるように入浴料金が各都道府県によって定められています。本当はサブスクリプションで入浴し放題といったビジネスモデルを考えていたので、料金設定ができない時点で事業に先がないことがわかりました。それで半年と持たずに撤退しました。

開業資金を抑えるために営業データを提供

KitchenBASE(キッチンベース)の事業を始めた経緯を語る山口大介さんの写真 ――今の事業へ移行した経緯を教えてください
その頃、シェアオフィスが流行っていて、利用者はその場での情報交換に価値を見出していました。そこで、今度はビジネスワーカー向けのコミュニティを作ろうと思いつき、そうしたサービスが枯渇している分野を探していくと、飲食店はほとんどが個人店だと気づいたのです。特に廃業してしまう飲食店は、経営について誰にも相談できず、資金がショートする前に気持ちが折れて店をたたんでしまうケースが少なくありません。もしお互いに切磋琢磨できる仲間がいたら、もう少し踏ん張れたかもしれない。それなら、そうした場を作ればいい。飲食店でもデリバリー専門店なら小規模で立ち上げられるのでコミュニティを立ち上げやすいと思い、今の事業に踏み切りました。

――まず何から始めたのですか?
クラウドキッチンの構想は見えたのですが、当時はデリバリーだけの店がなく、すぐに施設づくりに着手するにはあまりにリスキーでした。なので、デリバリー専門店が本当に成り立つのか、まずは自分たちで検証してみようと考えて、浅草にサンドイッチ店を立ちあげました。起業メンバーの一人と仲がよかったサンドイッチ店のオーナーさんが4か月前に閉めたばかりの店を貸してくれたので、店内に設置されていた席などを取り除いて、イートインのないデリバリー専門店として開業しました。

――開業資金がかなりかかったのでは?
オーナーさんが応援してくれたこともあって、好条件で貸してくれたので助かりました。後は、オーナーさんがいつかまた店をやりたいという希望を持っていたので、僕たちの営業データをすべて提供するかわりに、サンドイッチづくりなどのノウハウを教えてもらうという契約にしたのも大きかったと思います。僕らがやりたかったのは飲食店経営ではなく、あくまでデリバリー専門店が集まる施設づくりです。オーナーさんがデリバリー未経験だったこともあって、データと引き換えに安く使わせてもらいました。

――出店後の反応はいかがでしたか?
まったくだめでした。2018年10月に開店したのですが、初めの1か月間は日別の売上が最高でも1万円。そんな状態ではクラウドキッチンの立ち上げなど夢のまた夢です。そこからは売上があがりそうなプランを1週間ごとに考え、すべて試していきました。例えば、チラシの配り方や置く場所を変えたり、登録していた配達サービスに掲載していた写真を何度も撮り直したり、配達時間を短縮するための工夫をしてみたりと、すべてテストしていきました。その結果をデータ化し、効果があったものだけを残していったのです。日々何かしらを変えていきながら続けていったところ、3か月で目標金額だった日の売上8万円を達成。これで自信がつき、ようやくKitchenBASEの立ち上げに着手し始めました。

出資してもらうためにプランをいくつも用意

KitchenBASE神楽坂店の外観の写真 ――KitchenBASEの開業までにどんな準備をしましたか?
物件は都内のデリバリー注文の多い場所を調査して割り出した結果、中目黒の2階建て20坪の建物を借りることにしました。資金が3000万円ほど必要だったので、そこからひたすら調達に走り回りましたね。最終的に最初に勤めた会社と、2社のベンチャーキャピタルに出資してもらい、足りない分は日本政策金融公庫からお借りしました。実はオフィスも出資していただいた企業からお借りしています。そうして2019年6月に「KitchenBASE 中目黒」を開業しました。

――ベンチャーキャピタルからの資金集めはスムーズにいったのですか?
知り合いなどに紹介してもらった会社に片っ端からプレゼンしていきました。起業家はとにかく行動力とスピードが大事だと思っていて、あとはとにかく熱量で押しまくる。もちろん、出資してもらうための説得材料も大切です。僕の場合、もしクラウドキッチンが失敗しても、サンドイッチ店を運営したノウハウがあるので直営店を出店することができます。また、それが失敗したとしたら、立ち飲み居酒屋として物件を使う構想などを伝え、AがだめならB、BがだめならCでと、失敗しないプランを用意していきました。

――テナント集めはどのようにしましたか?
プレスリリースを出したところ、とても反響があり70件の応募がありました。前職のコンサルティング会社で知り合った芸能事務所の広報担当の方にプレスリリースを書くコツを教えてもらったおかげです。まず何よりも「日本初」のサービスだということをアピールすることが大事だと教わり、言う通りに前面に押し出しました。それが見事にはまり、テレビ番組などで取り上げられるなど効果は抜群でした。

――運営をスタートして苦労したことはありますか?
テナントの飲食店の売れ行きが低調だったことです。ある一定の売上までいくとどの店もそこから伸びない。そこで役立ったのが、サンドイッチ店での経験でした。蓄積していたデータを提供して、成功した取り組みやノウハウのすべてを活用してもらいました。まさにこれが僕たちのやりたかったことでもあり、テナントの方々のサポートができたのは大きな喜びでした。

強みは直営で得たデリバリーの成功パターン

KitchenBASE神楽坂店の内観の写真 ――2店舗目となる「KitchenBASE 神楽坂」はいつオープンしたのですか?
2020年9月です。こちらも地域でのデリバリーオーダー数を調査して決めました。5階建てのビル1棟で広さは約110坪。キッチン数は1店舗目の5倍になりましたが、中目黒での経験でサービスの改善に必要なことを把握できていたので、このタイミングで一気に拡大路線へと舵を切る決断をしました。

――決断には勇気がいったのでは?
実は中目黒のテナントの一つは直営で展開していて、1日平均20万円ほどは売り上げられるようになっています。直営で立ち上げたブランドも12店ほどになり、データの種類も豊富です。今は「NY屋台メシ!!チキンオーバーライス」を経営していて、数字もしっかりと出ています。正直に言えば、自分たちがゴーストレストランを経営すれば、収益を出せることはわかっているんです。課題はそれをテナントさんにどう実践していただくかということであり、それについてもある程度のノウハウは身についたので自信はありました。

――今後の展開について教えてください。
新しい施設を2021年3月に浅草、4月には中野に出店する予定です。 神楽坂と同じ規模で、展望としては同様の施設を年内に都内の10か所ほどに出店したいと考えています。少しスピードアップする必要がありますが、僕らの事業は競合が次々に参入してくると思うので。それに、近年流行したタピオカを見るとわかりますが、飲食はファッションにもなっています。その時々によって流行り廃りがあり、それをチャンスと捉えて出店する飲食店を僕たちは応援したい。それがまた食の豊かさにもつながりますからね。

株式会社SENTOEN

所在地:東京都千代田区四番町2-12四番町THビル7F

https://kitchenbase.jp/

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