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先輩開業インタビュー

ニーズはお客様が教えてくれる!“片付けのプロフェッショナル”が立ち上げた整理収納サービス

「断捨離」「ミニマリスト」などの言葉が浸透し、物を持たないライフスタイルがブームになって早数年。現在も雑誌やテレビで特集が組まれるなど、「片付け」は広く注目を集めていますが、裏を返すと整理できない人が少なくないということでもあります。そんなニーズに応えようと整理収納サービスを展開しているのが、株式会社スペースRの戸田さんです。多くの現場で経験を積みながら、そこから得た知見を活かして、セミナー講師やコンサルタントなど、多岐にわたって活躍しています。今回は、片付けのプロフェッショナルである戸田さんに、起業のきっかけや会社の運営についてお話を伺いました。

整理収納に悩む人に最適な片付け方を提案

片付けをする株式会社スペースRの戸田さんの写真 ――まずは事業内容について教えてください。
1都3県を中心に個人宅や企業のオフィスを対象にした整理収納サービスを提供しています。わかりやすく言えば、片付けのお手伝いです。例えば、お客様のご自宅に伺って、一緒に不要な物の仕分け作業をしながら、収納方法や家具の配置などについてアドバイスします。オフィスなども同じで、企業から依頼があると書類の整理方法についての指導なども行っています。

――片付けに悩む人は多いのでしょうか?
人によって悩みの度合いが違うので断定はできないですが、数年前から始まった断捨離ブームなどで、片付け方や物の整理方法について関心を持つ方は少なくありません。ただ、実際に始めようと思っても、やり方がわからない方もかなり多いようです。なぜなら、雑誌の特集やネット記事を参考にしようにも、家によって部屋数も違えば、家族構成だって違う。そもそも部屋が散らかっているのは物があふれているからではなく、その人の習慣やメンタルが原因の場合だってあります。その家庭にはその家庭なりの事情があるので、現場に合わせた最適な片付け方を提案するのが私たちの強みです。

――個人から直接依頼があるのですか?
個人の場合もあれば、リフォーム会社や専門業者から依頼を受けることもあります。最近では、ゴミ屋敷の片付けや空き家の整理、また高齢者が老人ホームなどに引っ越しするタイミングなどに行う「家財整理」の案件が増えています。この場合、家財整理の専門業者やファイナンシャルプランナー、弁護士などの方々とチームで対応します。私たちの担当はいる物といらない物の仕分けで、まだ使える食器類などをリサイクル品として海外に搬出する手配をしたりもします。物を大事にする気持ちから捨てられない人も少なくないのですが、必要としている人の手に渡ることをお伝えすると、喜んで手放してくれますよ。

――スタッフは雇用していますか?
スタッフはすべて業務委託です。なので案件が発生すると、提携している13名のスタッフに現場の住所を伝えて「この現場を担当できる人はいませんか?」と連絡し、手を挙げてもらいます。その後、私が現場を確認して見積もりを作成し、実際に作業を始めるといった流れになります。スタッフ全員が整理収納アドバイザー1級の資格を取得していて、現場経験も豊富な人たちばかりなので、安心して任せられるのはとても心強いです。

思い立ったら即行動。現場を知る営業だからこそ気づいた「お客様の本音」

株式会社スペースRの事業(整理収納)を始めた理由を語る株式会社スペースRの戸田さんの写真 ――今の事業を始めた理由を教えてください。
以前、大手住宅メーカーに勤めていたのですが、そこでリフォームの営業担当をしていた経験が大きいですね。チラシや事例集を手に毎日飛び込みで担当エリアを回るのですが、訪問営業だとわかると、居留守をする人もいれば、邪険に扱われることもありました。中には「うるさい、来るな!」と怒鳴る人もいたり。ずいぶん悔しい思いもしましたが、それでも負けたくなくて、毎月600軒ほど回っていたと思います。そんな日々を送る中で、ある時「なぜ家をリフォームしないのか?」と考えるようになったのです。

――受注できない原因について、原点に立ち返ったわけですね。
その通りです。そこで気づいたのが、そもそもリフォームするには家の中が片付いていないとできない。物を多く抱えていると難しく、片付けが面倒だからリフォームをしないのではないか、ということでした。この思いつきを確かめようと考え、作成したのが「100人アンケート」です。これは市場調査の一環で、片付けに関してどれくらいの人が興味を持っているのか、営業しながら100人に聞いて回ればわかるだろうと思ったんです。結果、アンケートからわかったのは、片付けが苦手で悩んでいる人が多いということでした。でも、恥ずかしいから誰にも相談できない。ここに隠れた需要があると確信しました。

――すぐに事業を立ち上げたのですか?
いいえ、それから紆余曲折ありました。片付けや整理収納について調べてみると資格があることがわかり、すぐに収納カウンセラーの養成講座に通いました。それがきっかけで私自身が整理収納にはまって、まず自宅を本格的に片付けてみたところ、気分が爽快になるだけでなく、環境がすっきりしたことで精神的にも安定してくることがわかりました。そんな感動体験をすると、やはり誰かに伝えたくなるものです。これはぜひ多くの人に体験してもらいと思い立ち、リフォームサービスの一つとしてプランを企画書にまとめ、上司に提案してみました。でも、反応はほとんどゼロ。社長に直訴までしたのですが、理解を得ることはできませんでした。それならまず一人で始めようと思い、2011年に独立したというわけです。

お客様のリアルな声を聞き、サービスを進化させる

起業後、集客として始めた「出張片付けサービス」と書いたチラシの写真 ――起業後、集客はどのように行ったのですか?
最初に始めたのが、「出張片付けサービス」と書いたチラシのポスティングです。地元の東京都小金井市の住宅地を中心に、1か月5000枚ほど配って回りました。それまでリフォーム会社で“足で稼ぐ”営業をしていたこともあって、手っ取り早いと思ったのが理由です。また、主にシニアをターゲットにしていたので、インターネットやSNSを使った宣伝よりも、紙のほうが効果的だとも思っていました。ありがたいことにすぐに反応があり、初めて依頼が来た時は本当にうれしかったのを覚えています。それから徐々に依頼件数も増えていきました。チラシは今も暇を見て配り続けています。

――リフォーム会社で培った営業スタイルが活きたわけですね。
やはり自分の足で回ることでわかることも多いんです。例えば、事業をスタートしてわかったのは、生前整理や遺品整理を目的とした依頼が多いことでした。実際に現場へ行くと、お客様から「亡くなった夫の物を整理できなくて……」と、相談されることも少なくありません。それに、片付けは高齢になると体力的にもきつい。また、長年の習慣から物を捨てることができない人もいます。そうしたお客様の悩みは事業を展開する中でとても参考になり、サービスを進化させる上でなくてはならないものです。また、現場での体験やお客様の生の声を集めて、2017年に『楽々できる生前整理収納 片づけで運気が上がる』(さくら舎)という本を出版することもできました。

セミナーで整理収納の講演をする株式会社スペースRの戸田さんの写真 ――どのような経緯で本を出したのですか?
地元を中心に活動していた時、知り合いから終活を対象にしたビジネスを展開している業者のコミュニティに誘われて、参加してみたのです。その関係者のつながりで、雑誌社のOBが集まるセミナーへ整理収納の講演に行く機会がありました。その時に、参加者の方から「OB会で発行している通信に講演の内容を書いてほしい」とお願いされて、執筆したのですが、それを読んだ現役のライターさんから「本を出してみませんか?」と声をかけられたのがきっかけです。

――本を出版して反響はありましたか?
たまに本を読んだ方から取材依頼があったり、別の出版社から執筆依頼があったりします。また、セミナーでの講演をお願いされることも増えました。あと、本は営業ツールとして活用しています。特に意識はしていなかったのですが、本を出しているとステータスの一つになるようで、整理収納の専門家として認知していただけるのは思わぬメリットでした。

法人化で初心にかえり、気持ちを新たにゼロからのスタートへ

資金調達についてを語る株式会社スペースRの戸田さんの写真 ――開業にあたり資金調達はどうされましたか?
ノウハウさえしっかりと身につければ体一つでできる仕事なので、特に開業資金はかかりませんでした。必要なものといったら、パソコンやチラシの印刷費、あとはHPくらいなので、起業時に資金調達などはしていません。ただ、事業を進めていく中で、スタッフと業務委託をする必要が出てきた時に、念のために市の小口融資から150万円を借りました。あとは2017年に法人化したのですが、その時に日本政策金融公庫から230万円の融資を受けています。

――法人化したきっかけについて教えてください。
以前お世話になっていた住宅メーカーと連携したり、シニアの引っ越しサービスを提供している不動産会社と提携したりと、BtoBでの展開が増えてきたのが一番の理由です。何年も前から「法人格にしたほうが会社の信用度は増しますよ」と税理士さんからアドバイスをいただいていたのですが、なかなか踏ん切りがつかなくて。でも、取引先の社長さんたちから背中を押していただいたことや、これからビジネスをさらに拡大していくためにも、遅まきながら法人化する決意をしました。

――法人格にしたことでメリットはありましたか?
やはり法人格になると企業との業務提携がスムーズにいきます。個人事業主だと取り引きしてもらえない場合もあったので、税理士さんの言う通り、信用度がアップしました。あとは、初心にかえることができたのもメリットと言えるかもしれません。実際に法人化してみると、会社としてはゼロからのスタートになるんです。設立からの年数を聞かれて、9年目だと答えても「法人になってからの年数を教えてください」と言われます。社会的にはそうした見方をされるのかと、少し驚きました。

地道な努力を10年続ければ、きっと成功すると信じている

整理収納について説明する株式会社スペースRの戸田さんの写真 ――今後予定している新しいサービスなどはありますか?
サ高住専門のシニア向け家事支援を行う予定です。サ高住というのは、サービス付き高齢者住宅のことで、有料老人ホームなどとは違い、自立した生活を送る比較的元気なシニアが入居する賃貸住宅になります。利用者の大半は戸建てに住むのが大変になり、コンパクトな住まいを求める方で、体がまだ動くから大げさな介護サービスは必要ないと思って引っ越すケースがほとんどです。でも、実際に入居して年数が経つと、残念ながら徐々に体力が落ちてくる。そうした時に、定期的に片付けに伺うサービスがあれば喜ばれると思っています。

――サ高住に注目した理由は何ですか?
サ高住は名称に「サービス付き」と書いてあるので、いろんなサポートが用意されているイメージがあります。しかし、実際は受けられるサポートは意外と少ない。主に介護サービスだけで、ヘルパーさんが訪問してくれる時間も短く、洗濯や掃除をしてくれるくらいのもので、片付けなどはしてもらえません。そこで、私たちが収納用具を持ってお手伝いに行くのです。1か月に2回ほど足を運べば、散らかった状態にリバウンドせずに済みます。もし、本当に介護が必要な状態になったら、すぐに老人ホームなどへの引っ越しのお手伝いができるのも強みになります。これも現場の声を聞いているからこそ、思いついた発想です。

――最後に、独立・開業を目指す読者にアドバイスをお願いします。
起業する直前に、知り合いから「相当の覚悟がいるよ」と言われました。もちろん覚悟はありましたし、自分では大丈夫だと思っていたんです。でも、まったく足りていなかったことをあとから実感しました。どんな事業でも立ち上げるのは大変です。私の経験上、成功している人は見えないところで苦労しています。必ず地道な努力が必要で、それを最低10年は続けてほしい。失敗している人を見ると、お客様の反応がないとすぐにあきらめてしまっていることが多いと思います。反応がなくても、自分が信じた事業ならとにかくトライし続けてみる。月並みなアドバイスですが、これこそ成功の秘訣ではないでしょうか。

株式会社スペースR

所在地:東京都小金井市前原町4-2ウエスト小金井1-223

https://toda-rakuya.com/

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