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先輩開業インタビュー

技術を極めて生きていく。最先端のニーズに応えるために独立した3D計測の達人

腕一本で食べていく職人の世界では親方のところに弟子入りをしてから独立・開業をするイメージがありますが、最新のテクノロジーを扱う技術者の世界では企業の専門的な部署などから独立・開業をすることになります。そこにはどのような苦労や喜びがあるのでしょう。
ドローンの操縦や3D計測といった最先端技術を武器に独立・開業した3DSurveyplus合同会社の堂城川厚(どじょうがわ・あつし)さんにお話をうかがいました。

社内ベンチャーで3D計測の技術と出会い、仕事として極めるために転職そして独立

3DSurveyplus合同会社の仕事内容について語る堂城川厚さんの写真 ――まずは堂城川さんの仕事の内容を教えてください。

ごく簡単に説明をすると、設備や地形を計測して3Dデータに起こす仕事です。これらの計測はかつては人の手で計測をし、数値を紙に起こして3Dモデルを作るという作業が必要でした。しかし現在では、3Dスキャナを使ったりドローンを飛ばしたりして取得したデータからすぐにプログラムで3Dデータを起こせるようになったんです。僕はこの3D計測の仕事の専門家として独立・開業しました。

――開業届けを出されたのが2006年、法人化をされたのが2008年ですね。独立・開業をされた経緯を教えてください。

最初に働いていたのは石油プラントなどを設計する会社でした。そこでは配管設計のエンジニア職に就いていたのですが、2002年から社内ベンチャーを立ち上げ3次元での計測を始めたんです。そこで最新機器を販売している海外メーカーの日本の総代理店に出向し、3Dスキャナとソフトウェアの使い方を覚えました。しかし当時はPCが今ほど進歩していない時代。せっかく技術を習得しても設備の面から社内で使いこなすことは難しい状況でした。3Dレーザー計測はこれから広まっていくはずの技術でしたが、会社が下した決断は「時期尚早」。一旦この事業からは手を引くことになってしまいました。

しかしこの技術に可能性を感じていた私は、諦めきれずに2006年に転職。今度はトンネルを3Dで解析するベンチャー企業で働くことにしたんです。同時に個人でもいつかこの技術を使った仕事ができるように法人登記をしました。このベンチャー企業での仕事は面白かったのですが、経営上の都合により退職。思うように仕事をするには独立するしかないと思い、2008年の開業にいたりました。

商品は専門性の高い技術。顧客は会社ブランドではなく人につく

3DSurveyplus合同会社で取り扱っているドローンや計測機器の写真 ――開業するとは言っても、売り物が特殊な技術となると顧客を捕まえるのは難しいのではないですか?

最初に勤めていた会社の顧客が追いかけてきてくれたんです。こういった世界では、顧客は企業ではなく個人の技術についてきます。

もちろん前の会社に話は通しましたし、こちらからはかつての顧客に営業をかけるようなことはしていません。けれど、私の持っている技術がお客様のニーズに答えられるものだったために、独立した後も連絡をくださいました。

――その後顧客はどのように増やしたのですか?

お客様同士の口コミで広がっていきました。狭い業界なので、いい仕事をするとすぐに口コミで評判が広がるんですよ。今はどこの企業も新しい技術を必死で導入しようとしています。ドローンや3Dスキャナの使い道を模索している企業にとって、声の掛けやすい存在になっているようです。

かつての同僚やライバルが出資人に。技術者としての価値を認められた

――独立・開業するにあたり資金はどのように用意をしたのでしょう?

最初の会社の同僚2人とかつての競合企業の社員2人、それから私がそれぞれ20万円ずつ出し合い、合同会社を設立しました。同僚だった2人はまだ元の会社に在籍していたのですが後に合流できるように出資という形で、競合だった2人は仕事の発注先として育てるためにそれぞれ出資してくれたんです。3D計測のノウハウは簡単に身につくものではないので、自分たちが仕事をするうえでパートナーとなりうる相手を育てておきたかったようです。ありがたいことに技術を認めてくれていたのですね。前述のように、狭い業界なので競合相手のこともよく分かってしまうことがプラスに働きました。

そしてさらにありがたいことに当時の彼女で現在の妻がポンっと100万円を出してくれたんです。本人曰く「間違えちゃった」とのことですが……。期待をしてもらえたのでしょうか。

開業資金について語る3DSurveyplus合同会社の堂城川厚さんの写真 ――では資本金200万円で事業をスタートさせたのですね。

200万円プラス自分の退職金100万円の計300万円でスタートしました。たったの300万円と思われるかもしれませんが、会社勤めの時代に自腹で1000万円程度の機材やソフトウェアは買い揃えていたので帳簿外の支度金が結構かかっているんです。とはいえ最新機材はどれも百万単位の価格がつくものばかりで、当然開業したばかりのころは買えないものもたくさんありました。そのようなときは、競合他社やメーカーから有償でレンタルをして仕事をしていましたね。

最新の機材は使用されている回数がまだ少なく、メーカー側は使用感に関するフィードバックを欲していました。それらと引き換えに比較的良い条件で機材を借り受けることもありました。

融資の必要がないころから決算書を提出したことが、3年後の事業拡大につながる

――その後は順調に売上を上げていくことができたのですか?

そうですね。最初の3年間は地道に計測とデータの作成を繰り返して売上を上げ続けました。そのため当時は追加融資を受ける計画はなかったのですが、知人であり法人会の役員を務める方からアドバイスを受けて、法人登記した初年度から決算書を信用金庫に持って行っていたんですよ。信用金庫側からしたら「借りる気もないのに何しにきたんだ」という感じだったとは思うのですが、毎年ただ決算書を受け取ってくれていました。

そんなやり取りが3期目になったころ、そろそろ新しい機材を導入したいと思うようになりました。当時、機材のレンタル料が全体の売上の3割を占めるようになっていたんです。必要だったのはおよそ600万円。信用保証協会のみの判断ではとてもできない融資額だったそうですが、それまでの実績と照らし合わせて貸してもらえることになりました。

――融資を受けたことで経営状況は変化しましたか?

はい。今までレンタルしていた機材が自分専用になったことで、スケジューリングが自由になり失注がなくなったんです。レンタルの場合、機材の貸主の都合に合わせた受注しかできなかったのですが、より自由に仕事を受けられるようになり売上が拡大しました。この仕事のいいところの一つは、投資額は大きいですが回収までのスピードが早いというところにあります。例えば500万円の機材を使って計測をし、データを納品すると売上金は100万円になります。利益率がいいんです。だからといって暴利を貪っているというわけではなく、顧客のメリットもとても大きい。企業が自社内で同様のデータを取ろうとすればコストは何十倍もかかりますから。

仕事は一件一件お客様の課題を丁寧に解決していくことで評判となり、それが次の仕事を呼んできてくれます。今のところまだ営業活動はとくにしていませんが、様々な会社や部署からご依頼をいただけるようになりました。

自分の意志一つで新しいサービスを提供できるのが独立・開業の魅力

――独立・開業してからの道のりは順風満帆のように見えますが、大変だったことはありますか?

やはりしばらくの間、お金の心配は尽きませんでしたよ。会社員時代は年棒制だったので翌月から食べていけなくなるということはまずありませんでした。しかし独立後の未来はわからない。夜眠ろうとして目をつぶると、日に日に数字が減っていく通帳が目に浮かぶんですよ。常に余命3カ月ぐらいの気分で過ごしたこともあります。

けれど、あるときふと思ったんです。人間誰しも3カ月先のことなんてわからないじゃないですか。それは開業している人もサラリーマンも一緒。むしろ経営状況を自分で把握している自分たちの方が状況はマシなんじゃないかと思ったんです。それに気づき、さらに3年目で新しい機材を買ったときにぱっと気持ちが楽になりました。

水中ドローンの写真 ――独立・開業をしてでもこの仕事を続けている理由はなんですか?どのようなところにやりがいを感じるのでしょう。

いいアイディアを閃いたらすぐに実行できるところが開業のいいところです。例えばベンチャーであっても他人の下で働いているとどうしも意思決定に時間がかかり、小回りが効かなくなってしまいます。今は最新の技術をみつけたらすぐにそこに飛びつくことで自分がその道のトップに出ることもできる。例えばここにある水中ドローンを導入するにあたり、企業であれば社内で提案や稟議を通すことでようやく事業に踏み切ることができると思うのですが、自分の会社であれば自分の意志一つで導入することができます。これは素早い対応を求めているお客様にとってもとてもいいことだと思います。

やりがいを感じる場面といえばデータを見たお客様が驚く顔を見たときですね。「こんなデータが取れるんですね」と喜んでもらえたときはやっぱり嬉しいですよ。

――堂城川さんのような技術者が独立するにあたり、重要なことはどのようなことだと思いますか?

一番は商品である技術を極めることができること。他人の3倍も4倍も知識を蓄える覚悟で、とことんその道を突き詰めていくことが大切だと思います。僕は独立当初から1日15時間くらい働いています。無駄な会議もないなかで多くの時間を勉強や技術の研鑽に当てていますよ。やったことがないことにチャレンジする力も大切だと思います。もともとは3Dレーザーを使った計測なんて、僕もやったことはありませんでした。けれどなんとか使ってみたことで、技術が身に付いていったんです。

――技術者は専門性を突き詰めるよりも営業活動に弱点があるように思います。堂城川さんは営業スキルをどのように身に付けたのですか?

プラントの設計会社では、とくに営業が必要のない職場だったため社員の90%がエンジニアだったんですよ。けれど社内ベンチャーで始めた3Dレーザー計測は営業が必要でした。このときに自分でやるしかないと腹を括り、パワーポイント資料を作ってプレゼンをすることを覚えたんです。さらにお金の回し方についても学ぶ必要があると思い、自主的に大学の通信課程に通いマーケティングや経営について学びました。

――今後の展望についてお聞かせください。

ドローンを使うベンチャー企業は今続々と誕生しています。規模の大きな企業も多いため、そことパートナー協定を結んで一緒に仕事ができればいいなと考えています。また、3D計測はニーズがうなぎのぼりで、正直今いる技術者だけでは対応しきれなくなってきています。ライセンスやマニュアル等を作って技術者を増やし、これらの最新技術がもっと使われるようになっていったらいいなと思っています。産業でいえば、農業に注目しています。ドローンによる農薬の散布などは随分前から知られていますが、これに加えて害獣調査などにも乗り出せたらいいですね。

――最後に独立・開業を考えている方へのメッセージをお願いします。

家族や仲間を大切にすることが大事だと思います。独立・開業を反対されることもあるかもしれませんが、身近な人が理解者になってくれなければ仕事を続けることはできませんから。独立・開業をした人はサラリーマンよりも労働時間が長くなることが一般的だと思います。なので、そのあたりもきちんと理解してもらった方がいい。ビジネスって一人ではできないんですよ。困っていたらライバルでも助ける。そうすればいずれ自分にもその貸しは返ってくると思います。

3DSurveyplus合同会社

〒239-0831
神奈川県横須賀市久里浜7-31-1-916

http://www.3dsurveyplus.com

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