1. 独立・開業・フランチャイズ情報TOP
  2. マイナビ独立マガジン
  3. 先輩開業インタビュー
  4. 母娘で切り盛りする地元密着型カフェオーナーに訊く、飲食業未経験からのカフェ経営
先輩開業インタビュー

母娘で切り盛りする地元密着型カフェオーナーに訊く、飲食業未経験からのカフェ経営

東京都江東区・清澄白河。日本に初進出したアメリカ発の「ブルーボトルコーヒー」が店を構え、コーヒーの味にこだわる“サードウェーブコーヒーブーム”が巻き起こっているカフェ激戦区に2015年1月オープンしたのが、淹れ立てのコーヒーと手作りのケーキにこだわる「Cafe 清澄」です。開店するのは週の後半と土日のみというマイペースな形態ながら、地元の人々からこよなく愛されています。「オシャレさを全面に出した“カフェ”ではなく、地元に根ざした昔ながらの“喫茶店”をやりたかった」と語るのは、お母さんと二人三脚でお店を経営する小林えり子さん。開業までの経緯と店作りのこだわりを聞きました。

手応えのない日々の中で母から言われた、「二人でお店をやってみない?」

――お母さまと二人で「Cafe 清澄」をオープンされたのは、どういうきっかけからですか?

小林:二人暮らしをしていた母から、「二人でお店をやってみない?」と誘われたのがきっかけです。

――お母さまからの提案だったんですね。

小林:そうなんです。「Cafe 清澄」は母の実家をリフォームして作ったお店です。それまではあまりに古い家なので誰も住んでいなかったのですが、店舗兼住宅向けの町屋造りの家だったのでお店には向いているし、母も自分が育った家を手放すのはさびしい。だったら、その場所を使って何か始めたらいいんじゃないかということで。

――お母さまに誘われたときは何のお仕事をされていたんですか? カフェのお仕事?

小林:実は、飲食業はまったくやったことがないんです(笑)。学生時代から、大手CDショップのアルバイトをやっていて、卒業後も社員になってずっと続けていきたかったのですが、店舗の撤退が決まってしまったんです。その後、ファッション関係などいろいろな仕事をやってみたけれど、なかなかこれといった仕事に巡り合えず、数年間、なんとなく日々を過ごすようになっていました。そんな時、母が声をかけてくれたんです。

――そこで、お母さまの提案に賛成して。

小林:毎日手応えがなさそうにしていたので、母からすると歯がゆかったのかもしれません(苦笑)。私自身も、会社勤めは人間関係が難しいことが多く、「新しいことを始めるなら自営業がいいのかな?」と思っていました。母はリサイクルショップやお弁当屋さんといった小さな個人店を経営した経験があったり、最近も生命保険の代理業を個人でやっていたりと個人事業のノウハウがありましたし、お店を構える場所も決まっていたから、あまり深く考えずに「やろう」と返事しちゃいましたね。

――最初から「カフェを始めよう」という話だったんですか?

小林:どうしてもカフェをやりたかったというよりも、私たち母娘が日々の暮らしの中で喫茶店に不自由していたというところが大きいです。清澄白河は今でこそ、サードウェーブコーヒーのブームもあり飲食店が格段に増えましたが、東京ならどの駅前にもあるような飲食チェーン店もなく、コンビニにも不自由するような街。美術館やギャラリーはありますが、見終わってからちょっとお茶するようなお店もなくて、昔からよく母娘で「清澄白河に、落ち着ける喫茶店があるといいね」と話をしていたんです。それで、「どうせ何か始めるのなら、私たちが欲しい喫茶店を作れば、ご近所の方にも喜んでもらえるんじゃないかな?」ということになって。

――清澄白河でカフェを開業されたというので、てっきり流行のサードウェーブコーヒーブームに影響されたのかと思っていました。

小林:そうですよね(笑)。実際はまったく違っていて、急に清澄白河ブームが来て驚いているくらいです。ただ、偶然にもブームと「Cafe 清澄」の開店タイミングが合ったことで、当初想定していたご近所のお客さまとは違った、若い層のお客さまがお店を見つけてくださるようになったのは、嬉しいですし、ラッキーなことだと思います。

リフォーム、食材、ウェブサイト……使える人脈はすべて使って余計なコストを削る

――では、具体的にどのように開店準備を進めていったのでしょうか? 開業時の資金面など、気になります。

小林:「Cafe 清澄」は今18席でやっていますが、もともとが民家なので大きな店構えにするつもりもなく、メニューもコーヒーと手作りのケーキセットだけと決めていました。母娘二人で切り盛りするつもりだったので人件費もほぼ考えなくていい。そうなると、一番お金がかかるのはリフォーム代金。それならば何とかやりくりできると母も計算していたようで、内装や造作はシンプルで必要最低限にして、準備をすすめていきました。開店して1年くらいは赤字でも当然、という母の経験とたくましさのおかげで、私も気張らずに意見を出しながら店作りに集中できました。

――それは、お母さまが個人事業をされていたからこそできたことかもしれませんね。

小林:はい。それと、店舗に使える場所がもともとあったというところも大きかったと思います。あとは、節約できることはすべて節約しましたね。

――具体的にはどのように?

小林:母の人脈を使って、知り合いを総動員したんです。リフォームを請け負ってくれた工務店さんは母の知り合いの方にお願いをしたので話しやすかったですし、コーヒー豆や食材の仕入れも、母がお弁当屋さんをやっていたときに取引のあった会社を通じて話を進められました。厨房用具も知り合いのつてで購入できましたし……使える人脈はすべて使って、準備を進めました。ロゴやウェブサイトも、私の友人が作ってくれました。

――信用できる人にお願いをすることで、余計なコストをかけずに節約することができたんですね。

小林:あとは、飲食店をやる上で費用がかかりがちなのが食器類。それも幸い、家にたくさんあった揃いのソーサー&カップでまかなっています。小規模の喫茶店だからこそできた節約ですね。

――カフェというと、お店のコンセプト作りにも気を使ったことと思いますが?

小林:私たちの場合は張り切ってコンセプトを決め込まなかったんです。落ち着いて読書ができるように余計な装飾がない白壁にして、私が好きなカウンター席を作り、木の温もりのある机と椅子にしたいと思ったくらいで。目指したのは、カフェというよりもシンプルな喫茶店。私と母がコーヒーを飲んでいて居心地がいい場所になるように気を使いました。本来なら、ロゴ入りのカップを揃えるなどイメージ作りに張り切ったりするところかもしれないですが、野望を持って始めた店でもないので、必然的に今の状態になったというほうが正しいかもしれないです。

――メニュー作りはどうされたんですか? えり子さんもお母さまも、喫茶店勤務の経験がなかったんですよね?

小林:お客さんとして喫茶店に通ってはいましたが、未経験でしたね。イマドキのカフェにしたければ、コーヒーの種類もたくさん用意しなければならないですが、うちは誰が飲んでも安心して美味しいと感じるオリジナルブレンドだけを、素人の私でも美味しく淹れられるサイフォン式で出しています。ドリンクは他に日本茶と和紅茶を出していますが、これも九州の嬉野でお茶を作っている友人から取り寄せているものです。

――人脈がこういうところにも活きているんですね。軽食はどうされているんですか?

小林:自家製ケーキを何種類か作っています。本格的なケーキ作りは初めてだったのですが、飲食店を経営している知り合いを頼って作り方を教わりました。お客さまから「ご飯メニューも欲しい」というご要望を前からいただいていたので、最近おにぎりとスープのセットも出すようになって。おにぎりをメニューに選んだのも、母と私どちらが作っても味に差が出ないからです。

――メニューもとてもシンプルなんですね。

小林:はい、飲食業の素人が始めたことなので。私たちができる範囲のことだけを、誠実にやっていこうと思ったらこうなりました。

順調に経営を続けていられる秘訣があるとすれば、“意気込みすぎないこと”

――えり子さんにとっては初めての飲食店経営になりましたが、改めて振り返って気づいたことはありますか?

小林:飲食店を出すのはもっと大変かと思っていましたが、講習で取得できる「食品衛生責任者」の資格が必要だったくらいで、うちのような小規模な店だと「防火管理者」の資格もなくて開業できますし、意外とスムーズだなと思いました。ただ、お店作りに関しては、リフォームの途中や出来上がってから気づくことも多かったです。

――例えばどのようなことでしょうか?

小林:飲食店なので常に衛生面と清潔さに気をつけなくてはいけないから、店内はもちろん、トイレなども掃除のしやすい内装にしておけばよかった、とか。キッチンの棚の作りやカウンター席の高さなども、見栄えと使いやすさをよく考えて決めたほうが、より満足できると思いました。

――現在の客層は、当初考えていたように、やはりご近所の方が多いのですか?

小林:はい、土日は街歩きを楽しむ若い方もたくさんいらっしゃいますが、平日はご近所の方が常連になっていただいています。お子さま連れも多いですし、近所の他のカフェよりもお客さまの年齢層は高めですね。お友達を連れてまた来てくださる方も多く、おかげさまで順調です。

――その順調さの秘訣は何だと思いますか?

小林:背伸びしない店なので敷居が低く、気軽に入れて落ち着けるのがいいのかな? と思います。母の地元が清澄白河だという話でお客さまとも話が弾みますし、私たちものんびりやっているので、友達の家に遊びに来るような感覚なのかも知れないですね。先日も、お昼どきによくいらっしゃる方と初めてお話をしたら、「会社のお昼休みに散歩して、ここでゆっくりするのが最近の楽しみなんです」とおっしゃってくれて……とても嬉しかったです。

――地元密着であることが、一番の魅力。だからこそ、お店も長く続けられますよね。

小林:はい、そうありたいですね。「Cafe 清澄」を地元のコミュニティとしても活用したくて、清澄白河在住のカメラマンの方に写真撮影会を開いてもらったり、私のCDショップ時代からの友人に出張CD販売をやってもらったり、企画もちょこちょこ始めています。ギャラリーとしても使っていければと思いますが、若くて感度の高い方だけが集まって、地元のお客さまが入りにくくなる空間になるのはいやなんです。地元のみなさんが身近に楽しめる企画がやりたいですね。

――そういう地元に根ざしたカフェをやりたいと憧れる方も多いでしょうね。そういった方に向けて、えり子さんから何かアドバイスをいただけますか?

小林:まだまだ素人の私がアドバイスなんておこがましいのですが……意気込みすぎないことでしょうか。身の丈以上の構想を実現しようとガチガチに計画を決め込むと、何か1つうまく行かないだけでモチベーションが下がってしまいますよね。うちの場合はゆるりと始めたので毎日が新鮮ですし、お客さまのご要望に応えながらお店を発展させていく楽しみもずっと続いていきそうです。これからも、地元のお客さまを大切にしながらブームに左右されることなく、のんびり「Cafe 清澄」を続けていけたらいいなと思います。あまり遠い先は考えずに、開店してから1年は探り探りでも続けてみる。そういった小さな目標を更新している日々です。

Cafe 清澄

〒135-0024 東京都江東区清澄3丁目3-31
03-5875-9517
※取材時点の情報です

Cafe 清澄

 マイナビ独立マガジンの最新記事

一覧を見る

 マイナビ独立フランチャイズマガジンの最新記事

一覧を見る
PAGE TOP