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公開日:2018/4/27
フランチャイズインタビュー

未経験者にも活路が。介護フランチャイズのメリットを経営者兼コンサルが語る

2000年代以降、急速に伸びたフランチャイズチェーン(以下、フランチャイズ)のひとつが介護事業です。内閣府の調査資料「平成29年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者人口は2015年で3,387万人。この数は2042年まで増え続けると推定されており、介護市場のさらなる拡大が見込まれています。

一方で、慢性的な人材不足が問題視されているほか、介護保険制度によってサービスの単価や必要な人員、設備が定められているなど、この業界ならではの難しさもあります。コンサルタントとして豊富な経験を持ち、自身も訪問介護事業所のフランチャイジーである柴田昌行さんに、介護業界の現状や今後の予測、フランチャイズ加盟のメリットや本部選びのポイントを教えてもらいました。

必要な人員からサービスの単価まで。制度で定められている介護業界のルール

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必要な人員からサービスの単価まで。
制度で定められている介護業界のルール

柴田昌行さん

──まず、介護業界の大きな特徴である介護保険制度について、簡単に教えていただけますか?

柴田:介護保険制度は、2000年より施行された介護保険法に基づいて導入された社会保険制度です。高齢者の身体的・精神的な自立を社会全体で支え合うことを目的としています。それまでにも、老人保健法という同様の法律が制定されていたのですが、要介護者の増加や介護をする家族の負担増などを背景に、新たに整備されました。

各市区町村から要介護・要支援認定(※)された方は、介護サービスの利用料金(介護報酬)の1割から2割を自己負担。残りは、40歳以上の方が支払う介護保険料や税金を財源とする介護保険で補填します。つまり、事業者はお客さまだけでなく、国や自治体から報酬をもらうことになります。

また、介護保健法では、国が介護報酬を決めることが定められています。厚生労働省によって、たとえばリハビリのサービスを受けたら何点、というように点数が定められていて、それに応じて介護報酬が決定される。1点が何円に換算されるかは地方自治体によって若干異なるのですが、国が価格を決めているんです。

※要介護者がどのレベルの介護サービスを必要とするかを、全国一律で区分したもの。要支援1、2と要介護1から5までの7段階で区分される。その認定をもとに、受けられるサービスや介護保険の支給限度額が設定される。

──たしかに、売上の多くを国や自治体から報酬としてもらうというのは、ほかの業種・業態と大きく異なりますね。介護業界には、具体的にどのようなサービスがあるのでしょうか?

柴田:ひとくちに介護サービスといっても、高齢者向けの配食サービスなど介護保険が適用されないものもあり、業態は多種多様です。ただ、介護保険が適用される業態としては、大きくは通所介護や訪問介護といった「居宅サービス」、特別養護老人ホームなどの「施設サービス」に分類されます。業態ごとにさまざまな制約があり、フランチャイズチェーンとしては、現在、通所介護や訪問介護といった居宅サービスが主流になっています。

通所介護とは、いわゆるデイサービスですね。日帰り施設で、食事、入浴などの支援や歩行訓練を提供するサービス。訪問介護とは、ヘルパーがサービス利用者の自宅に伺って、身体や生活面の介助をするサービスです。

マーケットの状況はそれぞれ異なるのですが、高齢化社会によって、いずれも需要は拡大し続けています。なかでも、通所介護の事業所数は、2001年に全国で約1万件だったものが、2015年には約4万件と、約4倍に増えていました。

──訪問介護よりも通所介護の事業所数の伸びが顕著なのは、どういった理由があるのでしょうか?

柴田:人員確保の面で、通所介護のほうが開業しやすいんです。介護ビジネスは、その仕事をするために必要なスキルや資格が定められています。どちらもオーナーになるだけなら必要な資格はないのですが、訪問介護は、ヘルパー(訪問介護員)の資格を持っている人でないと現場に立つことができない。

一方、通所介護は、介護福祉士などの資格がなくても現場で働くことができる。規模によっては、看護師資格を持ったスタッフが1人以上いなくてはいけないなど細かな規定はありますが、訪問介護に比べて人員要件の制約が厳しくないんです。

ただ一方で、2015年の介護保険法の改正で通所介護の介護報酬が減額されてしまった。特に、定員18人以下の小規模な通所介護の報酬が大きく減額されました。

冒頭で申し上げた通り介護施設は、その規模に応じて必要な従業員数や設備の基準が定められています。そのなかで、定員10人以下の小規模な介護施設は、初期投資や運営にかかるコストに比べて介護報酬が高かったため利益率が高く、開業する人が多かったんです。結果として、通所介護施設が増えすぎたため、国からの総量規制がかかり、参入障壁が高くなりました。その影響もあり、2016年度は、介護保険制度が施行されて以降、初めて事業所数が減少しました。

──利用者から見ると、単価が下がったことで負担は減るという良いニュースですが、事業者にとっては厳しい変化だったんですね。

柴田:そうですね。同じく2015年の法改正では、要支援・要介護度認定のなかでも比較的軽い、「要支援1」「要支援2」の方に向けた「介護予防サービス」のルールについて変更がありました。一部の対象事業のみにはなりますが、市区町村ごとに、サービスの内容や報酬を決定できるようになったのです。各地域の特性に応じて柔軟な対応ができるようにとの措置でしたが、フランチャイズビジネスという視点においては、肝であるサービスや価格の標準化が難しくなり、各本部は対応に苦労しているというのが現状です。

高齢化社会が進むなかで、社会環境の変化に柔軟に対応できるように、2005年以降、原則として3年ごとに介護保険制度と介護報酬の見直しが行われています。2018年度は、当初事業者にとっては厳しい改正も予測されましたが、結果的には、全体としてわずかですが介護報酬が引き上げられました。介護保険制度の改正に応じて、業界全体のルールが大きく変わるのも介護ビジネスならではの特徴です。

──定期的な制度の見直しに左右されつつも、市場規模はこの先も広がると考えていいのでしょうか?

柴田:そうですね。内閣府の調査(「平成29年版高齢社会白書」)によると、2042年まで高齢者が増え続け、それにともない要介護・要支援者も増えるとされています。

一方で、国としては、財政の健全化に向けて、介護給付の総額を抑えなければならず、今後、介護報酬が引き下げられる可能性もあります。ただし、介護報酬の引き下げを過剰に心配する必要はないと思います。どんなに社会環境が変わろうとも、介護は国にとって必要不可欠な社会インフラです。それを持続させるためには、介護報酬は、事業者が適切な利益を確保できるように設計されなければならないからです。

また、国がサービスの価格を決めているということは、業界内での安売り競争がないということ。そういう意味では、しっかり運営すれば、失敗する可能性が比較的低い業種といえるかもしれませんね。

介護事業はローリスクローリターン?
流行に左右されないことが強み

介護事業はローリスクローリターン?流行に左右されないことが強み

──他業種であれば、価格の統一や事業方針の決定は、フランチャイズの本部が担う大きな役割でもあると思います。それらを国が定めているなかで、フランチャイズに加盟するメリットはあるのでしょうか?

柴田:大きく2つあります。ひとつは許認可を受けるための申請など、開業までのサポートが受けられること。もうひとつはサービス内容についてのサポートです。

訪問介護では、サービス利用者の状態に応じて作成された、「ケアプラン」という計画書に従って介護を行います。一方、通所介護は、利用者の滞在中にどんなサービスを提供するか、運営の仕方に自由度があるので工夫が必要です。たとえば、ヨガのプログラムを提供するとか、音楽を流してリズム遊びをするとか、内容を考えなければなりません。

また、そのプログラムに対して、こういう機能の回復が期待できるといったエビデンスを持たせるのは未経験者では難しい。そういった専門性の高いメソッドを提供してもらえることが、フランチャイズに加盟するメリットだと思います。

──専門性が要求される介護業界でも、フランチャイズに加盟すれば未経験でも参入できるということですね。集客支援なども受けられるのでしょうか?

柴田:そうですね。ただ、要介護・要支援認定を受けた方は、ケアマネージャー(介護支援専門員)との相談によって、どういったサービスをどの事業者のもとで受けるかを決定します。ケアマネージャーとは、介護保険法で定められた専門資格を持ったスペシャリスト。要介護・要支援認定を受けるための書類を作成し各自治体に提出するなど、介護が必要な方と各自治体、さらに介護サービス事業者をつなぐ役割を担っています。

そのため、介護サービスはケアマネージャーへの営業が必要となるわけですが、本部によっては営業ノウハウがあったり、ケアマネージャーとのコネクションがあったりします。開業後、ただ待っているだけではなかなか利用してもらえないので、そういった営業をかけることも大切です。

──開業における初期費用とその内訳について、教えてください。

柴田:訪問介護をはじめ、訪問看護、訪問マッサージなど、利用者のお宅に訪問する業態は、おおむね1,000万円前後で始められます。まず加盟金が約100万円から200万円程度。それと事務所の賃貸費用ですね。それほど大きな事務所は必要ないですが、デスクやパソコンなどをイチからそろえるなら、200万円くらいはみておいたほうがいいでしょう。残りは人件費や事故に備えた保険料などのほか、開業後、約半年分の運転資金です。

──訪問介護でも事務所は必須なんですか?

柴田:はい。これも、介護保険法によって定められています。自宅でも可能ですが、衛生面や個人情報の保護の観点から、事務所として使用するにはさまざまな決まりがあります。ほんの一部を紹介すると、自宅と事務所で入口は別々にする、手を洗うスペースや面談するスペース、鍵つきの書庫の設置などです。それほど難しい条件ではないですが、自宅を事務所にする場合は注意が必要ですね。

──通所介護の初期費用は?

柴田:訪問介護と大きく異なるのは物件の取得費用。規模にもよりますが、利用者が通うので、最低でも20〜30坪は必要でしょう。それに加えて、バリアフリー化なども含めた内装工事の費用もかかります。そのほか、機能訓練するにはリハビリのトレーニングマシンを入れたり、入浴補助のための器具を入れたりする必要があります。物件取得費用と内装工事、器具の購入で1,000万から2,000万円、運転資金は500万から1,000万円が一般的だと思います。

──国が抱える課題に直結した介護事業では、開業資金の借り入れにあたって優遇措置などはあるのでしょうか?

柴田:はい。たとえば日本政策金融公庫では、介護事業者の借り入れには特別な枠があります。市区町村によっては、助成金も受けられますので、資金調達の敷居は他業種よりも少し低いといえるかもしれません。

──利益構造についてはどうでしょうか? 一般的には、介護ビジネスは大きな利益を上げにくいともいわれています。

柴田:先ほども申し上げたとおり、事業者が適切な利益を確保できるように国が価格をきめているので、適切に運営できれば、きちんと利益はでるはずです。ただし、爆発的に繁盛する可能性がある飲食業などと比較すると、利益の増減幅は小さいかもしれませんね。

たとえば、飲食業などで成功しているフランチャイズオーナーが、業界についてそれほど勉強することなく、投資を目的として介護事業を始めたら「面白みがない」と思うかもしれません。ただ、介護という事業は流行に左右されませんし、今後需要が増えるという強みがあります。そういう意味では、ローリスクローリターンといえるかもしれませんね。

介護業界は慢性的な人手不足。
人材確保も見据えた立地や、本部選びが重要

介護業界は慢性的な人手不足。人材確保も見据えた立地や、本部選びが重要

──介護ビジネスを成功させるには、どういったことがポイントになるのでしょうか?

柴田:もっとも重要なのは、人材の採用と育成ですね。いまやどの業界も同じですが、介護業界も慢性的な人手不足に陥っています。したがって、どのように優秀な人材を採用し、育成し、モチベーションを高く維持させるかがとても重要なポイントとなります。労働環境や人間関係の問題で中核となる人間が辞めてしまい、人が足りなくなって事業撤退したという例はよく聞きます。

──人材採用や教育、評価制度といった要素も、本部選びでは重要になる?

柴田:そのとおりです。事業の成否を分ける最も重要な部分ですから、人材に関するサポート内容はしっかりと確認してください。また、それらも含めて、加盟金やロイヤリティーが、何の対価なのかを事前に理解しておくことが大切だと思います。フランチャイズは、継続的なサポートを受けられることがオーナーにとって重要です。たとえば、コンビニであれば商品の仕入れ、飲食業であればレシピの提供がそのお店の競争力の源泉といえるものです。

一方で、介護業界は、サービス内容や報酬など、介護保険法によって定められている項目も多く、目立った差別化がしにくい。その本部の強みは人材の採用・教育なのか、オリジナルのレクリエーションプログラム提供なのか、介護保険制度改正時の対応なのか。そして、そのサポートの価値が加盟金やロイヤリティーに見合ったものであるかを検討することで、自然と絞られてくると思います。

──フランチャイズに加盟するメリットとして、要介護者の人数など、開業地域に関するデータを教えてもらえる点もあると思います。立地面では、どんなことに気を配るべきなのでしょうか?

柴田:もちろん、良い立地を選定することは大切ですが、サービス利用者は主に車の送迎を利用することを考えると、人材採用の面で立地に気を配ったほうがいいかもしれません。パートやアルバイトの方は、自宅から通いやすいところで働く傾向があります。他業種に比べて、まずは従業員が通勤しやすいかどうかを、より重要視したほうがいいかもしれませんね。

──やはり、人材の確保が何よりも大切なんですね。介護ビジネスの経営に向いているオーナーの傾向はありますか?

柴田:月並みになりますが、介護という事業にやりがいを感じられる人だと思います。それから、コミュニケーションスキルが高い人は向いているのではないでしょうか。これも人材の確保に関わることですが、従業員のモチベーションを高く維持するためのコミュニケーションスキルが鍵ですね。結果として従業員の定着につながります。

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法改正に振り回されることなく、
本質的なサービスを突き詰めることが成功につながる

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──今後の介護業界は、どういった方向に進むと思われますか?

柴田:2018年の介護保険制度改正では、それほど大きな変更はありませんでした。ただ、繰り返しになりますが、国としては、財政の健全化に向けて、サービスの品質を保ちながら、いかに介護給付の増加を抑えるかという大きな課題を抱えています。

そういった流れのなかで、今後は、より本質的な介護が重要視されていくことは間違いないと思います。本質的とは、高齢者の身体的、精神的な自立という本来の目的を実現させるための介護のことです。

具体的には、歩行や、座る、立つといった最低限の動作をできるようにする機能回復訓練や残存機能の維持といった取り組み。その点で専門性を提供できるフランチャイズは、存在感を増していくでしょう。

──本質的な部分を大事にしていれば、介護保険制度の改正でルールが変わっても影響を受けにくい。

柴田:その通りです。改正に振り回されすぎず、自分たちのやるべきことをしっかり追求していくことが重要になるでしょう。介護は日本の課題の中心になっている部分ですから、社会貢献性が強いビジネスであることは間違いない。使命感を持って取り組めば、自分の力で社会課題を解決できる可能性もあるかもしれませんね。

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柴田 昌行

大手鉄鋼メーカー、コンサルティング会社勤務後、2009年に独立。大手から創業期のフランチャイズ本部まで支援実績は多数。豊富な本部支援経験をもとに、フランチャイズ加盟店の支援も積極的に行っている。東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会所属。

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