フランチャイズ契約とは?知っておくべきフランチャイズ契約の基礎知識と注意すべきポイント
フランチャイズビジネスを始めるにあたって、避けては通れない契約というステップ。万全の状態で事業をスタートさせるためにも、契約書の内容は十分に理解しておく必要があります。いざ契約というシーンで焦らないために、フランチャイズ契約において知っておくべき基礎知識と注意すべきポイントをご紹介します。
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フランチャイズ契約とは?
そもそもフランチャイズとは?
フランチャイズとは、フランチャイズ本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)に対して、商標・商号の使用権、商品やサービスの販売権、それに伴う経営ノウハウの指導・教育などを提供し、その対価として、加盟店から保証金やロイヤリティなどの対価を得るシステムのことを言います。
フランチャイズ契約の特徴
加盟契約を結ぶことで、フランチャイズ本部には商標の使用権などを提供する義務と対価を受け取る権利が発生し、加盟店には商標などを使用する権利と対価を支払う義務が生じます。
契約内容の詳細は、フランチャイズ本部によって異なりますが、フランチャイズ契約は、基本的にフランチャイズ本部が用意したプラン(パッケージ)を加盟店が受け入れる契約です。例外的に個別の覚書が結ばれる場合もありますが、原則すべての加盟店に同一の契約書が使用されます。また、本部と加盟店はそれぞれが独立した事業者であり、契約上は対等な関係です。事業者と消費者の関係ではないため、クーリングオフ(一定期間であれば無条件で契約解除ができる)などの制度は適用されません。
フランチャイズ契約書の内容とは?
契約書は、フランチャイズ本部が提供する価値(商標や経営ノウハウなど)と、加盟店が守るべき義務の内容を具体的に書面に落とし込んだものです。フランチャイズは業種・事業形態によって事業内容が異なるため、契約書の内容は本部によって異なります。すべてのフランチャイズ本部に共通する書式はありませんが、一般的には以下のような項目が盛り込まれます。
(1)目的
(2)当事者の地位
(3)契約期間
(4)商標の使用許諾
(5)営業名および所在地
(6)テリトリー制
(7)店舗の設備
(8)営業時間等の遵守事項
(9)商品の供給
(10)会計の報告義務
(11)開業前の指導援助
(12)開業後の指導援助
(13)広告宣伝
(14)加盟金
(15)保証金
(16)ロイヤリティ
(17)秘密保持義務
(18)競業の禁止
(19)経営委託、権利譲渡の禁止
(20)中途解約
(21)解除
(22)損害賠償
(23)契約終了後の措置
(24)合意管轄
(25)協議事項
上記は契約書に記載される条項の一例です。この内容が標準というわけではなく、項目の名称が異なる場合もあり得ます。契約書によっては、記載内容がより簡潔だったり、逆にここに記載のない内容が盛り込まれていたりすることもあります。普段契約書を見慣れていない方は、記載内容が多いことに驚くと思います。実際に契約書にはどのような文面が記載されているのか、事前に契約書の雛形などを入手して目を通しておくと良いかもしれません。
契約時に注意すべきポイントとは?
契約書は、ビジネスに関する約束事です。独立した事業者として開業する以上、責任と自覚を持って契約する必要があります。契約書の内容を十分に理解しないまま加盟契約を締結してしまうと、トラブルにつながりかねません。中小企業庁が発行する資料にも、以下のような記載があります。
※出典:中小企業庁「フランチャイズ事業を始めるにあたって」
では、契約にあたってどんなところを注意すれば良いのでしょうか。トラブルの発生を未然に防ぐためにも、最低限以下のポイントには留意し、確認を怠らないようにしましょう。
特にチェックすべき契約書の項目
契約期間
フランチャイズの契約期間は本部によってさまざまですが、説明会や面談を通じて、契約前には必ず把握できているはずです。注意しなくてはいけないのは、契約期間の算出方法。契約締結日を起点とするのか、オープン日を起点とするのかで、必要な資金が変わってきます。また、契約期間満了後の更新についても注意が必要です。自動更新なのか、何らかの手続きが必要なのか。更新料はかかるのか。事業計画に関わる重要な事柄なので、将来のことだからと悠長に構えず、しっかりと確認しておきましょう。
商標の使用許諾
加盟店にとって、フランチャイズ本部のブランド名称やマークなどの商標が使えることは事業上の強みであり、フランチャイズに加盟する大きな理由の1つと言えます。ほとんどのフランチャイズ本部は商標を特許庁に登録し、その権利を守っています。契約書においても、商標が持つブランドイメージを損なわないように、例外なく一定の使用条件が定められています。商標の不正利用は大きな問題につながることもあるため、契約前に使用条件を必ず確認し、きちんと理解するようにしてください。
テリトリー制
特定の地域において他の加盟店や本部の直営店の開業を制限することを「テリトリー制」と言います。テリトリー制は、加盟店の商圏が守られるというメリットがある一方、他地域での営業活動や出店が許されないという側面もあります。テリトリー制にはさまざまな内容があり、条件は一定ではありません。フランチャイズ本部の中には、テリトリー制を採用していないところもあります。事業に大きな影響を与える制度ですので、必ず内容の詳細を確認し、納得できるまで本部に説明を求めましょう。
商品の供給
フランチャイズ契約では、多くの場合、加盟店が仕入れる商品や材料、備品などは、フランチャイズ本部によって指定されています。このような条項は、ブランドイメージの統一や、提供するサービスの品質担保といった目的があります。しかし、本部からの要求が、事業を遂行するうえで許容できる限度を超えた場合、「優越的地位の濫用」にあたり、不公正な取引として問題になることがあります。たとえば、「仕入れ数量の強制」や「正当な理由のない仕入れ品目の制限」など、加盟店にとって不利になる内容が含まれていないか、必ず確認してください。
加盟金
フランチャイズ本部から提供される商標利用権などに対する対価として、加盟店が契約締結時に支払う金銭を加盟金(権利金、入会金)と言います。加盟金は研修費や開業支援費などの費用を含む場合もあれば、本部によっては加盟金とは別に研修費などが求められる場合もあります。加盟金に含まれる費用の詳細が、契約書に明記されているかを確認し、記載がなければ念のため詳細を確認しましょう。また、加盟金はフランチャイズ契約が終了しても返還されないことが一般的です。ほとんどの場合、契約書には「加盟金は返還しない」と明記されていますが、たとえば「本部の都合などで開業できかった場合はどうなるのか」など、あらゆるケースを想定して事前に確認しておくことが大切です。
保証金
フランチャイズ契約における保証金とは、加盟店の金銭未払い(金銭債務の不履行)に備えて、フランチャイズ本部に対して支払われる「預かり金」のことを言います。不動産を借りるときの「敷金」と同じイメージです。たとえば、契約期間内に加盟店が「ロイヤリティを支払わなかった」という事態が生じた場合、本部は保証金から相当額を回収することができます。保証金によって回収できる金銭債務の範囲は、当事者間の契約によって自由に決めることができるため、契約書に詳細が書かれていない場合にはしっかりと説明を求めましょう。また、保証金は預かり金なので、フランチャイズ契約終了時に、本部は加盟店に残額を返還しなくてはいけません。念のため、返還の時期や方法についても確認しておくと良いでしょう。
ロイヤリティ
ロイヤリティとは、フランチャイズ本部が所有する商標や経営ノウハウ、システムなどを利用する対価として、加盟店が「毎月支払う使用料」のことを言います。ロイヤリティには大きく分けて「定額方式」「売上比例方式」「利益分配方式」の3つの方式があり、金額の算出方法は本部によって異なります。売上や利益の金額に応じて算出方法が変わることもあるので、十分に確認し、理解したうえで契約するようにしましょう。ロイヤリティとは異なる名目で、毎月何らかの利用料や分担金が発生する場合もあるので、注意が必要です。
競業の禁止
通常、フランチャイズ契約においては、契約期間中および契約終了後の一定期間にわたり、加盟店が同種もしくは類似した事業を営むことを禁止する「競業避止義務」が規定されます。この規定には、フランチャイズ本部が持つ経営ノウハウの流出を防ぎ、既存加盟店の優位性や利益を保護する意味があります。すでに複数のフランチャイズ本部に加盟している法人の場合は、既存の事業が競業に当たらないか、注意が必要です。また、将来的に自身で事業やサービスを展開しようと考えている場合には、「類似した事業」がどのようなものを指すのか、具体的に確認しておきましょう。契約終了後の禁止期間についても、不当に長い期間が指定されていないか、しっかりと確認してください。
解除・損害賠償
多くの契約書では、フランチャイズ本部または加盟店に違反行為があった場合、契約を一方的に解除できることが定められており、加盟店の違反行為については、予め本部が請求できる損害賠償金額が契約書で定められているケースがあります。また、契約解除に伴う違約金が設定されていることもありますので、それらの金額はしっかりと頭に入れておきましょう。損害賠償金や違約金が高く設定されている場合、加盟店にとって不利なように感じられるかもしれませんが、その規定があることで加盟店の違反行為が抑止され、フランチャズチェーン全体のブランドイメージが守られているという側面もあります。逆に損害賠償金や違約金に関する規定がない場合は、リスク管理に対してどのように考えているのか、本部に質問してみましょう。
中途解約
フランチャイズの契約期間は本部により異なりますが、3年、5年といった複数年にわたる契約が一般的です。契約期間内での解約については、契約書内に中途解約の定めがあれば、その規定に沿って解約を進めることができます。その定めがない場合、解除事項にあたる契約違反などがない限り、原則として一方的に解約することはできません。通常、中途解約を行う場合は違約金が発生します。その金額の算出方法はさまざまで、いつ解約しても一定の金額を支払わなくてはいけないケースや、残りの契約期間に支払われるべきだったロイヤリティの総額を違約金として設定している場合など、いくつかのパターンがあります。中途解約の規定の有無、および違約金の金額については必ず確認するようにしましょう。
その他の注意すべきポイント
売上・利益予測の根拠
フランチャイズ加盟を検討するにあたり、フランチャイズ本部から必ず売上や利益に関する予測資料やモデルケースが提示されます。多くの場合、こうした予測値は、事業の参考データとして提供されるものであり、提示された売上や利益が保証・約束されているわけではありません。改めて言うまでもありませんが、売上や利益の予測は事業計画を左右する重大な要素です。本部が提示する数字を鵜呑みにせずに、必ず算出根拠を納得いくまで説明してもらうようにしましょう。さらに、同業他社のフランチャイズ本部の予測値と比較したり、近いエリアの既存店から話を聞いたりするなど、慎重に検討することが先々の成功につながります。
法定開示書面との比較
中小小売商業振興法という法律に基づき、小売・飲食のフランチャイズチェーン(特定連鎖化事業)の本部は、フランチャイズ契約を結ぶ前に、加盟希望者に対して本部の事業概要や契約の重要事項を記載した「法定開示書面」を提示することが義務付けられています。小売・飲食以外のフランチャイズ本部は、中小小売商業振興法の対象ではありませんが、この規定に沿って自主的に法定開示書面と同様の書類を用意しているところもあります。法定開示書面に記載されている内容は、契約書の内容と同様のはずですが、万一その内容が異なる場合は、契約書の記載内容が法的に優先されます。法定開示書面と契約書の内容に違いがないか、必ず見比べるようにしてください。
起きやすいトラブル例
- 経営指導や援助が不十分なので契約を解消したいが、本部が認めてくれない(解除や中途解約の条件について理解が不十分だった)
- 開業から一定期間が過ぎたら、近くに新しい加盟店ができた(テリトリー制に関する理解が不十分だった)
- 想定以上にロイヤリティが高く、利益が伸びない(ロイヤリティの仕組みについて理解が不十分だった)
- 契約を更新したいのに、一方的に契約更新を拒絶された(契約更新に関する理解が不十分だった)
- 売上予測と実際の売上に大きな差があり、経営不振が続いている(本部から提示された売上予測の根拠確認が不十分だった)
以上のように、フランチャイズ契約で起き得るトラブルの多くは、契約内容や売上予測の確認・理解不足に起因する「イメージしていたものと違う」というものです。契約内容をよく確認、少しでも不明な点があれば本部に聞いてみることはもちろん、可能であれば同業他社とも比較・検討するなど、納得のいくまで確認するようにしましょう。
知っておくと役に立つ用語集
独立事業の原則
フランチャイズ契約を締結するにあたっては、加盟店を「独立した事業者」として扱うのが原則です。個人で契約した場合にも、消費契約における消費者には当たらず、保護対象にはなりません。
優越的地位の濫用
取引において、優越的な地位にある一方の当事者(フランチャイズ本部)が、その地位を利用して相手方(加盟店)に対して不当に不利益を与えることを言います。
秘密保持義務
加盟店が、フランチャイズ本部から提供を受けた経営ノウハウ等の秘密に関して、無関係な第三者に開示することを禁止する規定です。守秘義務とも言います。契約期間中はもちろん、契約終了後も一定期間は義務が発生します。
オープンアカウント
コンビニチェーンで採用されている会計処理方法です。加盟店は日々の売上を本部に送金し、本部は1カ月単位でその金額の合計から、商品や備品の仕入れ代金やロイヤリティなどを徴収した金額を加盟店に送金します。この会計処理の方法をオープンアカウントと言います。また、本部から加盟店に送金するときに勘定がマイナスになった場合、自動的に本部から加盟店に不足分の金額が融資されることもあります。オープンアカウントの仕組みは、コンビニチェーンによって細かい規則が異なり複雑なため、納得できるまで説明を求めることが大切です。
収入印紙
契約書や領収書など商取引で使う文書には「印紙税」という税金が課されます。この印紙税を支払うための手段として、文書に貼付する証書を収入印紙と言います。契約書の内容によっては不課税文書という扱いとなり、収入印紙が不要な場合もあります。たとえば、フランチャイズ契約書においては、「加盟店に対して商標や経営ノウハウなどの使用権を与える」といった使用許諾の範囲を定めた契約書であれば不課税文書となります。契約書内に、継続する売買を行う目的で商品名・単価・対価の支払方法等を定めた場合には、印紙税の課税対象となる「継続的取引の基本となる契約書」に該当し、契約書1通につき4000円の収入印紙を貼付する必要があります。
フランチャイズ契約についてのまとめ
以上、フランチャイズ契約を締結するにあたって、知っておくべき基礎知識や注意すべきポイントをまとめてみました。フランチャイズ契約は、事業者と事業者の対等な関係で結ばれるものです。独立した事業者として契約するからには、起きうるリスクを想定し、少しでも疑問点があれば納得いくまで確認することが重要です。日本フランチャイズチェーン協会に登録している本部の場合、契約書の説明から締結まで、7日以上の検討期間をおくことを自主基準として定めています。焦らずに時間をかけて慎重に確認・検討するようにしましょう。
とは言え、これからフランチャイズに加盟しようと考えている人の多くは、法律や契約のプロではないと思います。時間をかけても、契約書のすべてを完璧に理解することは難しいかもしれません。内容が理解できず、不安が解消できない場合には、「大丈夫だろう」と楽観的に判断せず、弁護士などの専門家の力を借りるようにすると良いでしょう。万全の状態で契約に臨みましょう!
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