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公開日:2018/2/2
フランチャイズインタビュー

学習塾をフランチャイズで! 教員未経験で開業できる秘訣をプロが伝授

数あるフランチャイズチェーン(以下、FC)のなかでも、子どもたちの成長に関わることができる学習塾は、大きなやりがいがともなう業態。しかし、国内における15歳未満の子どもが36年連続で減少と、少子化による生徒の絶対数が減っている一方で、一人当たりにかける教育費は2年連続で増えています(総務省「家計調査」)。それにより、少子化の状況下にありながらも学習塾の教室数・売上ともに微増の状態が続いているのです。
近年はICT(Information and Communication Technology)を用いたオンライン授業を中心とした小規模低資金型のFCも増加しています。そこで、現在の学習塾業界の傾向や、個人での塾経営と比べ、FCに加盟することで得られる塾ならではのメリットについて、長年コンサルティング業に取り組み、自身も学習塾FCを2教室経営している楊典子さんに解説していただきました。

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学習塾は資金繰りをしやすい「前払い」制ビジネス。一方で、生徒集めには労力も広告経費もかかる

楊典子さん

──近年の学習塾業界の傾向を、FCが広まった背景も含めて教えていただけますでしょうか?

楊:もともと学習塾業界は、地元に根ざした個人経営の学習塾と大手予備校の2種類くらいしかありませんでした。ただ、20年くらい前から「個別指導」のニーズが高まったことにより必然的に講師を増やさなければならず、固定費(人件費)を抑えられる大学生のアルバイト講師が増えてきた。そこで、教育の「質」を担保するためのマニュアルが必要となった結果、FCの土壌ができたんです。

現在では、学習塾業界全体の売上のうち約半分はFCが占めているといわれています。日本フランチャイズチェーン協会の2016年の統計調査によると、学習塾・カルチャースクールのFCは、92の本部が32,717教室を運営しており、全体の売上は約4,800億円。大手のFCでは、明光義塾や個別指導スクールIE、ITTO個別指導学院などが知られています。

──現在の学習塾の指導スタイルはどういった種類があるのでしょうか?

楊:大きくは集団指導と個別指導に分かれています。個別指導は生徒ごとに個別のカリキュラムを考えることなので、必ずしも1対1で教えるわけではなく、講師と生徒の割合は1対2〜3、多いところでは1対6で指導していくスタイルです。

また、個別指導のなかでも、講師がテキストを使い生徒と対面して指導を行う直接指導と、インターネットを活用したICT(オンライン授業)に分かれます。直接指導では、生徒と講師がコミュニケーションを密に取れるため、授業の楽しさを生徒に感じてもらいやすい、というメリットがあります。ただし、開業費用を少しでも抑えたいという方には、人件費などのコストを抑えられるICTを中心としたスタイルのほうがFC加盟においてはハードルが低いといえるかもしれませんね。

加盟希望者の目線でいえば、集団指導型に関しては開業費用が高いため、法人加盟が多い傾向にあります。一度に大勢の生徒を指導できるため、授業料を安く抑えることができるというメリットがありますが、そのぶん、大きな教室を借りなくてはなりません。

──直接指導の場合、FCのオーナー自らが講師として授業をする必要があるのでしょうか?

楊:いえ、どんな形態であっても、現場に立たずオーナーに徹することもできますよ。ただ、なかには自分で直接子どもの指導に携わりたいと思い、学習塾のFCに加盟される方もいらっしゃいますね。

──ビジネスとして、学習塾にはどのような特徴がありますか?

楊:大きな特徴としては、収入の大部分を占める授業料が月謝として前払い制であることが挙げられます。学習塾は「ストック型」のビジネスといわれており、生徒が増えればどんどん売上が積み上がっていきますから、安定してくれば資金繰りをしやすい業態だと思います。夏期講習や冬季講習などは平時の2~3倍の売上になりますので、繁忙期がはっきりしていますしね。

──逆にいえば、生徒を集めるまでは苦労する?

楊:そうですね。いまはチラシを配れば生徒が集まる時代ではなく、インターネット上も含めて、継続的にマーケティングを続けないと、安定的に生徒が集まらない。本部の方針で、売上の10%を広告宣伝費にまわすことを推奨しているFCもあります。無事に生徒が集まったとしても、中学3年生や高校3年生は進学によって一気に退塾するので、種をまき続けることが大切なんです。

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信頼感が重要な学習塾では、FCのメリットをより強く受けられる

学習塾のFC

──学習塾において、個人開業ではなくFC加盟を選ぶことには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

楊:学習塾は「信頼ビジネス」なので、FCのメリットである認知度や信頼度などの恩恵を、ほかの業種・業態よりも強く受けられると思います。個人で開業した場合、講師はどういった人なのか、難関校への合格実績や成績アップの実績はあるのか、本当に結果を出せるのかといったハードルを越える必要があります。大手学習塾の名前であれば安心感がありますし、ほかの加盟校のデータを実績として出すことができます。最初の関門である生徒集めに関しては、すごく有利だと思います。

──なるほど。大切なお子さんの進路を預かるわけですから、「信頼感」はとても重要になりそうですね。本部選びについてはいかがですか?

楊:まずは先ほど挙げたような、直接なのかオンラインなのかといった指導スタイルによって絞ることができます。それ以外にも、本部ごとに教育方針やビジョンも大きく違います。自分がどの年代の子どもを教えたいのか、勉強が苦手な子をサポートする「補習塾」なのか、有名校入試のための「進学塾」なのか。そういった視点からいくつかの本部を選び、実際に本部の人に会って話を聞いて進めていくのが良いと思います。

──子どもたちの人生にも関わることなので、本部と自分との相性は、かなり大事になりますね。

楊:はい。よくFC加盟は結婚にたとえられますが、そのなかでも学習塾は地域に密着して10年、20年続けることが当たり前の「長い」商売。そのパートナーと長く連れ添っていけるかは、重要なポイントです。

「なぜ自分が学習塾業界に関わろうとしているのか」を見つめ直し、「どんな子どもを育てたいのか」を明確にすると、本部選びも自ずと決まってくると思います。

──「どの地域に開業するのか」も大きな要素になりそうです。

楊:そうですね。ほかの業種・業態と同じように、地域のニーズをリサーチして、開業エリアを決めることは当然大事です。さらに地域によって、FCの認知度、信頼感に差があることは見逃せないポイントです。

どのFCも、特定の地域で力をつけてから全国展開していくことが多いので、その地域で開業すれば、親や生徒からの信頼感に大きなメリットがあります。しかし、すでにほかの教室があることが多いため、新たに開業するための「余白」がない。そのバランスも見極める必要があります。

──ほかの業種・業態と同じく、学習塾も駅前に多いイメージがありますが、「好立地」についての考え方はいかがでしょうか?

楊:駅前に学習塾が多いのは、生徒のためだけでなく、いい講師を雇うためという側面もあるんです。一方で、ICTが中心の塾であれば、生徒の都合に合わせて学校周辺や住宅街で開業される方もいます。学習塾の場合、同居テナントの業態など、保護者の目線で安心できる場所であるかどうかも重要になります。そういった周辺環境を調べるためにも、実際に自分で開業予定エリアを見ておいたほうがいいでしょう。あわせて、近隣の競合の評判も自分で調べておくといいと思います。

その地域にある各学校の生徒数や通塾率などのデータを持っている本部も多いので、それを活用できるのも、FCに加盟するメリットです。とはいえそれを鵜呑みにするのではなく、自分でしっかりと調査したうえで、本部が持っているデータを参考にするのがいいと思います。

──一方で、ロイヤリティーに関しては、飲食店が5%程度であるのに対して、学習塾では10%から20%と高く設定されている傾向にあると思います。これには、どういった理由があるのでしょうか?

楊:本部からのサポートが充実していることが挙げられると思います。飲食店であれば、メニューと食材を供給して、オペレーションを教えれば、あとは基本的に各店舗に任せることも多くあります。

学習塾も、教材の準備や教育ノウハウの面でサポートを受けられるのは同じですが、毎年更新される受験情報に対応していかなければなりませんし、学習制度変更への対応も迫られます。さらに、本部によっては生徒一人ひとりの教育方法についても随時相談に乗ってくれます。「鮮度のあるノウハウ」や「個別サポートのクオリティー」を維持するために、コストがかかっているということですね。

──制度変更への対応というと、センター試験の廃止や、英語の学習開始年齢の前倒し、評価方法の変更といった2020年の「教育改革」も大きな課題ですよね。

楊:これほど大きな改革となると、効果的な指導法を編み出し、講師全員が対応できるマニュアルがつくられるまでに、かなり時間がかかるでしょう。今後の本部選びについては、2020年への対応策をしっかりと持っているかも重要になってくると思います。

初期費用は1,500万円。しかし、安定すれば事業拡大のハードルは低い

──大まかな開業資金の目安はありますか?

楊:オンライン授業の小規模な塾でも、最低ラインは500万円かなと思います。大きな教室が必要な直接(集団)指導型であれば、1,500万円は見ておきたいですね。学習塾は、オフィスビルなど事務所用の物件をそのまま使えるので、設備投資にかかる初期費用が少ないというメリットがあるのですが、それでも簡単に決断できる金額ではないですよね。

また、最初は生徒が集まりにくいので利益が期待できないのと、それでもプロモーションは必要なので、初期費用のほかに運転資金も確保しておきたい。運転資金の目安としては、初期費用の3割から4割くらいの金額を、余分に用意しておいたほうがいいでしょう。

──最初は、無給も覚悟しなければならない。

楊:そうですね。生活費の面でも、最低6か月、できれば1年間は無給でやっていける余裕が必要だと思います。生徒数が増えるまでの資金繰りを、しっかりと考えておくことが大切です。

個人の方だと借入せずに自己資金のみで開業を検討しがちですが、結論から言ってFCに限らずですが、開業時は借入をしたほうが有利です。いまは、政策金融公庫や自治体の制度融資の金利が低く、借りやすい状況です。それにFCはビジネスモデルがしっかりしているので審査でも有利に働きます。もっとも借り入れをしやすいのが独立開業時なので、多めに借りて、2校目の開業用に残しておいてもいいかもしれませんね。

──複数での展開を、開業時から考えておくべきなんですね。

楊:とくに学習塾では、重要になってくると思います。その地域で信頼を勝ち得れば生徒も集めやすくなりますし、同じエリアに2校目を出せば、広告宣伝費も効率よく使えるようになります。稼働率が8割から9割ほどになったら、2校目を考えてもいいと思います。

責任は重いが、返ってくる喜びが大きいのが、学習塾経営の魅力

学習塾のFC

──学習塾で独立開業するために、特別な資格を取得する必要はありますか?

楊:資格は必要ないので誰でも始められます。逆に教員経験者のほうが、後々困るケースもあるようです。教員経験者は、現場での細かい教え方や生徒との接し方において、自分の信念をお持ちの方が多い。万が一、本部の教育方針とすれ違ってしまったとき、完全に合わせることに抵抗を感じてしまうのです。

実際に加盟されている方を見ても、教育に関して未経験だった方が多い印象です。自分の子育てを通じて塾の開業に興味を持った、というケースはよく耳にします。

──現場での教え方については、本部の方針を忠実に反映させることが大切になるんですね。

楊:基本的には、本部の方針に100%合わせるものだと思っておいたほうがいいです。中途半端に独自性を出してしまうと、結果が出なかったときに、本部の方針のどこが良いのか、悪いのかが判断できなくなってしまいますから。本部を選ぶとき、教育方針を重点的に検討することは、本当にものすごく大事なんです。また、実際に加盟しているオーナーを本部から紹介してもらうか、自分で探すなどして開業後のオーナーの教育方針について話を聞くのもよいと思います。

──学習塾経営を成功させるために、心がけるべきことを教えてください。

楊:実際に学習塾に通うのは子どもですが、そこに通うかどうかの決定権を持っているのは保護者であるというのは、塾ならではといえると思います。

教育に対するビジョンや思いが重要なのはもちろんですが、生徒が集まらなければ、その思いを実現することはできません。学習塾の難しい点は、生徒や保護者それぞれの個性や考え方があり、「こうすればいい」という画一的な解答がないこと。そのなかで、長年たくさんの生徒や保護者を見てきた本部からサポートを受けられるのは、非常に大きいと思いますね。

──最後に、ご自身の経験も踏まえて、学習塾運営の魅力を教えてください。

楊:ビジネスの面でいえば、最初は苦労しても、長い目で見れば安定的な収益が期待できる「ストック型」である点は魅力だと思います。

そして、なにより、子どもたちの未来に関わることができること。目標を達成し、生徒と感動を共有できたときや、保護者から感謝の言葉をもらったときは、やってよかったなと感じます。もちろん責任も重いですが、それだけ返ってくる喜びも大きいのが、学習塾の魅力だと思います。

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楊 典子

外資系コンサルティング会社にて業務プロセス改革コンサルティングに従事。 2009年に独立し、五葉コンサルティング株式会社代表取締役に就任。 FC本部構築支援を行う中、自身も2016年より学習塾FCに加盟し2店舗を運営。 一般社団法人 中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会会員。

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