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公開日:2017/11/16
フランチャイズの基礎

【失敗しないためのフランチャイズ入門】知らなきゃ損する、コンサル歴30年のスペシャリストが語るフランチャイズ基礎知識

個人が独立開業を考えるうえで、選択肢のひとつとなるのがフランチャイズチェーン(以下、FC)への加盟です。すでに実績のあるブランドの一員となることで、成功の可能性が高まるFC開業は、独立開業志望者にとっては心強い味方となることでしょう。

しかし、世の中には数多くのFCが存在し、業種や業態、システムもさまざま。そこで、独立開業の未経験者が持つべき加盟時の心得や、加盟店の選択におけるポイントといった素朴な疑問を、国内・海外で30年にわたってコンサルティングを手がけ、ロングセラー『フランチャイズ・ビジネスの実際』の著書としても知られる日本フランチャイズ総合研究所・内川昭比古代表取締役社長にうかがいました。

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「正しく」フランチャイズチェーンを選ぶことができれば、成功の確率は6~7割。失敗を回避しやすくなる。

――フランチャイズチェーンと聞くとまず、大手のコンビニエンスストアなどが思い浮かびますが、そのほかにはどのような業態がありますか?

内川:大別すると「小売業」「外食業」「サービス業」に分けられ、FCの業態数としては150種類ほどになります。「小売業」では、コンビニエンスストアやドラッグストア、スーパーマーケットなどが身近なところかと思います。また、日本独自の業態で増加傾向にあるのは、中古品を扱うショップ。なかでも「中古ブランドショップ」は、古くから質屋文化を持つ日本独自の傾向です。

また、「外食業」「サービス業」も、独立開業しやすい業態として人気なのですが、そのなかでもっともFC数が多いのは外食業。ファーストフード、居酒屋など多くのチェーンがありますが、なかでもラーメン店が急激に増えています。

――サービス業だとどういった業態がありますか?

内川:知名度のあるものだと、理美容チェーンや各種塾、スクール、介護サービスなどがありますが、意外なものでは、小児科、耳鼻科、整体、ペット病院など病院・医療関係のほか、弁護士事務所にもFCがあります。病院や弁護士事務所などは、小売や飲食と違ってチェーン名がつかないので、ご存じない方も多いと思います。

――病院というのは、とても意外ですね。

内川:病院は、設備品や薬品などを含め、一般のルートでは入手できないものも多いですから、FC化することで、開業しやすくなるんです。

――いまや、あらゆるビジネスでFCを探すことができそうですね。そもそも個人が独立開業をするうえで、FCを選ぶ最大のメリットはどこにありますか?

内川:まずは成功確率の高さです。5年後も事業を継続している確率を大まかに言いますと、個人開業の1〜2割に対して、FCでは6〜7割だと言われています。

――それほど違うものなんですね。

内川:ただし、この確率は正しくFCの企業を選択した場合に限ります。たとえば、日本では「フランチャイズチェーン」と「ボランタリーチェーン(以下、VC)」が混同されがちです。どちらも本部があって加盟店を募り、開業支援を行うシステムではありますが、じつは大きく異なるものなんです。

――どう違うのでしょうか?

内川:FCとは、正確には、本部が加盟店に「商標・マーク」「商品供給」「ノウハウ」「継続的な指導・支援」をパッケージとして提供するシステムを言います。

「商標・マーク」というのは、いわゆるブランド名ですね。顧客にとって信頼の証となるものです。「商品供給」とは、本部が企画したオリジナル商品や推奨商品、原材料や資材の供給です。「ノウハウ」とは、本部が開発した生産、加工、調理、施術などの技術や、販売、接客サービスなどを含めた経営の方法です。そして大切なのが、「継続的な指導・支援」。これは、加盟店の経営を維持し、より売上を高めるために、長期的・持続的に行われるサポートのことです。

本部が開発した、よりよい経営方法を提供してもらえることが、FCに加盟する最大のメリット。だからこそ、開業未経験者でも成功確率が高まるのです。一方、VCのシステムでは「商品供給」をメインに行い、そのほかは加盟店に一任されることが多くあります。

――なるほど。FCとVCでは、とくに経営指導の面で大きな違いがあるんですね。

内川:しかし、日本ではFCもVCも同じ「フランチャイズチェーン」という呼び方で、ほぼ一括りにされている現状があります。そこが非常に問題ですね。FCだと思って契約したら、経営指導・支援がなく、じつはVCだった。それゆえ思っていたようなアドバイスやサポートが受けられず、経営悪化を招くトラブルも多発しています。(※)

※編注:一方で、一定のノウハウのある個人や法人なら、自由度の高いVCのほうがメリットを感じられる場合もあります。

私が社長を務めている日本フランチャイズ総合研究所にも、そういった背景によって生まれる契約後のトラブルが最も多く寄せられています。本部も含めて正しく理解していないためFCとして誤解されてしまっている場合や、あえて混同するような説明をする本部もいるので、契約時には細心の注意が必要です。経営ノウハウがなく、指導を受けたいと思っている場合は、両者の違いをよく知っておく必要があります。

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FC加盟店は、本部の部下ではない。FCに向いている人とは?

――独立開業未経験者にとってFCは有効というお話がありましたが、実際にFCで開業されている方の年齢層やキャリアに特徴はありますか?

内川:まとまった資金を調達しやすくなる30代以降の方が多くはなりますが、突出した年齢層というのはないですね。中年の脱サラ組や熟年層のリタイア組が多いイメージもあるでしょうが、それも誤りです。むしろ、サラリーマン家庭が将来に備えて、副業として家族名義でフランチャイズを活用する例も多いですよ。

――では、個人の資質において、FC加盟への向き不向きはありますか?

内川:指導体制がしっかりしていることがFCの利点なので、しっかりとした本部に加盟すれば、それほど向き不向きはないと思います。ただし、商売そのものに興味がある方や、コミュニケーション力がある方でないと成功は当然難しい。あとは、本部の指導を素直に受け入れられるかどうかは、大切な要素ですね。とはいえ、それが本部への依存心となってはいけません。

――本部に依存することは、失敗の要因となりえるのでしょうか?

内川:FCオーナーは本部の部下ではありません。あくまでも契約を通じた対等な関係なので、すべてはオーナーの自己責任。「うちの経営状態が悪いのは、すべて本部のせいだ」と思うような人は向いていませんね。

FC本部が提供するノウハウを上手く活用できるかどうかは、オーナー自身にかかっています。より売上を伸ばすための創意工夫、努力は各店舗のオーナーがやるべきこと。契約で定められていないことについては、加盟店の裁量で店舗運営を行うことができます。

――たとえばどういったことでしょうか?

内川:コンビニエンスストアを例にとると、海の近くにある店舗には、浮き輪や水中メガネといった商品が置かれていますよね。大手チェーンのコンビニエンスストアの品揃えは、商品供給の関係上どこも似てきますが、より多くの顧客獲得を考えるなら、独自の商品展開が必要です。

疑問に対して、時間をかけて誠実に答えてもらえるかが、「いい本部」の判断材料

――FCに加盟すれば、それだけで大丈夫というわけではない。では、よりよいFCを見つけるには、どうすればいいのでしょうか。

内川:まずは、事前調査ですね。インターネットや新聞を活用したり、定期的に開催される「フランチャイズフェア」などのイベントに参加したりして、資料を集めるのが便利です。業種・業態の目星がついたら、実際に本部の説明会などに参加して詳しい話を聞いていきます。

そこで大事なのは、同じ分野で少なくとも5社は条件を比較してみることです。1社だけの説明に感銘を受け、熟考しないまま決めてしまった場合のトラブルは非常に多い。比較検討を面倒がらず、自分の環境や条件に合っているかどうかを、時間をかけてよく確かめてください。

――通常、契約にいたるまでにはどのくらいの期間が必要なのでしょうか?

内川:最短でも3か月は必要だと考えています。 たとえ気に入った本部の説明が素晴らしかったとしても、契約を急がないことが大切。 返事を急かすような対応をされた場合には、注意が必要ですね。

――同じ業態のなかでも、各チェーンによって条件はかなり違うものですか?

内川:はい。各チェーンによって開業プランもそれぞれですし、資料をたくさん見ることで、先ほどお伝えしたような「FCか、VCか」を判断する材料にもなります。FC本部側は、加盟希望者に対して、契約前にさまざまな情報を開示するよう法律で定められています(※)。直近3年間の加盟店の店舗数、契約を途中終了した店舗数や契約更新されなかった店舗数、直近5年間の加盟店と本部間の訴訟件数などは、チェーンの信頼度に関わる数字でもありますよね。それらの開示事項に不明点、疑問点がほんの少しでもある場合は、徹底的に説明を求めること。それらに時間をかけて誠実に答えてくれるかどうかは、いい判断材料になるでしょう。

※編注:中小小売商業振興法(第11条)では、契約締結に際し、あらかじめ加盟者の利益にかかわる一定の事項を記載した書面(法定開示書面)を交付し、説明しなければならないとされています。同法は所定の業種・業態、規模の事業者を対象としていますが、近年では対象外の事業者を含むフランチャイズ本部でも、法定開示書面を用意するようになってきています。

――では、実際に契約を取り交わす段階で、失敗しないために気をつけるポイント、見落としてはならないポイントはどこですか?

内川:契約書はとにかく、隅から隅まで面倒がらずに読み込んでいただきたいです。なかでも注目してほしいのは、 本部から経営指導を受けられる範囲や回数が定められた「指導内容」、それから「ペナルティー条項」ですね。いざ加盟したものの、上手くいかずに契約を解除しようとしたとき、ペナルティー条項をチェックしていなかったがために、莫大な違約金を求められるトラブルもよく起きています。また、サービス業では、スタッフへの指導や教育支援などの面で契約内容が曖昧なことが多いためトラブルが起きやすく、より注意が必要です。 そのほか、商品供給の範囲や店舗の工事代金などもチェックポイントです。工事業者は独占禁止法に基づいて(※)、加盟店が自由に選ぶことができるため、正当な理由なく、それを指定してくるチェーンは、ちょっと怪しいかもしれません。

※編注:フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について(公正取引員会告示)

細かな数字が並ぶ事業計画書をはじめとした契約にまつわる書類もそうですが、実際に経営をスタートしたあとも、経理に明るいほうが絶対にいい。できれば簿記2級程度のスキルは持っていたいですね。)

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失敗しない秘訣は、メインターゲットがどこに設定されているかを見極めること

――ちなみに、長年のご経験から、今後伸びそうなFCというと、どのようなものが考えられますか?

内川:ひとつ指標となるのは、人口ピラミッドの推移ですね。社会問題にもなっていますが、今後はますます高齢化が進む。実際、現在の日本の人口ピラミッドの頂点は40代、その次は60代とシニア層に偏っています。そうなると、当然、シニア層をターゲットにした業種・業態が伸びていくでしょう。

――具体的には、どういった業種・業態に注目すればいいでしょうか。

内川:外食業なら、和食などのシニア、シルバー世代に好まれるお店。サービス業なら、マッサージや整体サロン、鍼灸といった健康にまつわるサービスが期待できると思います。ただし、単純にシニア向けがいいという話ではなく、大切なのは消費者の動向を加味して、ターゲット層や事業モデルを変化できるかどうかですね。その意味では、商品やサービス展開を変えやすいコンビニエンスストア、ドラッグストア、小型スーパーなども経営者の嗅覚ひとつで、長生きできる業態だと思います。

――時代に応じての事業モデルの変化が、FCにも必要となると。

内川:はい。ですから、長い目で事業を成功させるには、FC側がメインターゲットをどこに設定しているかをしっかりと確認したほうがいいでしょう。そのうえで、ご自身が将来像をイメージしやすい業態、本部を選ぶことも大事ではないかと思います。

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内川昭比古(うちかわあきひこ)

大手コンビニエンスストアの経営幹部としてさまざまな商品、サービスの開発に携わり、1997年に株式会社日本フランチャイズ総合研究所を設立。これまでに300社以上のFC本部コンサルティングを手がけているほか、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の相談センター責任者を20年にわたり務める。また、経済産業省、JETROなどから依頼を受け日本のフランチャイズ・ビジネスを海外に広めるべく、講演会やセミナー講師として、普及・啓蒙活動を精力的に推進している。
http://www.the-franchise.co.jp

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