【専門家インタビュー】ラーメンのフランチャイズは儲かる?開業までの流れや成功の秘訣を解説
人気店になると毎日行列が絶えないラーメン屋。ラーメン好きの中にはラーメン店を開業して独立したいと考える方も多いのではないでしょうか。ラーメン業界の競争は激化しており、飲食店の経営経験がない方にはハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、未経験でもフランチャイズに加盟して開業するという方法があります。
この記事では、ラーメン店のフランチャイズ加盟を検討している方に向けて、ラーメン店のフランチャイズのメリット・デメリットを解説します。また、失敗しないフランチャイズの選び方について、現場のリアルを、「人類みな麺類」など多くのラーメンブランドを展開するUNCHI株式会社代表の松村貴大さんにお話をうかがいました。ラーメン屋の開業を検討する際は、ぜひ参考にしてください。
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ラーメン業界の市場について
飲食業界は新型コロナウイルスなど、世の中の影響を受けやすい業界のひとつです。その中でラーメン店はどうなのでしょうか。
現在、全国に2万6,000店以上あると言われているラーメン業界の市場について、全体の動向と展望について見ていきましょう。
競争は激しいが、日本のソウルフードとして国内外問わず注目度が高い業界
こってり系やさっぱり系、ちぢれ麺や太麺など、さまざまな種類があるラーメンは、今や日本のソウルフードとして世界でも注目を集めています。
日本フランチャイズチェーン協会(JFA)が実施した「2020年度『JFAフランチャイズチェーン統計調査』報告」によると、「ラーメン・餃子」のフランチャイズチェーン数は95、フランチャイズ店舗は約4,700店あるそうです。
ラーメン店は飲食業界の中でも、大型チェーンだけでなく個人店も多く、参入しやすいと言われています。しかしその一方で、競争は厳しくなり、成功する店とそうでない店がこれからより二極化していくだろうと松村さんは話します。
「原材料費や人件費、また、都市部を中心にテナント料も上がり続けているので、資金力が弱い店はこれから経営が厳しくなるでしょう。また、SNSやインフルエンサーの活用なども積極的な店とそうでない店では、お客さんの入りに差が出てきつつあるように思います」
ラーメンブームの背景には、SNSによる拡散などでファン層が拡大したことも関係しています。
例えばInstagramで「#ラーメン」を付けた投稿数は、2022年4月時点で約1,744万件。Twitterで過去30日間の「ラーメン」を含む投稿数は約151万件もあり、SNS上でラーメンがユーザーからの大きな関心を集めていることが分かります。
松村さん自身もSNSを活用しており、2.6万人のフォロワーを有するTwitterや、YouTube「UNCHI社長 松村貴大のラーメンチャンネル」を運営し、自身の手掛けるラーメン店ブランドやラーメンイベントについて発信しているそうです。
コロナ禍で郊外出店を計画する店も
こうした競争の激化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大もラーメン業界に追い打ちをかけています。
2019年に3,000万人を超えていた訪日外国人は、2020年には25万人にまで減少しました。
帝国データバンクの調査によると、2020年ラーメン店の倒産件数が過去最多の46件に……。特に都市部では、インバウンド需要の激減が大きく影響していると言われています。
今や日本のソウルフードと言われるラーメン。しかし、2019年に97チェーン、5,172店舗あったラーメン店が、2020年には95チェーン、4,723店舗まで減っており(「2020年度『JFAフランチャイズチェーン統計調査』報告」より)、コロナ禍によって変わった世情をうかがえます。
一方で、東京郊外を中心に展開し、コロナ禍でも売上を順調に伸ばしているラーメンのフランチャイズチェーンもあります。これから開業する際は、ライバル店も多い都心を離れ、郊外に出店するべきなのでしょうか。郊外出店の難しさについて松村さんはこう語ります。
「インバウンド需要が激減した影響で、都心での経営が厳しくなり、郊外への出店を検討する方が増えていると聞きます。しかし、ラーメン店は都心と郊外ではスタイルが全く異なります。一人や友人同士で来店することが多い都心の店とは違い、郊外では家族連れのお客さんが多いです。そのため、ラーメンの味だけでなく、接客の丁寧さやきめ細かさが求められます。この感覚がつかめるかどうかは重要なので、出店の際はよく検討してください」
「なぜラーメンなのか」戦略が成功へ導く
このように業界の厳しさを語る一方で、ラーメン店経営は、伸びしろの大きい業界でもあると松村さんは語ります。
「ラーメン店経営が失敗するケースとして多い理由のひとつは、ラーメンをビジネスとして捉えていないことです。ラーメン店を開業する際、勢いと信念だけで始めてしまう方が多いですが、経営において、明確なゴール地点を持っているかどうかは非常に重要です。
『なぜラーメンなのか』『月いくら稼ぎたいのか』、それによって戦略が異なってきます。よくあるのが『稼げるだけ稼ぎたい』など、明確な目標を持たず欲張ってしまう方です。そうすると戦略もぶれてしまい、失敗に陥りやすくなってしまいます。ビジネスの基本であるゴールと戦略をしっかり設定してから始めれば、ラーメン店経営で利益を残すことは難しくないと思います」
ラーメン店のフランチャイズの仕組み
ラーメン店を開業するにあたり、未経験でも参入しやすい方法のひとつが、経営ノウハウの伝授や支援が得られる、フランチャイズに加盟することです。
しかし、その仕組みを正しく理解している方は少ないかもしれません。
ここでは、ラーメン店のフランチャイズの仕組みについて解説します。松村さんが「しっかりビジネスとして取り組めば伸びしろが大きい」と語るラーメン店経営。成功させるためにも、基本をしっかりと理解しておきましょう。
フランチャイズ契約とは
フランチャイズ(FC)とは、加盟者(フランチャイジー)が、本部(フランチャイザー)から、ブランド・商品・経営ノウハウなどを使う権利をもらった上で事業を行い、その対価を本部へ支払うという契約形態のことを言います。
支払い方式には大きく分けて以下の3つがあります。
・売上歩合方式
売上に対して一定の割合をかけた金額で算出されます。例えば、売上が100万円で、ロイヤリティが10%の場合、加盟店が支払う金額は10万円になります。売上が大きくなればなるほど、ロイヤリティの支払いも当然大きくなります。
・粗利分配方式
主にコンビニエンスストアなどで用いられている方式です。販売価格から仕入原価を引いた粗利益に、一定の割合をかけた金額で算出されるものです。こちらも粗利が大きくなればなるほど、ロイヤリティの支払いも大きくなります。
・定額方式
毎月一定の金額をロイヤリティとして支払う方式です。利益の大きい月は手元に残る分が多くなりますが、少ない月は、負担が重くのしかかってくることになります。
「私のフランチャイズを例にすると、売上歩合方式をとっており、売上に対してロイヤリティは5%です。けして低いわけではありませんが、ロイヤリティとしてもらう額に上限を設け、最大30万にしています。そのため、600万以上を売り上げればそれ以上は全てが利益になります。上限を設けることで、もっと頑張って売ろうという気持ちになってもらうためです」
ラーメン店のロイヤリティは3~7%が一般的です。しかしながら、最近ではロイヤリティを無料とする本部もあります。本部を選ぶ際は、ロイヤリティがどれくらいかも含めて検討しましょう。
本部と加盟者はそれぞれ独立した事業者
フランチャイズ契約をしたお店(加盟店)は直営店と異なり、本部と加盟者はそれぞれ独立した事業者であって、共同経営ではありません。そのため、加盟店の成功・失敗の責任は加盟者自身が負うことになります。
とはいえ、フランチャイズ契約をしていると、本部から経営成功のためのノウハウを伝授してもらえるなど、加盟店ならではのメリットも多くあります。
成功しているフランチャイズは「本部と加盟店の両方が儲かる」
加盟店にとっては本部からさまざまな権利を得られるフランチャイズ契約ですが、店舗の売上が上がることによって、本部にもメリットがあります。
“ブランドイメージが向上する→店舗が増える→より認知度が上がり、各店舗の来客数が増える→店舗も売上が上がり、本部も対価が増える……”といった好循環が生まれるのです。このような加盟店と本部、両者の好循環ができているフランチャイズは、成功していると言えるでしょう。
「本部を選ぶ際は、本部の売上はもちろん、ラーメン店のフランチャイズの店舗数が順調に伸びているのかも調査してください。また、成功しているフランチャイズは、本部と加盟店の両方が儲かる体質を保つため、良好な関係を築いています。売上が下がった時に本部がどう対応してくれるのかは重要ですが、最終的には人間性の部分も大きいと思います。日ごろから担当者とはコミュニケーションをとっておきましょう」
フランチャイズでラーメン店を開業する際、試算表を用いてシミュレーションを行うことも重要です。試算表には店舗開業に必要な資金や、開業後の売上について家賃や人件費、ロイヤリティなどを踏まえた1カ月の試算が書かれています。
ほとんどのフランチャイズチェーンでは、フランチャイズ用の資料を取り寄せると試算表が書かれています。それを元に自分が利益を上げられそうか、具体的な数字に落とし込んで計算してみると良いでしょう。
「試算表は平均値でしか書いていないこともあります。そのため、本部任せにせず、できるだけ具体例に置き換えて自身で試算しましょう。特に、家賃は外せない固定費です。良い立地のように思えても、周囲を通っている人の属性が開業しようと考えているラーメン店とマッチしないことや、人通りが多い時間が想像と異なることはよくあります。実際に見てこそ分かることは多いです。足を運んでみて、体感的な情報も踏まえて試算してみてください」
■ 都市型モデルシミレーション
初期投資
項目 | 金額 |
---|---|
物件取得費 | 店舗による |
施工費 | ¥12,000,000~¥20,000,000 |
機器・設備 | ¥4,500,000 |
備品*1 | ¥2,500,000 |
合計 | ¥19,000,000~ |
*1)備品の詳細
POSレジ、音響関係、調理器具、食器、ユニフォームなど
数値実績
勘定項目 | 金額 | 構成比 |
---|---|---|
純売上高 | ¥3,000,000 | 100.00% |
売上原価 | ¥990,000 | 33.00% |
売上総利益 | ¥2,010,000 | 67.00% |
販売費一般管理費
勘定項目 | 金額 | 構成比 |
---|---|---|
人件費 | ¥810,000 | 27.00% |
水道光熱費 | ¥210,000 | 7.00% |
家賃 | ¥300,000 | 10.00% |
雑費・消耗品等 | ¥90,000 | 3.00% |
ロイヤリティ | ¥90,000 | 3.00% |
販売費一般管理費合計 | ¥1,500,000 | 50.00% |
※12坪16席
※全て税別
※減価償却費は含まない
※単位:円
※上記データは参考資料であり、加盟店の売上や利益を保証するものではありません。
※売上原価はラーメンの商品のみをベースに記載。
「サイドメニュー・アルコール類」は、集客を行うための宣伝広告として安価で提供する仕組みを採用しております。
※金額はあくまで仮値です。
※試算の際は構成比を参考にしてください。
フランチャイズラーメン店のメリットとは?
フランチャイズラーメン店に加盟するメリットにはどのような点があるのでしょうか。自身でいくつものラーメンブランドを展開する松村さんの実体験も踏まえて解説していきます。
さまざまな面で本部からアドバイスを受けられる
ラーメン店を開業する際、フランチャイズ契約をすると、経営・調理・接客・店舗設計など、さまざまな面から本部のアドバイスを受けられるので、イチから自分で考える必要がありません。また、研修も受けられるので、既存店と同レベルのサービスをすぐに提供でき、時間と心に余裕が生まれます。
「経営を軌道に乗せるまでの時間やストレスが短縮されるのは、フランチャイズに加盟する大きなメリットです。自分の時間や労力を100%かけ続けるのが大変な方にとっては良いでしょう」
さらに、ラーメン店の経営においてネックになりがちな求人募集についても、本部の支援内容によっては、フランチャイズに加盟することがメリットになると松村さんは言います。
「おしゃれなカフェやスーパーと違い、同じコストをかけて求人募集をしても、ラーメン店ではなかなか応募する人が来ません。人が集まらないと本当に大変です。そこをサポートしてくれる本部の場合、初めてラーメン店を開業するオーナーさんにとっては、とても助けになると思います」
従業員採用の難しさはラーメン業界への参入障壁のひとつです。しかし、フランチャイズに加盟することで、求人募集を出すコストを削減できるなど本部からのサポートを受けられることがあります。これらは、経営や調理といったノウハウに加えて得られるメリットと言えるでしょう。
仕入原価を抑えられる
仕入原価を抑えられるのもメリットのひとつです。ラーメンを作るのに必要な麺や具材、スープが一律で決まっているため、フランチャイズ全体でまとめて仕入れることができ、個人で仕入れる場合と比較して材料費を抑えることができます。
「近年、ニュースなどでも取り上げられているように原材料費が高騰しています。同業者からも上がっているという声をよく聞くようになりました。一般的に卸から仕入れる原材料の量が多いほど、単価を抑えやすくなるので、そうした原価率の面からもフランチャイズの規模は重要です。事実、私のフランチャイズの場合でも、逆に出店スピードを上げて店舗数を増やしています。店舗数の増加に加え売上も好調なので、他店と比べて仕入れる量が多く、そのおかげで卸から価格を据え置きにしてもらえており、コスト上昇を防げています」
ラーメン店を開業したら、しっかりと原価は抑え売上につなげたいもの。どのフランチャイズの原価率が良いのかは、先述したフランチャイズ資料内の試算表などを活用して計算しましょう。
資金調達がしやすい
ラーメン店の開業には2,000~3,000万円程度の資金が必要です。そのため、多くの場合、全額を自己資金でまかなうのは難しく、金融機関に融資の相談をすることになります。
その際、経営がしっかりしているフランチャイズであれば、人気ラーメン店のブランド力を活用できるため、金融機関からの信用を得やすく、必要な資金の融資を得られやすいでしょう。
「ラーメン店の開業時に金融機関に融資の相談をする際は、フランチャイズの資料を見せてくださいと必ず言われます。個人店で開業する場合や経営がうまくいっていないフランチャイズで開業する場合と、実績がしっかりしている有名フランチャイズで開業する場合とでは、融資の下りやすさが当然違ってきます」
しかし、有名フランチャイズであれば必ず融資が受けられるというわけではありません。自己資金をどの程度用意しているか、また、事業計画の具体性や実現可能性などもチェックされます。こちらについては後述します。
デメリットも知っておこう
ラーメン店のフランチャイズに加盟するメリットが多いことは分かりましたが、デメリットはないのでしょうか。フランチャイズ契約を検討する上で知っておきたいデメリットについても解説します。
加盟金やロイヤリティなどの支払いが発生する
フランチャイズに加盟すると、本部に支払うお金(対価)として「加盟金」「保証金」「ロイヤリティ」が多くの場合発生します。
いずれの支払額も本部によって異なり、加盟金は無料のところもあれば300万円以上のところもあります。また、保証金(加盟店の未払いに備えた本部「預り金」)は50~150万円が相場とされています。ロイヤリティは、売上から一定の割合を本部に支払うケースが多いですが、先述した通り、その割合や支払い方式はさまざまです。
フランチャイズに加盟すると、支援を得られる分、本部に対価を支払う必要があります(前述「フランチャイズ契約とは」参考)。フランチャイズラーメン店経営の収益を試算する際は、こうしたフランチャイズ契約ならではの経費も忘れず加味して、試算するよう注意しましょう。
経営の自由度が低い
ブランドイメージの統一を重要視するフランチャイズの場合、独自メニューを出せない可能性があります。また、契約終了後も競業避止義務が課され、自分のお店を出したいと思っても数年間は自由な出店ができない場合もあります。
「フランチャイズでは、契約終了後の個人店出店の制限をかけているところがほとんどです。『契約終了後、3年間はNG』『大阪市内の出店はNG』などあります。どういったお店を開きたいのか、今後どうなっていきたいのか、今後の事業計画や自分の人生設計とともに考えてみてください」
他店の不手際でブランドイメージが下がる可能性がある
同じフランチャイズの他店でトラブルが生じた際、ブランドイメージが下がり自分の店舗の売上にも影響する可能性があります。例えば、食中毒が発生した、従業員がSNS に不要な投稿をしてトラブルを起こしたなどです。
そうした緊急時に備えた、あるいは不測の事態を予防するためのマニュアルがあるかどうかなど、フランチャイズを選ぶ段階である程度気を付けることもできますが、リスクとしては注意を払っておく必要があります。
また、自分の店舗に関わらず、どれだけ気を付けていてもトラブルが生じる可能性はゼロではありません。だからこそ、挽回のためには日ごろから自分の店舗で信頼を築いておくことが重要だと松村さんは語ります。
「自分の店舗でお客さんとの信頼構築をする上で大切なのは、従業員をしっかりと指導していることです。例えば、店長が一生懸命アルバイトを指導している姿をお客さんが見れば安心感につながるでしょうし、そのアルバイトが自分の言葉で『また来てくださいね』など再訪を促す言葉を言えれば良いお店だなと思われるでしょう。実際、店長が店に出て接客する時間は少ないですから。だからこそ、お客さんとの信頼構築のためには、従業員のレベルを上げることが重要なポイントです」
フランチャイズ本部を選ぶコツ
どのフランチャイズへ加盟するべきか、ラーメン店の本部を選ぶコツはあるのでしょうか。フランチャイズの本部を検討する際に押さえておくべきポイントを紹介します。
ブランドの将来性と契約期間
加盟するフランチャイズに将来性があるかどうかは、ブランドの「旬度」を見てほしいと松村さんは言います。
「例えばパンケーキやタピオカのようなブーム商材であれば、1年くらいの短期間で稼ぐにはもってこいですが、仮に契約期間が10年だと経営を続けるのはちょっと厳しそうですよね。ラーメンも同じで、そのブランドの“旬”がどれくらい続きそうなのか、という将来性は重要だと思います。その際、出店スピードはひとつの判断材料になるでしょう。毎月1店舗くらい新たにオープンしているところは間違いなく伸びているはずです」
あわせて契約期間についてもチェックしましょう。ラーメンのフランチャイズであれば契約は5年で自動更新、契約満了の半年前までの申し出であれば解約可能というところが多くあります。
そして、松村さんによると、そのフランチャイズの将来性を推し測る上で、さらに大事なポイントがあると言います。
「契約期間や必要資金について調べたら、ぜひ実際に食べに行ってみてください。出店スピードが一過性のブームや勢いから来ているものでなく、お店の雰囲気や接客がしっかりしているかなど肌で感じてみましょう。そして最も重要なのは味に惚れ込めるかどうかです。自分がおいしいと思わないものを出したくないですから。これらの要素も踏まえて自分が納得したら、2~3年をベースに試算表を作って、投資した金額に対してペイできるか考えてみてください」
本部の考えに賛同できるか
経営のスタイルや考え方は、フランチャイズによってさまざまです。資料を請求したり直接話を聞いたりするなどして、自分のやりたいことや価値観とマッチしているかどうか、しっかり見極めましょう。
では仮に、松村さん自身がラーメン店を開業した当時であれば、どのような軸で加盟するフランチャイズの本部を選ぶのでしょうか。
「(24歳の開業時に)フランチャイズに加盟するとしたら、自分の好きなラーメン屋、つまりラーメンがおいしいかで選ぶと思います。おいしいという自信があるから、もし店がうまくいかなかったら自分のせいですし、失敗しても納得がいきます。なぜなら自分が選んだ店の場所や接客が原因でしょうから」
さらに、自身のラーメン店ブランドも立ち上げ、フランチャイズのメリット・デメリットを理解した今、フランチャイズに加盟するとしたらどのような軸で本部を選ぶのかもうかがいました。
「もし今フランチャイズに加盟するとしたら、自分もよく行くお店はもちろん、しっかりラーメン屋の仕組みができているかを確認しますね。あとは、求人が来やすいかどうかも重要視します。どれくらいの募集がきているのかリサーチするために、実際に連絡してみて、応募人数などをヒヤリングしてみると思います。ほかにも、福利厚生とかあれば良いですよね」
フランチャイズの本部にはラーメン店だけでなく、その他の飲食店やリラクゼーションなどを運営しているところもあります。松村さんの会社でも、スタッフが無料で使用できるパーソナルジムをオープンさせるそうです。
個人店ではなかなか福利厚生を充実させることは難しいので、フランチャイズの本部を選ぶ際にはこのような点もチェックしてみても良いでしょう。
一方、本部が加盟者と契約する際の判断基準などはあるのでしょうか。
「私のフランチャイズブランドを例で言うと、他店との差別化を図るため、チャーシューの枚数を5枚まで無料で選べるようにしています。原価をある程度かけてサービス面を充実させるようにしているのですが、こういったお客様が喜んでくれるサービスに共感してくれるかどうかは、加入の際の基準にしています」
本部の経営方針に納得がいき加盟店の足並みがそろうことがフランチャイズ契約でラーメン店が成功する秘訣のようです。本部の担当者と直接話すなどしてフランチャイズの契約先を検討しましょう。
ラーメン店開業までの流れ
それでは、実際にラーメン店をフランチャイズで開業するまでの流れと、それぞれのステップで押さえておきたいポイントを解説していきます。
STEP1:自己資金の用意
まずは資金の準備です。開業までに、自己資金をこつこつと用意しておくことが融資の際にも有利になります。
「前述の通り、ラーメン店の開業には多くの場合金融機関に融資の相談をすることになりますが、自己資金をどの程度用意しているかで、融資を受けやすいかどうか変わってきます。最低でも500~600万円程度の自己資金は準備しておきましょう。
あわせて、開業に向けて毎月こつこつ資金を貯めているという証跡を銀行口座に残しておくことも重要です。開業に向けた本気度を示すことで、金融機関の担当者への信頼を得やすくなると思います」
STEP2:ラーメンフランチャイズ本部の比較・検討
資金面の目途がたったら、どのフランチャイズで開業するかを比較・検討しましょう。
フランチャイズの募集を掲載しているWebサイトや、フランチャイズが集まる合同イベントに参加するなどして、どのようなフランチャイズがあるのかを調べ、フランチャイズ本部の資料を集めて比較・検討します(前述「フランチャイズ本部を選ぶコツ」参考)。
その後、気になるフランチャイズの本部担当者と会って、自分のやりたいこととマッチしているかどうかを見極めましょう。
STEP3:加盟するラーメンフランチャイズ本部を決める
加盟するラーメンフランチャイズの本部を選定したら、事業計画書を作成しましょう。本部が事業シミュレーションを作成してくれますが、無理のない計画なのかを自分でも確認することが大切です。本部からもらった出店可能エリアや収支についての資料をもとに、しっかりとシミュレーションしましょう。
「出店するエリアの情報収集は怠らないでください。資料はあくまで参考です。繰り返しになりますが、自分のラーメン店に来るお客さんのことを想像し、実際に現地に訪れ、人通りの多さや時間帯などを肌で感じましょう」
また、融資を受ける場合にも事業計画書が必要となります。本部が作成を手伝ってくれる場合もありますが、金融機関の担当者に自分の言葉で説明できることが大切です。
これらの条件をクリアし、シミュレーションでも問題なければ、フランチャイズ本部との契約へと進みます。契約書にサインをしたら、フランチャイズ契約の成立です。
STEP4:開業準備
フランチャイズ契約の締結が完了したら、物件探しと求人募集、店舗の什器、備品の準備を同時進行で進めていきます。物件探しや求人募集は本部がサポートしてくれる場合もあります。また、什器の仕入れ先などは本部から指定されることも少なくありません。どこまでのサポートが受けられるかなど、本部と連携をとりながら開業準備を進めましょう。
「物件探しについては、不動産屋さんに空き店舗を紹介してもらう手もありますが、そうすると『ここは早く借り手がついてほしい』といった、不動産屋さん側の思惑が乗ってきやすいです。そのため、テナント探しは、ぜひ自分で街を歩いて行うことをおすすめします。
『この辺でお店を出せたらいいな』という思いをふくらませることで、開業後のイメージもつきやすいでしょう。もし良い空き店舗が見つかればほとんどの場合看板に電話番号が書いてあるので、そこに電話して問い合わせればOKです。
また、昨今はコロナ禍などもあり、地域によっては空いているテナントも多いので、ぜひフリーレントの交渉をしてみましょう。3カ月~半年くらいの期間、家賃を0円にしてくれる可能性もあります」
本部による研修も開業準備中に受けることになります。期間は3日~1カ月と本部によってさまざまで、接客、ラーメンの作り方、製麺の仕方、開店時の準備や閉店時の片付けの仕方などを教わります。基本的に研修期間の収入はゼロになるため、この期間中の生活費も準備しておきましょう。
また、開業にあたって必要な資格(食品衛生責任者、防火管理者など)の取得については、自分で行う必要があります。こちらも忘れずに準備しておきましょう。
STEP5:開業
準備が完了したら、いよいよオープンです。開業日からお客さんが来てくれるよう、お店の告知も忘れないようにしましょう。
<告知の方法例>
・店の前に看板を設置したり、窓にチラシを貼ったりする
・周辺でビラ配りを行う
・SNSを開設し、開業情報を発信する
・メディアに取り上げてもらえるようプレスリリースを打つ など
「『グランドオープン』とA4一枚に一文字ずつ印刷し店に張り紙をしておくだけで告知はできます。お店のSNSを開設したら一週間前から投稿すると良いでしょう。最初はフォロワーもいないので、フランチャイズ本部などに発信してもらうのも手です。それをリツイートするなど工夫して告知へつなげていきましょう」
開業後は、しっかりしたサービスとともに店舗運営を行っていきましょう。初めのうちは、オープンキャンペーンとして次回に使えるクーポン券などをつけるのもおすすめです。お店を持続していくためにもリピーター獲得を目指しましょう。
ラーメン店を開業したいならフランチャイズを比較検討してみよう
ラーメン店を開業して独立したいと考える方に向け、ラーメン店のフランチャイズ加盟のメリット・デメリット、また本部選びのコツなどを解説しました。
ラーメンフランチャイズに加盟すると、本部から経営のノウハウを教わったり、仕入れの原価を抑えられたりと、さまざまなメリットがあります。その一方で、本部へのロイヤリティの支払いや、経営に関して自由度が低いといった制限があるのも事実です。
そのためラーメン店の開業を考える方は、自分がどういったお店を運営したいのか考え、フランチャイズに加盟するのであれば、どの本部が適しているのか検討するようにしましょう。
最後に松村さんから、これからフランチャイズラーメン店への加盟を検討している方にアドバイスをいただきました。
「24時間365日、やりたいことに捧げられる自信があるのであれば、個人での開業をおすすめしますが、それはちょっと……という方にとって、フランチャイズへの加盟は良い選択肢だと思います。
そしてフランチャイズに加盟するのであれば、お伝えしたいのはただひとつ、『本店を超える気持ちで加盟しましょう!』ということです。個人店であろうと、フランチャイズであろうと、お店を作るのは自分自身であることに変わりはありません。こうした挑戦を楽しめる方は、ぜひ加盟を検討されてみてはいかがでしょうか」
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松村 貴大さん
UNCHI株式会社代表
2012年(当時24歳)に「人類みな麺類」を独立開業し、その翌年には「くそオヤジ最後のひとふり」をオープンさせるなど、数々の行列ラーメン店を創りだす。
現在は国内8ブランド(ラーメンは6ブランド)、海外2ブランドを展開し、さらに9ブランドをプロデュース。
会社のビジョンである「ラーメンの力で世界を変える」をテーマに、“食のあり方・働き方・社会貢献” の3つの基盤のもと、自身の作るラーメンが世界中で食べられるよう、日々活動中。
UNCHI株式会社